ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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任務を終えた第1、第2小隊の兵士が司令部に戻って来るのを待っている間にカズヤはトリッパーを殺害した事で得た特典と奪った能力を確認することにした。

 

 

 

[特典]

精神強化(強)

身体強化(強)

共通言語

幸運(中)

 

 

 

増えた特典は1つだけか……。

 

あんまり増えなかったな後は奪った能力だが。

 

 

 

[能力]

 

完全治癒能力

・死んでいなければどんな病気・ケガでも治せる。

 

※自分には効果がありません。

 

絶倫

・精力が今の10倍になる。

(――――――――)

 

 

 

上の能力はありがたいが下の能力はなぁ……。

 

まぁ、無いよりあったほうがいいのかな?

 

それより絶倫の下にある“()”はなにが書かれているんだ?読めないぞ?

 

カズヤが手に入れた特典や能力を確認し首を傾げていると任務を終えた兵士達が帰って来る。

 

「第1、第2小隊。ただ今、帰還しました!!」

 

「ご苦労だったな、ゆっくり休んでくれ」

 

無事に帰って来た兵士達に十分に休息を取るように命じるとカズヤは偵察に出ていなかった兵士を選び、小隊を編成すると第9分隊が見つけた砦を見に行くことにした。

 

「さて、俺は砦を見てくる」

 

「えっ……?俺は?ご主人様、私は……」

 

「あぁ、千歳は司令部に残って指揮を取っていてくれ。念のため各種弾薬の備蓄も増やしておくから、なにかあった場合は援護を頼んだぞ」

 

「そんな……。ご主人様!!副官の私も連れて行って下さい、ご主人様にとって私はもう必要ないのですか!?」

 

そう言って千歳は不穏なオーラを纏い、光のない暗い瞳でカズヤに詰め寄る。

 

えっ、そんなつもりで言ったんじゃないんだが……。いきなりヤンデレ化したぞ。

 

「い、いやそんなつもりで言ったんじゃないんだ。ただここを任せられる人が千歳しかいないからなんだ」

 

「……そう……ですよね、ご主人様が私を捨てるはずないですよね」

 

千歳はカズヤの言葉にホッとした様子で微笑んだ。

 

「じゃ、じゃあ司令部のことは任せて大丈夫だな」

 

「ハッ、司令部のことは私にお任せ下さい」

 

カズヤの言葉に千歳は敬礼しつつ笑顔で答える。

 

全くいきなりヤンデレ化した時には驚いたぞ。

 

千歳の豹変ぶりに内心恐々としていたカズヤだったが、千歳がポツリと呟いた言葉はカズヤの耳には届かなかった。

 

「……私、ご主人様に捨てられたら……どうなるか分かりませんよ?フフ、フフフ」

 

凄みと真剣さが入り交じった千歳の言葉は誰の耳にも入ることなく、空へ溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「それでは、第1小隊出撃するぞ」

 

「「「「了解」」」」

 

すでに準備万端の状態で待っていた小隊に声をかけるとカズヤは砦に向かう。

 

まるでピクニックだな。

 

ん?迎えか?

 

「お待ちしておりました、総隊長殿。砦はこちらであります」

 

司令部のある防御陣地を後にし、森の中をしばらく歩いていると第9分隊の兵士が2人合流し道案内をしてくれた。

 

道案内に従って歩いていると突如、森が開け草原が姿を現す。

 

そして、その草原の中央に報告のあった砦がひっそりとたたずんでいた。

 

「これは……確かに砦だな。古びてはいるが頑丈そうな外壁に囲まれているし門も立派なもんだ」

 

砦は石と木によって作られておりカズヤが思っていたよりも広くしっかりとしたモノであった。

 

だが放置されてから長い時間が経過しているのか、砦のいたる所にツタが絡み付き砦は半ば草木に埋もれていた。

 

「それでは分隊長を呼んで参ります」

 

道案内役の兵士がそう言って先に砦の中へと走って行った。

 

しかし、なぜこの砦は地図に載っていないんだ?ここが放棄された砦だからか?

 

どうしてここに砦があるのか、またなぜ地図に載っていないのか。

 

そんな事をカズヤが考えていると分隊長が走って来る。

 

「お待たせして申し訳ありません。砦の探索及び確保は完了しておりますので内部をご覧になりますか?」

 

「そうだな、念のため確認しておこう」

 

「ではこちらへどうぞ」

 

分隊長の案内に従ってカズヤは砦の内部に入った。

 

……何も無いな。

 

砦の中は幾つかの、くたびれた建物があるだけで他は何もなかった。

 

カズヤは1番頑丈そうな建物を選び、中に入ると通信兵に命じて何時でも司令部と連絡が取れるように機材を配置させた。

 

それと同時に連れてきた小隊に隠し扉や通路がないかどうか、更に詳しく砦を探索するように命令を出す。

 

そして1時間程、小隊が砦を徹底的に調査した後。

 

その結果報告を連れて来た小隊の隊長を勤める伊吹中尉からカズヤは聞いていた。

 

「まず、我々がいるこの砦は司令部から約3キロ離れた場所にあります。また砦の大きさは縦横250メートル程度で出入りが出来るのは正面にある門だけです。隠し通路や扉は発見されませんでした」

 

「そうか、特に問題になりそうなことはないな」

 

「はい。私も砦を見て回りましたが問題になりそうな物はなく強いて言えば放置されてから長い時間が経っているせいで外壁や建物の老朽化が進んでいるぐらいです」

 

カズヤが伊吹中尉と会話を交わしながら、ふと外を覗いた

 

すると日が傾き夕暮れになりかけていることに気が付く。

 

ありゃ、ちょっと砦の探索に時間をかけすぎたかな?

 

建物の窓から日が落ちて夜空なりつつある空を見てカズヤはそう思った。

 

まぁ、急ぐ用事もないことだしこの砦で一夜を過ごしてから帰るか。

 

夜は魔物が活発に動き始めていて危ないだろうし。

 

カズヤは安全を第1に考え、この砦で一夜過ごしてから帰る事を決めた。

 

そして、その旨を通信兵に司令部へ伝えさせると小隊に集合をかけた。

 

「本日は日暮れの為、一夜をこの砦で過ごしてから帰ることにした。念のため一人で行動することは避け少なくとも二人以上で行動するようにまた休息と警戒はローテーションを組んでおこなってくれ、なお明日の早朝にはここを出るからそのつもりで最後に夜間戦闘用の装備とトランシーバーを全員に配るから持って行ってくれ」

 

各種兵器と装備、テントや天幕を召喚し砦に設置させるとカズヤは休むことにした。

 

今日はいろんなことが一度にあって疲れたな。

 

伊吹中尉に言って先に休ませてもらうか。

 

疲れを感じたカズヤは伊吹中尉に休む事を伝え、就寝した。

 

ところが、カズヤが寝はじめてすぐに伊吹中尉がカズヤを起こす。

 

「……うぅーん。どうした伊吹中尉、まだ朝には早いだろ何か問題か?」

 

目をごしごしと擦り睡魔と戦いながらカズヤが伊吹中尉に問い掛けた。

 

「お休み中、申し訳ありません。砦の外を見張っていた歩哨が森の中に何か動く影を見たそうです」

 

「なんだと!?それを早く言ってくれ」

 

カズヤは素早く身支度を済ませ装備と武器を身につけると建物から出て報告のあった所へ急ぐ。

 

「こちらです」

 

歩哨から報告があった西側の防壁に辿り着くとカズヤは歩哨の兵士に小声で問い掛けた。

 

「何があった?」

 

「ハッ、あちらの森の中に動く物体が」

 

部下に言われてカズヤは暗視ゴーグルを着けて西側の森を覗いてみた。

 

「確かになにかが動いているな……。はっきりとは見えないが」

 

暗視ゴーグルを使い森の方を見たが、距離があったため動く物体が何なのかが分からなかった。

 

「伊吹中尉、戦闘準備だ」

 

「了解。戦闘配置につかせます」

 

「司令部に報告は?」

 

「報告は既にしてあります。万が一に備え10分で支援砲撃の準備を完了させるとのことです」

 

「動くのが早いな、よくやってくれた伊吹中尉」

 

「お褒めに預かり恐悦至極です」

 

伊吹中尉とやり取りを終えるとカズヤはトランシーバーを使いこの砦にいる一個小隊プラス二個分隊の計80人の部下に命令を下した。

 

「総員戦闘配置!!資材を召喚するからそれで正面の門を閉鎖しろ。それと命令あるまで発砲は禁止!!以上」

 

「「「「了解!!」」」」

 

カズヤの命令が下ってから5分後。

 

全員が戦闘配置につき正門の封鎖が完了したとの知らせが来たためカズヤは照明弾を打ち上げ森の中で蠢く物体の正体を探る事にした。

 

「撃て」

 

命令と同時に十年式信号拳銃が使用され、東西南北に2発ずつ計8発の照明弾が漆黒の夜空に打ち上げられた。

 

空を漂う照明弾がまばゆい光を放ち辺りを照らし出す。

 

「おいおい……。これは不味いな」

 

カズヤの視線の先には砦を取り囲むように森から無数の魔物達が続々と姿を現していた。

 

「どれだけいるんだよ。昼間の偵察では1匹も魔物と遭遇しなかったのに……。どっから沸いて出てきたんだ?」

 

「分かりませんが、今の状況は非常に不味いかと」

 

カズヤと伊吹中尉がそんなことを言っている間にも魔物達は続々と数を増やしていた。

 

「居るのはコボルトにゴブリン、オーク、トロールこんなところか」

 

砦に近付く魔物達は皆こん棒や錆びた剣、穴があきボロボロの鎧で武装している。

 

「今から逃げようにも、もう囲まれているしなぁ……」

 

「はい。敵を殲滅するしか我々が生き残る道はありません」

 

そうは言ってもこちらの人数は一個小隊60人プラス二個分隊20人の合計80人。

 

武器・弾薬は携帯していた分と念のために出しておいたM2重機関銃8門、二式十二糎迫撃砲10門、八九式重擲弾筒10門、九七式自動砲5門ぐらいしかないぞ。

 

いくら支援砲撃の援護があるとはいえ、これだけいる魔物共を殲滅出来るか?増援を要請するにしても朝まで無理だしな……。

 

待てよ、今はまだ戦闘が始まっていないから兵器の召喚は出来るんじゃあ?

 

 

カズヤがそんなこと考えメニュー画面を呼び出し兵器を召喚が出来るか試そうとすると画面には予想外のことが映し出されてされていた。

 

 

 

[神の試練・第1]

魔物達の攻撃から生き残れ!!

 

敵総数

1万7829体

 

 

 

……これか魔物が大量に集まって来る理由は。

 

召喚も出来なくなってるし。クソ!!意図的にトリッパーとの殺し合いをさせたり、このふざけた神の試練とやらを見ると、間違って殺したお詫びの異世界トリップじゃないよな……。

 

まさか、俺達は神の暇潰しにされているんじゃ……。

 

ふと思い付いたその考えが正解であるということをカズヤが知るよしもなかった。

 

「はぁ……伊吹中尉。朝まで後、何時間だ?」

 

「およそ2時間です」

 

「そうか……。通信兵!!司令部に支援砲撃を要請、それと増援要請もだ」

 

「ハッ、了解しました!!」

 

カズヤの命令に従い傍に控えていた通信兵が司令部と無線のやり取りを始めた。

 

そんな時である。

 

まるでカズヤ達の準備が整うのを待っていたかのように司令部との通信が終わった瞬間、魔物達が一斉に雄叫びを上げて砦に押し寄せ始めた。

 

「チィ、来やがった!!――総員に告ぐ!!何が何でも生き残るぞ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

ドタドタと騒がしい足音と共に魔物達が猛然と迫って来るのを睨み付けながらStG44を構えトランシーバー越しに兵士達に発破をかけるとカズヤは先頭を走っているゴブリンに狙いを定め、引き金を引いた。

 

こうしてカズヤ達にとって悪夢のような攻防戦の幕が開いた。

 


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