騎士王転生 え、違うの? 作:プロトセイバー
人は、どうしようもない壁にぶつかった時、一体どんな行動を取るんだろうか。一人で立ち向かう? 仲間と共に立ち上がる? それが出来たら苦労はしない。とてもカッコいいだろう。だが、それが出来る人間が少ないから彼等は英雄や主人公と呼ばれるのだ。
つまり何が言いたいのかというと、現実を突きつけられ絶望に膝を折った俺は、膝を抱えて蹲ることしか出来なかったというわけだ。
そう、今朝、いい加減堪忍袋の緒が切れた親に怒られたのだ。そりゃ、五年間何もしてなかったら怒られるとは思ってたけどさ。いくら何でも、ごく潰しとかヒキニートとかいうのはヒドイと思う。俺のメンタルは言うほど強くないんだ。あんまりだと思う。
そして、その上で俺を学校に通わせることになったと宣言したのだ。死体蹴りはやめていただきたい。いや、本当に。ん? 適当な事言ってないで、いい加減家から出たらどうだって?
ほう、こんな化け物を世界に解き放とうというのか。いいだろう、ならば戦争だ。
俺は引きこもりをつづけてやる! と意気込んだはいいものの、親の本心から心配する言葉やド正論に敢えなく撃沈した。親バカのくせに手ごわい。
あの手この手を使って引きこもりを続けようとしたものの、数日の奮闘の末敗れ去った俺は、渋々学校に通うことになってしまった。
まぁ、いつまでもウダウダ言っていても仕方がないので、親に詳細を聞くことに。どうやら、俺が通うことになった学校はアルザーノ帝国魔術学院というらしい。名前の通り、魔術を教える学校らしいが、俺が学ぶことなどあるのだろうか。
魔術なら、親から教えてもらって割と使えているし、そもそもあんな手品みたいな魔術をならってどうするのやら。いや、この世界の水準で言うとあの程度のものでも人を殺すのは容易いだろう。俺の場合は、切ってしまえばそれまでなわけで。
それを抜きにしても、異世界の技術には興味があったため、引きこもっている間に書物を漁った俺は割と博識だ。やはり、学ぶことなどないのではないだろうか。
とはいえ、親からの好意を無下にするわけにもいかない。どうしようか悩んだ結果、一つの結論を出した。
授業をサボって、テストで結果をだす。これが、俺が出した結論だ。授業を受けるのはだるい。しかし、退学処分になってしまうのは親に申し訳ない。ならば、授業を聞いていないように見える優等生を目指そうというわけである。点数を取っている以上、真面目あるいは実は授業を聞いている、と周囲は勘違いしてくれるに違いない。勘違いしてくれなくとも、クラス最優秀になればそうそう文句は言われないだろう。
ハーッハッハッハ! 刮目せよ、皆の衆! これが引きこもりの底力だ!!
アーサー=ペンドラゴン。それは、このアルザーノ帝国魔術学院において最も優秀な生徒の名だ。テストはすべて満点。実技においても、他の誰の追随を許さないどころか、ものによっては講師すらもしのぐ実力。生徒として、欠点らしい欠点が見つからない最優の人物だ。とある一点を除いては、だが。
この人物における最大にして唯一の欠点。それは、とんでもないロクでなしであるということだ。制服こそキチンと着ているものの、授業中はいつも爆睡。その内容を一切耳に入れることなく、その日の授業が終わると即座に帰宅する。遅刻は当たり前、酷いときには授業そのものをサボり、どこかで黄昏ている場合もある。
しかし、先程もいったように、それ以外に欠点らしい欠点が見つからない、期待の新星であることもまた事実。それに加え、一線はわきまえているのだ。禁止行為や犯罪行為は一切行わず、あくまでロクでなしに収まる範囲の勝手を行うのみ。授業態度を除けば、素行に問題があるわけでもなく、むしろ大人にはキチンと敬意を持って接する優等生だ。彼の態度を歯がゆく思う講師達も、その実績のおかげで文句をつけることが出来ない。おおよそ全てにおいて最優でありながら、その実とんでもないロクでなしである。
故に、彼は多くの者からこう呼ばれている。
――最優のロクでなし、と
なんかこう、普段やる気がないのにはそんな事情があったのか! っていう風に持っていきたかったのでこういう設定入れてみました。上手く使えたらいいなぁ。