ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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ファンタジー臭が漂う戦闘……になったかな?
(;´д`)





「墜落現場まで後どのくらい残ってるんだ!?」

 

「残り3ブロックです!!」

 

「遠いなぁ、コンチクショウ!!」

 

カービィ大尉の命令でジークは20人の兵士を従え、何処からともなくウジャウジャと湧いてくる敵兵を撃ち殺しつつ砂塵が舞うグローリアの市街地を徒歩で移動していた。

 

移動している目的はもちろん、墜落したスイーパー06の乗員の救出である。

 

ちなみにジーク達が移動手段であるはずのハンヴィーを使っていないのは敵の目を引き付けないようにするためと、墜落現場まで通じる道が細くてハンヴィーが通れなかったせいである。

 

最も遠回りになるルートを通ればハンヴィーでも墜落現場には行けたが、それでは到着するまでに時間が掛かりすぎた。

 

『ホークアイ01よりブレッド隊に告ぐ。スイーパー06の墜落現場に多数の敵兵及び民間人が押し寄せている。現在、スイーパー02より降下したラッシュ・ディガート軍曹とテイーリー・ゴーヘン軍曹が交戦中だが多勢に無勢だ。急いでくれ』

 

「っ、了解した!!」

 

こっちはこれでも精一杯だっつーの!!

 

ホークアイ01の報告に投げやりに答えたジークは苦々しい思いを抱きながら出来る限りの早さで移動を続ける。

 

「ちょっと待て……止まれ」

 

曲がり角を目前にして嫌な胸騒ぎを感じたジークは声を上げ、左手を振り上げると後続する兵士に停止を命じた。

 

「…………っ!!クソッ!!撃ってきやがった!!」

 

ジークが曲がり角からゆっくりと顔を覗かせた瞬間、無数の銃弾が曲がり角の壁に着弾する。

 

「こっっの……こっちは急いでいるんだよっ!!」

 

ジークが反撃のためにSCAR-Hだけを曲がり角から突き出し引き金を引き絞ると待ち伏せていた敵兵の悲鳴が沸き起こった。

 

「手榴弾!!」

 

「ほっ」

 

「せいっ」

 

ジークの指示が飛ぶと兵士達がすぐさまMK3A2攻撃手榴弾を敵に向かって放り投げた。

 

直後、曲がり角の向こうでMK3A2攻撃手榴弾が爆発し一気に敵兵を凪ぎ払う。

 

「……。よし、前進だ!!」

 

再び曲がり角から顔を出し敵の殲滅を確認したジークが進み始めると部下達もその後に続く。

 

「RPGー!!」

 

しかしジーク達が歩き出した途端、何かに気が付いた兵士が大声で叫んだ。

 

兵士の声で皆が反射的に伏せた瞬間、物陰に潜んでいた魔法使いが放った火球がジーク達の近くに着弾し爆発。

 

衝撃波と爆風がジーク達の体に傷を付ける。

 

「ゲホッ!!何がRPGだ、火の玉じゃないか!!」

 

「意味は通じるからいいじゃないですか!!」

 

「――……えぇい、クソ。何でもいいから進むぞ!!」

 

「分隊長、さっきの魔法使いがいません!!追いかけますか?」

 

「ほっとけ、行くぞ!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

紛らわしい言葉を発した部下とのやり取りを強引に終わらせ、そして攻撃後すぐに姿を消した魔法使いを追わずに放置するとジークは墜落現場に向かって進む。

 

 

「見えた、あれだ!!」

 

そうして敵との交戦を続けながら敵地の真っ只中を進んでいたジーク達だったがようやく墜落現場に到着。

 

無数の敵兵と武装した民間人達に包囲されている多勢に無勢の状況で必死に抵抗を続ける味方兵士の姿を視界に捉えた。

 

ちっ……見通しがいい分、遮蔽物が少ないから危ないな。

 

パーク一等兵を乗せたブラックホークが墜落した現場は建設途中の家屋が建ち並ぶ開けた場所であった。

 

「カーンズ!!お前に10人預けるから墜落現場の東側を守れ!!」

 

「了解です!!行くぞ、お前ら!!」

 

ジークは部下の1人に声をかけ、部隊を半分に分けると墜落現場の確保に移る。

 

「お前らはここで敵に牽制射撃をかけろ、俺はブラックホークの機内を見てくる。あぁ、ディスクお前は一緒に来い」

 

「「「「了解」」」」

 

敵弾が飛び交う中、ジークと衛生兵であるディスク兵長はブラックホークに向かって走る。

 

「レンジャーだ、撃つな」

 

「おぉ、助かった。後少しで弾切れだったんだ」

 

「ふぅ……間に合ってくれたか。ところで何人連れてきた?」

 

たった2人で今まで戦っていたデルタの隊員はジークの姿を見るなり安堵の息を漏らした。

 

「20人だけだ。後からハンヴィーに乗った別動隊が迎えに来る予定になっている」

 

横倒しになっているブラックホークの側でM14SEクレイジーホースを持つラッシュ・ディガート軍曹とSPR Mk12を持つテイーリー・ゴーヘン軍曹に合流したジークは会話を続けながらも時折、敵に向かって6.8×43mm SPC弾をばらまく。

 

「それで、生存者は?」

 

「1人だけだ。他は戦死したよ」

 

ゴーヘン軍曹にそう告げられたジークは横倒しになっているブラックホークの機内を覗き込んだ。

 

「うっ…っつ…軍……曹?」

 

「っ!?……生存者ってお前だったのかパーク。生きてて何よりだ」

 

砂まみれになった機内で力なく横たわるパーク一等兵を目にしたジークは驚きに目を見開きそう言った。

 

「ハハハッ、なんとか……無事でした……でも足の感覚が……無いです」

 

「……そうか……分かった。そこで大人しくしてろよ。――ディスクあとは任せた」

 

「了解」

 

衛生兵のディスク兵長がブラックホークの機内に潜り込むのを見届けた後、ジークはデルタの2人を連れて部下の元へ戻った。

 

「ディスク、パークの容態は?」

 

『ちょっと待って下さい……えぇっと今すぐに命の危険はありませんが、挟まれている足が問題です。大型の工具がないと救出は無理でしょう』

 

「了解した。――ということは車両部隊が来るのを待つしかないか……」

 

ブラックホークから離れたジークが遮蔽物に隠れながらディスク兵長との通信を終えると、今度はカーンズ伍長からの通信が入る。

 

『こちらカーンズ。軍曹、敵が引いていき――うん?南側にある道から敵……老人が1人近付いて来ます』

 

有利な状況だったにも関わらず引いていった敵兵の代わりに新たな敵が出現しジーク達の前にその姿を現した。

 

「……あれか……あれは民間人じゃないな、鎧を身に付けて杖を握っているし敵だろ。しかし……嫌な予感がする。総員攻撃準備、準備が出来次第、一斉に攻撃するぞ」

 

『『『『了解』』』』

 

150メートル程離れた先でマントをはためかせ、隠れる素振りもなく堂々と歩いてくる敵を視界に捉えたジークは先手を打つべく部下達に攻撃命令を出した。

 

「待て、俺が1発で殺る」

 

しかしジークの部下達が攻撃を仕掛けるより先にディガート軍曹がそう言ってM14SEを構え、ピカティニーレールに取り付けたスコープを覗き込む。

 

そしてスコープの中に写る十字線のど真ん中に敵の姿を捉えた瞬間、ディガート軍曹がM14SEの引き金を引いた。

 

バンッと銃声が響き7.62x51mm NATO弾が銃口から飛び出す。

 

殺った!!

 

直撃コースで飛んでいく弾丸にディガート軍曹は確かな手応えを感じていた。

 

だが音速で飛翔する7.62x51mm NATO弾がターゲットの額を捉える寸前、なんと砂の壁が現れ弾丸を防いでしまった。

 

「冗談だろ……おいおい、ありゃあ厄介な相手だぞ」

 

「嫌な予感的中……」

 

必殺の一撃を防がれたディガート軍曹は敵が一筋縄では倒せない難敵だと知り眉をひそめ。

 

薄々、敵が厄介な相手だと悟っていたジークは肩を落とした。

 

「我が名はテレイス・ダビデ伯爵!!このグローリアを守る最強の魔法騎士にして――」

 

「撃て」

 

年老いた老人――ダビデ伯爵の口上を遮り、ジーク達の一斉攻撃が始まった。

 

「ぬぅ!!我が口上を遮るとはなんたる無粋な輩どもか!!しかし……なんとも軽い攻撃よのぅ。これでは我には永遠に勝てんぞ」

 

一斉攻撃が始まると同時に前面にしか展開していなかった砂の壁を変形させ全身を守れるように球体に造り変えたダビデ伯爵はジーク達の攻撃に呆れたように言葉を漏らし余裕綽々で自慢の白いアゴヒゲを撫でていた。

 

「……ちっ」

 

銃弾は全てあの砂の壁に阻まれてるな。

 

威力が足りないか……まぁロケットランチャーとか何か対戦車用の兵器があれば簡単に倒せるんだろうが……。

 

生憎手持ちがない、どうすれば。

 

ジークがダビデ伯爵をどうすれば殺せるのかと考えを巡らせていた時だった。

 

「うむ、我もそろそろやるかのう」

 

一方的な攻撃を浴びていることに飽きたダビデ伯爵が動き出す。

 

「――ダギウス。サンドドール」

 

詠唱を終え、最後にそう呟いたダビデ伯爵が杖を振ると帝国騎士を模した数十の砂人形が姿を現わす。

 

「行けぃ、我が最強の僕達よ。魔法も使えぬ劣等民族を皆殺しにせよ!!」

 

ダビデ伯爵からの命令が下ると砂人形達が一斉に動き出した。

 

「ターゲット変更!!砂人形を撃て!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

動き出した砂人形に対しジーク達が一斉に銃弾を浴びせるものの、生物ではなくダビデ伯爵の魔法で操られているだけの砂の塊にはまるで効果がなかった。

 

あっ……これマズイ。

 

銃弾の効かない、砂で出来た敵を前にジークの額から汗が流れ落ちる。

 

クソッ、本来なら一時後退する所だが、ディスクとパークを見捨てるわけにもいかないし……。

 

支援攻撃で潰してもらうか?

 

いや、しかし……航空支援を要請しても来るまでに5分は掛かる。

 

「ブレッド軍曹!!どうします!?」

 

「隊長!!」

 

予期せぬ非常事態に慌てた兵士達がすがるような目でジークを見つめる。

 

「……一か八かだが、考えがある。2人も手伝ってくれないか」

 

「あぁ、いいぞ」

 

「考えがあるなら早く言ってくれ」

 

デルタの隊員であるディガート軍曹とゴーヘン軍曹にも協力を依頼したジークは、念のため航空支援を要請した後で自身の思い描いた決死の作戦を決行することにした。

 

 

「むっ、誰か出てきたな……。ほう……無粋な鉄砲を捨てあのような小さき刃で我に挑むか。ワハハハッ、良かろう相手になってやろうではないか!!」

 

たった一人で姿を現し宣戦布告代わりにコンバットナイフの刃先を向けてきたジークを透視が出来るようになる魔導具で砂の壁の中から視認したダビデ伯爵は高笑いを上げ、杖を構える。

 

「さぁ来るがよい、我が僕が貴様を屠ってくれるわ!!」

 

ダビデ伯爵の言葉を合図にしたかのようにジークが全速力で駆け出す。

 

なに、まさか我が僕達を無視するつもりか?笑止!!

 

我の魔法を舐めるな!!

 

砂人形の群れを無視してジークが突っ込んでくると考えたダビデ伯爵は散らばっていた砂人形をジークの進路上に集中させる。

 

だが、それこそがジークの狙いだった。

 

砂人形がジークの進路上に集まった瞬間、それを待っていたジークの部下達がFN40GL(MK13)グレネードランチャーで40mmグレネード弾を砂人形に叩き込む。

 

「しまった!?これが狙いか!!」

 

40mmグレネード弾が着弾し爆発、砂人形を跡形もなく吹き飛ばしたのを見てダビデ伯爵は己の失策を悟る。

 

「だが、砂人形などいくらでも造り出せ――ぬ、どこへ消えた?」

 

消し飛んだ砂人形の代わりをダビデ伯爵が造り出そうとした時、ジークの姿を見失っている事に気が付いた。

 

む……困ったぞ。この魔導具の透視効果が発揮できるのは目の前の障害物だけ。

 

今のように砂の壁の外で砂埃が巻き上がっているのでは敵の姿が見えぬ。

 

「うん?なんだ、この煙は!?」

 

飛んで来る銃弾を砂の壁で防ぎつつ意味もなく目を凝らしジークの姿を探すダビデ伯爵だったが、いつの間にか自身の近くに投げつけられていたM18発煙手榴弾によって視界を更に遮られる。

 

「む、視界を完全に封じたこの隙に接近するつもりか。甘いわ!!グルア、ナギ、セイマ――」

 

ダビデ伯爵が新たな技を繰り出そうと詠唱に入った時だった。

 

TH3焼夷手榴弾とMK3A2攻撃手榴弾がダビデ伯爵に向けて投げられTH3焼夷手榴弾が砂の壁の上で、MK3A2攻撃手榴弾が砂の壁の少し手前で炸裂した。

ふん、この程度の威力で我が守りを崩せる――なっ!?

 

銃弾や爆風を防ぐ砂の壁――自分の魔法に絶対的な自信があったダビデ伯爵は砂の壁がまるでマグマを浴びせられたかのように融解していくのを見て絶句していた。

 

フン、鉄骨すら溶かす事が出来るTH3焼夷手榴弾だぞ?お前の砂の壁なんか簡単に溶かせるんだよ。

 

それよりいいのか?

 

お前と“我々”の視界を遮る煙幕はMK3A2攻撃手榴弾の爆発で吹き飛んでいるぞ。

 

潜んでいる物陰からダビデ伯爵を伺うジークがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「何故……だ?どうやって……何故ッ――ッ!?」

 

予想外の出来事に思考が停止し思わず疑問を溢したダビデ伯爵への返答は飛来した2発の7.62x51mm NATO弾だった。

 

「ゴフッ、そんな……バカな……この我が……劣等民族ごときに……わ…れ…が…」

 

ディガート軍曹とゴーヘン軍曹の狙撃によって胸を撃ち抜かれたダビデ伯爵は失意のまま地面に崩れ落ちた。

 

「目標に命中、殺ったぞ」

 

「全く……ヒヤヒヤさせる奴だ」

 

厄介な敵を駆逐したジーク達の間にホッとした空気が流れた。

 

しかし、それも束の間。

 

「――ゲマ、ベリテ。我を舐めるな……ゴハッ!!はぁはぁ、サンド…サンド……ニードルッ!!」

 

「なにっ!?」

 

「「マズイッ!!」」

 

倒れ伏していたダビデ伯爵が血ヘドを吐きながらも最後の力を振り絞り立ち上がると大技を繰り出した。

 

血に濡れた杖が振られた瞬間、ダビデ伯爵を中心にズゾゾゾッと円錐形の砂のトゲが地面から伸び。

 

ダビデ伯爵の執念が乗り移ったかのように砂のトゲが触れる物全てを串刺しにしていく。

 

「カハッ!!む、無念……」

 

だが、残りの力を大技に全て注ぎ込み力尽きたダビデ伯爵が息絶えると同時に砂のトゲは形を保てなくなりサラサラと崩れ落ちた。

 

「ハ、ハハハ……あっぶねぇ……」

 

あと2秒、あのジジイが生きていたら串刺しにされて死んでたな、俺。

 

ダビデ伯爵が力尽きたおかげで九死に一生を得たジークは頬をかすった砂のトゲで出来た傷を押さえていた。

 

「軍曹!!何処ですか!?軍曹!!」

 

「こっちだ」

 

「軍曹!!ご無事で!?」

 

「あぁ、何とかな……」

 

駆け寄って来た部下に手を上げて答えたジークは預けておいたSCAR-Hを受け取り隠れていた物陰を後にした。

 

 

「……おいおい、終わった直後にご到着かよ」

 

ダビデ伯爵を倒したジーク達が敵の再来に備え、簡易の陣地を構築しようと動き出すと同時に迂回路を通って来た数台のハンヴィーが墜落現場に現れた。

 

「ジーク、大丈夫か!?」

 

ハンヴィーから降りてきたワックス軍曹がジークに駆け寄る。

 

「あぁ、何とかな」

 

「よかった……。ところでジーク、少し不味いことになった」

 

ジークが無事だった事に安堵したワックス軍曹だったが、不意に表情を暗くする。

 

「どうした?」

 

大型の工具を担いだ兵士達が墜落したブラックホークに向かい、負傷し閉じ込められているパーク一等兵の救助に取りかかったのを眺めつつジークがワックス軍曹に問うた。

 

「実はな、後から上陸する手筈になっていた海兵隊が来なくなった。いや、それどころか遠征艦隊が一時的にグローリアから離れる」

 

「は、はぁ!?冗談だろ!!どうして!!」

 

驚くべき知らせにジークはワックス軍曹の襟を掴み締め上げる。

 

「ぐえっ!?お、落ち着け…この…バカ!!ぐるじいっ!!」

 

「はっ!!す、すまん」

 

「ゴホッ、ゴホッ!!ったく。話は最後まで聞けっつーの」

 

「悪かったからさっさと言え!!」

 

「……逆ギレかよ、まぁいい。実はな、遠征艦隊から100キロ離れた海域に未確認巨大生物が出現し猛スピードで遠征艦隊に向かって接近しているらしい。そのせいで海兵隊の上陸は一時延期、上陸再開は未確認巨大生物を始末してからになるそうだ」

 

「嘘だろ……」

 

「まだだ、それだけじゃない。パラベラム本土から250キロ離れた空域やコーラッド平原にも未確認巨大生物が出現したらしい、上の連中はそのせいで大慌てだよ」

 

「これから……どうなるんだ?」

 

「……分からん」

 

ジークとワックス軍曹は不安そうに空を見上げた。

 

こうしてグローリア攻略戦は混迷の度合いを増し始めた。


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