ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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早朝に野営地を片付け、王都に向けて出発したカズヤ達は昼になる前に王都に到着していた。

 

しかし、これまでに通って来た街でもあったように市街地の中に車両ごと入ると騒ぎになるため近くの森に車両を隠し、その守りに親衛隊を半分残して王都に入ることになった。

 

「さすが王都でかいな。今まで通ったほかの街や都市とは規模が違う」

 

「それはそうだろう。なんと言ってもここは我がカナリア王国が誇る王都バーランスだからな」

 

千歳を先に冒険者ギルドへと送り出し、イリスが乗る馬車の護衛にフィリス達と共に付きながら王都の中心にある城に向け歩みを進めるカズヤはフィリスの簡単な説明を聞いていた。

 

「バーランスは広大な土地を3重の城壁で囲んだ作りになっていて外側から大まかに平民、貴族、王族と住んでいるエリアが別れているのだ」

 

王都の中は国の中心なだけあり大通りには多くの人――人間以外にも尖った耳を持つエルフや成人しているが少年少女並みの身長しかないホビット、きわどい衣装を身に纏ったサキュバス、上半身は美人な女性だが下半身が蜘蛛や蛇になっているアラクネやラミア等の妖魔族や人間の体に動物のフサフサした耳や尻尾が生えている獣人が溢れ返っていた。

 

しかし、人々の顔には笑顔がなく同時に活気が無かった。

 

「ふーん。それにしても……なんだか活気がないな」

 

「……しかたない。エルザス魔法帝国との戦争で税が上がったり、また魔物の異常繁殖のせいで物流が滞り物価が上がっているからな」

 

「……」

 

カズヤとフィリスが何気ない会話を交わしていると、その会話を馬車の中から恨めしそうな顔でじっと見詰めている者がいた。

 

「なんかスッゴイ見られているんだが……」

 

「我慢してくれ。まさかイリス姫殿下を馬車から降ろし歩かせる訳にも行くまい。忘れてはいないと思うが我々はお忍びで行動しているのだぞ」

 

「あぁ、分かってる」

 

「ならばいい。それにしてもイリス姫殿下がカズヤにあれほど執着なさるとは……」

 

フィリスはそう言って王都に着くまでに起きた様々な出来事を思い返していた。

 

「俺も想像以上だったよ。あれは……」

 

カズヤもフィリスの苦悩に付き合うように2人で今までのハプニングを思い返していた。

 

だが2人が過去の出来事を思い出して黄昏ている間に数人の騎士が守る巨大な城門の前に着く。

 

「っと、城についたぞ。護衛の任務はここまでだな」

 

「そうだな。それでまずは女王陛下に報告をせねばならぬから……そうだな、2〜3日中までには使いの者を出すから城に来てくれるか?そこで報酬を渡そう」

 

「分かった。俺たちは冒険者ギルドにいると思う。いなかったら車両の方に人を送ってくれそこなら必ず部下がいるはずだ」

 

「承知した。それではまた会おう」

 

そう別れの挨拶を言ってフィリス達は城の門をくぐり中へ消えて行った。

 

だがその際、馬車の扉がガタガタと激しく揺れ中にいる人物が外に出ようとしていた。

 

「アレは……ヤバイな」

 

カズヤは馬車の中でイリスを宥め外に出ないよう必死の攻防を繰り広げているであろう2人のメイドに感謝の念を送っておいた。

 

 

 

フィリス達と別れたカズヤは冒険者ギルドにいるはずの千歳と合流するべく王都の中を歩いて行く。

 

「ここか?」

 

「そのはずです」

 

今までの街や都市で見た物と同じように冒険者ギルドを示す剣と盾が描かれている看板を見つけカズヤが部下に確認すると肯定の返事が返ってきた。

 

「じゃあ入るか」

 

カズヤが冒険者ギルドの扉を開けて中に入ろうとした瞬間。

 

扉の横にあった窓を突き破り中から冒険者の男が吹き飛んで来た。

 

「うぉっ!?なんだ!?」

 

「隊長!?お下がり下さい!!」

 

突然、吹き飛んで来た男に辺りは騒然となったが親衛隊の隊員は慌てることなくコンバットナイフを構えカズヤを庇いつつ周辺を警戒する。(ちなみに親衛隊が銃ではなくコンバットナイフを構えているのは王都に入る前にカズヤが火器の使用制限を言い渡したためである)

 

カズヤの守りに付かなかった残りの親衛隊員は何が起きているか確認するべく冒険者ギルドの扉の前に張り付きアイコンタクトを交わす。

 

そして1度頷きコンバットナイフや短刀を抜き放つと扉を押しあけ室内に雪崩れ込んだ。

 

「……何も起きないな」

 

親衛隊員が冒険者ギルドに雪崩れ込んだ後、戦闘の音が聞こえなかったためカズヤも恐る恐る様子を伺いながら中に入った。

 

「……何をやっているんだ、千歳?」

 

シーンと静まり返っている冒険者ギルドの室内で騒動の中心にいたのは夜叉のような顔をした千歳だった。

 

その千歳は半泣きで股間をビチャビチャに濡らす男の首にククリナイフを押し付けおり、周りには4〜5人の冒険者がボロボロの状態で床に倒れ伏していた。

 

「……これはですね」

 

「いいから、その男の首に当てているククリナイフを離してやれ」

 

「ハッ」

 

カズヤが命じると千歳はすぐにククリナイフを鞘の中に仕舞う。

 

「ひっ、ひぃ……」

 

首からククリナイフが離され千歳の手から逃れた男はドサリと音を立てて倒れ伏しうめき声と悲鳴が混じった声を漏らす。

 

「はぁ〜またか……」

 

「誠に申し訳ありません……」

 

カズヤが呆れながら千歳に問い掛けると千歳は目を伏謝罪の言葉を口にした。

 

王都に着くまでに通った街や都市でも度々起きていたのだが、情報収集のため立ち寄った冒険者ギルドでは必ずと言っていいほど親衛隊の女性兵士は冒険者の男に絡まれていた。

 

理由は簡単で親衛隊の女性兵士が皆、美人だからである。

 

そのため、いつもは男性隊員のみをギルドに送っていたのだが、今回は人員の都合で千歳だけをこの場に送ったらまたこうなってしまった。

 

……まぁ、しょうがないか。

 

こんな事態にはもう慣れてしまっていたカズヤは、ただ深いため息を1つ吐くだけだった。

 

「……でよう、あの件は――」

 

「ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」

 

「床で寝てるのを連れてくぞ」

 

「は〜い」

 

冒険者ギルドではこのような騒ぎは日常的に起きているのか、千歳がククリナイフを仕舞うと今までの出来事が無かったようにギルド内はガヤガヤと騒がしくなりギルドの係員が4〜5人出てきて倒れている男達を奥の部屋へと運んで行った。

 

その様子を横目にカズヤは千歳に問い掛けた。

 

「もう少し穏便に済ますことはできないのか……」

 

「それは無理です。あの男達はご主人様専用である私の体に触れようとしましたので」

 

「……」

 

嬉しいんだが、そう言う発言はもう少し小さい声で言って貰えないかな。

 

千歳の声が聞こえていたのであろう冒険者達が凄い目でこっちを見てるから。

 

「ふぅー。もう起きてしまったことはしょうがない。それより頼んでいた用事は済んだか?」

 

カズヤは周りの冒険者の視線を無視して千歳に問う。

 

「はい。それは完了しています。それと建物を維持する奴隷も購入しておきました」

 

カズヤが千歳に頼んだ用事とは冒険者ギルドで情報を収集することと王都でセーフハウス代わりに使う建物を架空の人物名義で購入することである。

 

「じゃあ屋敷でも見に行くか」

 

冒険者ギルドでの用事が済んだのでカズヤは千歳が購入した建物――屋敷を見に行くことにした。

 

また今いる親衛隊の半数ほどの兵士達に金貨を渡し情報収集も兼ねて休暇を言い渡す。

 

ちなみにこの世界の貨幣は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類あり銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚となっている。

 

 

千歳に案内で王都の高級住宅街を進んで行くと、その片隅に建つ屋敷がカズヤの視界に入った。

 

「こちらです。ご主人様」

 

カズヤが千歳と共に屋敷の門をくぐり中に入ると庭は荒れ果て草が伸び放題になっていた。

 

大丈夫か?ここ……

 

若干の心配をしながらも千歳の後に続き、カズヤが屋敷の中に入ると多少埃っぽかったが人が住める程度には綺麗になっていた。

 

「ここは3週間程前まで商人が住んでいたそうです。家財道具等もそのままなので掃除が終わればすぐにでも居住可能です」

 

「そうかご苦労だったな千歳。しかし結構でかいなこの屋敷」

 

「もっと大きい物件もあったのですが、値段が高くそちらを選ぶとなにかと目立ちそうでしたのでやめておきました」

 

「それが妥当な判断だな」

 

千歳とカズヤが入り口のエントランスホールでしゃべっていると奥の方からバタバタと走る音が聞こえて来る。

 

……なんだ?

 

カズヤが足音を不審に思いそちらを見ると様々な種族の若い女性達がメイド服を纏い走って来た。

 

「お、お帰りなさいませ旦那様!!奥様!!」

 

カズヤ達の前に急いで整列するとメイド達はそう言って一斉に頭を下げる。

 

なにこれ……メイド喫茶?それより奥様って?

 

頭に浮かんだ疑問の答えを導き出そうとカズヤが悩んでいると横にいた千歳が答えてくれた。

 

「コレらが購入してきた奴隷達です」

 

「いやいや、コレらってそんな物みたいに……。っていうか奥様って……」

 

「フフッ」

 

メイド達が千歳を奥様と言った訳をカズヤが聞こうとすると千歳は、はっきりと答えず小さく笑みを浮かべるだけであった。

 

そんな様子に恐怖を感じたカズヤは目をそらし、目の前の彼女達に視線をずらした。

 

……美女ばっかだな。しかも色々な種族の。

 

全員メイド服なのは統一されているが一人一人メイド服も型が違い様々な種類のメイド服を着ていた。

 

また年齢層も下は15歳位から上は30歳過ぎ迄の容姿端麗な美女、美少女が揃っているという徹底ぶり。

 

感心したようにカズヤが彼女達を眺めていると千歳がカズヤの耳に口を寄せ囁く

 

「全員処女とはいきませんが、なるべく処女を集めてきましたのでご主人様の気が向きましたらご賞味下さい」

 

怖いよ!!千歳に何があったんだ!?

 

千歳はいたって普通に言ったつもりだろうが、カズヤからすれば千歳の言葉は逆に不気味であった。

 


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