②は5話のいろはちゃん視点です。
③でいろはちゃん視点を終わらせようと思います。
(予定です)
「んー、何にしようかなぁ」
今、私は迷っています。
アップルパイを作るのは決定なんですが、それに合う飲み物で迷っていて、普通なら紅茶なんですけど、お兄ちゃんの事を考えていた私は甘々な気分なんです。
私は"マックスコーヒー"と書かれた缶コーヒーを手に取りました。
たまにお兄ちゃんがトレーニングの後に飲んでいて、「俺の2時間が無駄になったぜ」とか意味の解らない事を言っていたのをよく覚えています。
「あれ、いろはちゃん?」
持っていた"マックスコーヒー"を元々あった場所に戻して、名前を呼ばれた方に顔を向けます。
「やっぱり、いろはちゃんだー」
「あっ、ナナちゃん先輩」
「何してるの?」
「お菓子作りの買い出しです」
「あいかわらず女子してるねぇ」
~10分後~
「またね!」
「ではでは、さよならでーす♪」
私の一つ年上になるナナちゃん先輩とは、6年以上の付き合いになります。
小学生の頃はお兄ちゃん一筋で私の良きライバルだったんですけど、お兄ちゃんが転校しちゃってからは年下大好きビッチちゃんになっちゃいました。
今も、私の隣のクラスの学校一番のイケメン君に片想い中です。
ナナちゃん先輩との関係はお兄ちゃんが繋げてくれたんです。
あの出来事があった後、私はお兄ちゃんに連れられて、お出掛けするようになりました。
話した事が無い同級生や知らないお兄さんやお姉さんがいて戸惑ってしまい、いつもみたいに縮こまってしまいます。
このままでいたら、お兄ちゃんが助けてくれる。
このままでいたら、お兄ちゃんが守ってくれる。
このままでいたら、お兄ちゃんが頭を撫でてくれる。
『あなたはこのままでいいの?』
頭の中でお兄ちゃんを守れなかった私が問いかけます。
お兄ちゃんを助けたい。
お兄ちゃんを守りたい。
お兄ちゃんの頭を撫でてあげたい。
私はもっと強くなりたい!
勇気を出して近くにいる女の子に話しかけました。
「い、いろはです。おはなしいいですか?」
「いろはちゃんていうの、かわいいねぇ。わたしはナナだよ、ナナちゃんって、よんでね」
私はそれから、いろんな人とお話しました。
お兄ちゃんを守れる勇気が欲しかったから・・・・・。
気付いたら私の周りには沢山の人がいて、物語の中のお姫様になっちゃった気分です。
私が強くなれたら王子様が迎えに来てくれる。
私が強くなれたら王子様が抱きしめてくれる。
私が強くなれたら王子様がキス・・・・・。
キャーーー ( 〃▽〃) ♪♪♪
違うんです、違うんです!
小学2年生の頃の私はそんなマセた女の子じゃないんです!
純真無垢な女の子なんです!
それは、今の私の願望なんです!
キャーーー ( 〃▽〃) ♪♪♪
違うんです、違うんです!
~~~~~
コホン、失礼しました。
えっと・・・・、どこまでお話しましたっけ?
そうでした。
そんなお姫様気分の私は、お兄ちゃんがくれた絆を深めていきました。
小さかった私の世界が、拡がって行くのを感じます。
今までの恥ずかしがり屋さんで人見知りちゃんな私は、いなくなっていきました。
これでお兄ちゃんを守れるんだと思った時、
大切な人は私の拡がっていく世界からいなくなりました。
私の世界が闇に飲まれていきます。
明るかった世界が、温かかった世界が、
私を照らしてくれていた太陽がいなくなってしまったから。
気づいたら、お兄ちゃんの家のドアの前で座り込んで泣いていました。
「・・・・・いろはちゃん?」
久しぶりに聞いたその声で、私は顔を上げます。
嫌われたって、離れたくない。
嫌われたって、一緒にいたい。
謝るために私の弱かった心をお兄ちゃんに話しました。
話し終えた私は、お兄ちゃんに謝ろうとしたんですが、
「ごめん、いろはちゃん」
「いろはちゃんから逃げてた、全部俺が悪いんだ。
だから・・・。ごめんなさい」
そう言って、お兄ちゃんが頭を下げたんです。
言葉の意味が理解できませんでした。
私を助けてくれるのに。
私を守ってくれるのに。
私を強くしてくれるのに。
(ペタッ)
気づいたら、お兄ちゃんの頭を撫でていました。
久しぶりに繋がれた気がして、温かさが私の中に流れ込んできます。
彼の温もりが、私の心を満たしてくれました。
その後は2人で、ごめんなさいしあってからお別れしました。
お別れする間際、次の日の手繋ぎデートの約束も忘れません。
私の世界に太陽が戻って来てくれました。
「一色さん」
あの時の弱々しいお兄ちゃん可愛かったなぁー。
「一色さん!」
あの時のお兄ちゃんをギュッてしてあげたかったなぁー。
「一色さん!!」
んっ、せっかく小さい頃のお兄ちゃんと頭の中でラブラブしてたのに。
わたしは怒り顔で名前を呼ばれた方に振り向きます。
そこには隣のクラスの学校一番のイケメン君がいました。
「こんにちは、一色さん」