ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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パラベラムの強力な支援の元、復興が進み戦火の傷痕がキレイさっぱり消えたどころかパラベラムとの一大交易拠点になったため、かつてないほどに栄え繁栄を謳歌しているカレンの本拠地である城塞都市。

 

市街地では住民の多くが朗らかに笑い平穏な暮らしを享受し、商業エリアでは金の匂いに釣られてやって来た商魂逞しい商人達が城塞都市でしか入手出来ないパラベラムからの輸出品を1つでも多く手に入れようと競い合う。

 

そんな極々平穏な空気が漂う城下町とうってかわって城塞都市の最重要区画、カレンの居城には不穏な空気が満ちていた。

 

城付きのメイド達は世話しなく動き回り、警備兵達もいつもと違い険しい顔でピリピリとしたオーラを放っている。

 

「うぅ……」

 

そしてこの城塞都市を統括する立場であるカレン・ロートレック公爵は、といえば自室で頭を抱えて唸っていた。

 

「カレン様、本当になさるおつもりですか?悩むぐらいなら――」

 

「っ、う、煩いわね!!あんな小む――ひ、姫様に負けていられないなじゃない!!」

 

今だって出遅れているのにっ……このまま手をこまねいていたらカズヤの側での私の居場所はなくなってしまうわ。

 

カレンはマリアの助言に躍起になって言葉を返した。

 

とは言え……どうしたらいいのかしら……やっぱり……あれを“また”やるしか……道は……。

 

イリスがカズヤのものになったという知らせを聞き、出遅れた事を知り焦るカレンはありとあらゆるコネを使い多方面に手を回すことで、ちょうどタイミングよく開催が予定されていた城塞都市の復興記念パーティーにカズヤを1人で(ここが重要)招くことに成功した。

 

そしてそのパーティーの最中、もしくはパーティーの終わった後でカズヤの心を射止めるべく乾坤一擲の大計画を行おうとしていたのだが、直前になってその決意が羞恥心によって揺らいでしまい迷っているのであった。

 

「はぁ……カレン様。悩むのは構いませんが、もうすぐ総統閣下がご到着致しますよ」

 

堂々巡りの思考を繰り返すカレンに呆れたように溜め息を吐きマリアが時間切れを知らせる。

 

「えっ?何を言っているのマリア……まだ時間は――嘘っ!?もうこんな時間なのっ!?」

 

時間を忘れ悩んでいたカレンはマリアによって現実に引き戻された。

 

「なんで言ってくれなかったのよ!!マリア!!」

 

「はぁ……先程から何度も声を掛けていましたよ」

 

メイドの手を借りて急いで身支度を整え出したカレンが焦りのあまり涙目で抗議の声を上げる。

 

「うん?……お越しになったようですね」

 

マリアがカレンの抗議を聞き流し城の窓から外に目をやり、夕焼けの空を舞うVH-60Nプレジデントホークの存在に気が付いた。

 

「っ、貴女達、早くなさい!!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

護衛のAH-64DアパッチロングボウとMi-24/35MkIIIスーパーハインドに囲まれ、更にその上空ではF-22ラプターとF-35(B)ライトニングIIが飛んでいるという物々しい警護態勢の下、城に接近してくるプレジデントホークにカレンは更に慌てながらメイドを急かし身支度を整える。

 

「……それで、カレン様。例の計画はどうします?」

 

「やるわ!!もうこうなったらヤケよ!!」

 

「……承知致しました。ではそのように」

 

……まったくカズヤ殿と出会われてからいい意味で変わったわね、カレン。

 

以前は笑うことも滅多になくて『氷の公爵』とも揶揄されていたのに今は……よく笑うし何より生き生きとしてるわ。

 

「よし、行ってくるわ!!」

 

覚悟を決めカズヤを出迎えるために部屋を飛び出して行ったカレンの後ろ姿を眺めつつマリアはカレンの変化を喜びこっそりと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

復興作業の際、ついでとばかりに城内に作られたヘリポートに着陸したプレジデントホークからカズヤは城塞都市に降り立った。

 

……最近、護衛が増えたな。

 

上空を旋回しているF-22とF-35に手を振って帰投を促し、周りに控える親衛隊の隊員に待機を命じながらカズヤは墜落の、暗殺未遂の一件からこの方増えた護衛になんともいえないため息をついていた。

 

「まっ、待っていたわよカズヤ……っ」

 

そこへゼィゼィと荒い息を吐きながらなんとか体面を取り繕うカレンが現れた。

 

ま、間に合ったわ……ギリギリね……。

 

客人を待たせる訳には――計画が始まる前から失点を重ね躓く訳にはいかないという理由で必死に走って来たカレンの願いは通じ、カズヤが機体から降りる寸前にヘリポートに到着し出迎える事が出来たことにカレンはホッと胸を撫で下ろす。

 

「……悪いな、待たせたか?」

 

セットされた髪や服を乱さぬように走って来たのであろう、必死さの滲み出るカレンにカズヤは一瞬、驚くが次の瞬間には何事もなかったようにカレンに笑顔を向けた。

 

「っ、はぁ……。フフッ言うほど待っていないわ。それより立ち話もなんだし行きましょう、こっちよ」

 

息を整えたカレンはカズヤの笑みにとびきりの笑顔で答え、カズヤの手を引くとパーティー会場となる部屋に向かった。

 

 

きらびやかなドレスを纏った貴族や豪商の娘達がパーティー会場を華やかに彩り、そして少女達の母親である貴婦人達が魅惑の色香を振り撒く。

 

男達はそれを笑顔で眺めながら、この絶好のチャンスを逃すまいと水面下での戦いを繰り広げていた。

 

「――そうね、バリック子爵」

 

これは……マズイわね……。

 

「えぇ、公爵様にそう言って頂けると私共も安心です」

 

表向き冷静を保っているカレンは蝿のように周りに集まって来た貴族や豪商達を相手にしながらも内心はひどく焦っていた。

 

何故なら少し離れた場所で大勢の見目麗しい少女や大人の色気を存分に漂わせる貴婦人に周りを取り囲まれ、少女の熱い眼差しや貴婦人の誘うような流し目を集めているカズヤの姿があったからだ。

 

「カズヤ様は異世界から来られたのですよね?私、異世界の事に興味あるんです。良ければお話しをお聞かせ願えませんか?」

 

「え、あぁ。いいよ」

 

「本当ですか!?嬉しいです!!」

 

「わ、わたくしも聞きたいですわ!!」

 

「私もです!!」

 

その穢れ無き無垢な体と若さを武器に擦り寄って来る少女の押しに負けたカズヤがついつい頷いてしまうと周りにいた他の少女達が負けじと声を上げる。

 

そしてまだ青い果実の年齢ながら十分に食べ頃な体をしている少女達の押しにカズヤがタジタジになっていると誰かに袖をクイックイッと引っ張られた。

 

「あの、閣下?もしよろしければ……今夜、私と共にもっとたくさん色々と“お話し”致しませんか?」

 

カズヤが袖を引っ張られた事に気が付き、そちらを向くと口元を扇で隠し潤んだ瞳で流し目を送っている貴婦人と目が合った。

 

「え、あの……?」

 

オブラートに包んではいるが、明らかに夜のお誘いを受けてカズヤは戸惑う。

 

「あら、ミス・マルディア?抜け駆けはよろしくないですわよ。閣下、わたくしも貴方様のお話しが聞きたいですわ……そう例えば、姫殿下が泣いて許しを乞うまでお腹に子種を注ぎ込んだ事……とか、フフフッ」

 

と、そこへニヤニヤと笑いながら別の貴婦人が割り込んで来た。

 

何で知ってる!?

 

カズヤは女性達の間での――社交界での情報伝達の速さに唖然としていた。

 

くっ、このままでは……しょうがないわ。計画を早めましょう。

 

「ちょっと失礼」

 

「え、あ、ロートレック公爵?」

 

パーティーを開いた手前、カズヤとずっと一緒に居られるとは端から思っていなかったが、このままではカズヤを他の雌に持っていかれると危惧したカレンは周りを囲んでいた貴族を押し退けパーティー会場を後にした。

 

「計画を始めるわよ、マリア。私は部屋で準備をするからカズヤを必ず連れてきて」

 

会場を出るとすぐに寄ってきたマリアにカレンは覚悟を決めた顔で告げる。

 

「ハッ、承知しました」

 

マリアも真剣な顔で頷くとカズヤをパーティー会場から連れ出すべく、人で溢れるパーティー会場に戻って行く。

 

さぁ、やるわよカレン!!

カレンは自身に気合いを入れながら急いで自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

まるで肉食獣の群れに囲まれたウサギだな、俺。

 

カズヤの引いてはカズヤの持つ権力と富を狙う美少女、美女を前にしてカズヤはそんなことを考えていた。

 

「キャッ、なんなんですか?貴女!!」

 

カズヤにまとわりついていた少女は突然、背後から強引に割り込んで来たマリアに抗議の声を上げる。

 

「失礼、閣下。カレン様より伝言です。以前閣下にお見せすると言っていた物の準備が整ったそうですので部屋に来て欲しいとの事です」

 

マリアは一言だけ少女に向けて謝るとすぐにカズヤに向かって用件を告げた。

 

見せるもの?そんな事……言ってたか?

 

「……分かった。すぐ行く」

 

記憶に無い事を言われて考え込んだカズヤは、とりあえずこの場から離れられるならそれでいいや。と安易な判断を下し頷いた。

 

「では、ご案内致しますので私に付いて来て下さい」

 

周りを取り囲んでいた少女や女性を押し退けてカズヤの元にやって来たマリアはそう言うなり踵を返す。

 

「えっ、そんな……カズヤ様、行ってしまわれるのですか?」

 

「え、あぁ、まぁね」

 

「もっと私達とお話ししてください」

 

「寂しいですわ」

 

カズヤがマリアに置いていかれないように後を追おうとすると周りにいた少女達に腕を掴まれてしまった。

 

「ま、また戻って来るから……」

 

いくら容姿が優れているとはいえ、狙いが明け透けて見えている少女達や貴婦人方の相手に疲れていたカズヤは適当な事を言ってこの場から離れようとする。

 

「では……気が向きましたら私の部屋にいらして下さい。待っています」

 

「私だって……カズヤ様、お待ち致しています」

 

「あ、あははっ……分かったよ」

 

周りの女達のラブコールにひきつった笑いで答えたカズヤは慌ててマリアの後を追った。

 

 

「どうぞ、こちらへ」

 

パーティー会場からどうにか抜け出したカズヤはカレンの私室に案内された。

 

「……」

 

見せたいものがあるって何を見せるつもりなんだろうな?

 

カレンの部屋の前でカズヤは首を捻りながらも黙ってマリアに従い部屋に入った。

 

「えっ……まぁいいか。それにしても暗いな。カレンどこにいるんだ?」

 

後ろから聞こえた鍵を閉めるガチャ。という音に少し驚きながらも部屋の中に入ったカズヤは窓から入る月明かりだけを頼りに歩みを進める。

 

「カレン――っ!?」

 

カズヤが部屋の中に置かれている大きなベッドの側に近付いた瞬間、誰かにベッドの上へ押し倒された。

 

「誰だっ!!――ってカレンか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

反射的にホルスターから拳銃を引き抜こうとしたカズヤだったが、自身の上に被さっているのがカレンだと気が付くとホルスターに伸ばした手を引っ込め体の力を抜いた。

 

「まったく驚かせないでくれ、なんのマネか知らないが――っ!?」

 

言葉の途中でカズヤはカレンの姿に――見覚えのある服装に気が付き言葉を失った。

 

「……」

 

「……」

 

そのまま部屋の中に沈黙が訪れる。

 

「……カレン、まさか」

 

「……えぇ、そうよ。貴方の考えている事で合ってるわ」

 

カズヤはカレンの服装とその覚悟と恥じらいの混ざった初な表情にカレンが何を望んでいるのかを瞬時に悟った。

 

……確かに“また今度”って言っていたが。

 

まさか本当に……。

 

「言ったはずよ、カズヤ。私は“また今度”と」

 

カズヤの考えを読んだようにカレンが言った。

 

「……そう……だな、だが――んむっ!?」

 

「んちゅ、ちゅ、んふっ、ちゅ、ちゅる、ちゅ、ん、んんっ、ん、れろっ、ちゅ……ぢゅ、ちゅ……んふっ、ちゅ、ん、んっ、はぁ……女に……恥をかかせる気?」

 

カズヤの否定から入ろうとした言葉を遮るように唇を奪ったカレンはカズヤの服を自然な動きで、はだけさせながら挑発するような視線を熱い送る。

 

「……後悔しても知らないぞ」

 

カズヤは最後の確認をカレンに取る。

 

「私の目がそんなに曇っているとでも?」

 

カレンはカズヤの確認に不敵に笑って答えた。

 

「そうか、じゃあ……」

 

「キャッ!?――んっ」

 

確認を得たカズヤは覆い被さっていたカレンを逆に組伏せ、唇を奪うとカレンを自分色に染めるべく本能に従って行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「フフッ、フフフッ」

 

2人だけの世界、優しい月の光りの下でカレンはカズヤの体に寄り添いながら悦びに満ちた顔で小さく笑っていた。

 

「……ずいぶんと嬉しそうだな、カレン」

 

「えぇ、それはもう。……だって貴族の身で好いた男と一緒になれるなんてほとんど無いのよ?普通なら政略結婚で好きでもない男とくっつかないといけないのが好きな男と一緒になれたんですもの、嬉しいに決まってるわ」

 

穢れを知らない純真無垢な子供のような笑みを浮かべたカレンはそう言ってカズヤにギュッと抱き付く。

 

「そ、そうか……」

 

カレンの直球の言葉に赤くなったカズヤは照れ隠しに頬を掻きながらカレンから視線を外した。

 

「もぅ……えい!!」

 

「カ、カレン!?」

 

「フフッ、まだまだ出来るでしょう?夜は長いのよ。タップリと吐き出してもらって確実に孕ませて貰わないとね」

 

カズヤが顔を反らしてしまったことに不満気な声を上げたカレンは肉食獣のように笑ってカズヤに襲い掛かかったのだった。

 


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