ソードアート・オンライン~スコープの先にある未来へ~ 作:人民の敵
ではお楽しみください!!
2024年4月24日AM9:00第57層主街区《マーテン》
sideレイ
始まりの街での騒動から一夜明け、俺達4人はマーテンのNPCレストランにいた。
「昨日は散々だったな……」
俺は呟いた。横ではキリトが深く頷く。
「それってレイとキリトが強行突破したのが悪いんじゃ……」
「あれは不可抗力だ、だよな?キリト」
「その通りだ」
キリトが俺の言葉に首肯する。
「不可抗力って……」
ユウキが呟いたところで1人の女性が入って来た。昨日の事件の目撃者、ヨルコだ。
「ねぇ、ヨルコさん。この名前に聞き覚えはある? 一人は、たぶん鍛冶職人で《グリムロック》。 そしてもう一人は、槍使いで《シュミット》」
ヨルコが俺達が座るテーブルに座ると、ユウキが口火を切った。
「……はい、知っています。昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」
「ボク達は昨日、犯行に使われた
作成者が《グリムロック》だったからね。 何か心当たりとか、思い当たることはないか
なと?」
すぐには、答えは返ってこなかった。長い沈黙を続けたあと、ゆっくりと頷いた。
「……はい……、あります。 昨日、お話しできなくて、すみませんでした……。私たちのギルドはある“出来事”……そのせいで、消滅したんです」
ヨルコの話をかいつまんで言えばこうだ。
ギルドの名前は
半年前、一度も見た事のないモンスターを討伐したら、そのモンスターからのドロップ品が出た。
そのアイテムは敏捷力が20上がる指輪だった。
このアイテムは、ギルドで使う意見と、売った儲けを分配しようという意見に割れた。なので多数決を取った。
結果は《3対5》で売却することになったのだ。
ギルドリーダーは前線の大きい競売屋オークショニアに委託することに決めたのだ。 リーダーは前線に一泊する予定で出かけたが……リーダーは、帰ってこなかった。
メンバー達は嫌な予感がして、何人かで《生命の碑》を確認をしたが、リーダーの名前の上に横線が入っていたのだ。
つまり、黄金林檎のリーダーは亡くなっていたことになる。
「グリセルダさんの『死』を知ったのはグリセルダさんが前線に行った、夜中でした。死亡理由は、貫通属性ダメージです……」
黄金林檎のリーダーの名前は《グリセルダ》という名前らしい。
「そんなレアアイテムを抱えて圏外出るはずがないよな……。 考えられるのは」
「睡眠PKだね」
ここまで、静かに聞いていたユウキが静かに呟いた。俺は頷く。
俺が考えついた事を話すか。
「ああ、ただ偶然とは考えにくいな。 リーダーのグリセルダさんを狙ったのは、指輪のことを知っていた人物……。 つまり……」
「黄金林檎の残り7人の誰かと言うこと?」
ユウキはこのような言葉を発した。
「ギルド黄金林檎の7人の中の誰か? 私たちも当然そう考えました。 なので、皆みんなが皆を疑う状況になり……、結果としてギルドが崩壊しました」
なるほどな、政府や軍隊でよくある事だ。
「ひとつ教えてほしい。 そのレア指輪の売却に反対した3人の名前は……?」
キリトが聞く。これは、重要な手掛かりになるかもしれない。
「カインズ、シュミット………。 そして、私です。 ただ私の反対理由は、彼らとは少し違いました。 私は……、当時、カインズと付き合い始めていたからです。 ギルド全体の利益よりも、彼氏への気兼ねを優先しちゃったんです。 バカですよね」
「ねぇ、ヨルコさん。 カインズさんと、ギルド解散後もお付き合いをしていたの?」
「……解散と同時に、自然消滅しちゃいました。 たまに会って近況報告するくらいで……、長く一緒にいればどうしても指輪事件のことを思い出しちゃいますから。 昨日もそんな感じで、ご飯だけの予定だったんですけど……。 その前に、あんなことに……」
「ごめんね……。 ボク達の質問で辛いこと色々聞いちゃって」
ヨルコは短くかぶりを振る。
「いえ、いいんです。 それで……、グリムロックですけど……」
ヨルコは一拍置いてから言った。
「彼は黄金林檎のサブリーダーでした。 同時に、ギルドリーダーの“旦那”でもありまし
た」
「リーダーのグリセルダさんは、女の人だったのか?」
「ええ。 とっても強い。と言ってもあくまで中層レベルでの話ですけど……。 強い片手剣士で、美人で、頭もよて……、私はすごく憧れていました。 だから……、今でも信じられないんです。 あのリーダーが、睡眠PKなんて粗雑な手段で殺されちゃうなんて……」
「じゃあ、グリムロックさんも相当ショックだったのだろうね」
アスナの言葉に、ヨルコはぶるっと身体を震わせた。
「はい。 それまでは、いつもニコニコしている優しい鍛冶屋さんだったんですけど……事件直後からは、とっても荒んだ感じになっちゃって……。 ギルド解散後は誰とも連絡取らなくなって、今はどこにいるかも判らないです」
「最後に一つだけ教えてほしい。 昨日の事件……、カインズを殺したのがグリムロック、という可能性は、あると思うか?」
「その可能性があるとしたら、あの人は指輪売却に反対した3人、つまりカインズとシュミット、それに私を全員殺すつもりなのかもしれません……」
俺達はこの事件が解決するまで宿屋を出ないようにと念を押すように言った。
もし、さっき聞いた情報が本当なら、指輪売却に反対した彼女が非常に危険な状況にあるからだ。
第50層主街区《アルゲート》
「ますます事態がややこしくなったな……」
俺は言った。
「確かにね。まだ殺害方法も分からないのに動機面まで加わるともう訳が分からなくなってくるわ」
「ここまで得た情報から考えれば、可能性があるのは3つ。正当な圏内デュエル、既知の手段を組み合わせた新たなPK手段、もしくは
「どうするんだ?」
キリトが聞いてくる。俺は少しニヤッとしながら言った。
「俺達より知識を持ってる人間、いやプレイヤーの力を借りる」
「まさかレイ君……」
アスナが怪しむような表情で訊いてくる。
「そのまさか、だ。そのプレイヤーとはズバリ………」
俺は一拍置いて言った。
「ギルド血盟騎士団団長、ヒースクリフだ」
「「……………………………………………………えええええええええっ!?」」
というキリトとユウキの声と
「やっぱり……」
というアスナの声が響いた。
「間違えてはないだろ?あの人物以外俺達以上に知識がある人間なんていない」
「それでも最強ギルドの団長を軽々しく呼び出すってのはどうかと……」
キリトが言う。
「分かってないな、キリト。頼れる人物ってのは即応可能なのが望ましいんだよ」
「左様ですか………」
キリトが言ってくる。俺はメッセージタブを開くと、ヒースクリフに協力を依頼する旨
のメッセを送った。
「初めて見た……団長を友人感覚で呼び出すヒト」
「誰の事ですかねぇ?」
きっかり2分後、ヒースクリフから今日に会えるとのメッセが来た。
次はヒースクリフとの会談(第2弾)です。
次回もお楽しみに!!
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