ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~   作:人民の敵

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今回は展開が恐ろしいスピードだぜ……


《第9話》光の科学者

2023年7月22日第35層《迷いの森》

 

sideレイ

 

 《月夜の黒猫団》全滅から1ヶ月近くが経った。あの日以来、キリトはボス攻略にこそ参加していたが、それ以外では公に姿を現すことはなく、俺がいくらメッセージを送っても反応は無かった。

 

 そして、俺とユウキは今、最前線の35層のランダムテレポート・ダンジョン《迷いの森》にいる。

 

「地図は持っているか?ユウキ」

 

 俺はユウキに尋ねた。このダンジョンは《迷い》の名の通り、マップが入れ替わったり霧が出たりと、地図がなければ非常に困る場所だ。実際、ここで迷って野営するハメになったという友人は片手では足りないほどで、そんな話を聞くたびに俺は苦笑していたが、ここで自分も野営しました、なんてことになればその友人に笑われることになる。それはイヤだ。

 

「うーんと、確かこの辺りに入れていたハズ…」

 

 と言いながらストレージを探っているユウキを見ながら俺は不安に駆られた。ユウキは慎重さに少し欠ける嫌いがあり、そのせいで色々と面倒なことになったことがある。

 

「あ、あったよレイ」

 

 自慢げに地図を実体化し見せてくるユウキに「当たり前だろ」と言いたい気分だったが、危うく自制する。ここは仮想世界とはいえ、デリカシーというものはちゃんと(もちろん心理的にだが)存在する。ここでユウキに物申すのはそれに反した行為だろう。

 

「OK、それならいい。じゃ、行くか」

 

「了解っ!前衛はボクで、後衛はレイだよね?」

 

 《マクアフィテル》を抜きユウキが応える。

 

「ああ、よろしく」

 

 俺も《ライトディフェンサーM4CR》を装備する。ボス戦など大規模な部隊を組織する戦闘なら一撃が重い狙撃銃の方がダメージ効率がいいが、非ネームドモンスターとの戦闘や対人戦では小回りが利き、装弾数が多い突撃銃の方が効果的だ。

 

 

――――――――――

 

 

「レイ!援護お願いっ」

 

 ユウキが紫憐剣専用ソードスキル《アメジスト・バース》を放ちながら言った。

 

 俺達はこの《迷いの森》に出現する猿人型モンスター《ドランクエイプ》と戦っている。このダンジョンに出てくるモンスターの中では強力な部類に入るが、攻略組でありユニークスキル持ちの俺達2人の敵ではない。

 

「了解」

 

 短くそう答えると、俺は銃の簡易スコープの照準をドランクエイプに合わせ、わずかに体を捻る。その動きをシステムはガンスキル(システム的には《ソードスキル》だが個人的にそう呼んでる)のモーションとし、スキルが発動する。

 

パパパパーン

 

 《ライトディフェンサーM4CR》の銃口から発射炎が上がり、ほのかに青く光る数十に及ぶ銃弾がドランクエイプに襲いかかる。

 

「グギュルァァ!!」

 

 叫び声を上げながらドランクエイプが後退する。俺が放った突撃銃上位技《サイクロンマニューバー》は、一発も外れずに命中し、ドランクエイプの体力を大量に奪い去る。

 

「ユウキ、やれっ!」

 

 その俺の言葉を聞いたユウキは紫憐剣最上位ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》を放つ。紫に光る剣閃から放たれる十一連撃が半分を切っていたドランクエイプの体力を残さず奪い取った。

 

パリィン!!

 

 ポリゴンの破砕するその音を耳に残し、ドランクエイプは消滅した。

 

「お疲れ」

 

 俺は剣を鞘に納めたユウキにそう声を掛けた。これまで二十数体のドランクエイプを狩ったが、被ダメージは2人とも0。圧倒的な戦闘だった。

 

「お疲れ、レイ。そろそろ………」 

 

(キャァァ!!)

 

「………」

 

「………またか」

 

 その叫び声を聞いた俺とユウキの脳裏に、1ヶ月前の惨劇が浮かぶ。もう二度とあんな光景は見たくないし起こさせる訳にはいかない。

 

「距離はここから大体500mくらい、3時の方向から聞こえる!急ぐぞ、ユウキ!」

 

 俺はそう言いながら走り出す。ここは最前線だ。多数のモンスターに包囲されたら勝ち目は限りなく薄い。

 

「レイ、ここから狙えないのっ!」

 

 走りながらユウキは俺に聞いてくる。確かに《ディスティニスロウターAR50》の有効射程(狙撃によって相手に効果的な損害を与えられる距離)は1000m以上だ。出来ないことはない。

 

「出来なくはないが、間違えてプレイヤーに誤射する危険がある。そんなリスキーな選択は俺には出来ない」

 

 俺は戦闘音の向きを確認しながら敏捷力を全開にして急ぐ。

 

「レイッ!近いよ」

 

 ユウキのその声に、俺は《索敵》を発動し、プレイヤーを探す。相手が《隠蔽(ハイディング)》スキルを使っていれは発見できない場合があるが、戦闘中ならそれはないだろう。

 

「……いた」

 

 俺達がいる位置にほど近い場所に1人プレイヤーがいる。

 

「………大丈夫か!」

 

 俺とユウキはそのプレイヤーの元に辿り着くと、武器を抜いた。

 

「え?あ、助けてくれるの?ありがとうっ!」

 

 その少女の声にどこか聞き覚えがあるような気がしたが、気のせいだろう。

 

「あぁ、行くぞ!」

 

「うん!」

 

 俺とユウキはその少女を助けるべく、モンスターに攻め掛かった。

 

 

――――――――――

 

 

パリィン!!

 

 ポリゴンの破砕音と共にモンスターが消滅するのに、2分と掛からなかった。

 

「ねぇ、君ってもしかして……」

 

 その少女の声に俺は振り向き、その顔がはっきりと見えた。

 

「………アル!!?」

 

「その声は、柃君っ!?」

 

 俺達2人は同時に叫んだ。後ろでは事情を飲み込めていないユウキが目をパチパチさせている。

 

「えっと、どういうこと?レイ?」

 

 ユウキの後ろから、黒いオーラが出る。この状態になったユウキを怒らせるとめちゃくちゃ怖いので、うまく収めないといけない。

 

「えっとな、ユウキ……」

 

「いいわ、柃君。あたしが説明する」

 

 といって少女、弱冠12歳にしてVRの第一人者と呼ばれる天才科学者、七色・アルジャービン博士は話し始めた。

 

「えっと、あたしと柃君は現実での友人……というか幼馴染かな。で、あたしはVRの研究の一環でこの《SAO》にログインした。でも閉じ込められたから、他の皆やたまたま会った梓君と一緒にレベルを上げて、最前線で攻略に加わっていた。だけど、このダンジョンで他の皆とはぐれてしまってたら、2人が来てくれたって訳」

 

「梓がいるのかっ!?」

 

 俺はそこに一番驚いた。俺の双子の弟、梓は一緒にログインしようといっていたが叶わず、そのままいないと思い込んでいた。

 

「えぇ、あたしたちと会ってからも、ずっと柃君のことを探していたよ」

 

「マジか……ちなみに俺はここではレイっていうネームだから、あまり本名で呼ばないでくれ」

 

「そうだったわね、私はここではセブンよ。よろしくね、レイ君。ちなみに、そこの君は?」

 

 いきなり質問されたユウキは一瞬戸惑うような表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。

 

「初めまして、セブンさん。ボクはユウキ。よろしくねっ!」

 

「初めまして。レイ君のパートナー?」

 

「うん、まぁそんな感じだ。……他の奴はいないのか?」

 

「うーん。もうそろそろ来てもおかしくないけど」

 

 セブンは主街区の方を見る。はぐれてどの位経つとかは分からないが、他のパーティーメンバーが地図を持っているなら、フレンドの追跡機能で見つけられるはずだ。

 

「どうする?このまま動くか、他のメンバーが来るまで待つか。俺はどっちでもいいけど」

 

 そういうと、ユウキは少しニヤツとした。

 

「どっちでも一緒だよ、レイ」

 

「………?どういうことだ、ユウキ?」

 

 俺はユウキのその言葉の意味を計りかねた。

 

「あっち見てみてよ、レイ」

 

 ユウキはそう言いながら指を差す。俺はその方向に目を向け、そして理解した。

 

「あぁ、そういうことか……」

 

 その方向には、こちらに向かってきている6人位のプレイヤーのパーティーがいたのだ。

 

side out

 

「どこにいったんだろ、リーダーは」

 

 楓野梓ことアズサは呟いた。

 

「さあな、あいつの事だ、俺達の助けを待っているかフィールドを彷徨っているかのどちらかだろうな」

 

 そうぶっきらぼうに言うのはリーダー、つまりセブンの護衛役であるスメラギだ。

 

「そんなことより、お兄さんは見つかったの?アズサ?」

 

 リーダーの安否を《そんなこと》と軽く済ましアズサに話し掛けてきたのは短剣使いの少女、フィリアだ。

 

「うーん、それらしき人はいるんだけど…………」

 

 そう言いながらアズサは一枚の新聞を見せた。そこには《新ユニークスキル使い《神銃》《絶剣》現る!!》という記事が載っていた。

 

「確かに柃君に似てるね」

 

「うん、確かに」

 

 と口を揃えて言うのは片手直剣使いのレインと短剣使いであり、《索敵》と《隠蔽》をほぼ完全習得している諜報員(エージェント)、ファルスだ。

 

「スメラギ、索敵に掛かった。前方に3人」

 

 ファルスが報告する。

 

「分かった。警戒は怠るな」

 

 アズサ達4人はその指示に従い、少しずつ前進した。

 

sideback

sideレイ

 

「来たみたいだぜ、セブン?」

 

 俺は前方からやってくるパーティーに目をやった。全員が抜剣しており、警戒を怠ってないところを見ると、相当対人・対モンスター戦闘に手練ているメンバーだろう。

 

「スメラギ――!ここにいるよ――」

 

 セブンがそう叫ぶと、相手のパーティーのリーダーらしき人物がこちらに気づき、セブンの姿を確かめると、剣を納めて走ってくる。他のパーティーメンバーもそれに続き、俺達の前で止まった。

 

「スメラギ、レイン、フィリア、アズサ、ファルス!やっと来てくれた!」

 

「お前が俺達とはぐれたからだ。……久しぶりだな、柃」

 

「久しぶりだな、住良木。あとこの世界では俺はレイだ。……梓、ここに来ていたのか」

 

「兄さん……。やっぱり《神銃》って兄さんなのか……?」

 

 俺の双子の弟、アズサは尋ねてきた。ユウキを除く全員が俺に視線を向ける。

 

「あぁ、そうだ」

 

 俺がそういった後、5人の目線がユウキに移る。

 

「じゃああなたは《絶剣》のユウキさんですか?」

 

 栗色の髪の少女、フィリアが尋ねる。

 

「う、うん。そうだけど……」

 

 ユウキがそう答えると、5人が視線を合わせ、頷く。

 

「そういうことか……」

 

「柃君もやるようになったよねぇ……」

 

「ほんとに………」

 

 俺は完全に状況を理解した。多分、彼らは俺が《神銃》、ユウキが《絶剣》だとわかり、こう考えた。「あの2人は付き合っている」、と。

 

 

「まぁ皆、そんな話は後にして、取りあえず自己紹介をしましょう」

 

 セブンの鶴の一声に内心助かったと思った俺は、口を開いた。

 

――――――――――

 

「……」

 

「………」

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………」

 

「…………………」

 

「どうしたの、皆?あたし何か変なこと言ったかしら?」

 

 黙り込む俺達にセブンは首を傾げる。

 

「いや、おかしいことはないけど、いきなり過ぎるだろ!?ギルド作ろうなんてさ」

 

 俺は口を開く。自己紹介が一通り済んだ後、いきなりセブンが「そうだ!ここにいる皆でギルド作ろうよ!」と言ったのだ。

 

「そうだよセブン。いくら私たちが攻略組に入れるほどのレベルとか持っていても、もう少しお互いのことを知ってからの方が良いよ。特にユウキちゃんは私たちのことあまりよく知らないんだしさ」

 

 セブンの相棒(姉)の枳殼虹架ことレインが言う。確かに現実でよく会っていて彼女たちのことをよく知っている俺はともかく、ユウキはほとんど彼女たちのことを知らない。

 

 そんな状態ならギクシャクする(ユウキの性格ならその心配は少ないだろうが)可能性がある。

 

「別にボクはいいけど……」

 

「ほらっ!ユウキちゃんがいいならいいの!ほらレイ君、すぐに3層のギルドクエに行くよ!」

 

 ユウキが肯定したのに勢いを得たセブンは俺をぐいぐいと引っ張る。

 

「分かったよ……多数決で決めよう」

 

「へ?」

 

 てっきり承諾されると思っていたらしいセブンが前につんのめる。

 

「普通OKするところだよね、そこっ!」

 

「いや、多数決にしよう。その方が後が楽だしな」

 

「え」

 

「じゃあ全員、賛成か反対か言ってくれ」

 

 俺がそういうと他のメンバーは顔を見合わせた後、意見を述べた。

 

「うーん、まぁ賛成かな」

 

「賛成」

 

「えっと、賛成」

 

「同じく」

 

「さーんせい」

 

「賛成だ」

 

「ボクは賛成」

 

「俺は棄権……かな?」

 

 上からレイン、ファルス、フィリア、アズサ、セブン、スメラギ、ユウキ、俺だ。賛成7に棄権1、つまりギルドを作ると……。

 

「分かった。作ろう……ってかリーダー誰にするんだ?」

 

「レイ君だよ。だってユニークスキル持ちだし攻略組の中でトップでしょ?あ、ちなみにサブリーダーはユウキちゃんに任せるね」

 

 そのセブンの言葉を聞いたユウキはびっくりしたように見えた。

 

「ふぇっ!ボクはそんな役、できないよ?」

 

「大丈夫。あくまで肩書きとして、よ。だって基本的には色んなことはリーダーのレイ君がしてくれるし、どうせそんなにギルドを大きくするつもりはないから、そんなにユウキちゃんに責任が重くなるようにはしないしさ」

 

「うーん、ならいいかな」

 

 そういってユウキが納得すると、セブンは俺に視線を向ける。

 

「分かったよ……じゃあ3層に行くか……」

 

「OK、今すぐに行こう。皆、大丈夫だよね?」

 

「「「「「了解!!」」」」」」

 

 俺達は主街区、そしてギルドクエストが受けられる3層に向かった。

 

―――――――――

 

2023年7月22日第3層迷宮区

 

「つ、疲れた」

 

 俺達はギルドクエストの最後のクエストであるボスを倒し、安地部屋で休息していた。

 

「まぁ3層だからこんなもんか……スメラギ、どれ位掛かっていた?」

 

 俺は横で座っているスメラギに問い掛けた。

 

「5分ちょいってとこだ。本当にこいつ、クエストボスか……?」

 

 その呟きを聞いて、俺は苦笑した。さっき皆のレベルを訊いてみると、攻略組の平均である47を全員越していた。そんなメンバーではるかに低層のボスと戦えば、まぁ結果は………この通りだ。

 

「やったー!これでギルドが作れる!」

 

 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶセブンに、俺は尋ねた。

 

「そういえば、ギルドの名前はどうするんだ?」

 

「えっとね、これはあたしとお姉ちゃんの名前を少しもじっているんだけど……、ほら、皆ってそれぞれ違う魂っていうか意志を持ってるよね?だからその色とりどりな意志が交わったら綺麗な虹になるかなって思ったんだ。だからギルドの名前は虹色の魂っていう意味の《レインボー・スピリッツ》なんてどうかな……?」

 

「いいんじゃないか?」

 

「いいと思うよ!」

 

「さすがセブン!」

 

「いいと思う」

 

「同じく」

 

「うんっ!いいと思うよ!」

 

 上から俺、ユウキ、レイン、スメラギ、ファルス、フィリアである。

 

「じゃ、戻るぞ。ていうかギルドホームは何層にする?」

 

「24層とかいいんじゃない?前にホーム売り出していたよ」

 

 フィリアが言った。確かに24層主街区《パナレーゼ》は湖に浮いた無数の島を連結してできている街で、景色もキレイだ。

 

「へぇ、それはいいな。それ、どれくらいの値段だった?」

 

「えーと、大体六千kくらいかな」

 

「結構高いね……」

 

 ユウキが呟く。kが千コルを表しているので、六千kは六百万コルだ。8人で折半しても1人あたり……七十五万コルを支払う計算になる。

 

「1人あたり七十五万コルか……。行けるか、皆?」

 

「「「「「「多分」」」」」」

 

 即答に俺は少々面食らったが、これでギルドホームの問題は解決したな……とほっとしていると、いつの間にか主街区《ズムフト》についた。クエストのNPCにボス討伐を告げ、めでたく《レインボー・スピリッツ》は正式にギルドになった。

 

 その後、「すぐにギルドホームを買おう!」というセブン達の要望に従って24層《パナレーゼ》に向かい、速攻でギルドホームの契約を済ませてしまった。

 

 

――――――――――

 

 

2023年7月22日第24層《パナレーゼ》 《レインボー・スピリッツ》ギルドホーム

 

「じゃあ、《レインボー・スピリッツ》結成を祝って、乾杯!」

 

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

 俺の音頭に合わせて全員がグラスを掲げる。

 

「いやぁ、まさか俺がギルドリーダーになるとはな……」

 

 俺は酒を飲みながら呟いた。もちろん仮想の酒なので14歳、つまり未成年の俺でも飲めるが、アルコールが入っていないはずなのに飲み過ぎると《泥酔》という状態異常に掛かる。ちなみにこの《泥酔》になるかならないかのボーダーラインは個人差があり、多分現実のアルコール耐性を基準にしていると思われるが、例えば俺は相当な量を飲んでも酔わないがユウキはかなり少ない量で酔ってしまう。

 

「まあそう言うな、レイ。もしかしたら案外面白いかもしれないぜ?」

 

 そういうのは現実での友人である真垣稜ことファルスだ。《索敵》や《隠蔽》スキルを優先して上げている諜報官、要するにスパイだ。

 

「いや、低層で何度か即席のボス攻略部隊や救援部隊を指揮したことがあるが、アレは相当きつかった。いくら少数のメンバーでも、配置や役割などの作戦はいくらでもある。その中から効率・安全性で最も優れた案を選ばないといけないリーダーってのは相当きつい仕事だぜ?しかもその判断がミスったら被害は甚大なものになる。その一番の例が25層ボス攻略戦だ」

 

「ああ…」

 

「《軍》、当時の《アインクラッド解放隊》が《ドラゴンナイツ・ブリゲード》や俺達ソロプレイヤーを出し抜いてボス攻略を強行した。クォーターポイントである25層はこれまでのボスとは一線を画す奴が出てくるのは当たり前だった。でもキバオウ以下36人の攻略部隊は単独での攻略を目指し、ボス部屋に突入した。……結果は散々な物だった。《アインクラッド解放隊》の動きに気付いた俺はユウキやキリトを含むソロプレイヤー12人の第一次救援部隊を率いて彼らの救援に向かった……」

 

「で、どうなったんですか……?」

 

 いつの間にか話を聞いていたフィリアが聞いてくる。

 

「…そこは地獄だったよ。俺達、第一次救援部隊がボス部屋に到着した時点でもう6名の死者が出ていた。戦線は崩壊し、統率なんてあったもんじゃなかった。俺達はなんとか戦線を立て直し、第二次救援部隊の到着まで持ち堪えた。でも、最終的に死者は16人に上り、その殆どは《アインクラッド解放隊》の精鋭だった。どういう事か分かるか……?」

 

「いや……」

 

「この攻略戦は《アインクラッド解放隊》が暴走した末に起きた悲劇だった。もっと慎重に進んでいたら死者はもっと少なかった。つまりそれだけデスゲームと化したこの《SAO》では指揮官の質が大きく問われる、ということだ。俺にそれだけの才能があるか否か……」

 

「……」

 

 俺の話を聞いていたスメラギ、ファルス、フィリアが黙り込む。

 

「…ゴメンな、今はお祝いの場なのにこんな話をして……」

 

「いや、いいさ。ここは普通のゲームじゃないしな……。それに、お前のそんな性格はここでは美徳さ。しかも…」

 

 そこまで言ってファルスは一度セブンやユウキ達の方を向いて一度言葉を止めた。案の定、ユウキはすぐに酔い、セブン達の質問攻めに遭っている。

 

「別に俺達はお前の判断が間違っていても責めはしないさ。戦場では指揮官がいつも正しい判断を下すとは限らないし、もし間違っていたら自分達の力でその状況を打ち砕くだけさ」

 

 ファルスのその言葉に俺は少し救われたような感じがした。

 

「そうか…有り難うな、ファルス」

 

「あれれ~?ここだけ何か雰囲気が暗いよ~。ほら、レイももっと楽しもうよ」

 

 そうユウキに腕を引かれながら、俺はある決心をした。

 

 この仲間を絶対に全員守り切る、と―




レイ「ありのまま今回起こった事を話すぜっ…!ユウキと最前線で狩りをしていたら現実での幼馴染のセブンこと七色に出会ってそのまま彼女の仲間に出会ったら弟がいてそのままギルドを作ろうという話になって速攻でギルド結成&ギルドホーム購入となった…。な、何を言っているかよく分からねーと思うが俺にもよくわからねー、展開の速さとかなんてチャチなもんじゃねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を見た気がしたぜ……」
 はいその通りです。すみません(´ω`)。次はそんなことはしないのでご安心を。次回は区切りの第10話なのでちょっと頑張ります。お楽しみに!!

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