ONE-PUNCH-MAN 『IF』~最強の正義VS最強の悪~ 作:上井カルタ
もしよければ感想などを頂けたら嬉しい限りです。
第一撃目 『平和の崩壊』
この物語は、力と引き換えに、人として大切な物を失った平熱系最強ヒーロー“サイタマ”が、人間怪人『ガロウ』を討ち取り、いつも通りの平和を取り戻した、二年後の物語である。
「今日も平和だ......」
澄み切った青空を見ながら、彼はそう口ずさむ。
太陽の光が彼の何もない頭を照らし、所々に光が反射している。
今日もいい天―――――
「―――――おい! そこの『ハゲ』!」
突然聞こえる罵声に、彼の眉がピクリと動いた。
「俺は怪人『ベチョベチョンバ』! 一年前に不良に下水道に落とされて怪人になった! おかげで汚水ならどんなものでも操れるようになった! そんな俺の災害レベルは"神"だ!」
「......おい」
「あ? 何だこのハ――――」
断末魔の一つも上げられず、その腕、足、頭、その全てがヒーロー『ハゲマント』こと【サイタマ】の『一撃』により粉砕された。
「誰がハゲだごらあああああああああああああああああ!!」
今日も平和である。
☆★☆★☆★☆★☆
「―――――先生。お疲......服が汚れていますが」
「俺をバカにした怪人がいたからぶっ飛ばしてきた」
「なるほど。怪人には身の程知らずが多いですね」
そう言いつつ、サイタマの服を丁寧にたたむ青年の名は『ジェノス』。彼もヒーローだ。
「ていうかジェノス。お前またランキング上がったらしいな」
「はい。ですがそれは先生のお陰です」
「いや俺はなんもしてねーぞ?」
ジェノスは、ヒーロー協会において最高戦力の『S級ヒーロー』なのだ。
最近、数ヶ月ぶりに現れた災害レベル『竜』の怪人を単独で討伐し、ヒーローランキングが十四位から十三位へと上がった。
「それよりも先生。最近よく散歩されていますが、どうかされたんですか?」
「いや、最近暇だから。あと、いきなり現れた怪人とかを倒してるから」
「なるほど......つまり先生は怪人が現れることを見越して、散歩と見せかけたパトロールをしているのですね」
「いやどうゆう解釈したらそうなった」
「俺も、先生のように精進します」
「話聞いてた?」
やはり今日は平和である。
―――――――だがその平和は、ある日突然、崩れ去った。
一週間後。
『緊急速報です。先程、突如現れた怪人と抗戦していたS級ヒーロー『金属バッド』が怪人の手によって瀕死の重傷を負いました。怪人の災害レベルは『竜』と想定されています。その怪人は現在逃亡中です。付近の人々は至急ヒーロー協会の特殊避難所へ! 繰り返します――――――」
「.......またS級がやられたな。この一週間で何人やられたんだ?」
「今回で新たに金属バット。タンクトップマスター、超合金クロビカリ、そしてアトミック侍の計四人です。まさかS級ヒーローがここまでやられるなんて.......」
「しかも全員瀕死の重傷。一体どうなってやがるんだ」
この一週間。突如現れた怪人の手により、S級ヒーロー達が瀕死の重傷を負わされた。
怪人の正体はわかっておらず、災害レベルは『竜』かそれ以上と噂されており、Z市ではパニックが起きている。
「これは、先生の手が必要ですね。もちろん俺もついていきますが」
「そうだな。......あ、でも俺より先にあの
「可能性はあります。ですが......」
「わかってる。一応行ってみるぞ」
「わかりました。では早速......」
ブー。ブー。ブー。
ジェノスの言葉を遮るように、ジェノスの携帯に一通のメールが届いた。
「......協会から? ......『至急、Z市のヒーロー病院に来てくれ。ハゲマントを連れて』」
「こんな時に何でだ?」
「わかりません。ですが先生も呼ぶということは相当な問題なのでしょう。今すぐ向かいましょう」
「何でかわからないが、とりあえず行ってみるか!」
こうして二人は、Z市の一番大きい病院である、ヒーロー病院へと足を運んだ。
☆★☆★☆★☆★☆
「......ついたは良いけど、協会の奴等はどこにいるんだ?」
「......! 先生あそこです。」
とジェノスが指を指す方向に、一人だけスーツを着用した男が電話をしていた。
何を話しているかはわからないが、その男はこちら側に気づくと猛ダッシュでサイタマ達の元へと向かってきた。
「よかった! 思ったよりも早く来たな。早速だが私についてきてくれ」
「待て。要件を説明しろ。こっちも早く怪人の元へ向かうつもりなんだ」
「その怪人について今から話しに行くんだ! とりあえず来るんだ! ハゲマントも急げ!」
「......わかった」
「ハ、ハゲマント......」
二人はそれぞれの感情を表情に表すと、協会の男に案内されながら後をついて行った。
「―――――超合金クロビカリ君。失礼するよ」
案内されて着いたのは、906号室―――――S級ヒーロー『超合金クロビカリ』の病室だった。
「―――――やぁジェノス君。それに......サイ何とか君」
「サイタマだ」
「すまないサイタマ君。まぁ掛けてくれ」
通常よりも大きめのベッドの上で微笑みながら、クロビカリは近くにあったイスを指差す。
「......それで、その怪人について、何かあったのだろう?」
ジェノスが尋ねると、男とクロビカリは向き合いながら頷き、クロビカリがさっきと違い、真剣な表情で口を開いた。
「俺を倒した怪人の名は『グラン』。おそらく、今までで最強の『人間怪人』だ」
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