ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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帝都攻略戦、開始です。


6章 1

パラベラム軍による帝都攻略戦が開始される7時間前。

 

闇夜に包まれたレイテ湾の暗い海中を4隻の潜水艦がゆっくりと進んでいた。

 

それらは戦略ミサイル原子力潜水艦から巡航ミサイル潜水艦へと改造され、24基の弾道ミサイル発射筒の内22基をトマホーク発射筒――7発のBGM-109トマホーク巡航ミサイルを収めた複数円形収納筒(MAC)と呼ばれる垂直発射システムに改め、残りの2基の上部には海軍特殊部隊のSEALsが使用する小型潜水艇ASDSをロッキングシステムで接合し搭載している改良型オハイオ級のオハイオ(SSGN-726)ミシガン(SSGN-727)フロリダ(SSGN-728)ジョージア(SSGN-729)で編成された第2潜水艦隊の4隻であった。

 

「ターナー大尉より発令所へ。出撃準備完了。出撃許可を求む」

 

予定ポイントへと到達し停止したオハイオの艦上。

 

ロッキングシステムにより母艦と接合されている小型潜水艇ASDSの艇内から、SEALsの隊員であるターナー大尉が出撃許可を求める。

 

『こちら発令所。出撃を許可する。幸運を』

 

「出撃許可を確認。これより出撃する」

 

発令所から出撃の許可が下りると、全長約21メートルの船体内に15名の隊員を乗せたASDSが母艦から切り離され海中を進んで行く。

 

そして、他の母艦から同じように切り離された3艇のASDSと合流すると単陣形を組み帝都へと向かった。

 

「アルファチームより各隊。状況を報告せよ」

 

『こちらブラボー。潜入ポイントへ到着、これより作戦行動に移る』

 

『チャーリーよりアルファへ。潜入成功。なれど敵多数を確認。注意されたし』

 

『こちらデルタ。敵歩哨2名を排除、目標に向け移動中』

 

帝都の中心を基点として帝都全域を半球状に被う魔力障壁。

 

外部からのありとあらゆる干渉を阻むこの難敵をターナー大尉達は事前にレイテ湾の海底を掘削して作られた小さなトンネルを使って潜り抜け、無事帝都への侵入を果たしていた。

 

「アルファ了解。各隊は任務を続行せよ。オーバー。我々も急ぐぞ」

 

「「「「了解」」」」

 

他のチームとの通信を終え、HK416を構え直したターナー大尉はアルファチームの隊員達に声を掛け行動を開始した。

 

別々の潜入ポイントから帝都の内部へと潜り込んだ4チームのSEALsの任務は帝都を頑強に守り続ける魔力障壁の排除。

 

引いては魔力障壁を張っている動力源の破壊であった。

 

「……ターゲットを視認。我々の目標はあの塔だ」

 

そこかしこで焚かれている篝火の光を避けながら、いやに静かな港町の裏路地を慎重に進み動力源がある塔――塔の天辺から赤い光の柱を伸ばし、魔力障壁に魔力を供給している――を確認したターナー大尉達は歩哨の目を掻い潜り、時には音もなく歩哨の喉をコンバットナイフで切り裂き闇に葬りながら目標へと接近する。

 

「チッ、帝都を守る要なだけあって流石に警備が厳重だな。……ニーバル、ホルスとカインを右の建物の屋上に連れていってくれ。その後、こちらの突入とタイミングを合わせてあの塔の中腹にいる見張りの始末を頼む」

 

「お安いご用よ」

 

目標の塔の目前まで接近する事に成功したターナー大尉は配置されている敵兵の数に眉をひそめながら、今回の作戦に同行しているアラクネのニーバル伍長に指示を出した。

 

「……初めて見た時は、あの容姿にかなりビビりましたが、これ程有能ならあの容姿も気になりませんね。これから続々と各部隊に配置されるという他の亜人兵も楽しみです」

 

「あぁ。だが、うかうかしていたら我々の立場まで奪われかねんぞ」

 

フル装備の大の男2人を担ぎながら垂直の壁を蜘蛛の脚でスルスルと登っていくニーバル伍長の姿を眺めながらそう溢した副官に、ターナー大尉は言葉の中に危機感を含ませながら返事を返したのだった。

 

『こちらホルス。配置に付きました』

 

『こっちも準備オーケーよ』

 

「よし。ホルスとカインは正面の2人を始末しろ。ニーバルは予定通りにあの見張りをやれ。他はこっちでやる。3カウントの後、前進を開始する」

 

『『『了解』』』

 

「「「「了解」」」」

 

各員の配置が完了し前進の準備が整った事を確かめたターナー大尉は指示を出しながらタイミングを図る。

 

「……3、2、1、今ッ!!」

 

ターナー大尉のカウントダウンが0になると同時にAN/PVS-10昼夜両用スコープで敵の眉間に狙いを定めたホルスとカインがサプレッサーを装備したM14 DMRの引き金を引いた。

 

直後、パスッパスッという小さな銃声が響き狙われた敵兵の眉間に小さな穴が穿たれる。

 

「ゴーゴーゴーッ!!」

 

無力化された敵兵が力なく地面に崩れ落ちる前にターナー大尉達は残る敵兵の排除に移る。

 

物陰から飛び出したターナー大尉達はサプレッサーで抑えられた銃声を小さく響かせながら塔の入り口を守る敵兵十数名を駆逐。

 

周囲の安全を確保しつつ扉の側に取り付き、突入の態勢を整える。

 

「おい、どうし――」

 

しかし、突入の態勢を整えている最中、外の違和感を感じた敵兵が1人扉を開けて出てきてしまう。

 

「チッ」

 

「グエッ!?」

 

予想外の出来事に思わず舌打ちを打ちながら、ターナー大尉は敵兵の喉にコンバットナイフを押し込み、更にそのままの勢いで塔の内部に侵入。

 

扉をくぐった直後に死体を蹴り飛ばし、突然の出来事に驚き硬直している敵兵に素早く5.56x45mm NATO弾をダブルタップで浴びせ殺害していく。

 

「クリア!!」

 

「クリア!!」

 

「……各員状況を報告せよ」

 

そして、突入を敢行してからものの5分と経たずに動力源のある塔はターナー大尉達に制圧される事となった。

 

「正面入り口、制圧完了」

 

「正面奥、仮眠室制圧完了」

 

『こちらホルス。周囲に敵影なし』

 

『ニーバルより隊長へ。上の敵は全員始末したわ。今からそっちに合流するわね』

 

「ふぅ。……ホルス、お前達はそのまま周辺の警戒を頼む。敵が来たら知らせてくれ」

 

『了解です』

 

「ニーバル、外の死体を塔の中に引きずり込んどいてくれ」

 

「りょ〜かい♪」

「他の者は付いてこい」

 

ターナー大尉は外に残ったホルスとカインに周辺の警戒を命じ、塔の上から糸を垂らして降りてきたニーバルに指示を出すと、頭や胸といった急所から血を流し息絶えている敵兵の屍を跨ぎ塔の奥へと進んだ。

 

「これが……動力源か」

 

塔の奥にあった階段で地下に降り、魔力障壁の動力源を目の前にしたターナー大尉は思わず声を漏らした。

 

何故なら、地脈から魔力を吸い上げ魔力障壁の維持を行う動力源が吸い上げた魔力の発光現象で紅く光り輝き幻想的な光景を作り出していたからであった。

 

「隊長、こいつを吹き飛ばせば魔力障壁が消えるんですよね?」

 

チーム内の工兵が手筈通りに爆破準備を進める中、周囲の警戒にあたっていた隊員がターナー大尉に声を掛ける。

 

「あぁ、だが帝都を覆っている魔力障壁は36の独立した障壁から構成されているからな。こいつを吹き飛ばしてもその内の1つを消すだけに過ぎん。我々SEALsが4つ潰して突破口を作ったら残りは第2潜水艦隊にやってもらわんと」

 

「そうでしたね」

 

部下の他愛もない質問に答えたターナー大尉が何気なしに腕時計で時間を確認しようとした時だった。

 

「ッ!?」

 

地面が小さく揺れ、地下に居るにも関わらず爆発音が聞こえた。

 

「今のはまさか……他のチームが動力源を吹き飛ばしたのか?」

 

「どうなっている!?動力源の爆破は全チーム同時にする予定だぞ!!」

 

「いや、それよりも今の爆発で敵が異常に気が付くぞ!!」

 

予期せぬ爆発に隊員達が狼狽える中、ターナー大尉は冷静に状況の把握に努めていた。

 

「ホルス、外の状況を知らせろ!!」

 

『ブ、ブラボーチームとデルタチームが破壊に向かった塔が崩れ落ちました!!なお、魔力障壁は消滅!!』

 

「何だと!?ブラボーチーム!!デルタチーム!!応答せよ!!」

 

ホルスからもたらされた報告に驚愕したターナー大尉がブラボーとデルタの両チームに呼び掛けるが、いくら待っても応答が無かった。

 

「どうした!!ブラボー、デルタ、応答せよ!!クソッ!!チャーリー、応答を!!」

 

『ザーザー、ザッ…羽……の…天使が…クソ……化物めッ!!』

 

「チャーリー、どうした!?よく聞こえない!!繰り返せ!!」

 

応答が無い両チームから問い掛ける先を残るチャーリーチームに切り替えたターナー大尉だが、チャーリーチームから返ってきた返事は意味の分からないモノであった。

 

しかも、一度通信が切れてしまった後、いくらチャーリーチームに呼び掛けても反応は返って来なかった。

 

「一体、何が起きているんだ……?」

 

「隊長!!爆破準備は終わっていますから、ここは一先ず外に出ましょう!!このままでは退路を敵に塞がれる危険性が!!」

 

「そうだな。外に出るぞ!!急げ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

部下の進言に素早く撤退の判断を下したターナー大尉は部下を引き連れ階段を駆け上がる。

 

「ホルス、カイン、ニーバル!!応答しろ!!撤退するぞ!!急いで合流を!!…………どうした!!応答しろ!!」

 

「――あら?貴方の探しモノはこれかしら?」

 

さっきまではすぐに応答した3人の部下がまるっきり返事を返して来なくなってしまった事を訝しみながら階段を上りきり、塔の入り口へと戻って来たターナー大尉の言葉に答えたのは部下の声では無かった。

 

その声の正体は頭上に丸い環を浮かばせ、白く輝く翼をゆっくりと羽ばたかせ浮遊している美女。

 

いわゆる天使の様な姿をしている人物であった。

 

「貴様は……ッ!?」

 

思わず見惚れてしまうような容姿に言葉を失い掛けたターナー大尉だが、目の前の女の両手に引き千切られたニーバルの体と生首が握られている事を視認すると本当に言葉を失う事になった。

 

「撃て!!」

 

一瞬のタイムラグを挟んでからHK416を構え、部下達に攻撃の指示を飛ばしたターナー大尉だが、引き金を引く寸前に女の姿が視界から消え失せる。

 

「どこに――」

 

「話も出来ないなんて……やっぱり所詮は異教徒なのね」

 

背後から聞こえてきた女の声に振り返ろうとしたターナー大尉は、その途中に自身の視点の高さがいつもと違う事に気が付く。

 

「何……を……」

 

しかし、その異常を確かめる前にターナー大尉の意識は真っ白な光りに覆われ、2度と戻る事は無かった。

 

 

 

「――……応答なし。帝都内部に潜入した全SEALsチームとの通信、途絶しました」

 

悲痛な表情を浮かべながら、ヘッドセットを外し首を横に振った通信手の報告にオハイオの発令所は重苦しい空気に満たされる。

 

「そうか、残念だ。……魔力障壁はどうなっている?」

 

僅かな間瞑目し、散っていった兵士達の冥福を祈ったオハイオの艦長は捜索用潜望鏡を覗く副長に問い掛けた。

 

「4つの作戦目標の内、2つの排除には成功した模様。レイテ湾方面の魔力障壁に隙間が生じています。これならば我々の任務遂行に支障なし、オールクリア」

 

「よし、ならば……彼らの働きに我々も応えよう。これより対地攻撃任務を開始する。全ミサイル発射管開け。第1目標は魔力障壁の全動力源。第2目標は敵軍事施設とする」

 

艦長の命令と同時に先程まで辺りを満たしていた重苦しい空気が払拭され、代わりにピンと張り詰めた緊張感が場を支配し発令所内が慌ただしく動き出す。

 

「第1目標、魔力障壁の全動力源。第2目標、敵軍事施設。現在、座標データ入力中」

 

発令所の発射管制装置の前に座るミサイル担当士官が艦内にあるミサイル管制センターと連携し、幾つもの発射シークエンスをこなしながら発射態勢を整えていく。

 

「発射準備完了。いつでも行けます!!」

 

準備完了と同時に重量が8トンもあるミサイル発射管扉が海中で一斉に開かれ、その中から水中発射用キャニスターに守られたトマホークが顔を覗かせる。

 

そして、1基当たり7発のトマホークが収められた22基の複数円形収納筒垂直発射システムから計154発ものトマホークが発射される瞬間を今か今かと待っていた。

 

「よし、対地攻撃始め」

 

「対地攻撃始め!!」

 

艦長の命令をミサイル担当士官がミサイル管制センターのミサイル管制士官に伝達、そして艦長の命令を伝達されたその士官がコンソール上にズラリと並んだ発射スイッチを親指で次々と押し込んでいく。

 

すると、それに合わせてトマホークのロケットブースターが点火し、オハイオの船体から順次射出されていく。

 

時を同じくして、オハイオ以下4隻の潜水艦から解き放たれたトマホークは海を割って海上へ飛び出すと水中発射用キャニスターを脱ぎ捨て、本体内部に格納されていた翼を展開しターボファンエンジンを始動。

 

その場に水柱と白煙を残しつつ巡航飛行へと移り、薄暗い空へと飛び出していった。

 

「全トマホーク、順調に飛行中。目標到達まで200秒!!」

 

慣性誘導方式によって日の出間近のレイテ湾の海面スレスレを敵に捕捉されずらいLOW-lOWモードで飛行し、長い帯状の編隊を成した616発のトマホークはSEALsのターナー大尉達が身命を賭して穿った魔力障壁の隙間を通り、帝都上空へと侵入。

 

そこで誘導方式を精度の高いGPS誘導へと切り替え、目標への突入を開始した。

 

そして、突入開始から時を置かずして残り32個の動力源が地上攻撃用の通常弾頭型トマホークによって完全に破壊されたために帝都を守っていた魔力障壁は消滅、また最優先目標の無力化に伴い余剰となったトマホークが副次目標とされていた敵軍事施設への突入を敢行したため、帝都全域の各所で火柱が上がり爆煙が空を汚す事になった。

 

「トマホークミサイル全弾目標に命中!!」

 

「帝都を覆う魔力障壁の消滅を目視で確認しました。作戦は成功です」

 

「よし。我々の為すべき事は為した。帰るとしようか」

 

「ハッ」

 

一先ずの敵討ちを終え、自らに課せられた任務をも完遂した艦長は満足げな表情を浮かべながら、帰路に着こうとした。

 

「――ッ!!帝都の港湾施設から敵艦船の出航を確認!!」

 

「対水上レーダーに感あり!!敵艦船、急速に近付く!!」

 

しかし、戦果確認のため潜望鏡を覗いていた副長やレーダー手が待ったをかける。

 

「目視出来るだけで中型艦10、小型艦25!!数は更に増加中!!艦長、攻撃命令を!!」

 

「なに、接近中の敵は放っておけばいい。こちらは水深10メートルにいるんだ。まともな対潜装備の無い奴等は我々に何の手出しも出来ん。片付けは艦隊の連中に任せておけばいい」

 

副長の心配をよそに、艦長が敵を無視する方針を決めたちょうどその時。

 

水平線の彼方から、ちょうど日の出の光を背にするような形で大艦隊や爆装した航空機の群れが帝都へと近付いていた。

 

「ですが……我々の予想が外れ奴等が対潜装備を持っていた場合、万が一という事も」

 

「ふむ、それもそうだな。だが敵の雑魚に高価な魚雷を使うのも勿体ない。それにそもそも魚雷の数が足りん。となれば……ここは1つ護衛部隊の諸君に働いてもらうか」

 

「ハッ、分かりました」

 

副長の意見(危惧)に理解を示した艦長は護衛部隊に連絡を取り、後の事を任せるとレイテ湾からの離脱に入った。

「オハイオより入電。接近中の敵艦の対処を求む。と」

 

「ありがたい。このまま任務終了まで1発も撃つことなく過ぎてしまうかと思っていたが……我々にも出番があるとは。全艦に通達!!これより我々は第2潜水艦隊に接近中の敵艦を足止めする!!」

 

「了解!!」

 

オハイオからの支援要請を受けた護衛部隊の旗艦――フランス生まれのイロモノ潜水艦の発令所は異様な熱気に包まれていた。

 

「メインタンクブロー!!対水上戦闘用意!!敵の進路上に出るぞ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

浮上命令から数十秒後、複数の黒い物体が帝国艦の進路上に突如浮上する。

 

まず最初に海中から姿を現したのは護衛部隊の旗艦であり、水密式の格納庫や多数の対空火器、そして50口径の20.3cm連装砲を1基2門備えた大型潜水艦のスルクフ。

 

それに続いて305mm単装砲を1基装備したM級潜水艦4隻が現れ、更に20mm機関砲や88mm単装砲で武装しているUボートVII型の4隻が出現した。

 

「砲撃準備急げ!!」

 

「各部点検後、異常の有無を報告せよ!!」

 

「防水装備の解除が最優先だ!!」

 

浮上した9隻の潜水艦の上甲板では船内から飛び出してきた兵士達が駆け回り、それぞれが装備している砲を使用するべく全身全霊を賭けて動いていた。

 

「あれだ!!あれが帝都をやった奴等だ!!」

 

「移乗攻撃の準備をしろ!!」

 

そんな事とは露知らず。

 

帝国の艦船は帝都を攻撃した敵が目の前に現れたと思い、一戦を交えるべく接近を試みていた。

 

「装填よし、撃ち方用意よし!!」

 

「撃ち方始め!!」

 

浮上から1分30秒後。

 

先ずは各艦の対空火器やUボートVII型の88mm単装砲が火を噴いた。

 

その瞬間、護衛部隊の目前に迫っていた帝国の小型船は一瞬で蹴散らされ、あるものは無事な所を探すのが困難なほど穴だらけになってズブズブと沈んでいき、またあるものは飛来した88mm砲弾1発で船体そのものが消滅し轟沈した。

 

「砲撃準備完了!!」

 

「よし、これでようやく我々も本格的な攻撃に移れる」

 

「――報告!!敵艦一斉に回頭中!!退いていきます!!」

 

「何だと!?せっかく砲撃準備が整ったのに逃がしてたまるか!!撃ち方始め!!」

 

浮上から2分30秒後。

 

小型船が一方的に蹂躙されている光景を見て怖じけ付いたのか、中型船が軒並み回頭して回避行動に移るが既に遅かった。

 

砲撃準備が完了したスルクフの20.3cm連装砲やM級の305mm単装砲が攻撃を開始。

 

近代化改装によって砲撃精度が向上していた5隻の潜水艦の砲撃は次々と敵艦を捉え、一撃で敵艦を大破または撃沈させていった。

 

「ふむ……こんなところか」

 

「艦長、艦隊より後退命令が」

 

「そうか。なら我々も帰るか」

 

そうして一通り暴れた護衛部隊は艦隊からの後退命令を受けると、炎上し沈むのを待つだけの敵艦や沈んだ船の残骸が漂う海を後にした。


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