ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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グルファレス魔法聖騎士団が前門の虎である千歳と千代田に向かい、ローウェン教教会騎士団と序列第1位の聖女アレクシア・イスラシアが後門の狼にして因縁深き相手であるセリシアの元へと向かう。

 

その一方で様子見のつもりなのか戦いの火蓋が切って落とされてからも、その場に留まり一歩も動こうとしない暗殺者集団ブラッディーファング。

 

だが、そんなブラッディーファングの事を気にせず騎士達は戦場に向かって駆け出していた。

 

そこが自らの死に場所になるとも知らずに。

 

「弓隊、構え!!――放てぇ!!」

 

得物を構え駆け出した千歳と千代田がグルファレス魔法聖騎士団とぶつかる少し前、先手を打って彼の騎士団の弓兵達が手に握るアッキヌフォート(無駄なしの弓)という魔武器から金の矢、銀の矢という百発百中の魔法の矢を放っていた。

 

僅かに角度を付け、ほとんど水平の放物線を描いて宙に放たれた100発近い魔法の矢の群れは、意思を宿しているかのように狙い過たず千歳と千代田に殺到する。

 

だが、そんな魔法の矢程度で仕留められる程、柔な千歳と千代田ではない。

 

「沈めッ!!」

 

突撃を継続中の千代田の一喝と同時に魔法の矢が全て見えない何かによって叩き落とされ地面にめり込む。

 

「なっ!?」

 

「嘘だろ!!」

 

「あの女、どうやって矢を全て落とした!?」

 

百発百中のはずの魔法の矢が強制的に地面に落とされた事に驚く弓兵達が知るよしもないが、矢を全て落としたのは千代田の腕に仕込まれている重力兵器である。

 

いつの日かの、ヒュドラ戦でも活躍した千代田の重力兵器は未だ完成には到ってはいなかったが改良により威力や持続時間、効果範囲が向上していた。

 

そのため、少々距離があろうと範囲が広かろうと魔法の矢を一つ残らず撃墜する事が可能だった。

 

「狼狽えるな!!次だ!!」

 

「了解!!穿ち貫け、ゲイ・ボルグッ!!」

 

「貫き穿て、グングニルッ!!」

 

魔法の矢が迎撃されたのを見て今度は走っている騎士達の中から、目標に必ず命中するという概念を付加された2本の魔槍が千歳と千代田に向かって投げられる。

 

「「ッ、返すぞ!!」」

 

だが、魔武器の名前を叫んだ事が槍の持ち主に取って命取りになった。

 

有名な槍故に大体の効果が分かった千歳と千代田は自身の急所――心臓に槍が突き刺さる寸前、飛んできた槍を片手で掴み取り敵に槍を投げ返したのだ。

 

「ウギャ!!」

 

「グハッ!!」

 

「「「「ギャッ!!」」」」

 

いくら必中が保証されている槍とはいえ、所詮は人が投げ魔法で加速させた程度の速度。

 

人という枠組みを超越している千歳や、感情を宿した人工知能で、しかも今回は通常型とは違い戦闘用に特化した生体端末を使っている千代田に取って、そんな程度の速度では脅威になり得るはずも無く、命中する直前に掴み取り無力化する事など容易かった。

 

そして、投げた騎士達の倍以上の速度で投げ返されたゲイ・ボルグとグングニルは持ち主の騎士はもちろん、その背後にいた騎士達さえも巻き込み串刺しにしてようやく停止する。

 

「死ねっ!!」

 

「クタバレッ!!」

 

一瞬たりとも歩みを止めず敵の攻撃を凌ぎきったどころか、反撃までしてみせた千歳と千代田は槍の一撃で陣形を崩し混乱が生まれている騎士団の懐に潜り込むと、恐るべき力を秘めた魔武器を持つ騎士達を歯牙にも掛けず、演武を舞うかの如く次々と殺していく。

 

「シッ!!ッ、邪魔を……するなッ!!」

 

敵中に飛び込み接敵した直後、瞬く間に5人の首を防具ごと刎ね飛ばした千歳は咄嗟に反撃に出た騎士の一撃を日本刀で防ぐと、お返しとばかりに相手の顔面に正拳を叩き込む。

 

「グュヘッ!!」

 

驚くべき事に硬い鉄で出来ているはずのグレートヘルムが千歳の正拳を受けると、メキョッ!!と内側にめり込む。

 

防具ごと顔を潰された騎士は、そのまま勢い良く吹き飛び、背後にいた仲間にぶち当たる事で勢いを殺すと地面に転がった。

 

「覚悟ォー!!」

 

「遅いッ!!」

 

「ぬっ!?ギャ――ッ!!」

 

「借りるぞッ!!」

 

「えっ?――ギャアアアアアアッ!!俺の、俺の腕があああああっ!!」

 

不滅の剣であるデュランダルを持った騎士が斬りかかって来ると、その横凪ぎの一閃を日本刀で受け流し手首をくるりと回して返す刀で首を刎ね、次いで殺した敵の血を吸う度に堅固になっていく妖剣フルンティングを握っていた騎士の両腕を斬り落とす。

 

腕が無くなり泣き叫んでいる騎士から、フルンティングを奪った千歳は日本刀とフルンティングの二刀流で手当たり次第に騎士の首や身体を斬りつけ最大限の苦痛を与えながらなます斬りにしていく。

 

「た、助け――ギャッ!!ギィアアアアアアッ!!」

 

「化物め!!我が剣――グエッ!?」

 

「苦痛の中で死ねッ!!」

 

血飛沫が舞う真っ只中では暴風のような斬撃が荒れ狂い、その暴風の発生源である千歳は怒りに任せて刃を振い続ける。

 

「さて、肉塊になりたい奴はどいつだ?」

 

一方、千代田は向かって来る騎士達を全武装を持って蹂躙していた。

 

「う、うおおおおおおおお!!」

 

「行け、行けぇぇーー!!」

 

「やっちまえーー!!」

 

千代田を取り囲んでいた騎士達が挑発に触発され、一斉に動き出す。

 

だが、彼らの命は千代田の指先1つで踏みにじられる。

 

「沈め」

 

おぞましい笑みと共に突き出した人差し指を下に向け、たった一言。

 

その直後、グチュリという生々しい肉が潰れる音がして千代田の周りには数十の紅い染みとスクラップになった鎧や魔武器の残骸が生まれた。

 

「ま、まだまだァッ!!」

 

「我らを舐めるな!!」

 

「三下が意気がるな」

 

仲間の壮絶な死を前にして、蛮勇に駆られたのか次々と向かって来る騎士達。

 

そんな騎士達を道端のゴミでも見るような眼差しで眺めながら、千代田は重力兵器の他にも腕や足に仕込まれた刃や銃、劇物で迎え撃つ。

 

「は、放せェェ――ギュッ!!アアアアアアアア!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、ギッイイイイィィィィッ!!」

 

「助けて!!誰か、助けてく――ギャアアアアアアアーー――ッッ!!」

 

 

青紅剣を持っていた騎士と倚天剣を持っていた騎士は、魔武器を破壊され千代田の手に囚われる。

 

そして右手の者は腕に仕込まれていたチェーンブレードで生きながら解体され、左手の者はポイズンフロッグという魔物から採取された酸性の猛毒を手の平に内蔵されていた管から浴びせられて顔面を焼かれ、最後には頭部が無くなり息絶えた。

 

 

「「「「ヒッ!!」」」」

 

そのあまりにも惨たらしい死に様に一瞬、動きを止める騎士達。

 

「ハハッ、鴨撃ちだ」

 

一瞬とはいえ、致命的な隙を晒し棒立ちになってしまった騎士達を千代田は笑いながら肘に仕込んでいた小口径の仕込み銃で薙ぎ払う。

 

無数の銃弾を浴び、奇妙なダンスを踊り終えた騎士達がバタバタと倒れると死体の山が出来上がった。

 

「「……さぁ、続きと行こうかッ!!」」

 

周りにいた騎士達を瞬く間に殲滅した千歳と千代田は一息つく間も無く、未だに残る怨敵を始末するために得物を構え直すと再び敵中へと飛び込んで行ったのだった。

 

 

 

「カズヤ様を傷付けた代償。その命で償ってもらいましょう」

 

千歳と千代田がグルファレス魔法聖騎士団を蹂躙している反対側ではセリシアが召喚した魔物でローウェン教教会騎士団を蹂躙していた。

 

と言っても、魔武器も持たず加えて監獄島で戦力の大半を喪失している教会騎士団が狂信者であるセリシアに勝てる見込みなど端から無く、蹂躙されるのは目に見えていることであるが。

 

「チィ!!この裏切り者が!!」

 

「悪態を吐いている暇なんか無いぞ!!あの魔物から距離を取れ!!それ以上近づくと――ッ!?ウゴッ!?――ッ!!――ッ!!――……」

 

「フン。せいぜい苦しみと絶望を味わいながら悔いて死になさい」

 

セリシアは自らが召喚出来る中で最大にして最強のキングクラスの魔物――5メール程の巨体を誇るスライムに騎士を捕らえさせると、その体内で時間を掛けてゆっくりと騎士を溶かし殺して行く。

 

「あ、こら。もっと苦しませてから殺しなさい。すぐに楽にしてはいけませんよ」

 

巨大なスライムが焦れたように、体内に捕らえた騎士を一瞬で溶かし殺したのを見てセリシアがスライムを聖具ウィッパーワンドでこつく。

 

すると、スライムが詫びるように球体状の体の収縮を繰り返す。

 

「分かったのなら良いのです。さぁ、他の雑魚も食い散らしなさい」

 

「う、うわああああっ!!」

 

「く、来るぞ!!」

 

セリシアに発破をかけられたスライムが、見掛けによらず俊敏な動きで騎士達に襲い掛かる。

 

「クソッ、ヤツの本体である核を潰そうにも剣も槍も弓も効かないぞ!!どうすればいいんだ!!」

 

「なら魔法だ!!火の魔法で焼き払っちまえ!!」

 

「無理だ!!この大きさのスライムを焼き払うには火力が足りない!!」

 

「じゃあ、どうするん――ッ!?た、たすけ――ゴポッ!!」

 

「デッドが殺られたぞ!!

 

「ク、クソ!!もう嫌だ!!俺は逃げる!!」

 

「お、おい、待て!!俺を置いて行くな!?」

 

絶望的な状況に雀の涙のような僅かな希望を胸に抵抗を試みた騎士達だったが、持ち得る全ての攻撃手段がスライムに効かない事を理解し更なる犠牲者が出ると騎士の誇りをかなぐり捨て、神に背く事を承知の上で生存本能の赴くまま壊走を開始。

 

死の恐怖に顔を歪ませながら、あるはずもない逃げ場を求めて逃げて行く。

 

「……」

 

しかし、逃げ始めた騎士達と打って変わって、迫り来るスライムの前に剣を構えて泰然と立ち塞がる者がいた。

 

「フッ!!」

 

一閃。上段から振り下ろされた刀身が見えない刃を放ち地面と空気を切り裂き、次いでスライムの体とその中心にあった丸い核までも断ち斬った。

 

体ごと核を真っ二つに両断されたスライムはブルブルと体を震わせた後、体の形を保つことが出来ず液状化し、最後には液化した体が地面に染み込んで行き姿を消した。

 

「……ようやく出てきましたね、アレクシア」

 

スライムを切り裂いて我が身の真横を掠めていった斬撃を放った正体を見据えたセリシアはスライムがやられてしまった事など気にした様子もなく、ニヤリと口元を三日月型に歪め嗤う。

 

「神に従わぬ神敵よ。邪神を崇める異教徒よ。我が剣の錆となるがいい」

 

「……はぁ」

 

しかし、どこか虚ろな表情でバスターブレードを正眼に構えたアレクシアの姿にセリシアは一瞬で笑みを消し去る。

 

そして顔をしかめ、重苦しいため息を吐いた。

 

「アレクシアの意識を奪い、意のままに操るとは……外道ここに極まれり、とでも言いましょうか」

 

「――私とて、このような事はしたくありませんでしたよ。しかし、全てはお前が悪いのです。お前が聖女アレクシアに嘘偽りを吹き込むから彼女の無垢な心に迷いが生じてしまった!!お前のせいで!!お前が彼女を迷わせた!!」

 

アレクシアの背後からスッと現れた大司教レベルクが鬼の形相でセリシアを睨み付けながらそう言った。

 

「嘘偽りとは心外な。私はお前達の畜生のような所業をバラしただけです」

 

「まだそのような事をぬけぬけとッ!!堕落して異教徒と化しただけでは飽きたらず、妄言で聖女の心を惑わすとは赦しがたし!!やはり、お前は生かしておけない!!聖女アレクシアよ。神の御名の下にあの異教徒の女を始末してしまいなさい!!」

 

「分かりました」

 

レベルクの言葉に無表情のまま頷いたアレクシアは一瞬でセリシアとの間合いを詰めると宝剣バスターブレードをセリシアの脳天めかげて振り下ろす。

 

「無駄ですよ」

 

しかし、アレクシアの振り下ろした刃がセリシアの体を傷付ける事は無かった。

 

「ッ!?ガッ!!」

 

いや、それどころかセリシアに斬りかかったアレクシアは凄まじい勢いで吹き飛び、瓦礫の山に突っ込んでしまう。

 

「うっ……ぐううっ、グッ!?……ギャッ!!……ウッ、ウゥ……」

 

瓦礫の山に突っ込んだアレクシアが立ち上がろうと僅かに身動ぎした直後、だめ押しとばかりに飛んできた風の刃に鎧の上から全身を打ちのめされる。

 

そして最後の最後まで主を守りきった鎧が砕け散ったのと同時にアレクシアも力尽き意識を失ってしまった。

 

「せ、聖女アレクシア!?そんなバカな!!立つのです、アレクシア!!貴女は異教徒を滅さなければ――なッ!?貴様は!!」

 

アレクシアが倒されてしまった事実に狂乱していたレベルクは、幽霊のように突然現れセリシアとアレクシアの間に割り込み、アレクシアを吹き飛ばして追撃をかけ戦闘不能に追いやった者の姿を見て目を見開いた。

 

「無事か、セリシア?」

 

「えぇ、貴女のお陰で傷1つありませんよ。アデル。それに出てくるタイミングもバッチリです」

 

「そうか」

 

生娘のような温かみのある笑みを浮かべたセリシアは光学迷彩を解いて自身の目前に現れたアデルを褒め称える。

 

しかし、険しい表情を浮かべ体からどす黒い異様なオーラを漂わせているアデルはセリシアの言葉に短く返事を返しただけで、すぐに視線を前に向けてしまう。

 

「さて、とりあえず礼でも言っておこうか。貴様らのお陰で今の俺に取って一番大事なモノが、何よりも優先するべきモノがハッキリと分かった」

 

「……な、何を言っているのですか?」

 

駒である騎士が逃げ散り、切り札である聖女が倒された今。戦闘に関して多少の心得があるとはいえ自分の力ではセリシアやアデルに勝つ事が出来ないと分かっているレベルクは、ゆっくりと後退りながら引き吊った笑いを浮かべる。

 

「あぁ、気にするな――」

 

悪鬼のような笑みを顔に張り付けたアデルはレベルクにゆっくりと歩み寄りながら言葉を続けた。

 

「――死人にはもう関係ない」

 

「グッ、ギャアアアアアア!?」

 

凄まじい踏み込みで瞬く間に間合いを詰めたアデルがレベルクと擦れ違ったかと思うと、レベルクの身体が真っ二つになり切断面から血飛沫が吹き出す。

 

「俺の大事な人を傷付けた落とし前はつけてもらうぞ」

 

聖剣に付いたレベルクの血や脂を振り払い聖剣を鞘に納めたアデルは、今まで常にあった迷いが消え失せ、代わりに強い意思が宿った瞳でレベルクを睨む。

 

カズヤを失いかけた事でカズヤに対する気持ちがハッキリと分かり、自身の心に嘘をつく事を止めたアデルは以前よりも明らかに強くなっていた。

 

「ぁ、ああ、あぁあああっ!!私の、私の体がああああ!!」

 

「あらあら」

 

切断面から内臓を溢し鮮血を垂れ流すレベルクが激痛に苦しんでいると、愉しそうな笑みを口元に潜ませたセリシアが歩み寄る。

 

「なんともまぁ……不様な姿ですね。最も貴方には良く似合っていますが」

 

「グゥウウウウ!!よくも!!よくも私を!!大司教である私を!!異教徒め!!穢れた女めぇえええ!!許さない、許さないぞぉおおお!!」

 

「……ん、上手くいったようですね」

 

半身を失っているにも関わらず、元気に罵声を浴びせてくるレベルクの姿にセリシアは満足そうに何度も頷く。

 

「き、貴様!!何を頷いて――」

 

「黙れ!!お前のような存在を私が簡単に許すとでも思ったか?カズヤ様を侮辱し我らの信仰を貶めた罪は永遠に許されることはない!!」

 

「ギャッ!!ギャアアアアアアッ!!なっ、なぜ、死ねなぃいいいい!?」

 

纏うオーラと口調を今までとはガラリと変えたセリシアが激情のままに、持っていたナイフでレベルクの心臓を抉る。

 

するとレベルクの胸からは夥しい量の血が噴き出すが、レベルクが死ぬ事はなかった。

 

「貴方の体はスライムに取り込ませました。貴方はもう私の許可なしには死ぬ事は出来ません。未来永劫苦しみなさい」

 

「ス、スライムだと!?スライムはアレクシアが――」

 

「フンッ、私の切り札であるスライムがただのスライムな訳がないでしょうに。――もういいです。口を塞ぎなさい体も元通りに、続きは本土でやります」

 

呆れたようにレベルクを鼻で笑ったセリシアがそう言うと、アレクシアに倒され地面に吸収されてしまったはずのスライムがレベルクの体の下の地面や体内から姿を現し、真っ二つになっていたレベルクの体を修復する。

 

「ウゴゴゴゴゴゴッ!!」

 

スライムに取り込まれ、その一部と化したレベルクは死ぬことを許されず、この先セリシアや長門教の信徒達の拷問を受け生き地獄を味わう事になる。

 

「……セリシア、こいつは殺さないのか?」

 

「えぇ、まぁ。まだまだ苦しめてからでないと私の気が収まりませんから」

 

「そうか」

 

格好をつけてレベルクを真っ二つにして殺そうとしたのに、それをセリシアに覆されてしまったアデルが少しだけ気落ちした顔で返事を返した。

 

「さてと。後はアレクシアですね」

 

レベルクの対処を終え、少しだけしょんぼりしているアデルを引き連れたセリシアは気を失っているままのアレクシアの元へと歩み寄る。

 

「……可哀想に。あんな男の操り人形にされるなんて。でも、もう大丈夫。以前の恩返しという訳ではありませんが貴女は私が救ってあげます」

 

セリシアの哀れみの言葉と同時にアレクシアの体は無数の“蔦”に絡み付かれる。

 

「安心して下さいね。何も心配する事はありません。次に目が覚めた時には貴女はもう皆と同じように本当の神に仕える資格を得る事が出来ているのですから」

 

意識の無いアレクシアの体がヒトクイウツボカズラの捕人器の中にドプンッと放り込まれる様を見届けたセリシアは、とてもいい(黒い)笑みを浮かべてそう呟いたのだった。

 


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