ファンタジー世界を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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生体義手の移植手術を無事に終えたカズヤが経過観察のために依然として入院している病院の周りでは、00式強化外骨格やタロスといった各種様々なパワードスーツを着込んだ何百人もの警備兵が周囲を警戒し、TUSK(戦車市街地生残キット)を装備したM1エイブラムスの最新バージョン――M1A2 SEPV2や重武装の兵士を腹の中に抱えたM2ブラッドレー歩兵戦闘車が万が一の事態に備えて待機するなど厳重な警備態勢が敷かれていた。

 

「まるでクーデターでも起きたみたいだな……」

 

病室の窓から外を覗き、目があった警備兵に敬礼をしつつカズヤが言った。

 

「そのような事は万が一、億が一にも有り得ませんのでご安心を。それよりもご主人様、その……左腕の調子はいかがですか?」

 

多忙を極める中、時間をやりくりしてカズヤの元に馳せ参じた千歳は憂いを帯びた表情を浮かべながらカズヤの背中に問い掛ける。

 

「すこぶるいい。まるで生まれた時から左腕が“コレ”だった気すらする」

 

振り返ったカズヤは左腕に取り付けた生体義手――パラベラムが保有する全技術力に加えて、この世界に存在する希少な素材や魔法技術を惜し気もなくつぎ込んだワンオフ品を掲げ仰ぎ見ながら笑みを溢す。

 

「ならばよいのですが……」

 

「姉様、マスターの義手は私が主導して作成した完璧な品です。不具合等ありえません」

 

「それは分かっている。しかし、これは私の責務としてご主人様にお聞きせねばならないのだ」

 

少しだけ不満げな声を出した千代田に対しバツが悪そうに千歳が答える。

 

「まぁまぁ、2人ともそれぐらいに。それにしてもこれだけ多機能で緻密に作ったんだったら、かなりのコストが掛かったんじゃないのか?」

 

険悪な雰囲気になりそうだった2人の仲介に入ったカズヤは、数多のギミックが搭載された義手を誉めつつ千代田に話を振った。

 

「いえ、それほどでもありません。高々B-2、2機分です」

 

「そうか、B-2が2機分か……………………ちょっと待て、B-2は世界一値段が高い飛行機としてギネスブックにも登録される程、高価なステルス爆撃機だったはずだが?」

 

「イエス、マスター」

 

「大体で1機2000億円ぐらいしたよな?」

 

「その通りです」

 

「……この義手、作るのに4000億円も掛かっているのか?」

 

「はい。何か問題でも?マスター」

 

「……」

 

あっけらかんとした様子で首を傾げる千代田にカズヤは絶句する。

 

「……コストが掛かりすぎじゃないか?」

 

「いえ、全く。マスターの左腕となるモノですから4000億円程度なら安い方かと」

 

「そ、そうか」

 

各種兵装から各種機器を仕込んである義手の値段に改めて驚きながら、壊さないように使おうと心に秘める小心者のカズヤであった。

 

「さて、気を取り直して……うちと帝国の戦争についてなんだが率直に聞く。帝国を攻め落とすのにあとどれぐらいの時間が必要なんだ?」

 

義手の製作費用に驚いていたカズヤは表情を引き締めると2人にそう問い掛けた。

 

「ハッ。かなりの余裕を見た上でですが、準備期間に4ヶ月。攻略に2ヶ月の計半年を予定しております」

 

「これまでの戦闘で損耗した部隊の再編や各部隊への補給、物資の備蓄作業、拠点構築、インフラ整備等の事前準備にかなりの時間が取られますが、後顧の憂い断つためには必要かと。また事前準備の4ヶ月間は冬の時期とちょうど被りますので、砂漠地帯であるにも関わらず冬になると豪雪に見舞われる敵地での活動はどのみち小規模なものにせざるを終えません」

 

帝国との最終決戦を見据えたカズヤの発言に、千歳と千代田は姿勢を正し答えた。

 

「分かった。準備は念入りに頼む。奴らを何としても殲滅するために」

 

「「ハッ!!」」

 

カズヤの決定に力強く返事を返した千歳と千代田は、カズヤの意向を現実の物とするべく勇んで病室を後にした。

 

「ふぅ……このあとの面会希望者は誰だった?」

 

出ていった2人と入れ替わりに病室の中に入ってきたメイド衆に問い掛けつつ、カズヤはメニュー画面を開き変動があった自身の能力値に目を通す。

 

んーレベルが上がらんな。まぁ、そこまでレベルを上げたい訳でもないから別にいいが。

 

 

[兵器の召喚]

2015年までに計画・開発・製造されたことのある兵器が召喚可能となっています。

 

[召喚可能量及び部隊編成]

現在のレベルは76です。

 

歩兵

・90万人

 

火砲

・9万5000

 

車両

・9万5000

 

航空機

・7万

 

艦艇

・4万

 

※火砲・車両・航空機・艦艇などを運用するために必要な人員はこれらの兵器を召喚する際に一緒に召喚されます。

 

※後方支援の人員(工兵・整備兵・通信兵・補給兵・衛生兵等)は歩兵に含まれておらず別途召喚可能となっており現在召喚できる後方支援の人員は『総軍』規模までとなっています。

 

※歩兵が運用できる範囲の重火器・小火器の召喚の制限はありません。

 

[ヘルプ]

・[能力の注意事項]

メニュー画面を使わずとも声や思考で召喚は可能です。

 

1度召喚した軍需品・資源・施設は消すことが出来ますが、人(兵士)は消すことが出来ません。

(死亡した兵士の死体も消すことは不可能。また死亡した兵士と同じ人物を再度召喚することは出来ません)

 

『戦闘中』は召喚能力が使えません

 

後方支援要員の積極的な自衛戦闘が可能になりました。

 

 

 

「はい。お次がサキュバスの族長であるメルキア・ジキタリス様。そして古鷹五十鈴中佐と涼宮明里小尉のお2人。最後にセリシア様とアデル様のお2人でございます」

 

カズヤがメニュー画面を閉じると同時に分業化が進むメイド衆の中で衛生部門を担当し本日の担当秘書官を兼務しているダークエルフのルミナスがカズヤの行動予定が記された手帳を確認しつつ答えた。

 

「結構いるな。まぁ、職務に復帰するためのいい肩慣らしか」

 

そう言いつつカズヤは甘えるように擦り寄って来たヴァンパイアの姉妹に手を伸ばす。

 

愛らしい外見とは違い積極的戦闘部門――カズヤの護衛よりも敵の殲滅を担当するレイナとライナの2人はカズヤに頭を撫で回されると無垢な笑顔を浮かべた。

 

「お疲れのようでしたら、面会はキャンセルしておきましょうか?」

 

「いや、大丈夫。そう心配するな」

 

頭を撫でられご満悦なレイナとライナを羨ましそうに見詰めていた消極的戦闘部門――敵の殲滅よりもカズヤの護衛を担当するオーガのエルや狼人族のウィルヘルムを手招きして招き寄せ、姉妹と同じ様に愛でながら心配性のルミナスに苦笑で答えるカズヤ。

 

「……分かりました。しかし、何かあればすぐにおっしゃって下さい」

 

そんなカズヤに心配そうな視線を送りつつも、ルミナスは一礼してから引き下り、自身もカズヤに愛でられようと同僚の輪の中に入って行った。

 

 

「失礼いたします」

 

カズヤがメイド衆を可愛がっている最中、そんな言葉と共に病室に入って来たのはイスラム圏の国々で女性が着ているようなニカーブ――目と手先だけを露出した黒装束を纏った人物だった。

 

「お久しぶりでございます。我が君。お体の調子はいかがですか?」

 

「久しぶり。まぁまぁって所だ。で、メルキア……なんでそんな服装を?」

 

棚ぼた的に得た鑑定眼の副次的効果で素顔が窺い知れない黒装束の人物がサキュバスの族長であるメルキア・ジキタリスである事を見抜いていたカズヤは、以前の肉感的な肉体を強調させる半裸のボンテージ姿から一転、露出を限り無く減らした黒装束姿になって登場したメルキアに質問をぶつける。

 

「まぁ、酷いお方。私の口からそれを言わせるおつもりですか?」

 

来客用の椅子に腰掛け、顔を隠していた覆面を脱ぎ去ったメルキアは頬を赤らめ、いやんいやんと首を左右に振り恥じらいつつも最後には意味ありげにカズヤに流し目を送る。

「?」

 

流し目の意味が分からず首を傾げるカズヤに焦れたのか、メルキアが口を開く。

 

「お分かりになりませんか?この身は全て我が君の物になったのです。故に我が君の所有物を他の有象無象の視線で汚す事を防ぐため、このような服を」

 

「……」

 

「しかしご安心を。我が君のご希望にすぐにお答え出来るよう、この下はこのように以前のままですので」

 

立ち上がり、ゆっくりと見せ付けるように黒装束を捲り上げたメルキアは、体をよりいやらしく際立たせる淫靡なボンテージと男を欲情させるためだけに特化した肉体をカズヤの視線に晒す。

 

そして、舐めるようなカズヤの視線が露になったつま先から太もも、そして腰から胸へと這うのを感じたメルキアは女の部分を疼かせながらカズヤに歩み寄る。

 

「……メルキア」

 

「はい」

 

「また今度な」

 

メルキアの意図に気が付いたカズヤは、自身の身の内に沸き上がった三大欲求の1つを鋼の意思で捩じ伏せると拒絶の言葉を口にした。

 

「あぁン、残念ですわ」

 

自身の思惑が実らなかったメルキアはと言えば、ペロッと舌を出し不敵に笑うと乱れた黒装束を元に戻し佇まいを正して、再び椅子に腰掛けた。

 

「そう言えば礼を言って無かったな」

 

「礼?礼とはなんのことでしょうか、我が君」

 

「メルキアが編成して寄越してくれた慰安部隊の事だ。彼女らのお陰でうちの兵士達が戦場の狂気に呑まれて狼藉を働くことなく任務に就く事が出来ているからな」

 

「その事でしたら、我が君にお言葉を掛けていただくまでもありません。何せ慰安部隊の者達は獣欲にまみれた美味しい“食事”にありついているだけなのですから。それに我が身、我が一族は我が君の物。我が君のお役に立つことが至上の悦びなのですし」

 

男所帯の軍隊に付き纏う性の問題を解決し必要とあらば最前線にまで出向く事で、戦場という狂気に満ちた場所でパラベラム軍の兵士が女性に狼藉を働く事を未然に防いでいる慰安部隊の活躍にカズヤが頭を下げる。

 

対するメルキアは、口ではそう言いつつも配下の活躍を誇らしげな表情で受け入れ謙遜する。

 

「それでもだ。彼女らの働きは我が軍を支える重要な一翼を担ってくれている。ありがとう」

 

「も、もう……我が君ったらッ!!ま、また来ますわ!!」

 

歩み寄ってから手を優しく握り、真っ直ぐ目を見てメルキアに感謝を伝えるカズヤ。

 

種族柄、性欲を抱かず近付いてくる男など遭遇した事が無かったため、そんな人物に初めて遭遇したメルキアは初な乙女のように顔を赤く染める。

 

そして、羞恥心が限界に達したのか慌てた様子で病室を飛び出して行ったのだった。

 


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