ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~ 作:人民の敵
sideユウキ
昨日のラフィン・コフィン討伐戦からレイがどこかに消えた。キリト曰く、討伐戦の途中で十数人のラフコフメンバーと共にどこかへ消えたという。
「どこに行ったの……?レイ……」
ボクは言った。あれからギルドやフレンドの追跡機能も切られ、レイの行方は分からなくなった。ただ、生きていることは確かだった。そしてもう一つ、彼が行方を眩ませた直後、極端に犯罪者ギルドが減り始めた。あるギルドは狙撃され全滅し、あるギルドは全員が対人地雷によって爆殺された。あるギルドは銃剣で全員を斬殺された。それを知ったプレイヤーはその犯罪者ギルドに対する徹底的な虐殺を《神の浄化》と呼んだ。そして……
「やはり、犯罪者を虐殺しているのはレイなのか…………?」
隣でキリトが言う。殺害方法や手並みの良さから考えられるのは1人しかいない。
「なんで……?」
ボクはまた呟いた。どうしてレイがそんな無慈悲な
でも………
「なんでレイは殺すの?ここで人を殺したら現実でも死ぬって分かっているはずなのに………!」
「ユウキちゃん……」
振り返ると、セブンがいた。
「話したいことがあるの。来てくれるかな……?」
セブンが言う。彼女の声は、どことなく暗い。
「う、うん」
――――――――
「それで…話って何?」
ボクが聞くと、セブンは頷いてから話し出した。
「これは……私とレイ君がアメリカに留学していた時に話は遡るの」
そこからセブンの話は始まった。
「私たちは、卒業の時、2人で共同研究を卒業研究としてしたの。そのテーマは…………《仮想現実の有効性と技術的可能性についての研究》。つまり…VR技術についての研究」
「え?」
「しばらくその研究を続けていた私たちのもとに、ある人物が訪れてきたの。研究を手助けしたいと言ってね。その人物の名前は…………………………………」
「時の天才量子物理学者、茅場晶彦」
「え、茅場晶彦って、あの?」
ボクは驚いて訊いた。
「ええ…それで、このゲームは
「ど、どういう事?」
「もう少しで研究が完成するという日、茅場博士は私たちにある事を話したの。それが、このVRMMO《ソードアート・オンライン》の開発に参加しないかという話だったの。私たちはそれを承諾した。私たちは脳をスキャンする、つまりVR技術の根本の部分を開発した。そして茅場博士はそれを私たちが渡す際、ある言葉を残したの。その言葉が………」
セブンは一旦息を整えてから言った。
「『これはゲームであっても遊びではない』。私たちがあの時、開発への協力を拒んでいたら、このゲームは生まれていなかったかもしれない。そうすれば、今まで死んだ3500人以上の人々は生きていたかもしれない。私たちは、すでに何千人もの人を……………」
セブンの目には涙が浮かんでいた。普段はクールなイメージが強い彼女だけに、余程の事なのだろう。
「大丈夫?」
ボクが声を掛けると、セブンは「ありがとう」と言ってから首を一度振った。
「まだ、なの」
「え?」
「これは私たちの罪の話。これから話すのはレイ君のもう一つの人格の話」
セブンは言った。そして続ける。
「ユウキちゃんのレイ君のイメージは?」
いきなり聞かれ、ボクは戸惑った。彼のイメージ。ボクの彼のイメージはクールでちょっとシャイだけど優しい。そんな感じだ。
「クールで優しい………かな」
「でしょうね。ほとんどの人は彼の印象をそう位置付ける。だけど、それは彼の表の人格」
一呼吸置いてからセブンは言った。
「彼のもう一つの人格はユウキちゃんの彼のイメージを覆す物。それでもいいなら話すけど、それが嫌なら私はこれ以上話さない」
ボクは頷いた。もうここまで聞いたからには逃げるわけにはいかない。
「そう。なら話すわ。先に1つユウキちゃんに訊くわ。『横須賀戦争』は知ってる?」
ボクは頷く。
「正直に言うわ。レイ君はその時に自衛官として出撃し……そして、敵兵士2名を射殺している。彼流に言えば《呪われた存在》ね。しかも彼の場合、
「2人を射殺……?」
「そう。そしてあの事件以降、彼は変わり果てた」