ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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最後に残ったジズの事やら、グローリア攻略戦やら、被害を被った本土の様子やら、いろいろと進めないといけないのですが……
(;´д`)

その前に伏線を回収しときます。(´∀`)

2〜3話予定



14

城塞都市バラードから少し離れた山の中腹にある寒村――蛇人族の一族が隠れ住む村はいつにもなく騒がしかった。

 

その騒がしさの原因は村の目と鼻の先にあるコーラッド平原にジズと無数の魔物が突然現れたからである。

 

「手荷物は各自1つまでだ!!それ以上の荷物はここに置いていってもらう!!」

 

「皆さん、ここから2列に並んで下さい!!」

 

「慌てないで、落ち着いて!!」

 

ヒュドラの討伐後、そのまま蛇人族の村に駐留していた第7機械化歩兵大隊、第5小隊の兵士達が司令本部の命令通りに第2防衛線まで後退する準備を整え、また刻一刻と迫り来るジズや魔物達から逃れるため部隊と共に後退(避難)する事を希望した民間人の移送を行うために、僅かな手荷物を大事そうに抱えた村人達を誘導し第4師団から避難民の移送用に送られて来た73式大型トラックの荷台に次々と乗せていく。

 

「あとは頼んだ――涼宮!!進捗具合はどうだ?」

 

全体の指揮を取っている第5小隊の隊長、霧島遥斗中尉が副官の涼宮明里小尉に問い掛けた。

 

「ハッ、撤収作業は8割方完了しましたので15分以内には出発出来るかと」

 

「15分か……少し不味いな、出来るだけ急がせろ」

 

「了解」

 

涼宮小尉がコクリと小さく頷いたのを見届けた後、遥斗は家屋の中に残っている村人が居ないかどうかを確認するため2人の部下を引き連れ村の中をくまなく見回った。

 

「……」

 

「うん?おい、そこにいるのは村長か?」

 

遥斗が部下と共に村の見回りをしていると村の外れでヒュドラが封じられていた洞窟がある方をジッと静かに眺める村長を見つけた。

 

「あぁ、これは隊長様」

 

「もう出発だぞ、何をしている」

 

「すみません、村に最後の別れを告げておりましたら時間の事をすっかり忘れておりました」

 

「……そうか。もう別れは済んだか?」

 

「はい」

 

「では行くぞ」

 

そう言って遥斗は名残惜しげに村に視線をやる村長を連れて車両が集まっている村の広場へと歩き出す。

 

「……貴方方には感謝してもしきれません」

 

村の中を歩いていると村長が小さな声でポツリ、ポツリと語りだした。

 

「我が一族をヒュドラ様の呪縛から解き放っただけでなく手厚い生活支援までして頂いて」

 

「……」

 

「これでようやく我が一族は前に進むことが出来ます」

 

「そうだな。だが先ずは無事に避難せねば」

 

「はい……」

 

「そう不安げな顔をするな。安心しろ、お前達は何が何でも守り抜く。それに以前言っていた移住先の手配もなんとかなりそうだ」

 

「ま、誠ですか!?」

 

「あぁ、本当だ」

 

「あぁぁ……本当に、本当に何と感謝すれば」

 

「なに、数週間共に暮らした仲だろ。気にするな」

 

「我々の元に来た方が貴方で本当に良かった……」

 

「って、おいおい。泣くのは後にしてくれよ」

 

言葉では言い表せないような感謝の念を抱く村長が、ぼろぼろと涙を流す姿に遥斗は笑みを浮かべて村長の肩を親しげに叩いていた。

 

「隊長、出発準備完了しました」

 

「あぁ、分かった」

 

見回りを終えた遥斗が村長と共に涼宮小尉の元に戻ると、ちょうど出発準備が整った所だった。

 

「全員乗ったな?……よし、出発!!」

 

全員が車両に乗り込んでいるのを確認したのち、誰よりも後に軽装甲機動車に乗り込んだ遥斗の号令で避難を希望した村人達(全村民)と第5小隊の全兵士を乗せた車両の一団が動き出し遥斗達は一路、第4師団が駐留している城塞都市バラードへと向かった。

 

 

「クソッ、もう始まったのか」

 

パン、パン、パン、ダダダダダッとけたたましい銃声が遠くで鳴り響く。

 

またバラードの後方20キロの位置に展開中の155mm榴弾砲や99式自走155mm榴弾砲、203mm自走榴弾砲等の重砲群及びMLRSから発射された03式155mm榴弾砲用多目的弾、203mm榴弾、M26ロケット弾が飛翔音を唸らせ飛来し着弾。

 

ドガン!!と炸裂した爆発音が遅れてこだまする。

 

蛇人族の一族と共に村を後にした遥斗達が何事もなく無事にバラードに入り、第4師団の司令部が置かれている城に辿り着いたのと時を同じくして破壊と殺戮を繰り返す魔物の一群がバラードに到達。

 

第4師団の必死の抵抗も虚しく辺り一面を埋め尽くす程の物量を頼り魔物達がバラードの城門を破壊し突破した。

 

そのため、少なくない数の魔物が都市内部に侵入し各所で第4師団VS魔物の激しい攻防戦が始まっていた。

 

「隊長、急ぎましょう」

 

「そうだな」

 

第4師団の殿を務める部隊が時間を稼ぐべく慌ただしく駆け回っているのを横目に遥斗と涼宮小尉は師団本部にいるはずの上官の元へ急ぐ。

 

「今すぐ二個小隊を街の右翼側に回せ、モタモタしていると防衛線を突破されて後方に浸透されるぞ!!」

 

「ハッ、了解しました!!」

 

「失礼します、古鷹中佐。霧島遥斗以下第5小隊、只今帰還致しました」

 

「遥斗!!無事だ――ゴホン、霧島中尉か。無事で何より」

 

ランドセルを背負っていたとしても不思議ではない背格好に不似合いな軍服を着て慌ただしく指示を出す古鷹中佐は遥斗の無事な姿を見るなり喜色満面の顔になったが、ハッと我に返り咳払いをして平静を装う。

 

「……中佐、戦況はどうなっているのですか?」

 

……うん。小学生の女の子が父親とか兄貴が家に帰って来て喜んでいる姿にしか見えんな。

 

切迫した状況のため遥斗は古鷹中佐の取り繕う姿に突っ込む事はせず(内心では突っ込んだが)戦況の推移だけを聞く。

「あまりよろしくない。いや……最悪と言っていいだろうな」

 

眉間にシワを寄せて苦々しい表情で古鷹中佐は吐き捨てるように言った。

 

「敵の進攻速度がこちらの予想を上回ったために部隊の後退も避難を希望した民間人の移送も間に合わなかった。今は遅滞戦術を使って部隊が後退する時間を稼いでいるが、いつまで持つか……というところだ」

 

「分かりました。それで……我々第5小隊は何をすれば?」

 

「前線付近にいる民間人を回収してくれ、魔物とやりやっている部隊では民間人の後送に人手を裂けんからな」

 

「了解しました。直ちに取り掛かります」

 

「頼んだぞ。……あぁ、言い忘れる所だった。最悪でもあと2時間でバラードは放棄される手筈になっているからなくれぐれも忘れるなよ?あと攻めてきている魔物が妙に統率が取れているという報告もある十分気を付けろ」

 

「「ハッ」」

 

気を抜くな。と釘を刺す古鷹中佐に遥斗と涼宮少尉は敬礼を返し師団本部を後にした。

 

 

「館林、ちょっと来い」

 

「ハッ、なんでありますか?」

 

第5小隊の元に戻り蛇人族の一族を先に後方へ送る事と民間人の回収任務に就くという旨を部下に伝えた後、遥斗は1人の部下をコッソリと呼びつけた。

 

「いいか、村人を後方の拠点に連れていったら親衛隊の兵士を見付けて――出来るなら将校クラスが望ましいが……で、霧島がよろしくと言っていた。と言ってこの紙を渡せ」

 

「? ……はぁ。了解しました」

 

「頼んだぞ」

 

「あっ、隊長!!ちょっと待ってください!!」

 

紙を手渡された兵士が踵を返そうとしていた遥斗を呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「こんな機会でもないと聞けないので思いきって聞ききますが……隊長は何者なのですか?」

 

「……」

 

「ずっと不思議だったんですよ、やけにコネがあったり親衛隊に顔が効いたりと……」

 

……まぁ、あんだけいろいろとやれば勘付かれるか。

 

静かに返事を待つ部下を見てやけっぱちのように頭をがしがしと掻き、ため息を吐いたあと遥斗は部下の質問に答えた。

 

「……まぁ、どのみちバレただろうしいいか。だがな、まだ誰にも言うなよ?」

 

「はい」

 

「……俺は第1期の箔付きで『目』の所属だ」

 

「………………………………それ、マジですか?」

 

意味が理解出来ていない者には全くの意味不明だが、分かる者にとっては驚愕の事実を遥斗は口にした。

 

「おおマジだよ」

 

「だ、第1期って事は閣下に一番最初に召喚された中隊メンバーで、しかも箔付きと言えば砦での戦闘を共にくぐり抜けた経験から閣下の信用が特に厚い連中で、全員パラベラムの上級将校クラスの要人になってるはずじゃあ……それに『目』は親衛隊が作ったとか作らなかったとかの噂でしか存在していない内偵機関のはず……でしょ?」

 

「長々と説明ご苦労。それであってる」

 

「……えっと、ちなみに本当の階級は?」

 

「大佐だ」

 

「あの……隊長?今の話聞かなかったことにしてもいいですか?なんか……万が一この話を漏らしたら不慮の事故で死にそうな気が」

 

「……」

 

「……えっ、なんで無言なんですか?えっ、マジでヤバいんですか!?」

 

「くれぐれも不慮の事故で死なないようにしろよ。じゃ、さっきの話は頼んだぞ」

 

「ちょ、た、隊長!?ちょっと待ってください!!お願いします!!隊長……た、隊長ォォーー!!」

 

必死にすがり付いてくる部下をサッと振り払った遥斗は何気無い顔で俺はもう知らないと言わんばかりに歩き去ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

最低限の護衛をつけ先に蛇人族の一族を後方へ送る際に一悶着あったものの、遥斗の一喝で一悶着を片付けると第5小隊の兵士達はすぐさま任務につき前線付近に取り残された民間人を片っ端から回収していった。

 

「隊長も不器用だよな……」

 

前線付近から回収されて来た民間人を乗せる73式大型トラックを護衛している第5小隊の兵士がポツリと呟く。

 

「あぁ、恩を返すために一緒に戦いたいって言ってた奴等に『亜人の貴様らと我々が一緒に戦えるか』って、思ってもいない事を言ってトラックに押し込んでたからな」

 

「まぁ、場を収めるのには効果的だったが隊長が報われん」

 

「そうだな……けど分かる奴は分かるだろう」

 

「そうだといいがな」

 

今はこの場にはいない不器用で心優しい隊長の事を考え2人の兵士は思いを馳せていた。

 

 

「ハックション!!」

 

……誰かが俺の噂をしているのか?

 

いや、そんなことよりも今は“コレ”をどうするかだな。

 

一方そのころ。ひっきりなしに銃声が響く前線で逃げ遅れた民間人を回収していた遥斗は厄介な事に巻き込まれていた。

 

「まだ皆が教会にいるのよ!!離して、離して!!」

 

「コ、コラ、暴れるな!!君の言っている教会は既に戦闘エリアに入っている!!今から行くのはもう無理だ!!」

 

「頼むから大人しくしてくれ!!」

 

遥斗の第5小隊とは別の部隊の兵士達が既に戦闘エリアの中に入ってしまった教会に取り残された知り合いを助けに行こうと暴れている少女を押さえ付けていた。

 

「うるさい……うるさい、うるさい、うるさーーい!!いいから離せって言ってるでしょ!!この変態共!!」

 

「ホッ!?」

 

兵士達の拘束から逃れようと赤い鎧に身を包んだ少女は目の前にいた兵士の股間を思いっきり蹴りあげた。

 

「ホォォォ――……だが効かんッ!!」

 

「なっ!?」

 

男の急所であるはずの股間を蹴りあげられた兵士が崩れ落ちることなく再び押さえ付けようと掴み掛かって来たことに少女は目を剥いた。

 

「股間防御システムのPUGとPOGを装備した俺に死角は――ゲフッ!?」

 

イランやアフガニスタン等で過激派武装組織が敷設したIED(即製爆発物)による被害を受け、生殖器や肛門といったデリケートな部分や下半身に重度の外傷を負う兵士が増加したことにより開発された2種類の下半身用ボディアーマーを装着していた兵士は蹴りのダメージを受けておらず驚く少女に対し勝ち誇った笑みを浮かべたが次の瞬間、少女の右ストレートを頬に食らい沈黙した。

 

「……涼宮、ティナ。捕えろ」

 

「ハッ!!」

 

「了解であります!!」

 

「キャ!?何よアンタ達!!は〜な〜せ〜!!わぁ!!」

 

流石に見ていられなくなった遥斗の指示で涼宮少尉とヒュドラの討伐時に戦死した兵の補充として新たに第5小隊に加わった犬人族のティナ・フェルメール一等兵が教会に向かって走り出そうとした少女を一瞬で拘束、無害化した。

 

「アイタタタ……すいません、中尉殿。ご迷惑をお掛けしました」

 

「構わん。この少女はこちらで面倒を見ておくから、お前達は自分の任務に戻ってくれ」

 

「「「ハッ!!」」」

 

少女に手こずっていた兵士を任務に戻すと遥斗は少女に向き直る。

 

「お前には悪いが今は非常時だ、こちらの指示に従ってもらうぞ。たとえ無理やりにでもな」

 

「うぐぐぐ……」

 

涼宮少尉に足を掛けられ姿勢を崩した所でフェルメール一等兵に素早く腕を極められ、地面に押し倒された少女は身動き1つ出来ない状況でありながら親の仇を見るような目で遥斗を睨む。

 

「ティナ、そいつをカーゴ(73式大型トラック)に連れていけ」

 

「了解したであります!!」

 

少女を強引に立たせたフェルメール一等兵は安産型のお尻から伸びたモサモサの尻尾を飼い主に褒められた子犬のようにブンブンと振りつつ敬礼をして遥斗に答える。

 

「キャッ!?ちょ、ちょっと待って!!」

 

犬っ娘のフェルメール一等兵に小脇に抱えられ連行されそうになった少女が瞳に涙を浮かべて遥斗を呼び止めた。

 

「……なんだ?」

 

「さっきから言っているように教会に私の知り合いが大勢取り残されているの!!あなた達なら助け出せるでしょ!?お願い力を貸して!!」

 

「……涼宮、教会までの距離は?」

 

少女の話を聞いた遥斗はチラリと涼宮少尉に視線をやり問うた。

 

「確か……3ブロックほど先にあったかと」

 

「……無理だな。もう手遅れだ」

 

涼宮少尉の答えに遥斗は首を横に振る。

 

「ッ!?そんな!!行ってみなくちゃ分からないじゃない!!」

 

「魔物の群れに囲まれて踏破出来る距離じゃない。諦めろ」

 

「だったら……だったら私だけでいいから行かせてよ!!」

 

迷惑はかけないから。と少女は涙ながらに訴える。

 

「お前が行くと前線で戦っている兵士が困るんだ。ティナ、もういいから連れていけ」

 

しかし、少女が前線に向かえばそれだけで他の部隊の邪魔になることが分かっている遥斗が頷く事は無かった。

 

「ハッ」

 

「あっ、まだ話は……離しなさい!!こら!!待って――」

 

フェルメール一等兵の小脇に抱えられた状態で少女は遥斗の視界から消えて行った。

 

「まったく」

 

気持ちは分からんでもないが……。

 

まぁ、諦めてもらうしかない。

 

これで良かったんだ。

 

少女に同情的な気持ちもあった遥斗だったが、自分の判断は間違っていないと自分で自分を納得させていた。

 

しかし後に遥斗は自分の下した判断を悔いる事になる。

 

 




特にやりたかったネタがかなり雑な扱いに……
・゜・(つД`)・゜・

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