これが僕の英雄譚   作:猫と果実

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ベルとヘスティアサイドを交互に話してるのでわかりずらくなるかも知れませんがご了承ください。

では兎が織り成す英雄譚をお楽しみください。



幼馴染み

「へぇ~ここがベルのホームなんだ」

教会を仰ぎ見るシャル。

「正確に言うとこの地下にある部屋なんだけどね」

恥ずかしそうに説明する。

僕たちはエイナさんと別れた後、シャルが一度荷物を置きたいと言うことでホームに来たのだ。

地下へ進む階段を下りドアを開ける。

「お、お邪魔します」

恐る恐る入るシャル

「そんな何も出ないから大丈夫だよシャル」

シャルは昔からお化けとか暗いところとかあんまり得意じゃなく、いつもは強気なのにこう言うときだけ弱気になる。

「わ、わかってるわよ!……へぇ、普通に生活出来るだけの広さね」

「そうだよ!今お茶いれるからゆっくりしてて」

「荷物てきとうに置いても平気?」

「いいよ!!」

「ふ~」

シャルは周りを見渡す

(ベルって神様と二人暮らしなんだっけ?神様ってこんな扱いでいいのかな?)

そんなことを考えてる間にベルが戻ってきた。

「お待たせ!」

お茶とお茶請けのアップルパイを出す。

「ありがとう、久し振りにベルのアップルパイ食べる」

少しうきうきしながらシャルはアップルパイを食べ始める。

「今日はこの後どうする?オラリオの観光でもする?」

小さく切りちょっとずつ食べるシャル

「実はさっきやりたいことを思い付いたの、アップルパイ食べ終わったら付き合ってくれる?」

「うん!いいよ!」

 

 

「はぁ!!」

「うわっ!」

「せいっ!!」

「!?」

シャルの上段蹴りを避け、距離を取る。

「はぁはぁ……もうそろそろ止めようよシャル!?」

「まだまだ!!」

バッと地面を蹴りベルに迫る。

「くっ!?」

実はシャルからのお願いと言うのは組手の事だ。

「冒険者になったベルの強さを見たい」とシャルは言い張り教会の外で組手、現在に至る。

シャルは可愛らしい少女に見えるが実はバリバリの格闘家だ。

「わっ!?シャルってこんなに強かったの!?」

避けながら質問をするベル

「馬鹿ね!村に居たときはベルが弱すぎるから本気で格闘技やってるところなんて見せたことないわよ!!」

質問のお返しと言わんばかりに、手刀で首元を狙う。

幼馴染みの秘密に驚きながらも、ベルは手刀をうまく弾き返しまた離れる。

「ベルさっきから避けてばっかりだけど……まさか私の事舐めてるの?」

シャルの雰囲気が変わる

(うわ……シャルが怒ってる……怒るとなかなか収まらないんだよな)

「…………」

急に黙り、特殊な歩法で一瞬で間を詰める。

「!?」

そこからの蹴りのラッシュ、ベルに暇も与えないように狙いを定める。

そしてベルが慌てたのを見逃す、顔面目掛けて右上段蹴りを繰り出す。

「はぁ!!!」

「くっ!?」

辛うじて体勢を低くし避けるベル、それにたいして遠心力を利用しそのまま回し蹴りをするが

(えっ!?いない!?)

回し蹴りが外れ構え直すシャルの前にベルがおらず

「ていっ」

「きゃっ」

後ろから頭にチョップされる。

「どうやって避けたのベル……」

驚きを隠せないシャル。

「シャルが上段蹴りから回し蹴りに入る間にジャンプして上を通ったんだよ!」

「……恩恵ってずるい」

ぷくーっと頬を膨らませ機嫌を悪くする。

恩恵を授かっているかいないかで歴然の差が生まれるのは仕方がないことなのだ。

「でもシャルは恩恵がないのにここまで戦えるんだからすごいよ!」

シャルは少し黙った後地下へと戻り始める。

「シャ、シャル?」

「ベルはそこで待ってて!」

「は、はい!」

地下から戻ってくると水筒にタオルを持ってきており、さらに服装が本格的になっている。

手には指先が出ているグローブを付け、靴も脛まで隠れるロングブーツみたいのに変えてきた。

「シャルなんで本格的装備してるの?」

「なにってまた組手するからよ」

「えっ」

「私が納得するまでやってもらうから」

「本気?」

「うん」

シャルはやる気満々に構え始める。

「いくよ!!」

バッと蹴りだしベルに攻撃する。

「嘘っ!?」

シャルはかなりの負けず嫌いなのである。

 

本格的に始めたのが11時過ぎ頃、現在既に16時過ぎ。

「はぁはぁはぁ……もうギブアップ……」

パタンと地面に座り込むシャル。

「はぁはぁ……お疲れ様シャル」

慌てて水筒とタオルを渡すベル。

「むぅ……悔しい」

「とりあえず夜ご飯も作らないとだからホームに戻ろっか?」

ニコッと笑い手を差しのべシャルを起こそうとする

「…わ、わかったわよ///」

ふたりしてホームに戻る。

「とりあえず先にシャルがシャワー浴びなよ!」

「さ、先に?」

「うん!僕夜ご飯の材料買いにいくし!」

「そ、そっか!なら先にシャワーもらうね!」

パタパタ急ぎ足でお風呂場に向かってしまうシャル

「はやく汗流したかったのかな?とりあえず買い出しに行かないと!!」

気合い入れ夜ご飯の買い出し出ていく。

バタンとドアが閉まりシャル一人だけになる。

「ベルさっそく出掛けたのね……」

一人になり今更ながらベルの家でシャワーを浴びる行為に羞恥心が出てきはじめる

「は、はやく浴びちゃお」

服を脱ぎ、綺麗に畳直してシャワールームに入り、シャワーを浴び始める。

「ふ~」

組手でかいた汗を流しながらふと組手中のベルを思い出す

「……ベルかっこよかったな///」

独り言で、だってだって!と誰かに説明するようにはしゃぐ

「村の時は頼りない感じだったのに、今はスゴく強くなって」

「しかもだよ!少し大人っぽくなってて…一ヶ月しか経ってないのにずるいよ」

ペタペタ自分の体を触り、むぅ~と唸る

「私もはやく大人っぽくなりたいな……スタイルは自信あるけど、おっぱいは小さいからな……」

「や、やっぱりベルも大きいほうが好きなのかな……」

「……って私ベルの家でなに考えてるの!?」

照れ隠しのようシャワーを浴び直すシャル。

「べ、ベルが帰ってくる前に上がらないと」

急いで髪と体を洗い始めた。

少し経ってからシャルはシャワーを浴び終わり、ソファーでくつろぐ。

ちょこんとソファーに座り改めて周りを見渡す。

「ここでベルが暮らしてるのか………私も一緒に住みたいな」

ソファー上で体育座りをしボソッとつぶやく、そしてコロンとソファーにねっころがり足を伸ばす。

「ん~……そうえばここでベル寝てるんだっけ」

そう考え出すときになり始めてしょうがない、しかも足先には毛布があり余計に気になる。

足を器用に使い毛布を上半身側に持ってくる。

「………………」

自然と引き込まれるように毛布に顔を近づける

「はっ!?わ、私なにしようとしてるの!?」

バッと毛布から離れる。

「何してるんだか私///」

少し周りをきょろきょろした後

「で、でもちょっとぐらいならいいよね?」

結局ベルが使ってる毛布に顔を埋める

「ベルの匂いって安心する……」

「やばい眠くなってきた……ベル帰ってくるのに……」

「………zzz」

 

 

「……ャル」

「うーん……」

「シャル」

「……ふぇ?」

「おはよシャル、そろそろ夜ご飯出来るから起きてね?」

パタパタとエプロン姿のベルがキッチンへ戻る。

そして毛布ぎゅっと握りしてめてる私

「……私寝ちゃったのね、しかもベルの毛布に顔埋めて……」

ボンッと顔を真っ赤にし、すごいキレでソファーに綺麗に座り直す。

「シャルなんでそんな綺麗に座ってるの?」

料理を持ってきたベルが疑問に思うぐらい背筋を伸ばし、足を揃えて座っている。

「き、気持ちを落ち着かせるために……」

「???」

「とりあえず夜ご飯出来たから食べようか!」

机の上にはベルの手料理が並ぶ。

キノコパスタ、魚の煮付け、サラダ、野菜スープしかもデザートまで準備するベル、女子力を惜しみ無く発揮する。

「すごい!!」

私ここまで大食いじゃないと思いつつ、ベルの手料理好きな上に好物まであり、全然食べたことのない魚料理もある、シャルはベルの心使いに自然とにやけてしまう。

「へへ///ちょっと気合い入れて作りすぎちゃった」

「冷めないうちに食べちゃおうか!」

照れ隠しをするように食事を始める。

「うん!」

二人は料理を食べ、一ヶ月ぶりに二人きりとなり会話も弾む。

「そうえばシャルなんであんなに武術出来るの??」

「うーん……実は秘密だったのよね格闘技出来ること」

「秘密にしてたの?」

「してたって言うより、秘密にしてって頼まれたの」

「誰に?」

「じぃじに」

「えっ!?おじいちゃんに頼まれてたの!?」

「正確にはうちのママがじぃじに頼まれたの」

「ナナさんが?」

「実はうちのママ物凄く強い格闘家だったんだって」

シャルの母親ナナ・ヘルガル、旧姓イザナキ・ナナ極東生まれ、シャルを授かる前は生粋の武道家だったらしい。

「えぇ!?あんなに優しそうなナナさんが!?」

思わぬ真実に驚くベル

「だって僕に瓶の蓋開けて!ってわざわざうちに来たときもあったのに!?」

「完全な嘘よ、私より力あるもんママ」

「そ、そんな……僕馬鹿みたいじゃん」

女の嘘って巧みと学んだベル……

「僕はてっきり亡くなったお父さんのハールドさんから昔に教わったかと思ったのに」

「パパは戦いより鍛冶が好きだったってママが言ってた」

シャルの父親ハールド・ヘルガル、ドワーフで昔は鍛冶職人として鍛冶職を極めようとしていた。ハールドは二人が8歳の頃に病で亡くなっている。

「でもなんで僕にその事黙ってたんだろ?」

「確か…じぃじが言ってたのは」

「『幼少期に可愛い人妻からぼこぼこにされたらトラウマになるじゃろ!?』だった気がする」

「なにその理由!?」

「ママもベルの前じゃ可愛くいたいって事で納得したらしいのよ」

「な、なるほどね……でもシャルは稽古してもらってたんだ?」

「うん、ベルが畑や山に行ってる時にやらされてたのよ?」

食後のお茶とケーキを食べながら飄々と話すシャル

「僕14年間一切気が付かなかった……」

しょぼーんとしてしまうベルに慌ててしまうシャル

「ほ、ほらケーキ食べなさい!」

自分のケーキからフォークで一切れ食べやすそうに取り、ベルの口のむける。

「えっ!?だ、大丈夫だよ」

「な、なに今更こんなことで照れてるのよ!///」

「ほら!あーん!!」

「あ、あーん」

シャルからのケーキをぎこちなく食べるベル

「ありがとうシャル美味しいよ」

励まそうとしてくれたのを察してニコッと笑いお礼を言う。

(ほんと昔からその笑顔卑怯なのよ///……可愛い///)

デザートも食べ終え、片付けを済ませる。

疲れきってたこともあり、今日は早めに就寝することに。

「シャルはベットで寝ていいからね!」

「で、でもベルはいつもソファーで寝てるんでしょ?」

「うん?」

「せっかくベット空いたんだからベルがベット使いなよ!」

「大丈夫だよシャル!シャルは長旅と組手で疲れてるんだから」

「それを言ったらベルだって組手やったじゃない!」

「「…………っぷ」」

ふたりして笑いだす

「これじゃ切りがないね」

「ベルが諦めてくれれば良いだけの話」

けたけたと笑いながら言い合う。

そしてぽろっとシャルが

「いっそ昔みたいに一緒に寝る?」

笑いながら冗談で言う。

「僕は別に平気だけどシャルは大丈夫なの?」

「えっ?」

思わぬ返事に驚きを隠せないシャル

「べ、ベルは平気なの?///」

照れながらも疑問を返す

「だってシャルだもん!」

っん?

「……私だから?」

「僕たち幼馴染みだし、昔も一緒に寝たことあるしね!」

ピキ

「……他の女の子とだったら?」

「えっ!?それは無理だよ!?」

ビキビキ

「……ベル」

「なに?」

「お前はソファーで寝ろ!!」

「ごふっ!?」

顔を殴られソファーに飛ぶベル

「おやすみベル!!!」

バッと毛布を被るシャル

(私だって女の子なのに!!もう知らない!!)

「うぅ……痛い……ガクっ」

当たりどころが悪くそのまま気絶するベルであった。




幼馴染みというのは認識が変わるまで時間かかりますね。

では次回も兎が織り成す英雄譚お楽しみに。

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