これが僕の英雄譚   作:猫と果実

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ベルはシャルの気持ちに気付く日はくるのかな……


では兎が織り成す英雄譚お楽しみください。


試練はどこで起こるかわからない

シャルが来てから1日目が経ち、今日はオラリオの観光をするため二人で出掛けているのだが、、、

「シャルー!先に行かないでよ!!」

「ふんっ!!」

昨日の夜から機嫌は直っていないのだ。

「シャル……」

ベルの事を見向きもせずせっせと歩くシャル

(…今の声のトーン落ち込んでるときのベルだ)

頭の中でむぅ~っと葛藤する、シャルは急に立ち止まりベルを見る。

その様子に驚きを機嫌を窺うように名前を呼ぶ

「シャル?」

「ご飯」

「ご飯?」

「朝ごはん奢って」

用件を告げるとプイッと顔をそらす。

それをみたベルはパァ~っと笑顔を見せ、シャルの手をとる。

「うん!!おすすめのお店あるから行こ!!」

そして小走りで走り出す。

「ちょっと!!急に元気になりすぎベル!!」

商店街をかける二人はまるでカップルの様、しかしこれから待ち受ける試練を彼等は知らない。

 

 

 

 

「どうなってんだい……」

地面に倒れる麗しき少女達

「も、もうダメ……」

「動けない……」

「い、痛いよ……」

この惨劇は一体何かと声をあげる

「なにをしてくれたんだい!!」

ドンっと大きな音をたて机を叩く。

「すみません……」

ショボくれる少女に怒声を浴びせる

「これじゃ……」

「キッチンで働けるやつがいないじゃないかい!!」

「ご、ごめんなさい!!」

そうここは『豊饒の女主人』現在危機的状況にある。

「ミ、ミア母さんシルもわざとやろうとした訳じゃなく」

ギロっとリューを睨むミア。

「そんなことわかってるよ!!無意識なのがよりたちが悪いよ!!」

「まさかここまでシルに殺傷能力があるとは思わなかったニャ」

「ミャー食べなくて良かったニャ」

うんうんと頷きながらぽけーっと見てるアーニャとクロエ。

「さすがの私達でも危ないレベルよね」

倒れてる人を見ながら少し怖がるルノア

「うぅ……そんなつもりじゃなかったのに」

そしてなにか分からないような物体を皿に乗せ、しょぼんとするシル。

「あれだけキッチンに入るなって言っておいたのに、なにしてんだいシル……」

「『怪物祭』に出すオリジナルメニュー作りのお手伝いを……」

そして続けてアーニャが説明する

「その試作品を食べた末路があれニャ」

「まさに『怪物祭』に出す怪物料理ニャ」

転がっているのはお腹をこわしているキッチン担当達。

「どうするだい……あたし一人じゃキッチンはまかないきれないね……」

「かと言って他のやつにやらせたら、店の存続にかかわるよ」

「ごめんなさい……」

シュンとなるシルに少しやさしめ

「シル!落ち込んでる暇があるなら倒れてるやつの看病しな!!」

ハッと顔をあげ倒れた元に行くシル。

「そろそろ開店時間になりますミア母さん」

「困ったね……」

「都合よく料理出来るやつが近くいればいいのにニャ」

「そんなやついる訳ないニャ」

「まぁ私達料理とか無縁だし……」

みんなで頭を悩ませていると。

 

「おはよーございます!」

「べ、ベルまだお店やってないんじゃないの?」

入り口の扉から元気な少年の声と緊張気味な少女の声がした。

「今の声聞いたかい」

「「「「はい(ニャ)」」」」

「すみません少し早いかもしれないですけど、入っても大丈夫ですか?」

ギィと扉を開け中に入ってくる獲物(ベル)

入ってきた瞬間、皆の目がギラリと光る。

「ひっ!?」

「逃がすんじゃないよ!!!」

女主人の一声、キャットピープルとエルフとヒューマンが一斉に動き出す。

「えぇ!?」

ドアへの道を塞がれ、ベルのすぐ横にキャットピープル二匹が腕を押さえる。

その間一秒。

なにが起こったのかわからないベル、そして唖然とするシャルであった。

 

 

「いやー悪いねベル!緊急事態だったから思わずね!」

豪快に笑い飛ばすミアお母さんに頭をわしゃわしゃされる

「正直殺されるかと思いましたよ」

少し涙目になり、ダンジョンよりも恐怖を感じたベル。

「ごめんなさいクラネルさん」

ペコリと謝るリュー

「リューさん謝らなくても大丈夫ですよ!」

思わずわたわたとしてしまう

「そうニャ気にすることないニャ」

「なんでアーニャが言うのニャ」

「でも悪いことしたねベル」

ポンと頭をなでるルノア

「あーミャーも撫でるニャ!!」

ルノアの次にアーニャも撫で始める

「アーニャばっかりずるいニャ!」

同時にクロエも参戦。

ベルの髪はぐちゃぐちゃだ、そして

「この人達はなんなのベル」

ぶすーっと機嫌が悪くなったシャル。

「ちょっとアーニャさん、クロエさんそんなわしゃわしゃされたらシャルに説明出来ないです!?」

二人の束縛から逃げ出しシャルの隣に行く。

「そうえばその娘はなんなんだい?」

ミアが皆の疑問を代弁する。

「この子は僕の幼馴染みです!」

ペコリと頭下げ少し緊急気味に自己紹介をするシャル

「べ、ベルの幼馴染みのシャル・ヘルガルです!」

「幼馴染みなんていたのかニャ!」

「ミャー達の弟はすみにおけないニャ!!」

「えっ弟!?」

まさかの弟宣言に驚くシャル

「なに、ベルはあたしの息子だからね!」

「えっ息子!?」

またも衝撃を受ける

「シャルこれには訳があってね……」

この前手伝ったこと、食い逃げしてしまったことを話す。

「ってな訳でベルはうちのシェフなのさ」

「ミアお母さん!?僕は冒険者ですよ!?」

「それより手伝って欲しいことがあるんだよ」

「??」

 

「いつの間にベルさんに助っ人頼んだんですか?」

二階から戻ってきたシル

「シルさんおはようございます」

ぺこりと挨拶する

「おはようございますベルさん」

そしてチラッとシャルに目線を向ける

「えっとそちらの方は?」

「私ベルの幼馴染みのシャル・ヘルガルと言います」

ピクッと反応するシル

「ベルさんの幼馴染み……」

「私はシル・フローヴァと言います、ベルさんの大切な人です」

ニコッとシャル笑顔を向ける。

「た、大切な人!?」

バッとベルに視線をぶつける

「えっ!?大切な人!?」

ベルも慌てるしかない

「あ、大切な友人ってことですよ?」

ニコッとベルに顔を向ける

「も、もうシルさんからかわないでくださいよ///」

「…………」

「…………」

 

(このポニーテール女……)

(この幼馴染みの子……)

((……敵だ))

バチバチと目線で火花が散る

「な、なんか二人とも笑顔が怖いよ」

「ほらなにやってんだい!!すぐに開店だよ!!!」

「「はい!!」」

「シャル・ヘルガルだったけ?悪いね1日ベル借りるよ」

「は、はい!大丈夫ならお店見ててもいいですか?」

「それは構わないよ!悪いけどいるならカウンターの席か、裏に居な!!」

「わかりました!」

バタバタと皆が準備をし始める。

「あれ?皆さんそのつけ耳は?」

なぜかウエイトレスの皆が兎のカチューシャをしている。

「今日はベルがいるから兎デーニャ!!」

アーニャがテンション高く、猫耳を上から兎のカチューシャをする。

「なんですか兎デーって!?」

「この前のクラネルさんが作っていた兎印からとってます」

そう説明するリューもカチューシャをしている。

「リューさんも!?…………す、すごく可愛い」

後半は思わず本音を漏らしてしまう

「そ、そんなクラネルさん可愛いなんて、私には似合いません///」

「ニャんでミャーには褒め言葉がないニャ!!」

「ええっ!?アーニャさんは……猫耳の方が可愛いので///」

恥ずかしがりながらもアーニャに伝える。

「ミャ!?…………あ、ありがとうニャ///」

もじもじとする三人組。

「なにしてんだい!!忙しくなるんだから準備しな!!」

「「「はい(ニャ)!!」」」

急いで準備を手伝うベル

「ルノアさん、朝ってそんなに忙しくなるんですか?」

隣に居たルノアに聞く

「ううん、むしろ朝は暇だよ」

せっせと準備しながら言うルノア

「えっ?でもミアお母さんが忙しくなるって……」

「そら忙しくなるよ今日は」

「えっ今日は?」

ポンと頭に手を置かれ

「だって兎デーってことで『兎印のじゃが丸くん』出すんだよ?」

「え……」

ふらっと立ちくらみが起きる

「べ、ベル大丈夫?」

「どうしたんだい?」

その様子を見てたミア

「ミアお母さん!聞いてないですよ兎印作るなんて!?」

「あー悪いね……実はあれ再開しろってうるさくてね」

「クレームがギルドに行くぐらいの案件になってね」

「えっ!?」

「だから月1はやらないと色々言われちまんんだよ」

「えぇ!?」

肩にドンっと手を置かれ

「頼むよ大事な息子」

にかっと笑い飛ばす

「嘘っーーーー!?」

こうして兎デー(試練)の始まりが決まったのである。




兎デーやばいっす


次回も兎が織り成す英雄譚お楽しみください。

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