ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~   作:人民の敵

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 同日に2話はきついぜ……(笑)。第4話、どうぞご覧下さい。


《第4話》風呂場が修羅場に

side レイ

「ごめん、待たせた」

 

 と言って俺は待っていてくれたユウキ・キリト・Asunaのもとに走り寄った。

 

「もう、レイ遅いよ~。ボク待ちくたびれたよ」

 

 と不満を言うユウキは、それでいて何か嬉しそうだ。多分女性プレイヤーが仲間になったから、男女比が変わったということだろう。

 

「悪かったって、ご飯奢るからさ……キリトと……アスナさんもどうですか?」

 

「もちろん俺は大歓迎だけど……」

 

「……あなた、何で私の名前を?」

 

 えっ!と一瞬言いそうになるが危うい所で自制する。彼女がMMO初心者だということを忘れていた。

 

「このへんに、自分のHPゲージがあるだろ?その下に俺達の名前もあるはずだ」

 

 アスナの瞳が動き、俺達には見えない文字列を捉えた。

 

「れ……い。ゆ……う……き。き……り……と。レイ、ユウキ、キリト?これがあなた達の名前?」

 

「ああ、よろしく、アスナ」

 

「よろしく!!」

 

「よろしくな」

 

 上から俺、ユウキ、キリトである。

 

「よろしく」

 

 アスナが俺達3人の名前を知ったところで、ユウキが俺に、

 

「レイ、あれくれる?」

 

 と言ってきた。ユウキが右手に持っているものを見て《あれ》の意味を理解した俺は、

右手を動かしてウィンドウを開くと、ユウキの言う《あれ》をアイテム欄から選び、オブ

ジェクト化する。実体化したその小さな素焼きの壺をユウキに渡す。

 

「ありがとうレイ。優しいね♪」

 

「褒めても何も出ないぞ」

 

「また貰えるかもしれないじゃん」

 

 と言いながらユウキは左手にその壺を、持ち、右手に持ったパンを壺に突っ込もうとしてる。

 

「何、その壺?」

 

 とまたアスナ質問してきた。

 

「こr」

 

「これはパンに付けるクリームで、とーっても美味しいんだ!!」

 

 答えようとしたがユウキにセリフを奪われた。

 

「おいユウキ!!俺のセリフ奪うな!」

 

「いいじゃん別に。前回殆ど喋ってないんだから!」

 

 ……前回?こいつ、何言ってるんだ?と俺は思ったがあえてスルーした。

 

「うーん、ユウキちゃん!これ美味しいね!」

 

「でしょ!!」

 

 と言う声に後ろを見やるとユウキとアスナの2人が恐ろしい勢いでパンとクリームを減

らしていた。

 

「ストップ、ストープ!」

 

 と俺は2人の勢いを止めようとしたが、

 

「ぬぁに、レイ」

 

「こんなに美味しいもの譲る訳ないわ!」

 

 といった具合で女性2人にそう言われると俺は何も言えない。一縷の望みを込めてキリトを見ると、俺に聞くな、といいたげな顔をしていた。

 

「あの~、この後俺が食事奢ることになってるんですけど……」

 

 と控えめに俺が言うと、女性陣ははっと気が付いたらしい。

 

「「なんでその事を言わないの(よ)」」

 

 と同時にユウキの右手がレイの顔に飛び込んで来た。幸いここは《圏内》なので、ユウキのその一撃は犯罪防止(アンチクリミナル)コードによって俺の顔に炸裂する寸前に止まったが、衝撃が伝わることは同じなのだ。

 

「……理不尽だっ!」

 

 さすがにこれは俺は悪くないと思う。

 

「もういいや、ご飯の件はまた後日ってことで、さっさと宿屋に行こ」

 

 ユウキのその言葉が、後々大きな禍根となることを、この時の俺は知らなかった。

 

――――――――――

 

「ここだ」

 

「え、この広さで普通の宿より30コル高いだけ!?どんな穴場見つけてんのあなた達!」

 

「といっても1つしか確保できてないから、普段はユウキを寝室に入れて俺とキリトはリビングのソファーで寝てる。……お風呂はそこなので、どうぞ」

 

 と俺がいうと、アスナはユウキと風呂の中に消えた。

 

side ユウキ

 

「ささっ、アスナも入って」

 

 とアスナを湯船に入らせた後、ボクも入る。最近ずっと1人で入っていた(パーティーメンバーが2人とも異性なので、仕方ないが)ので、他の子とお風呂に入るのは、デスゲーム化したSAOにログインした日に姉と入ったきりだ。

 

「お姉ちゃん、どうしてるんだろう……」

 

 と呟くと、アスナが聞いてきた。

 

「ユウキちゃんってお姉ちゃんいるの?」

 

「うん、一緒にSAO買って、一緒にログインしようって言ってたけど、お姉ちゃんが用事

で家に帰るのが遅くなって、ボクが先にログインしたんだ。お姉ちゃんがログインしているかも分からないから、ちょっと寂しいかな…」

 

「ふうん……。大変なんだね。で、ユウキちゃんはレイとキリト、どっちの方が好き?」

 

「ふぇっ!?」

 

 そのアスナの質問に、ボクはどう答えたらいいのかしばらく迷ったが、本心の方を答え

た。

 

「うーん。ボクはレイの方が好きかな」

 

「ユウキちゃん、顔がすごく赤いよ。ホントにレイに恋してるんじゃないの?」

 

 と言われてボクは水に自分の顔を写した。

 

「…えっ!!」

 

 水面に写った自分の顔はとても赤かった。確かにボクはレイに好意を抱いているけど多

分パーティーメンバーとしてで、恋愛感情はない、はず。

 

「い、いやアスナ、ボクはそういう意味でレイのことが好きだっていう訳じゃないか

ら!」

 

「分かったよユウキちゃん、まあレイのことをユウキちゃんが好きだということだけ覚え

ておくわ」

 

「違うって!」

 

 まぁ確かにボクがレイのことを好きなのは間違いではないし、まっいっか。

 

 その後もボク達は裸で話をした。

 

side レイ

 

「………キリト」

 

「………何だ、レイ」

 

「俺達何していたらいいんだ?」

 

 俺は今日貰った《アルゴの攻略本・第1層ボス編》を読みながら言った。正直、風呂場に視線を向けそうとするのを抑えられなくなっている。

 

「俺に聞くな……」

 

 コン、コココンと小刻みにノックがあった。

 

「……あいつか」

 

 俺は言った。あのノックは俺達とある人物の間で決めた合図だ。

 

「多分な。でも一応警戒してくれ」

 

「了解」

 

 といって俺は背中の《アニールブレード+6》をいつでも抜けるように構えた。

 

「…開けるぞ」

 

 

 ガチャッ!

 

 

「よう、アルゴ、珍しいな」

 

 窓から入ってきた人物、情報屋《鼠のアルゴ》は、俺とキリトを見てニッと笑った。

 

 

「まあナ、クライアントが、どうしても今日中に返事を聞いてこいっていうもんだからサ」

 

 そのまま、平然と部屋に侵入し、俺達が座っているソファーの向かいに座った。俺は部

屋のワゴンに移動し、自分を含めて3人のミルクを入れ、ソファーに戻った。テーブルにコップを3つ置くと、《鼠》はニヤッと笑った。

 

「レー君にしては気が利くナ。睡眠毒でも入っているのカ?」

 

「それはシステム上無理だろ。というか第一《圏内》でそれをやっても意味がないだろ

う」

 

「確かにナ」

 

 とアルゴは頷き、俺が差し出したミルクをごくっと飲み干した。

 

「飲み放題にしては上質な味設定だナ。瓶詰めして売ったらどうダ?」

 

 俺はキリトと目を合わせてニヤッとした。

 

「なんダ、やったことあるのカ?」

 

「ああ、結果は失敗。宿から持ち出すと5分で耐久値が全損して腐敗する。罰ゲームに

使ってもいいと思えるほどのまずさだよ」

 

「それは飲みたくないナ。んで、本題に入るゾ」

 

「ああ、また交渉か?」

 

「ああ、キー坊とレー君の剣を買いたいって話、今日中ならそれぞれ3万9800コル払う

そーダ」

 

「「はぁっ!?」」

 

 俺とキリトは同時に叫んだ。

 

 それぞれ3万9800コル払うと、合わせて7万9600コルになる。俺達の《アニールブレード+6》は確かに1層最強クラスの剣だが、入手するためのクエストの苦労と強化費用を足しても3万コル+αで入手できる。

 

 それを2本原価より割高で買おうとするのはおかしいと思うべきだろう。

 

「で、名前は何コルで売ってくれるんだ」

 

「千五百コルダ」

 

「うーん、1.5kかぁー。分かった、出す」

 

 といって俺は五百コル金貨3つを弾いてアルゴに渡した。

 

「毎度。んじゃ確認してクル」

 

 といってチャットを打つと、すぐ戻ってきた。

 

「教えて構わないそーダ。……キバオウサ」

 

「「……………」」

 

 俺達は2人して黙るしかなかった。

 

「今回も交渉は不成立ってことでいいんだナ?」

 

「ああ。この交渉は不可能だ、とも伝えてくれ」

 

「……分かったヨ。ついでに隣の部屋借りていくヨ。夜装備に着替えたいからナ」

 

「ああ、……ん?」

 

 俺はアルゴが風呂場に入るのを見ながら疑問を抱いた。何か大事なことをわすれている

ような気がする。

 

「……………あ!確か風呂には……」

 

 と俺が気付いた時にはもう遅かった。

 

「キャァァァァ!」

 

「イヤァァァァ!」

 

 という悲鳴とともにアルゴではない2人のプレイヤーが出てきたところで、俺とキリト

の記憶は終わっていた。




 今回は《プログレッシブ》編ではお馴染みの情報屋《鼠のアルゴ》を登場させました。あと、今回は一瞬ユウキパートを入れて、ランのフラグをかなり強引に立てました。ユウキちゃんが若干メタかったですね。では、次回もお楽しみに!

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