ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~   作:人民の敵

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 これから更新ペースは上がっていくはず(?)なので、これからも応援お願いします!!


《第29話》ラスト・ミッション

 俺は第38層圏外村《チチェン》に転移した。すると、耳元の無線機が鳴る。

 

「はい」

 

『柃君。僕だよ』

 

「今の状況で連絡してくるのは貴方くらいしかいないじゃないですか。で、どうしました」

 

 俺は歩きながら言った。

 

『いやあ、別に何かあるわけじゃないんだけれど。任務(ミッション)は順調かい?』

 

「順調ですよ。今、最後の()()に向かっているとこです。これで少しは貴方達は安心できるんですかね?」

 

『そうだね。少なくとも()はそうだろうね』

 

「その言い方だと、今頃そっちは大変なんじゃないですか?」

 

『その通りだよ。君がいてくれたおかげで、少しはましだけれども』

 

「別にやらなくてもよかったんですけどね。まあ、()()()()されたらやるしかなくなるんですけど」

 

『本当に君には感謝してるよ。君がいてくれたおかげで()()()の治安が維持されているのだからね』

 

「後処理に今困ってるんですがね」

 

『ん、どういう事だい?』

 

「あまりにも()()()()()せいでこっちでの人間関係含めた後処理の方法に悩んでいるんですよね。そっちでは上が"消えた存在"を"存在しなかった存在"にしてくれるんでしょうから心配はしてませんけれども」

 

『それはまあ、君たちがこっちに帰って来てから話すとして、そろそろ切るよ』

 

「ええ、ではまた……………………………………

 

 

 

 

菊岡さん」

 

 俺は無線を切った。

 

「………」

 

 俺はHK416Cを構え、慎重に件の圏外村に近づく。途中、数度モンスターと遭遇(エンカウント)したが、最前線からはるか離れた低層フロア故、すぐに片づけることが出来た。俺は今までで数十人に及ぶ殺人者(レッド)を殺害し、1週間前からレベルは10以上上がり91になった。

 

 しかし、この1週間で随分殺したものだ。

 

「ふっ…………………」

 

 俺は自嘲気味に笑った。今までどうして自分を偽って来たのだろう。それは………

 

「お久しぶりです」

 

「ッ……………!!!!!」

 

 俺は跳び退いた。反射的にHK416Cを構える。

 

「お前だったのか……ディスペア」

 

 俺の眼前にいるプレイヤー、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の元サブリーダーのディスペアは剣の切っ先を俺に向けながら笑った。

 

「オブライエンってのはお前の事だったのか」

 

「レイさんなら分かりますよね。どっちかというとレイさんが性格的にあってそうですけど」

 

「今までどこにいた」

 

「《同盟》ですよ。最も、貴方や解放軍がメンバーを次々捕縛や殺害したんで壊滅しましたけど」

 

 ディスペアが言う。《同盟》はすでに壊滅したか。まさか、ここで連中(解放軍)が役に立つとはな。

 

「俺が来ることが分かったってことは………俺をおびき出したのか」

 

「そういうことです。まぁ、いくらおびき出しても遠くで発見されて対物狙撃銃で狙撃されたら一撃でお陀仏なので位置取りには疲れましたけどね」

 

「お前の目的はなんだ」

 

「前と一緒ですよ。つまり、リベンジですね」

 

「懲りないな」

 

「ただし………」

 

 ディスペアはそこで一呼吸置いて続けた。

 

「デュエルではないですよ。つまり、本当の()()()()ですよ」

 

「つまり、デュエル申請なしでってことか」

 

「そういう事です。もちろん、やっていただけますよね?」

 

「………良いだろう」

 

 俺はHK416Cを仕舞い、腰からティルウィングを抜く。

 

「最後ぐらい、この世界(アインクラッド)の流儀に従って終わらせてやるよ」

 

「良いんですか?」

 

「安心しろ、俺が銃に依っていただけじゃないって証明してやるよ」

 

 俺は言い終わるとともに飛び掛かった。初撃に選んだのは片手直剣七連撃ソードスキル《デッドリー・シンズ》。ディスペアはそれを迎撃する。スリップダメージは入る。

 

「不意打ちですか………………」

 

「お前たちが大好きな戦法だろ?」

 

 俺は言いながら目まぐるしく剣を動かす。斬り上げ、横薙ぎ、縦斬り。その悉くをディスペアは表情一つ変えずに迎え撃つ。

 

 ディスペアも負けじとソードスキルを発動させる。上斜め斬り、下斜め斬り、横斬り、回転斬り、十文字斬り、計七連撃。しかも全部に麻痺のデバフ効果付き。

 

「はぁっ!!」

 

 ディスペアはソードスキルが終わった瞬間に体術スキル《クラウド・クラッシュ》を発動させる。

 

ボム!!

 

「がっ………!!」

 

 腹に叩き込まれた一撃は重く、吹っ飛びかけるがなんとか踏みこたえる。

 

「チッ…………!!」

 

 俺は腰から煙幕手榴弾(スモークグレネード)を抜くと、歯でピンを引き抜き、投擲した。

 

バフン!!

 

 着弾点を中心に灰色の煙が広がり、俺とディスペアの間の視界は完全に遮られた。

 

「はっ!!」

 

 俺は片手直剣六連撃ソードスキル《マーク・クライシス》を発動させる。側面から奇襲したためか、ディスペアもこの攻撃は予想していなかったようで、目を見開いて俺が斬りかかるのを見ている。

 

「がはっ………」

 

グサッ!ザスッ!

 

 六連撃をもろに食らったディスペアのHPが目に見えて減少する。倒れ込むディスペアに追撃すべく俺がもう一度ソードスキルを発動させようとした瞬間―――

 

バン!!!!

 

 目の前で何かが炸裂し、俺は弾き飛ばされた。

 

「何……だと……」

 

 俺はかすかに呟いた。あれは……手榴弾。なぜ、あいつが手榴弾を持っている!?

 

「……………UCSFの武器庫から盗み出したんですよ」

 

 その疑問を、ディスペアが解決してくれた。

 

「まさか僕が持っているとは思っていなかったようですね。油断大敵ですよ、レイさん」

 

「………大きなお世話だ」

 

 俺は短くそう言うと、剣を構えなおした。

 

「はぁぁ!!」

 

 俺とディスペアは同時に飛び出し、何度も剣戟を撃ちあう。お互いのHPが少しづつ削られていく。そして――

 

「俺の勝ちだ、ディスペア」

 

 俺はソードスキルを強制終了させ、ディスペアの足を払う。

 

「なっ……!!」

 

 俺は片手直剣単発重攻撃ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を放とうとする。レベル91、しかもティルウィングの特殊効果《相手のHPが少ないほど攻撃力が上昇する》にブーストされた《ヴォーパル・ストライク》を食らえば、ディスペアのHPは消し飛ぶだろう。

 

 俺の《ヴォーパル・ストライク》はディスペアの首に炸裂し、HPを消し飛ばす―――

 

 

キィィィィィィィイィン!!!!!!

 

 

俺は目を見開いた。

 

「何で此処にいるんだ、ユウキ」

 

 俺のヴォーパル・ストライクを弾き飛ばしたのは、ユウキだった。

 

「全部、聞いたよ」

 

 ユウキが静かに口を開く。俺はティルウィングを腰の鞘に納めた。

 

「セブンちゃんから全部聞いた。レイの過去の事」

 

「何を」

 

「レイが自衛隊に所属していたことも、レイがこのゲームを作ったことも、全部」

 

 俺は無表情のまま腰のホルスターからベレッタM92自動拳銃を抜く。装弾し、ユウキに銃口を向ける。引き金に手を掛け、そして―――

 

 俺は拳銃を降ろした。彼女を撃つことなんて、出来るはずがなかった。

 

「行くぞ」

 

 見ると、ディスペアがUCSFの隊員に拘束され、連行されるところだった。

 

 残されたのは、俺とユウキだけだった。




 はい、今回、レイがアリシーゼーション編のブレイン、『食えない男』こと菊岡誠二郎陸上自衛隊二等陸佐と無線で連絡を取っていました。
 彼は『外』の世界にいるはずなのに?どうしてなのか?
 次回、『失踪編』終結です。次々回からは原作準拠になると思います。
 次回もお楽しみに!!
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