愛しい瞳   作:シーマイル

16 / 18
お待たせしました、
今回はモブの視点かつ残虐な描写が含まれます。
それでも良いと言う方は
どうぞ、


16 嫌われもの、嫌うもの

覚、

それは心を盗み見る気味の悪い妖怪。

そいつは心を読み煽ってくる煩わしい妖怪。

そしてトラウマを利用する胸糞悪い妖怪。 

妖怪にもいろんな奴がいる。

だいだいは人間から色々な物を喰らうのだが、

 

あいつらは違う、

人に限らずいろんな奴の心を暴き喰らうのだ

 

土足どころか我が物顔で荒らし回りありとあらゆる感情を喰らう

それこそ壊れるまで

奥底から養分を吸いとる、

人間ならともかく妖怪や幽霊たちなら存在そのものが消滅する。

····だから、だからだ!!

そんな胸糞悪い奴が地底に来ると知ったとき、

ましてや怨霊を鎮める仕事をさせるという。

あいつらに権力を持たせると言うのだ!

俺は反対したし、同じ思いの奴も沢山いた、

しかしあの鬼の四天王だかなんだか、

とくに星熊や虎熊は押しきりやがった。

 

だからだ、あいつらがどうしようもないなら、

あいつらがここ、地獄に来るというのなら

お望みどうり見せてやろう。

そして思い知らせるのだ、

地獄にもお前らの居場所など無いことを、

 

 

 

最初は難しかった。

腐っても覚は覚だ、

下手な考えを起こしたらそれだけでバレる。

どうしたものかと考えたものだが案外簡単に答えは転がり込んできた。

なんとあいつらは俺たちに屋敷を造れと言ってきたのだ。

最初こそムカついたものの直ぐにこれはチャンスだと悟った。

いくら覚といっても寝ている間も心を読む訳ではないはずだ。

ならば寝込みを襲えばいい。

そして屋敷には侵入出来るように細工すれば簡単に誘拐できる。

我ながらかなり良い作戦だと思った。

···しかしただ襲うだけでは味気ない。

どうせならあいつらの心も壊してやればいい。

そして閃いた。

俺は少々怨霊を操れる。

いくら覚でも怨霊の声を聞き続けたらたまったものではないだろう。

壊せばいい

覚の心を

思い付いた瞬間とても愉快だった、

だってそうだろう

覚が自分の力で自滅する。

これほど愉快な様は中々無いだろう。

そしてそうこうしてる間に奴らは来た。

この地獄に、

外の世界から追い出された覚、

そしてこの地獄にも居場所は無い

 

そして予想外だったのが、

あいつらは姉妹だったのだ、

厄介なことになったと思ったが妹の方の態度を見ているととるに足らないと知った。

どうやら心を読むのも嫌らしい、

ならば、

餌に使えるだろう、

姉のほうはかなり気丈だが妹の方から崩せばさすがに堪えるに違いない。

そうこうしている内に一月が経った、

もう頃合いだろう。

俺の考えた作戦は実行された。

目の前には、そう、

あの忌々しい妖怪がいる。

「何なのよ?あなたたち。さっきから回想ばかりしてるけど?

 そんな理由で連れ出したの?よくやるわねぇ。」

「あぁそうさ。取り敢えずお前らをどうにかすれば地底に覚は、

 いや、そもそも覚という種族は見ないですむ。

 ここに居るのはそういうお前らが居ることを良しとしない奴ばかりだ。」

そう周りには俺の同士たちが取り囲んでいる

この場所を見つけるのも無理だろう。

なんせまぁ、俺しかここの入り口を知るものは居ない。

「さっきから偉そうに色々と語ってるけどあなたたちはどうしたいのかしら?

 お姉ちゃんに敵うはずも無いだろうし

 そもそも私の心を壊すとか行ってるけど何にも考えて無いだろうし。」

そう、それが一番の問題なのだが

「まぁいいさ、どうせ時間はある。

 ゆっくりいたぶるとしようか。」

「あぁそうだな。どこから行く?」

「あんまやり過ぎんなよ?そいつら体の方は弱いんだから。

 すぐこわれても面白くないだろう?」

「ここには刃物も火もある、色々試そうぜ!」

奴らの目には嬉々とした光が宿る。

それとは対象的に覚の瞳には恐怖の色が見えたが、その表情に怯む様子は無い。

何処まで持つか楽しみだ。

 

 

 

···それから数刻、

赤く染まった覚がいた。

その赤い体から伸びる青い管とその瞳にはまだ光があった

色々試したが泣き言一つ言わず、涙とは違う光を宿す相貌とその瞳は正直気味が悪い。

その空気は既に同士にも広がり、あの嬉々とした目の光は気味の悪さにかきけされた。 

集めた怨霊も何時の間にか消えていた。

腐っても覚とは、

···いや考えるな、考えれば、

「····考えれば、何?」

その姿に似つかわしくない声が、低く響く。

「ほんっとに何にも考えてなかったのかしら、

 よくそれでどうにかしようと考えたわね。」

「っこの腐れ妖怪が!」

「腐ってるのはあなたたちでしょう?

 こんな姑息な手を使って、それでも何にも出来ない何て」

「やっぱりさっさと殺しちまおう!

 これじゃいたぶり甲斐がねぇよ。」

「····そんなこと言って、もう此処から逃げたい癖に。

 楽しかったわよ?いたぶられている間、

 よく聞こえたわ、あなたたちの心。」

その瞳を見てしまう、

握り拳ほどのおおきな深い瞳を

「最初こそ楽しそうだったけど段々と不安に駆られる心情は見てて面白いわね。

 それがそのまま顔に現れるんですもの。」

呑まれるな、

「今も必死に考え事してる。

 感情は止められないのに。」

あの瞳に呑まれるな、

見るな、

目を合わせるな、

「私でこんなんじゃお姉ちゃんが来たらどうなるかなぁ?」

あの瞳さえなければ、

あの呑まれそうな深い瞳さえ無ければ、

···待てよ?

「えっ?」

覚の瞳がなくなったらどうなる?

あの瞳が閉じればどうなる?

「····」

露骨に瞳を逸らす。

「まだ傷をつけて無いとこがあったなぁ。そう言えば?」

あの瞳の光は何処に行ったのだろう

再び恐怖の色が見えた。

「その目を閉じれたらどうなるだろうなぁ?」

「やめて、」

「おい!そこの小刀を貸せ。」

俺は小刀を片手に詰め寄る。

「いや、止めてったら!」

言葉は無い。

好奇心が俺を突き動かす。

そして、

もう一つの手には青い瞳が握られていた。

「止めてったら!止めなさい?止めてよ!ねぇ!」

あとは、

突き立てるだけ。

それだけだ。

瞳の温かさが妙に生々しい。

血が通っている温度だ

 

俺はそれに小刀を突き立てた、

 

何か耳障りな声が聞こえた気がするがそれどころではない。

温度が溢れる。

生暖かいそれは俺の手を伝い、

管に伝わり、

俺に心を壊したことを伝える。

「··っふふふ、あはははははっははははははははははぁっははは

 わっはははははははははっ」

笑いは伝染する

「ハッハッハハハハハハ」

「あ-はっはははは」

「ふっふっふ、あっははは」

なんだ、大したこと無いじゃ無いか。

そんなことで良かったのか、

「これで俺たちに怖いものはない!

 あともう一匹いるがどうとでもなるだろう。

 さぁ!!次にあいつの目を潰しにいこうか!」

横に倒れているそれはもう光を失っている

あの青かった瞳も赤く染まった。

さぁ次にいこうか。

 

こいつの有り様を見せるのが楽しみだ

どんな顔になるだろう?

 

「·····見せてあげましょうか?」

背後から声が聞こえる。

声だけでは無い

沢山の烏の鳴き声の中、その声は良く通る。

「迎えに来ましたよ。こいし。」

振り向くと

そこには、

黒く蠢くいく千もの烏を従え、

復讐に燃えながらも冷徹に見下ろす

赤く深い瞳をもつ少女がいた

 




今回、ようやく瞳を閉じた理由を書けました。
嫌いなひとはとことん嫌いな場面だったと思います。
それでも読んでくれた方、本当にありがとうございます。

それではまた、

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。