これが僕の英雄譚   作:猫と果実

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さてさてどうなることやら……


怪物祭 3

「…………ふぇ?」

起きた彼女は部屋を見渡しポカンとしている

「えっ!?なんで私部屋に戻ってるの?」

そう彼女はベル達のホームのベットで先程まで寝ていた。

「……ベルの事待ってて……誰かに呼ばれて……」

「全然覚えてない……ってそれよりベル!!」

慌ててベットから降りて服と髪型を整え直す

「あれからどれぐらい時間経ってるかわからないよ……」

「ベルの事だから探してくれてるとは思うけど、まさか家に居るとは思わないだろうし」

身支度を済ませドアに手をかけてる

ズゥーーン……

「???」

ズゥーーン……

「なにこの音?」

ズゥーーン……

「…………なんか嫌な予感がしてきた」

遠くから聞こえる音に不安を覚え、ベルの武器と防具をリュックにしまい

自分自身も動きやすい格好に着替え直す。

「ベルを見つけなきゃ!」

自分の直感を信じ駆け出しいていった。

 

 

 

 

「か、神様?」

なぜか大声を出した後、頭を抱えたまま硬直するヘスティア

「……ははは」

「!? 神様失礼します!」

「うわっ!?」

先程のヘスティアの声に気付き、確実に向かってくる音を聞いたベルはすぐさまヘスティアを抱っこし移動を開始する。

「ボクがしっかりしていれば……」

神様は何かを落としてしまったことにすごく落ち込んでいる

でも探しながらモンスターから逃げるの正直厳しい。

「あの武器がないとベル君が……」

そしてそんな状況でも僕の心配をしてくれる神様……

神様だけは何がなんでも守る。

「神様!!」

「な、なんだいベル君??」

「ステイタス更新をしてください」

「で、でもベル君……」

「お願いします」

ヘスティアはベルの瞳に宿る覚悟を見た。

何を言っても聞かないんだろうと思ってしまった、説得する前に自分が説得されてしまった気分だ。

「……わかったよベル君」

「ありがとうございます!」

モンスターに追われる恐怖を感じながらも、ベル君は格好いいなと、場に似合わないことを考えてしまう。

「神様!あちらの建物でお願いします!」

「うん!」

そうヘスティアに言うと滑り込むように建物中に入る。

そして上着を脱ぎ背中を見せる。

それに応える様にヘスティアは一滴の血をベルに垂らす。

「……えっ!?」

ヘスティアの声と共にベルの背中は発光し更新が完了する。

「べ、ベル君!もしかしたら君はきゃ!?」

ベルは言葉を遮る様にヘスティアを抱え窓から飛び出る。

その直後ベル達が入ってきた側の壁が爆ぜるとレッドバックが現れる。

「神様下がっていてください」

少し敵と距離を置き、ヘスティアを遮蔽物の影に隠す。

「べ、ベル君」

心配するヘスティアなだめる様にベルは告げる。

「大丈夫です、無茶はしませんから!」

そう言うとレッドバックの前に躍り出る。

しかしヘスティアは顔を苦めた、ベルが嘘をついていることに気づいたから。

「こい!!!神様は僕が守る!!!」

護身用のナイフ片手に恐怖(レッドバック)に立ち向かう。

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ、あっ!シルさん!!」

「シャルちゃん?」

慌てた姿で目の前に通りすぎたが、急ブレーキかけシル駆け寄る。

「べ、ベルを見ませんでしたか!!」

「シャ、シャルちゃん落ち着いて下さい!」

肩の揺さぶりに耐えかねシャルを引き離す。

「す、すみませんでした」

ペコリと謝るシャル、しかしすぐさま切り替え質問を聞き返す。

「ベルを見かけませんでしたか?」

「ベルさんの事は見かけませんでしたね……」

「そうですか……」

落胆の表情を浮かべる。

「何かあったんですね?」

「えっと……ベルとはぐれてしまって」

「……それだけですか?」

すっと目を細めシャルを見る。

「私自身もわからないです……でもなにか嫌な予感がして」

「シャルちゃん!お店に行きましょ!」

バッとシャルの手を取り走り出す。

「ちょ、ちょっとシルさん!?」

シルの手に引かれ『豊饒の女主人』に連れていかれる。

 

「ミアお母さん!」

「んっ?シルどうしたんだいそんな慌てて、店が午後準備中だからってドア壊すつもりかい?」

凄い勢いでドア開けるシルを少し叱りつけるように聞くミア

「ベルさんが!!」

「ベルに何かあったのかい?」

しかしシルの一言にすっと真剣な表情をする

「シルさん落ち着いて!?」

「なんだい次から次えと……ヘルガルじゃないかい」

「お、お騒がせしてすみません……」

騒ぎに気付き休憩入っていた皆も耳を傾ける。

「とりあえずシルにヘルガル、何があったんだい?」

 

 

説明を聞いた後少し考えたミアの行動は早かった。

「リュー、クロエ、ルノアでベルを探してきな」

「ただし問題事は起こすんじゃないよ?」

「はい」

「確かにこの三人が適任かな?」

「久しぶりにこそこそ動き回ってやるニャ!!」

あまりの判断の早さにシャルは驚く。

「私が感じた不安だけで動いてくれるんですか?」

それは純粋な質問だった

シャル自身もベルに何かあったんじゃないか?

もしかしたらって可能性だけで動いていたので確証もない。

しかし疑いもせず協力してくれたミアが不思議だったのだ。

「何もなければ笑い話にしてやればいいのさ」

「だけどねヘルガル、何かあってからじゃ遅いんだよ」

「ここじゃそうゆうことが起こることが多いのさ」

にかっと笑いシャルの頭を撫でる。

「やりたくてやってるのさ」

「礼は終わったらここで飯食ってくれればいいさ」

「……ありがとうございます!」

ペコリと頭を下げ、シルを見る。

「シルさんもありがとうございます!」

「ふふふ、心配なのはシャルさんだけじゃないですからね」

「ここの皆はベルさん好きですからね!」

シルの笑う姿を見て綺麗な人と見とれてしまうのは、女性でも仕方ないなとシャルは思った。

そう二人と話している間にリュー達は準備を終えている。

普段来ているウエイトレスの格好から、普段動きやすいときに着ているであろうとされている格好で現れた。

「先にいってるニャ!」

「行ってくるよ!」

「ヘルガルさんは私と来ていただいても宜しいですか?」

「は、はいリューさん!」

「ではシル、ミア母さん行ってきます」

「気を付けて行ってくるんだよあんたら」

「リュー!シャルちゃんとベルさんのことお願い!」

「まかされましたシル」

そしてベルを捜しに街と出る。

 

 

リューとシャルはベルと別れた場所に一旦戻り、周囲を確認し周りにベルがいないことがわかった。

「…クラネルさんの気配を感じないですね」

「もしかして家に戻ったのかな」

「すれ違いになった可能性もありますね」

「私一度戻って確認してきます!」

「そうしましょうヘルガルさん」

そう決めてベルのホームに戻ろうとすると、周りが騒がしい。

『モンスターが脱走したらしいぞ!!!』

『もうロキファミリアが討伐してるって話だぞ?』

『でもダイダロス通りで赤いモンスターが暴れてるの皆見たってさ』

思わず目を合わせる二人。

「どお思いますかヘルガルさん」

「……ベルって昔から問題に巻き込まれる事が多かったので」

心臓の音が大きく聞こえる、もしかしてベルがモンスターに襲われてるんじゃないかと不安が募る。

「ヘルガルさん急いでダイダロス通りに向かいましょう」

「リューさん?」

「落ち着いて聞いて下さいヘルガルさん」

「は、はい」

「恐らく目撃されているモンスターは今回『怪物祭』で使用されるであったモンスターだと思います」

「全部のモンスターの種類は把握していませんが、私の見立てでは今のクラネルさんが単騎で勝てるモンスターは1匹もいません」

「えっ」

リューの言葉を聞いて、何かが崩れ落ちそうな感覚になる。自然と体が震える。

「早急に向かって確認しに行きましょう、ここで落ち込んでいる暇はありません」

震える私をじっと見つめるリューさん……

あぁそうだ私は決めたんだベルを守るって、落ち込んでる暇なんてない!

「はい!」

シャルの返事に少し驚いた様子を見せると一瞬柔らかい表情が見えた。

「あなたは強い方だ、さすがにクラネルさんの幼なじみだ」

同姓である私も見とれてしまう綺麗な笑顔だった。

不謹慎だけどベルには見せられたいと思ってしまった。

「ではヘルガルさん失礼します」

すっとシャルに近づいたリューは、素早い動きで背後に回りお姫様抱っこをする。

「リュ、リューさん!?」

「私が抱えて走った方が速いので許してください」

そう言うと先程の走りと異なり、かなりのスピードで走り出す。

「きゃ!?リュ、リューさんも恩恵を授かっていたんですか!?」

「はい、この事はあまり周りに言わないでもらえると助かります」

「だから路地裏とか人気のない所から行ってるんですね!」

「そうゆうことです、ヘルガルさんしっかり掴まってて下さい」

リューに返事をする前にふわりと体が浮く様な感覚が起きる。

「近道しますので」

気づいた時には高い屋根の上に自分達がいることに気付く。

「えっ……もしかして屋根の上を跳んで行くんですか!?」

「しっかり掴まって下さいね」

またも返事をする前に浮遊感を味わう。

「~~~!?」

声にならない悲鳴を上げる。

余談だかシャルはあまり高い所は得意ではない。

 

「モンスターの鳴き声が聞こえます!」

スタンと屋根の上で止まり気配を探る。

「ひっく……うぅ飛ぶの怖いよぉ」

「もう少しの辛抱です」

少し素っ気なく答えて周りを見渡す。

「あれは!?」

遠目に見えたのはシルバーバックに似た赤いモンスターと冒険者が戦っているの姿。

(まさか強化種?もしクラネルさんが戦っていたらまずい!?)

「ヘルガルさん急ぎます!!」

「ひゃい!?」

シャルの返事を聞かず移動しようとしたとき。

雷が落ちた様な轟音が響いた。

「きゃ!?」

「!?」

しかもその音は先には冒険者とモンスター。

リューは直ぐ様飛び出し戦っている場に近づく。

「リュ、リューさん今のは!?」

「恐らく私が見た冒険者とモンスターの戦いで起きた衝撃でしょう!」

「えっ!?」

そして屋根から降り現場の近くに到着しシャルを下ろすと、悲痛な叫び声がすぐに聞こえた。

『ベル君!!!!???』

「「!?」」

その声に反応し道を抜けると、そこには倒れいるベルと少女の姿が目に入った。




ベル君……嘘だろ……

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