これが僕の英雄譚   作:猫と果実

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前回は少し長めにかかせてもらいました!
さてベル君がこれからどう想い、どう成長するのか楽しみです。

では兎が織り成す英雄譚をお楽しみください!


英雄に……

「ベル君~!ただいま~~!」

勢いよくホームのドアを開ける。

「…………」

「どこだいボクのベル君!!」

ヘスティアの声が地下のホームで響く。

ベルがいないと部屋を探し回る

「かくれんぼでもしてるのかベル君……」

ベルがおず、涙目になるヘスティア。

そう、彼女は酔っている。

ミアハとタケミカヅチの飲み会を終え帰宅したヘスティア。

ベルの予想通り見事にすれ違いになっている。

「うん?手紙?」

酔いながらも机の上にある置き手紙に気づく

「一人で外食にいってるのか……ずるい!!」

「ボクもいきたかった~!」

一応言っておこう、外食に行けと言ったのはヘスティアだ

「いいもん!ベル君が帰ってくるの待ってるもん!」

のそのそとベットに移動し、横になる。

「だからちょっとだけ、仮眠をとる……寝るんじゃなくて……仮眠…………」

「……ベルくぅん……むにゃ……zzZ」

 

 

はぁはぁはぁ

兎は駆け巡る

「はっ!!」

『グキャア!?』

「ふっ!!」

『ボビャ!?』

出会う全てと戦い、傷を負い、ボロボロになろうとも止まらない。

防具も着けず、武器は護身用のナイフ一振り

それでもやめない

自分の中にある弱さを無くすまでは。

「はぁはぁはぁ…………くそっ」

僕はなんて馬鹿なやつなんだ……

浮かれていた、冒険者になれば守りたいものを守れると

でも違った、僕は何も守れていない

自分自身すら守れず、守られる始末。

「くそっ!!!!!」

僕は憧れた、助け出してくれ美しい剣士に

そして最初は無意識に、そして今は理解した。

僕はこの人を守れるぐらい強くなれるのか

僕なんかが英雄になれるのかと

「違うだろ!!!僕はまだなにもやってない!!まだ進んでもないだろ!?」

無意識に諦めていた自分を否定するように叫ぶ、自分の心をさらけ出すように

「まだ一歩も進めてない!!!」

「うぐっ!?」

足がふらつき勢いよく転んでしまう

「うっ…………ここは…五階層?」

急に体が冷える

「……違う……六階層だ」

そのままの勢いで六階層まで来てしまった

不意に全身に緊張が巡る

「はぁはぁはぁ……」

傷つき、ボロボロになる兎を嘲笑うかのようにダンジョンがうめき声あげる

ビキリ、ビキリ

『…………』

『…………』

影のように全身が黒く、鋭利な爪が覗く

ウォーシャドウ、六階層でホップするモンスターだ。

「っ!」

ウォーシャドウの戦闘能力は六階層の中でも随一だ。

今のベルのステイタスじゃ敵わない相手

「はぁはぁはぁ……」

心音が響く

(僕は……僕は強くなりたい!!!)

ステイタスが熱を帯びる、ベルの心に呼応するように

「ああああ!!!」

 

ベルは深く傷を負ってしまったが生き延びた。

(帰らないと……僕の事を待っててくれる家族の元に……)

しかしダンジョンはそれを許さない

ビキリ、ビキリ

「はぁはぁはぁ……」

『……』

兎囲むように影が忍び寄る。

「………ふぅ……」

僕は追いつきたい美しい剣士(アイズ・ヴァレンシュタイン)

 

僕はなりたい憧れた英雄(おじいちゃん)

 

僕は守りたい愛する家族(神様)

 

僕は強くなりたい

 

兎は駆け出す、忍び寄る死の影へと、ナイフを手に愛する家族の元に帰るために。

 

 

 

「きゃあ!」

「今のは落ちたかもね……」

「帰るときには雷雨止んでるといいな」

「ほんとだよ!!こっちは残業で疲れてるんだから……」

「ミィシャまとめ終わったの?」

「全然終わらない……」

ギルドの受付嬢二人は残業をしていた。

【ガネーシャファミリア】主催の『怪物祭』(モンスターフィリア)についての資料をまとめている。

「あ~、はやく帰りたい……」

「なら口じゃなくて手を動かしてミィシャ」

「はーい」

少し集中し、一旦休憩に入る二人。

「そうえば今日弟君見てないけど来てたの?」

「夕方になる前かな?一応換金しには来てたよ」

「あれいつもよりはやいね?」

「なんか用事があるらしくて早く帰るって言ってたよベル君」

珈琲を飲みながら雑談する二人

「用事ねぇ……もしかしてデート?」

危うくコーヒーを吹き出しそうになるエイナ

「ベル君がデート……うーん冷静に考えると違う気がしてきた」

「なにそれ、エイナお姉ちゃんの勘?」

「そこは女の勘でしょ…」

「お金貯めるって豪語してたでしょベル君」

「そうえばそうね」

「だから今は何よりダンジョンなんじゃないかなって」

「まぁあの弟君だしね」

「むしろダンジョンに潜る頻度が増えて心配だよ……」

「それはしょうがない冒険者なんだからあの子もさ」

「まぁね……これからもベル君になにもないと良いけどね」

ピキっ

「きゃっ」

「……うわっ」

エイナが持っているマグカップにひびが入る

「……嫌な予感しかしないね」

「……うん」

不意に心配になる姉二人であった。

 

 

「…………うーん……」

「…………はぇ!?」

ヘスティアはベットから起き上がる。

「うわ、ボク酔ってそのまま寝てたのか……」

意識がぼんやりしつつも思い出す

「うーん……ベル君を待とうと思ったのに」

現在朝の4時30分、後30分もすればベル君が起きるのも知っている。

「よーし……寝ぼけたを装って隣に行っちゃおう」

企み顔でソファに移動するヘスティア

そして気付く。

「……ベル君がいない」

ヘスティアの意識は覚醒する。

「どうゆうことだ……外食にして長すぎるしお店閉まってるだろうし……」

「まさか!?いかがわしい所に!?…………いや冷静に考えたらベル君がそんなことしないだろう」

周りを見回す。

「防具も武器も置いていってるってことはダンジョンの可能性は低いかな」

「そうなると…………誰かに襲われている?」

ヘスティアは嫌な方嫌な方へと考えが出てくる。

「…………ベル君を探しにいかないと」

ヘスティアは急いでホームを飛び出した。

自分の子に危険が迫っている、命の危険、そう考えるだけで泣き出しそうになるヘスティア

(なんでこんなときにボクは寝てたんだ!!)

自分の行いを恥じる、しかしまずはベル君を探すのが先。

階段を上がり教会の中を抜けようと走り出そうとしたとき

ヘスティアが探しに行こうとした人物がそこにいた。

「ベル君!!??」

ヘスティアはかけより抱き抱える

服はボロボロ、雨と泥のせいで汚れがひどく、その上からでもわかる血の固まった傷。

特に左足の鋭利な何かにやられた傷がひどい。

「か……みさま?」

「ベル君!ボクがわかるかい?すぐに部屋に戻って手当てしないと!?」

ヘスティアは自分より背丈のあるベルを頑張ってホームの中にいれ、ポーションを飲ませる。

「ありがとうございます神様……」

弱々しくお礼を言うベル

「とりあえず話は後にして、まずは汚れを落としてきな」

「治療はそれからにしよう」

ヘスティアがせっせと準備をし始める

ベルはふらつきながらもシャワーを浴びる

「ベル君!着替えここにおいておくよ!」

準備をし終わったヘスティアは、自分もベルを抱えたときに汚れた服を着替えて待つ。

「お待たせしました神様」

「ほらとりあえず治療始めるよ!」

傷の表面にポーション、薬などを使い治療をする。

黙って治療していると不意にベルが呟く。

「…………すみません神様」

「自分が謝らなきゃいけないことをやった自覚があるんだね?」

「…………はい」

うつむきながら答える。

「とりあえず治療が終わったから横になりな?」

「いえ……大丈夫です。」

「そうかい?」

ヘスティアは心配しつつも本題に入る。

「ベル君、なにがあったんだい?」

少しの沈黙の後、ぽつりぽつりと言葉を発する

「……今までダンジョンに行ってました……」

「それは元々行くつもりだったのかい?」

「…………違います」

「ならなんでダンジョンに行ったんだい?」

「………………」

ベルは拳を握り、うつむく

「…………ふぅ~、ボクはベル君が実は頑固なのも知ってるんだ」

ヘスティアは少し黙った後

「話したくないってことなんだね?」

ベルは黙ってうなずく

「わかったよベル君それ以上は聞かないから安心して」

「……ありがとうございます神様」

神様は落ち込んでいるの僕の頭を撫でる

「……えっ」

「ベル君、ボクはさっきまでぐーすか寝てたんだ」

僕は頭を撫でられながら黙って聞く

「しかもお酒を飲んでだよ!神として情けないよ」

神様は少し笑いながら僕をみる

「今のボクに怒る資格もないし、元々怒るつもりもなかったんだよ?」

神様は僕の手に重ねるように手を置く

「だってベル君は約束を守ってボクの元に帰ってきてくれたんだもん!」

その言葉を聞きハッとなる

「約束……」

「必ずここに帰ってきておくれってボクがベル君にお願いした約束だよ?」

僕は思わずボロボロと涙が出た

「ちゃんと約束を守ってくれてありがとうベル君」

神様は慈愛に満ちた表情で微笑みながら僕の頭を撫でる。

「神様っ…………神様僕は!!」

泣きながら叫びように

「なんだいベル君?」

「僕は強くなりたいです!大切な人を守れる英雄に僕はなりたいです!!」

大泣きしながら心のうちに秘めた想いを伝える

「ボクはずっと君の隣で見守ってるからね」

神様は僕の事をぎゅっと抱き締めてくれた

「神様っ」

僕はひたすら泣いたのだ。

 

大泣きしたベル君は疲れてしまい、今はベットで寝ている。

寝ているベル君の頭を撫でながら語りかける

「ボクはね最初はベル君が居てくれるだけでいいと思ってたんだ」

「危なかったら冒険もしなくてもいいと思った」

「君に居なくなってほしくないから」

「ボクは我が儘な神なんだ……」

「でもベル君の想い、願い、ボクが支えたい」

「この先、辛く悲しい事が起きたとしても」

「ボクはベル君の隣で一緒に歩むよ」

「君が英雄になるその日まで」

ヘスティアは誓い、そして願い、物語を見届ける。

 




いやー!ベル君とヘスティアの愛が詰まったお話です!!
ベル君が強くなる上で、本気のきっかけになることを願ってます。

そして個人なことなんですが……UA10,000越えました!!!
ほんと嬉しいです!
これからもよろしくお願いいたします!

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