これが僕の英雄譚   作:猫と果実

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そろそろモンスターフィリアの時期ですね……
近所が騒がしくなりそうです。

では兎が織り成す英雄譚お楽しみ下さい!


一人暮らしと読書。

「ふふ~ん」

朝から鼻唄交じりで主夫の様に家事をこなす一人の冒険者。

「あっ!そろそろ出来るかな?」

パタパタとキッチンに移動する。

「うん!昨日のスープで煮たから魚にも味染み込んでるな!」

「朝御飯はの用意はこれでいいかな……」

エプロンの裾で手についた水を拭きリビングでの作業に戻る。

「一昨日は夜まで家事やらなかったから洗濯物片付けてなかったから溜まってるな……」

一つ一つ丁寧に服を畳んでいく。

「…………この神様の紐ってなにかあるのかな?」

主神であるヘスティアが身に付けている紐を畳もうとするが少し興味が湧く。

「…………もしかしてすごい神具とかなのかな……」

興味本意で腕に巻こうとする

「ふぁ~~」

「!?」

ベットで寝ていた神様がもぞもぞと動き始める。

「おはよ~ベル君~」

「お、おはようございます!!!!」

巻こうとした紐を神速で畳む。

「?」

「あっ朝ごはん出来てるの?」

「で、出来てますよ?」

昨日のドギマギもあったせいか焦りに焦ったベルである。

 

「今日も美味しい朝ごはんをありがとねベル君!」

「いえいえ」

片付けを終え、食後のお茶を用意する

「神様今日バイトあるんですか?」

「今日はバイトとは別に用事があってね」

お茶をすすりながら話し出す

「ちょっと神々のパーティーみたいのがあるんだ」

「もしかしたら2、3日家を空けるかもしれないベル君」

「えっ!パーティーってそんなに長いんですか?」

「パーティーとはまた別の用事があるのさベル君!」

いそいそとバイトの準備をし始めるヘスティア

「だから少しの間一人暮らしになるけど大丈夫かいベル君?」

「はい!大丈夫です!多分ダンジョンに籠ってますので!」

「うーん気を付けて行くんだよ?」

「神様こそ気を付けてくださいね!」

バイトの準備が終わり出掛けようとする

「ステイタス更新は少しの間出来ないから無茶はダメだぜベル君?」

「はい」

「それじゃ行ってくるねベル君!!」

「行ってらっしゃい神様!」

バタンとドアが閉まり一人になる。

「…………一人暮らしか……」

少し寂しそうに呟く、気持ちを切り替え支度をするのであった。

 

 

「ハッ!!」

『キギっ!?』

「フッ!!」

『…………!?』

現在六階層、ステイタスUPもあり問題なく戦いを続けるベル

「はぁはぁはぁ…………昨日とは全然動きが違う」

大幅なステイタスUPにより最初は違和感もあったが、徐々感覚も戻ってきている。

「朝から籠りっぱなしだし、そろそろ換金して帰ろうかな……」

ビキリビキリ

「!?」

『…………』

『…………』

前回と同様に四方をウォーシャドウに囲まれる

「昨日の様にはいかない……僕は強くなるんだ!!!」

 

 

「今日は5200ヴァリス!!ドロップアイテムもあったおかけで、いつもより多く稼ぎたぞ!!」

「今日は神様いないし…外食はまた今度で自炊にしようかな」

夜ご飯の献立を考えながら歩いていると

「ベル君」

「エイナさん!こんばんわ!」

「こんばんわベル君、ダンジョン帰り?」

「はい!」

「なんか嬉しそうだね?」

「実は5200ヴァリス稼げたんです!」

嬉しそうに話すベルを見てエイナは

「…ベル君、今日は何階層まで行ったの?」

「えっ」

「何階層まで行ったの?」

冷や汗がたらたらと流れるベル

「………………ろ、六階層です……」

「…………ろ、六階層!?」

その事実に驚愕し、怒り始めるエイナ。

「なにをしてるのベル君!?この前五階層で死にかけたでしょ!!」

「す、すみませんエイナさん」

「もう……嫌な予感すると思ってたら、まさか本当に当たるなんて……」

「エイナさん僕ステイタス的には問題ない範囲なんです」

「えっ?」

「実は今ほとんどがGで、敏捷に関してはFなんです!!」

ベル君が嘘を言う子だとは思ってないエイナも、さすがにこの短期間でそこまで成長するとは思っていない。

「ベル君……それ本当?」

「ほ、本当です!」

「うーん……これは御法度なことなんだけど、専属アドバイザーとして安全かどうかの確認はしないといけない」

「ベル君ステイタス見してもらってもいい?」

ステイタスを自分の主神以外に見せるというのは、基本的にしないのだ。

「僕はエイナさんなら大丈夫ってわかってるのでいいですよ!」

「信頼してくれてても、もしもってことがあるから約束する。」

「もし私の性でステイタスが他の人に知れたら、なんでも言うこと聞く」

「な、なんでもですか?」

「う、うん///」

「わ、わかりました///」

なぜかそわそわする二人

「と、とりあえず個室借りてくるね!」

「は、はい!」

 

 

ベルのステイタスを確認したエイナは六階層への許可を出す。

「確かに確認させてもらいました」

(まさかベル君が言ってる通りだなんて……)

「良かった~」 

「疑ったりしてごめんねベル君?」

「いえいえ!!心配してくれてやってくれた事わかってますので」

「ありがとうベル君」

「でも無茶はダメだからね?ダンジョンは危険なのはかわりないから」

「はい!!」 

一通りの質問なども終え個室を出る。

 

「ごめんね疲れてるところ引き止めちゃって」

「大丈夫です!今日神様いないので遅くなっても心配ないです!」

「神ヘスティアはお出掛け?」

「はい!なんか神様たちの集まり?みたいなのに行きました!」

「だから数日は一人暮らしなんですよね……」

「ご飯とか大丈夫なの?」

「家事は元々全部僕がやってるので大丈夫です!」

それを聞きなぜか負けた気持ちになるエイナ。

「ベル君そんなこと出来たんだね……」

「はい!……でも一人は少し寂しいですね。」

ベルは小声でボソっと本音を漏らす、エイナは耳が良いので聞こえていた。

「え、えっと……も、もし良かったらさ……」

「はい?」

首をかしげ見つめてくるベル。

「…………なんでもない」

「???」

「ほら遅くなると危ないから帰りなさい?」

「はい!ではまた明日エイナさん!!」

パタパタと走り去っていくベル。

(……はぁ~私何をしようとしたんだろ……)

(一人が寂しいから今日ご飯作ってあげようかとか考えちゃったよ……)

(今思うと恥ずかしいけど……やっぱりご飯作ってあければ良かったかな……)

恥ずかしがりながらも後悔するお姉ちゃんであった。

 

 

「ただいまー…………」

(神様が一人居ないとわかるだけで、こんなにも寂しいのか……)

静かに片付け、お風呂、食事を淡々と済ませる。

「ふぅ~……あ、今日ベットで寝てもいいのか」

ソファーに寝ようとしたベルはベットに移動する。

「……ベットって広いな」

そんなことを考えてねっころがる、しかしなかなか寝付けない。

「本でも読もうかな……神様の本借りようかな」

ヘスティアが愛読してる本を読もうと動く。

「あ、そうえば!」

なにかを思い出したように、自分の荷物置き場から古ぼけたバックを取りだし、中から鍵穴の付いた本を取り出す。

「えっと鍵も確かにバックの中に……」

ごそごそと探しだすベル。

「あった!」

本と鍵を持ちベットに戻る。

「おじいちゃんが持ってた本持ってきたの忘れてたんだった」

「これだけ鍵穴があって中見れなかったけど、鍵も見つかったしね」

「もしかしておじいちゃんの日記とか?」

少しワクワクしながら鍵を開ける。

「よ、よし読むぞ……」

緊張しつつページをめくる。

「あれ?白紙?」

なぜか文字一つすら書かれていない。

他のページもゆっくりとめくっていく。

「ダメだ……なんも書かれてない」

全ページを見ても何も書かれていなかった。

「うーん見落としでもあったのかな?」

ベルはもう一度気になり、最初からページをめくる。

 

『今の僕はなにが一番欲しい?』

 

「えっ」

何も書かれていなかった筈のページに文字が書かれている。

しかし不思議と文字に引き寄せられる。

自然と言葉が出る。

 

「僕は力が欲しい」

 

『力 それは敵を滅ぼすため?』

 

「違う、皆を守るため」

 

『なら皆を守るための力とは どんな力』

 

「あの美しい剣士(アイズ・ヴァレンシュタイン)の様な凶悪な力にも臆さず立ち向かう力」

 

『その力を手にしたら 何になりたい?』

 

「あの憧れた英雄(おじいちゃん)みたいな、命を賭けて戦う英雄に」

 

『そんな英雄になったらどうするの』

 

大切な家族(ヘスティア)を守れる偉大な英雄に」

 

『強欲だね僕は』

 

「だって僕は……」

 

『そうだね僕は……』

 

「『僕は英雄になりたい』」

 

 

 

「…………うーん」

「あれ、僕いつの間に寝てたんだろ?」

時計を見ると既に8時00分を回っている。

「うわっ!?いつもより三時間も寝坊してる」

「なんか夢見たような気がしたんだけどな……」

少しパラッと本をめくる。

「なんも書かれてない……あれ?なんか文字かかかれてたような……」

「夢だったのかな?」

ぼんやりしながら本をしまう。

「うーん!!」

「とりあえず今日もダンジョン行こうかな!!」

気を取り直して準備をし始めるベルであった。




読書ね落ちはよくやりますよね-w

では次回も兎が織り成す英雄譚お楽しみに!!

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