英雄王《偽》の英雄譚 作:課金王
焼肉パーティーで胃にダメージを負いながらも笑顔で別れた三人。
彼らは再び、己の生活へと帰っていく。
友であるギルや
寅次郎は弟子を鍛えつつも、孫の様に可愛がり乳と尻の成長を期待している。
ギルガメッシュもまた、田舎の村で農業に精を出し、エーデルワイスを鍛える日々を楽しんでいた。
そんな中、連盟非加盟国であるエストニアに《同盟》から加盟せよと通達が来た。
国民を争いに巻き込みたくないエストニア政府はそれを拒否。
返事を聞いた《同盟》はエストニアを手に入れる為に軍を編成した。
翌日には進軍を始め、それに呼応するように連盟も軍を派遣した。
これから始まる戦争に不安を感じる国民達。
特に怯えたのは都市部から離れた田舎の町や村だった。
両軍の戦闘は人口の多い、都市とは離れた場所で行われる。
故に、村や町は巻き込まれる可能性が高いのだ。
村や町では先祖代々受け継がれた土地を守る為に残る者。
家族を守る為に、土地を捨てて、安全な都市部へ向かう者に別れた。
ギルガメッシュが住んでいる村でも、ほとんどの村人は避難して、残るのは元服を迎えたギルガメッシュとエーデルワイスのみ。
二人は力を持つ
「覚悟はいいか?エーデルワイス」
「それを聞きますか?覚悟なら貴方と共に残る時に決めました」
ギルガメッシュに認識偽装の力を持つペンダントの宝具を手渡されたエーデルワイス。
美しく成長した彼女は、自分の故郷と愛する男の為に命を賭ける覚悟を決めていた。
ちなみに彼女を愛する両親も彼女の思いを理解し、涙を流しながら再会の約束をして親戚の居る街へと避難した。
当然、彼女が村に残った舞台裏を知らない童貞ギルガメッシュは彼女の熱い思いには気づいてはいなかった。
なんと鈍い男だろうか。
元、童貞ボッチサラリーマンは人の好意には鈍かった。
エーデルワイスがペンダントを装備した事を確認すると自身も認識偽装のペンダントを首に下げるギルガメッシュ。
「さあ、戦場へ行こうか」
「はい」
本来の姿とはかけ離れた別人となった世界最強クラスの師弟が戦場へと乱入する。
――――。
世界最強クラスの化け物が二人もやって来ると知らない連盟軍と同盟軍。
この二つの勢力がぶつかり合う中で二人の学生が戦争に参加していた。
一人は禁呪指定の
二つ名は《
時間を操る能力の使い手であり、周囲の時間を止めたり巻き戻したりすることの出来る怪物。
傷ついた兵士の治療を行う為に派遣された。
そして、もう一人は
黒乃のライバルにして彼女同様の禁呪指定。
彼女は何の前触れもなく、
二人はお互いがお互いを過剰に意識しているために、試合中に本気の殺し合いを展開。
何度も没収試合を繰り返す問題児であったが、ある光景を見て唖然としていた。
「……なあ、チビ。あれはなんだ?」
「……知らねぇよデカ女。私が知りたいくらいだ」
彼女たちの視線の遥か先……。
そこには……。
「フハハハハ!!我が庭を荒らす害虫共よ、疾く失せるがいい!!」
三叉槍を持った赤いコートを着たデブが両軍が衝突する戦場の中心で贅肉を揺らしながら軽やかな動きで暴れまわっていたからだ
デブが槍を振るえば大地が裂け、水がわき出し両軍を押し流す。
文字通り、戦場に水を差されたのだ。
「おい、デカ女。あのデブを倒さないと戦場が混乱する。
協力しろ」
「それはこっちのセリフだチビ女。
しくじるなよ」
展開される二人のデバイス。
二人が混沌渦巻く戦場へ参加しようとしたその時、新たな敵が現れた。
「あの人の邪魔はさせません」
その一言と共に一瞬にして背後を切られて意識を刈り取られる二人。
二人が意識を失う前に見えたのは……自分たちを切ったと思われる二振りの日本刀を持つ着物の女だった。
「魔力が大きい人間を優先に狩ったのですが……大した事ありませんね」
崩れ落ちた二人をそのままに、力ある伐刀者を高速かつピンポイントに狩り続ける着物の女と着物の女が目立たないように派手な攻撃で敵を翻弄する赤いデブ。
二人の正体はもちろんギルガメッシュとエーデルワイスである。
彼らはギルガメッシュの用意した認識偽装の宝具によって別人へと姿を変えていたのだ。
この後、赤いデブと二刀流の着物女は翌日、連盟と同盟の両軍から指名手配を受ける事になった。
………。
「弱すぎる!!弱すぎるぞ雑種共!!」
戦争が始まって数か月。
両軍は結託し、戦争を邪魔する第三勢力である二人の抹殺を試みた。
しかし……。
「ふざけんな!!あの槍チート過ぎるだろ!!」
「水を操るだけじゃなく大地も操るなんて、どんだけ規格外なんだよ!!」
「しかもこっちの攻撃は一切、効いていないとか理不尽すぎる!!」
前線でデブガメッシュと戦っている彼らの魂の叫び。
それは仕方がなかった。
ギルガメッシュは高レベルのプレイヤーであり、対魔力の数値も高い。
彼に傷をつけられる人類はこの世界において現時点では存在しないだろう。
そして、彼の持つ槍は神装兵器ポセイドンの槍で有名な《
この世全ての水を操り、大地を震わし、嵐を巻き起こすポセイドンの象徴。
英霊ですらない、特殊な能力を持っただけの人間が挑むには無謀ともいえる宝具である。
「おい!!いい加減に騎士として、正面から戦ったらどうなんだ!!」
「馬鹿め!!何故、覇者であるこの
無謀と言う言葉を知らぬ愚かな者どもよ。
この我に挑戦したくば、ここまで辿り着いてみせるがいい雑種共!!」
デブガメッシュが槍を地面に突くと、地面から水が間欠泉の如く噴き出し、津波となって、両軍をはるか後方へと押し流す。
「「「「ぎゃぁああぁあああああ!!!」」」」
「フハハハハハハ!!粉砕・玉砕・大喝采!!」
水に押し流されている騎士たちを眺め、愉快に笑うデブガメッシュ。
もはや英雄王ではなくカードゲームで有名な社長のようなノリになり始めた。
世界大戦を経験した彼に戦場で手加減の文字はないのだ。
そして……。
「ギル…素敵です」
高ランク伐刀者を悉くを切り捨てる彼女はどう見ても悪役の想い人に熱視線を送っていた。
倒した男性伐刀者を踏み台にして……。
恋する乙女は意中の相手以外には興味も欠片も示さないのだった。
赤いデブ=ローマ
二刀流の着物女=五輪の書を書いた人