愛しい瞳   作:シーマイル

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注意 今回、作者のオリキャラが出ます。
そこまででしゃばっている訳では無いので大丈夫だとは思いますが、

では、どうぞ


14 新しい日々

「では、私はこれで。」

彼女はそう言った。私もそのあとに言葉を繋ぐ。

「えぇ、お元気で。楽しかったですよ、今日まで有り難う御座いました。」

「ありがとーね。 最近まともに相手してくれるのお姉ちゃんくらいだったし、

 また会えるといいね。」

「本当にね、もしかしたら死んだ後お世話になるかもね。」

「縁起でもないこと言わないで下さいよ。手がつけられませんから。」

「ふふっ、それじゃこれで。紅茶、頼んでみるよ。紫にさ。」

「えぇ、是非ともミルクを添えて。」

「分かったよ。さようなら。」

「バイバイー。」

そうして霊歌さんは行ってしまった。

もう会うことは無いのだろう、彼女には巫女の務めがある、人間の寿命がある。

······もし次代の巫女が来ることがあったら歓迎しようか。

(寂しいけど楽しみだね。霊歌の後釜がどんなのか。)

(まだ来ると決まったわけじゃ無いわよ。それに地底は閉鎖的だし。)

「····それなら起こしちゃおうか。異変、うぐっ。」

私はおもいっきりこいしを叩いた。

「冗談だってー。そんな怒らなくても。」

「冗談でも辞めなさい。私は静かに暮らしたいの。」

「分かってるよぉー。」

まぁ取り敢えず一段落だ。今日は動き廻った。

体の節々にきている。能力もおもいっきり使ったし早く寝たい。

だが、

「······荷ほどきしなきゃ。」

「明日で良いんじゃない?」

「····寝られると思う?」

「あぁ~、布団で良いんじゃ。」

こいしは何も分かっていない

「折角の洋館よ! それこそベッドで寝ないでどうするの!」

「······意外と熱血というか、そういう時あるよねお姉ちゃん。」

「?、結構表に出す方だと思うのだけれど? 」

「はぁ、(表に出てるものがなぁ、)」

 (何かしら?こいし。)

「何にも言って無いから勘弁してよ、」

「それはそうと、お燐、空、」

「やっと出番ですかい?さとり様。」

「なになにー?」

「早速貴女たちにやってもらいたい事が有ります。空、人形に成れる子はどのくらいいる?」

「それはー、えぇっとー。···6にんくらい?」

·····確か烏の数えれる数って6が限界じゃなかったかしら?

「まぁいいわ。取り敢えず皆総動員して荷ほどきするわよ。」

「えーっと、にほどきって?」

「やかたの前に荷物があるだろう?あれを中に運ぶのさ。」

「それが終わったら各自自分の部屋を選んで頂戴。指示はするから。」

「わかりましたー。それじゃ行ってきまーす。」

「その前に空、」

「何ですか?」

伝え忘れる所だった。

これは空を、地獄烏たちを家族にするために必要な事。

「貴女に、私から、贈るものが有ります。

 貴女さえ良ければ受け取ってくれないかしら。」

「私、じゃなくて"私たち"でしょ。」

「それもそうね。」

「なんなんですか?それって?」

「霊烏路、 貴女の上の名前。霊烏路 空っていうのはどうかしら?」

「えっえぇっと何ですか?れい?」

「れ い う じ うつほ。二人で考えたんだよね♪」

「そうね、霊烏が吉兆を表す鳥。本当は白い鳥って意味もあるのだけれども。」

「本当は白いって、"ひにく"ですか?」

むすっとした顔でこちらを見つめる。機嫌を損ねたようだが、

「あら、烏は元々白いのよ。それに貴女の純粋な心を表すのに打って付けじゃない?」

「そして路、まぁ文字通り道標って意味だね。貴女たちに出会ったのも何かの縁って事で。」

「「どうかしら?」」

「えぇーっと、れいうじ?ですか。」

「そうね。読みにくいかもしれないけど、うつほっていうのに名前負けしないとなるとね。」

どうだろうか?ちょっとやり過ぎたかもしれないが。

(そういって、ノリノリだったじゃん。)

今はそう言うはいいの。果たして···

 

「言いにくいです。それに私にかける文字じゃないでしょう。」

うっ、まぁ考え過ぎてしまったかもしれない。

だが、

「けど、きにいりました。なんかかっこいいし。」

「お姉ちゃんの考える名前って良く気に入られるよね。

 考え過ぎがちょうど良いんじゃない?」

「えぇかっこいいです。さとり様、こいし様。ありがとうございます。」

これだけ喜ばれるとこっぱずかしいわね。

でも良かったわ、

「けど本当におぼえられそうにないのでその名前で呼んでくださいね♪」

「·····分かったわ霊烏路。(やっぱりもうちょと簡単にした方が良かったかしら。)」

(いまさらそれはないよお姉ちゃん···。)

「さぁいくわよ、お燐、お空、こいし!私たちの寝床を作るのよ!」

「もう呼び方変わってるし、」

「「はいっ!!」」

 

~少女模様替え中~

あれから5時間ほど経った。

烏たちの機動力は凄まじく1時間半程で屋敷の全景を把握、

そしてほとんどの荷ほどきは終わった。

各自部屋の模様替えは終わったし念願のベッドも置く事が出来た。

それにしても温泉付きとは、鬼たちはあんな心持ちだったが屋敷の出来は素晴らしい。

まさに理想その物、····次の会合はお礼を言おう。手土産を持って。

それにしても先程は5時間と言ったが、その1時間程は温泉に費やしてしまった。

正に極楽、

···いやここは地獄だ。

地獄に仏といった方が正しい、のか?

どちらにせよ私は半日にも及ぶ大移動、引っ越しの疲れをベッドの中、微睡みながら考えている。

もう終わった事だ。

私は意識を手放した。

深い無意識の底へ。

 

こいしside

今日は散々だった。

慣れないことばかりだった。

苦しい、辛い視線もあった。

·····私はお姉ちゃんほど心が強くない。

あんな図太さは持ち合わせていない。

恐ろしかった。またあんな風に見られるのは。

所詮心を覗いた所で見られるのはそんな景色ばかり。非難、恐れ、怒り、嫌悪感。

どれもこれも嫌な物ばかり。

そんな眼でしか私の瞳をみない。

···どうしてこんなもの付いちゃったかなぁ。

 

しかし良いこともあった。

今日の新しいペット、霊烏路 空 楽しそうだったなぁ。

お燐も新しい友達が出来て楽しそうだったし、お姉ちゃんも。

ああいう感情は見るだけで心が晴れる。幸せを共感できる。

····友達かぁ、

私には、

私には、なぁ。

いつか出来たら良いんだけどね。

まぁまだ始まったばかり。

私にもペットを飼っても良いって言ってたし。

私はそんな明日を夢見て眠る。

 

 

翌朝、

「いっつつ、いったあー。」

「あっ、うっ、  はぁー体力無いのに無茶するもんじゃ無いわね。」

「だから言ったじゃん、明日に回そうって。」

「仕方ないじゃない。ベッドで寝たかったもの。」

「·····その慣れない布団のせいで寝付け無かったんじゃない?」

「···グッスリネムレタワヨー。(そのうち慣れる、はず、)」

「······そう、」

じっとりとした視線をこちらに向けてくる。

案の定、昨日動き回った私たちの身体は悲鳴を上げ空中浮遊での移動を余儀なくされている。

要するに筋肉痛だ。

·······少しはしゃぎ過ぎた。

それはこいしにも言える事だが。

そう言う訳で私たちは今館内の様々な場所を巡っている。

それにしても部屋が多い。大きい。豪華な物ばかりだ。

やっぱり鬼って恐ろしいわね。性格が現れていると言ってもいい。

しかしステンドグラスはどういう事だろう?

そんな繊細な事も出来るのか。

センスも良く地底特有の赤い光を取り込み美しい色彩を放っている。

 

さぁ一通り巡ったし、

「こいし、ペットを選びましょうか。」

「えっ、本当に良いの?」

「言ったでしょう、それで貴女を試すって。

 確かお空たちは中庭と大広間の一つに居るらしいから早速行きましょ。」

「やったー♪」

まぁ良い機会だ、私は仕事で忙しくなるしこいしには話相手が必要だろう。

だから、

 

「····そう言う訳で、どの子か一人こいしに預けてくれないかしら、お空?」

「·········」

「···霊烏路 空。」

「ちゃんとよんで下さいって言ったじゃないですか!

 せっかくかっこいいのにー。」

「ごめんなさい、霊烏路空。  貴女が覚えるまでは続けるから。」

「わかりましたよ。でも、どれも私たちのかぞくです。

 ·······ちゃんと、かわいがってください。」

「わかってるよー。勿論お空もね♪」

こいし、 ちゃんと呼んで無いけど良いのかしら?

「そうだねー、とりあえず見てくるね。」

「はいはい、気を付けなさいよ。」

そうしてこいしは夜の帳のようになっている天井へ向かった。

「ありがとうね。霊烏路空、こいしの為に。」

「いいですよぉー。 

私たちのいばしょもできました、もじどうり羽をやすめることができます。」

「それもそうね。 後はこいし次第。」

さて、こいしの気に入る子は居るのだろうか?

まぁこれだけ多ければ一人くらい居ると思うが、

 

~少女選べt

「見つけたよー!!」

早いわね、こいし。さっき行ったばっかりじゃない。

「へへぇー。最初に目が合った子にするって決めてたんだ。」

烏に目を合わせるって、どれだけ視力良いのかしら?

それに暴れまくってるじゃないその子。

ばっさばっさと大きな羽を翻し鳴き叫んでいる。

「とりあえず落ち着かせなさい。可哀想よ。」

「あぁ、ごめんねー。パニックになっちゃってるねー。」

「····こっちにわたして下さいこいしさま。羽が取れそうです。

 ほら、あなたもおちついて。食べられるわけじゃないから。」

お空がそうなだめると落ち着いた様で暴れるのを止めた。

「カァー。(きゅうにつかまえてくるから、うつほ、これが"かいぬし"?)」

「そうだよ。あなたのお世話をするんだって。」

「クヮァー(えぇー。)」

「そんなに落ち込むことないじゃない。」

「···先ずは私がその子の世話を手伝うから。そこから初めましょう。」

「···信用ないなぁ。」

「そりゃそうでしょう。」

「さとりさまもいるならあんしんです。」

「クワッ?(一つふえた!!)」

「最初からいたわよ。私は古明地さとり、こっちが妹のこいしよ。よろしくね。」

「これから私、こいしが面倒看るからねーよろしくね。」

「そいうえば名前は付けないの?」

「もう決めてるよ。雅(みやび)って言うんだ。」

「要するにカラスじゃない。」

「いいでしょ。下手に考え過ぎるより。」

「皮肉かしら?」

「そんなこと無いと思うよ?それで、どう?雅ってのは。」

「カアカア。(··ついていけない。)」

「とりあえず、よろしくね。」

 

 

こうして新しい家族、居場所、こいしのペットが一気に出来た。

仕事もあるし前途多難だが、もう後がない。

来るとこまで来てしまったのだから。

だからとりあえずの不安は、

 

 

 

あの烏、  雅?はなついてくれるだろうか。

こいしに、


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