これが僕の英雄譚   作:猫と果実

10 / 32
ども猫と果実です!
前回はシルと出会い予約されちゃった話ですね!
今回はその続きからやっていきたいと思います!
今回は長めなので退屈になったとしても最後までみて頂けると幸いです。

では兎が織り成す英雄譚お楽しみください。



立場

「ふっ!!」

『ギャアア!!』

現在二階層、ベルは今夜の食事代を稼ぐためにもいつも以上にペースをはやめていた。

「くっ!?」

コボルドの爪をナイフで辛うじて弾き返し、カウンターで一閃、命を絶つ。

コボルド二体からの攻めに防戦になっていたベル。

一体モンスターが増えるだけで防戦がかなり増えるためリスクも上がる。

複数が当たり前のダンジョンでは、ソロで潜ることにあまりメリットはないのだ。

背後から隙を狙っていたもう一匹のコボルドの突進を反射的に避け、後ろからコボルドの首元を狙い突き刺す。

確実に仕留めたことを確認し、周りを見渡す。

「ふぅ~やっぱり複数は辛いな……」

 

2日前からダンジョン探索を再開してるベル。

戦えば、自然とステイタスが上がる、しかも通常より早く上がるベルのレアスキル。

現在のベル・クラネルのステイタスはこれだ。

 

~~~~

 

ベル・クラネル Lv1

 

力:I.92

 

耐久:I.36

 

器用:I.99

 

敏捷:H.167

 

魔力I.0

 

《魔法》 【 】

 

《スキル》【浪漫翔兎(ロマン・ダシュプース)

 

     ・早熟する。

 

     ・浪漫を追い続ける限り効果持続。

 

     ・ロマンスが起こるたび効果向上。

 

 

~~~~

 

以前、アイズに助けられる前と比べたら成長スピードが落ち、皆と変わらないペースになっているのだ。

(ついこの間まで敏捷G間近だったのになぁ~)

(神様曰く調子が悪いって言うらしいけど……体の調子は悪くないのにな……)

 

最近のステイタスは昨夜に行われた。

「さてベル君!ステイタス更新しちゃおうか!」

「はい、神様お願いします!」

ステイタス更新を行うヘスティアが疑問抱く。

(やっぱり昨日は偶然かなと思ってたけど、2日連続だと…確定かな)

(明らかに成長スピードが落ちてる……いや普通に戻ったって言った方が的確なのかな?)

(なら原因は、スキルが発動してないってことになる、ってことはベル君自身が浪漫を追い続けてないってこと?)

(でも今のベル君がやる気なくて諦めてる様子もない……様に見えるだけなのか?)

(でも、じゃが丸くんの件は絶対スキルが発動してた……なんでだ?)

「神様?」

「どっどうしたんだいベル君?」

「いえ、いつもより長いなと思っただけで……」

「そっそうかごめんよ!ちょっと写すのに時間かかっちゃって!」

「後ちょっとだから待っててねベル君!」

「はい!」

ステイタスを共通語(コイネー)に書き換えベルに見せる。

「なかなか上がらないな……」

自分が弱いからかなと、表情が暗くなる

「ベル君、今は少し調子が悪いんだと思う」

「調子が悪いですか?」

「そうだよ!前の時は調子が良かったんだ!」

ヘスティアはベルに嘘をつき、この解決策がわからない自分の不甲斐なさに悔しがっていた。

(このスキル発動の有無は、ベル君自身に問題があるとしか言えないんだけど……解決策が思い付かない……)

(ボクは主神失格だ……君の力になるって決めたのに……)

「そうか……神様が言うならそうなんですね!」

(うっ……心が痛む……でも必ず解決して見せるからねベル君!)

「そうさ!だから無茶はしちゃだめだぜ?」

「はい!」

それとなく親交がある神に聞こうかなと考えるヘスティアだった。

 

 

「今日はシルさんのお店に夜ご飯食べに行かないといけないから、いつもよりはやめに切り上げないと!」

2日間朝から晩までダンジョンに潜ることをしていたので、一応お金は少し、ほんの少しだけ余裕があるので、多分大丈夫……だと思う。

「神様にも声かけて一緒に行こうかな!」

「確か今日はバイトだけど夕方頃には終わってるのかな?」

「とりあえずもうひと踏ん張り!!」

ナイフを逆手にダンジョンを駆けるのであった。

 

その頃ヘスティアはベルの予想と違い、ホームでゴロゴロしていた。

「まさかあんなにもじゃが丸くんが売れるなんて……」

ヘスティアがバイトをしているじゃが丸くんの屋台がある。

なぜか最近じゃが丸くんがブームなのか知らないが、今日の分の在庫がなくなり完売してしまったのだ。

そのおかげもあって、お給料に+お金を貰い、早帰りしてきたヘスティア。

「うーん、まさかの暇が出来てしまったな……」

「あっ!ベル君のスキルについて調べるチャンスじゃないか!」

ベットから飛び起き、身だしなみを整え、出掛ける準備をしだす。

「それとなくミアハとタケに聞いてみよう!」

「ヘファイストスは勘が鋭いからな……もう少し分かってからにしよう!」

ベルに置き手紙を書きホームを飛び出すヘスティア。

『愛しのベル君へ!

今日は他の神とちょっと話があるから出掛けくるね!

夕飯はいらないから、たまには外食してきな!

ヘスティアより!』

「よーし!ベル君のために頑張るぞ!!」

 

 

「ただいまー!!」

ダンジョンから戻り、ホームに戻ってきたベル。

「あれ?神様まだ帰ってきてないのかな?」

防具など片付けラフな格好に着替える、ふと机の上に手紙があることに気づく。

「手紙?……神様の置き手紙かな?」

手紙の内容を読み、なんとなく初めてもらった神様の手紙だったので捨てずに、私物の置場所にしまう。

「なんか手紙もらうなんて久しぶりで嬉しいな!」

「でも、愛しのベル君って恥ずかしいな……」

文面ながらも照れてしまうベル、ヘスティアのにやけ顔が目に浮かぶ。

「でも神様、出掛けちゃったのか……残念だけど、今度誘おうかな!」

「今回は下見ってことにしとこ!!」

ベルは気を取り直して、出掛ける準備を済ませる。

「もしかしたら神様とまたすれ違いになるかもしれないから、僕も手紙書いておこう!」

「神様へ!

   お言葉に甘えて今日は外食してきます!

遅くなるつもりはありませんが、神様の方が帰るのがはやいのであれば待たずに寝てしまって大丈夫です!

ステイタス更新もしなくて平気なので!

では行ってきます神様!

           ベルより!」

「よしこれで大丈夫かな!」

「よし!シルさんの働いている酒場に行こうかな!」

ベルはお金の心配もありつつも、外食に浮かれつつあるのであった。

 

 

「いや~急に誘って悪かったね、ミアハ、タケ!」

ヘスティアは親交のある男神二人と小さな酒場に居た。

「なに我々は良き隣人なのだから気にするなヘスティア」

美麗な目鼻立ちの高身長の青年、神ミアハ。

「ミアハの言う通りだヘスティア」

精悍な顔つきで、頭髪を角髪にしている青年、神タケミカヅチ。

二人は天界にいた頃からの付き合いのある神々だ。

「そう言ってくれると助かるよ!」

お酒を頼み、三人して乾杯をする。

「貧乏ファミリアにしては贅沢になるな……ナァーザには内緒だな」

「ミアハ……どんだけ尻に敷かれてるんだよ」

「ふふっん!実は今日バイトの収入が良かったから、ミアハの分は少しは出せるぜ!」

ぐっと親指を立てミアハにポーズを決める。

「持つべき物はやはり友だな。礼と言ってはなんだが、今度うちで買い物するときにおまけを付けさせてくれ」

「さすがミアハ!ベル君も喜ぶよ!」

「おーい俺を忘れてないか……」

「だって、タケのファミリアはまだお金あるじゃん!」

「自分で言うのもなんだが、お前らとそんな変わりないぞ!?」

「してヘスティア」

「おいスルーするなミアハ!」

ミアハは少し微笑みながらヘスティアを見る。

「私たちに相談事か?」

「さすがミアハだな~バレちゃったか」

「まぁ急ってこともあるけど、ヘスティアに初めての子どもが出来てからの飲みだからな」

タケミカヅチもミアハも、ヘスティアの考えを見越していた。

「わかった上で来てくれてありがとう二人とも!!」

「こうして三人久しぶりに話も出来るのだ、むしろ感謝してるよヘスティア」

「いつでも相談乗るからいいんだよヘスティア」

少し談笑をしてから本題にはいるヘスティア。

「実は……ベル君、ボクの子なんだけどステイタスが伸び悩んでいて困ってるんだ。」

「なるほどベルが悩んでいるのか」

「ミアハはヘスティアの子と面識があるのか?」

「うちの大切なお得意様だ」

「なるほどな」

「まぁ最初らの子だから余計に心配になるよな……」

タケミカヅチ腕を組み少し考える

「俺の子も、ステイタスに伸び悩む時期はあるが、パーティーを組んでるから自然と期間は短いんだ」

「パーティーを組んでるから?どうゆうことだいタケ?」

「そだな……ヘスティアの子はソロでダンジョンに行ってるんだろ?」

「そうだね……」

「単純にソロだとリスクを冒した戦いが出来ないんだ。」

「しかし、パーティーなら複数でリスクを補えるから、ステイタスを上げるための効率が上がる」

「そうするとおのずと期間が短くなるんだ。」

ミアハも少し目を瞑り、少し考え話し出す。

「ナァーザはダンジョンには潜れないから、タケミカヅチみたいなアドバイスは出来ないが」

「以前怪我をする前のナァーザがLv2になったのはやはり、リスクを冒して冒険をしたからだそうだ」

二人の意見を聞き考えるヘスティア。

「なるほどね……やっぱりソロは危険だよな……」

お酒を飲みながら考える

「ベル君がパーティーか………………」

「なんかダメな気がする」

「だめってどうゆうことだヘスティア?」

「女だらけのパーティーになるかも知れないじゃんか!?」

「へ、ヘスティア?」

「もしかして酔っているのかヘスティア」

「可愛いベル君は誰にも渡さないぞ~!!!」

「「酔ってるな」」

 

人の往来が絶えないメインストリートを歩みながら、今朝の記憶を頼りにお店を探すベル。

(えっと朝シルさんに会ったのはこの辺りなはずなんだけど……)

顔をきょろきょろと振り周りを見渡す。

「…………ここだよね?」

他の酒場に比べて大きいお店、二階建てでやけに奥行きのある建物だ。

シルさんの働いてる酒場『豊饒の女主人』。

すごい名前だなと飾っている看板を仰ぎながら、入り口からそっと店内をそっと伺ってみる。

最初に目についたのは、カウンターの中で料理やお酒を振る舞う恰幅(かっぷく)のいいドワーフの女性。

きっと女将さんなんだと認識するベル。

ちらっと見える厨房ではネコ耳を生やしたキャットピープルの少女達がてんてこ舞いで動き回り、そして客に注文をとる給仕さん達もさも当然の様に全員ウエイトレス。

スタッフ女性が全員女性なのだ。

……なんとなく酒場の由来を察するベル。

(これ思った以上に難易度高くないかな……)

しかも中にはプライドが高いとされるエルフまでもが店員として働いてるのだ。

ハーレムを掲げるベルとしては、ここは美女美少女が揃いに揃ってる夢みたいな場所である。

という割りには女の子に耐性のないベルにすると、難易度が高いのだ。

(うぅ……やっぱり神様と二人で来れば良かった……)

店に入る前から既に撤退の気持ちが出てくる。

「ベルさん」

「…………」

いつの間にか現れたシルさんにぎこちない笑みで反応するベル。

「やってきました……」

「はい、いらっしゃいませ!」

シルさんは朝と同じ格好で出迎えてくれた。

シルさんに連れられ入り口から入る。

「お客様1名はいりまーす!」

(酒場ってこんなこと言うのもなの……)

あまり目立ちたくないベルは体をちちこませながらついていく。

「ではこちらにどうぞ!」

「は、はい」

案内されたのはカウンターの席だ。

カウンターの他の席にはお客はおず、ベルと女将さんが向き合う形になっている。

これならあまり周りを気にせず食事が出来るスペースだ。

シルさんが気を使ってくれたのが伝わった。

「あんたがシルのお客かい?冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ!」

グサッっと刺さる一言をもらう。

「何でもアタシ達に悲鳴をあげさせるほどの大食漢なんだそうじゃないか!!じゃんじゃん料理頼んで、じゃんじゃん金使っておくれ!!」

「ちょっと!?僕いつから大食漢になったんですか!?」

まさか発言を聞き、振り返りシルを見ると目線を逸らされる。

(確信犯か……)

「えへへ……」

「えへへじゃねー!?」

「その、ミアお母さんに知り合いの方お呼びしたいからとたくさん振る舞った上げてと伝えたら、気付いたらこんなことに」

「絶対わざとですよね!?」

「私応援してますから!」

「いやいや!?うちのファミリア貧乏なので無理ですよ!?」

「…………お腹が空いて力が出ない……朝御飯抜いたせいかも……」

「完全に棒読みじゃないですか……」

「ふふっ冗談ですよベルさん、ちょっと奮発して頂ければ充分です。」

「ちょっとね……」

年上のお姉さんには気を付けようと思ったベルである。

 

メニューを眺め料理を選ぶ。

(一応何かあったときように4000ヴァリス用意したけど……)

(それでも安いの頼まないと明日が厳しくなってなっちゃうや……)

ベルは300ヴァリスのパスタを注文をする。

料理を待つ間酒を飲むかと聞かれたが、懐の関係上断ったが、なぜがドンっとカウンターにお酒を置かれ、聞いた意味ないじゃん!?と内心嘆いていた。

「ほら注文の品だよ!」

またもドンっと目の前にパスタ……となぜか魚を丸々1匹使った焼き魚の上あんかけかかった料理が置かれた。

「あっあの……頼んだのパスタだけなんですけど……」

「なに、パスタだけじゃ足りないだろうからうちのオススメを追加したのさ」

自然と顔がひきつるベル

(こうゆうのが酒場のノリなのか!?)

「とりあえず食ってみな」

「は、はい!」

試しにオススメであるあんかけ焼き魚を食べる。

「!!、美味しいです!」

「当たり前だよ、うちは手抜きなんてしないからね!」

豪快に笑いながら話すミア。

「僕山地の生まれなので魚ってあまり食べたことなかったので感動です!レシピ教えて頂きたいぐらいです!」

「なんだい坊主、料理出来るのかい?」

「一応人並みには出来るつもりではいます……」

「うちの娘達より働けるんじゃないか」

笑いながら言うミアさん、内心は冒険者なんだけどと訴えかけていた。

「ん?坊主ペンダント着けてるのかい?」

「は、はい!」

「ちょっと見してくれないかい?」 

少し雰囲気の変わったミアさんが僕に言う。

「全然大丈夫ですよ!」

首にかけている涙型のペンダントを渡す。

「よくインナーの中に隠れてたのにわかりましたね?」

「チェーンの部分は見えるだろ、昔見かけたやつに似てたのさ」

ミアはベルと話しながら内心動揺していた。

(どっかで見たことあると思ったら、これ【ヘラファミリア】のやつが着けていたやつじゃないかい)

(確か……ファミリアの中でも上位に位置してたやつしか身に付けていなかった)

(そんなものをなぜこんな駆け出しの坊主が……)

「坊主、これはどこで手にいれたんだい?」

「えっと……それは亡くなった祖父の物なんです!」

(祖父?…………)

「あんたの祖父はかなり体型は良かったかい?」

「そうですね!筋肉凄かったですよ!」

(………まさかね……でもだとしたら、あいつらの中の……)

「でもどうして祖父が体型良いこと気になったんですか?」

「知り合いに似てるじじいが居たってだけさ」

「?」

「それより、身内話を聞いちゃったからってことで魚のお代は気にしないでいいよ!!」

「えっでもそれじゃ……」

「ワタシがいいって言ってんだ!わかったかい?!」

「はっはい!!」

「それと暇があったら料理教えてやるから来な」

「!、はい!ありがとうございます!」

ミアさんは少し豪快だけど優しい人なんだと実感した。

 

ミアさんが居なくなったのを見越してシルさんが隣に座ってきた。

「楽しんでますか?」

「圧倒されてます……」

まだパスタも魚も半分も食べれていない状況だ。

「お仕事はいいんですか?」

「キッチンは忙しいですけど、ホールは落ち着いてるので大丈夫なはずです」

そう言ってミアさんに目線で尋ねる。

ミアさんは口を吊り上げながら顎を上げて許可を出した。

「えっと朝はありがとうございました。パン美味しかったです」

「いいえ頑張って渡した甲斐がありました!」

そんな言葉に少し苦笑いをしてしまうベル。

「実はここって結構冒険者さんから人気があるんですよ? 後お給料もいいですよ?」

「……シルさんってお金好きなんですか?」

「ベルさん私そこまでお金好きじゃないです!」

ぷくって頬膨らませて怒るシル

(ほんとこの人は可愛いな……もしかしてわざととか?)

少し疑心暗鬼になっているとシルが不意に

「私好きなんです、色々な人を見て、色々な人とお話するのが」

「その人にしかない良さ、物語、私そうゆうのが好きなんです。」

「だからここのお仕事はとっても好きなんです。」

周りを少し見渡しながら言うシルは、朝会った可愛らしさより、大人な女性が似合う雰囲気だった。

「素敵ですねシルさん」

シルの言葉に素敵な人だと素直に思いニコッと笑いながら褒める。

「……」

シルはそのベルを見て少し驚きながら

「ベルさんあんまりその笑顔見せない方がいいですよ?」

「えぇ!?なんでシルさんも神様と同じこと言うですか!?」

ボソッとベルに聞こえないように

「そんな笑顔されたれ、みんな気になっちゃいますよ……」

「シルさん?」

「とにかく気を付けてくださいね?」

ニコッと笑いながらも少し雰囲気が怖いシルであった。

 

少しシルと雑談をしていると、店内がざわめく。

『おい、見ろよあれ』

『すげー上玉じゃねぇか!?』

『やめておけ、エンブレム見てみろよ』

『……げっ』

そんな声に僕も目をやるとそこは憧れがいた。

心臓が飛び出すんじゃないかと思うぐらい、自分の中で鼓動が響く。

『あれが巨人殺しの……』

『まじかよ……【ロキファミリア】第一級冒険者オールで揃ってるぞ』

皆が【ロキファミリア】に注目する、そう思ってる僕も気になってしょうがない。

ロキファミリアの宴会が始まると、他の客も思い出したかのように酒をあおり始める。

「実は【ロキファミリア】は、うちお得意様なんです。

彼等の主神であるロキ様に、私達のお店がいたく気に入られまして」

そんな興味深々の雰囲気が伝わったのか、こっそりと教えてくれる。

(ここに来ればヴァレンシュタインさんに会える確率があがるのか!)

ベルはうきうきしながら考える。

アイズの一挙一動に目を引かれるベル、すると一人の青年が大声でアイズを呼んだ。

 

「そうだ……アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

「あの話?……」

どうやら獣人の青年がアイズに話をせがんでいるようだ。

「あの話ってなにベート?」

アマゾネスの少女が聞く

「あれだって帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!そんで最後の一匹五階層で始末しただろ?!そんで、ほれあん時いたトマト野郎の!!」

ベルは先程の高揚で高鳴った鼓動がひんやりと戻る。

冷静なのに冷静ではない自分がいる。

「ミノタウロスって集団で逃げたしたやつらのこと?」

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよ、俺達が泡食って追いかけていったやつだよ!」

僕はこの話を知っている

「それでよ、いたんだよ。いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ冒険者(ガキ)が!」

そうそれは僕のことだからだ。

「ねぇアイズ?それってじゃが丸くんくれた子?」

「あーあの子のことなのね!」

双子のアマゾネスが聞く。

「うん」

周りを気にせず話す獣人。

「ミノ野郎に殺られる寸前でアイスが助け出したんだけどよ……」

獣人は笑いながら

「壁に追い込められて、わんわん泣いてやがんのよ」

「返り血で全身真っ赤になってよ」

「最後どうなったと思う?姫様に助けられて、叫んで逃げやったんだよあいつ」

「ほんまなんアイズたん?」

神ロキがアイズに問う

「……うん」

周りがそれを聞き笑いだす。

アマゾネスの双子と剣姫は笑わない。

「べ、ベルさん?」

隣の声も聞こえない

「なんだ、ティオネ、ティオナ文句でもあんのか?」

「あの子良い子だもん!」

「まぁそうね、叫んで逃げたのは良くないけどそのあとしっかり、アイズにお礼の品を渡してたわ」

「なんだお礼の品ってのは」

「……手作りのじゃが丸くん」

アイズが答えると

「「「じゃが丸くん!?」」」

どっと店の中で笑いが起きた。

「傑作じゃねぇかよ!!冒険者辞めて料理人でもなっちまえよ」

「そんなカスがいるから俺の品格が悪くなるんだよ」

そんな暴言に、アマゾネス、エルフ、剣姫の四人が顔をしかめる。

「ベート、駆け出しの冒険者に危険を負わせたのは私達のミスだ。その冒険者に対しての誹謗中傷はやめろ」

「あぁ!?アイツが冒険者やってるのが悪いんだろ!!」

金髪の小人が話し出す。

「もしかしてベート酔っているのかい?」

「うるせぇぞフィン!?あんなザコはこのオラリオに居ちゃ邪魔なんだよ」

「守ってもらうだけで、自分も他人も守れねぇやつを庇う必要なんてないだろ!?」

 

ボキリ

 

僕の中で何かが折れた。

 

思わず耐えきれなくなったアイズが立つ前に

ベルが勢いよく立つ。

周りから注目を浴びるが余裕もない。

周りの目線を気にせず、外へ走り出す。

「べ、ベルさん!?」

「あいつ食い逃げニャ!?」

アイズは視野の端で、出会った少年が居たことに気づく。

「アイズたん?」

アイズは外へ駆け出すが、少年の姿は見えない。

 

兎は駆ける

月明かりに照らされる道をがむしゃらに

 

兎は嘆く

悔しさに 力のなさに 弱者である自分に

 

兎は求む

目指すは魔が住み死を漂わせる地下迷宮 

 

兎は目指す

冒険者への道へと 英雄を目指すための道へと

 

涙を流しながらダンジョンへと。




長いのに最後まで読んで頂きありがとうございます!
ベルくんの名シーンを自分なりに変えちゃいました。
これから本格的にベルくんが強くなりすぎてくるので
飽きないでくださいね-w

次回も兎が織り成す英雄譚をお楽しみください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。