英雄王《偽》の英雄譚 作:課金王
ほぼ一年ぶりに再会した三人の男達。
彼らは黒鉄家の別邸にあるリビングで自分たちの教え子について語り合っていた。
「魔力や身体能力は一切、申し分ないんだが…。
女を弟子にするならムチムチのプリンプリンのボンボーンにするつもりだったんだ。
なのに現実はペタペタのつるんつるんのストンストーンだった。
こういう時、最近の若者はこう言うのだったな…『人生はクソゲー』と」
弟子の写真を見せながら、心底残念そうに語る
よほどムチムチの弟子が欲しかったのだろう。
あまりの言い草に写真の弟子が聞いていたら殺されるのではないかと心配するレベルだ。
しかし、写真を見せられている男二人は彼の気持ちが理解できないわけでもなかった。
写真に写る女子高生は確かにペタペタのつるんつるんのストンストーンだった。
身長も低く、隣に映る友人だと思われる女子高生の胸辺りまでしか身長がない。
ストレートに言うと完全無欠のロリだった。
ギルガメッシュの弟子であるエーデルワイスと同い年ではないかと疑うレベルだったのだ。
まあ、逆にエーデルワイスは小学生とは思えないスタイルになってしまっているが……。
「ははは……。写真の彼女には悪いですが、寅次郎の気持ちも分からなくはないですね」
「ああ…これは絶壁ならぬ絶望的なスタイルだ。
本当に女子高生か?海外でよくある飛び級じゃないよな?」
反応はそれぞれだったが、思う事は大体一緒だった。
つるペタよりもボインが好き。
少なくともこの場に居る三人の悲しい男の本音だった。
「俺は孫だな。このまま行けば、将来は息子同様に日本騎士連盟の長になるだろうよ」
「また黒鉄が長になるんですか……もう一族経営みたいですね」
「仕方がねぇさ。周りが弱すぎたり日本騎士連盟の上に立ちたいと思う奴がいねぇからな」
続いて話題に上がったのは龍馬の教え子である孫。
孫の青年も寅次郎の弟子と同様に中々に才があるらしい。
龍馬の言葉通りなら、そのうち大きな大会でその名を轟かすだろう。
「そういえば、騎士連盟の件でお前さんに渡して欲しいと預かっている物がある」
「ああ、そういえば電話で言ってましたね。
渡したいものがあると」
「ほれ、騎士免許と禁呪指定認定書だ」
連盟の話で思い出したのだろう。
リビングに設置してあるテレビの横に立てかけていた封筒から中身を渡す龍馬。
受け取ったギルガメッシュは途端に顔を歪めた。
「うわぁ……。また、面倒な物を……なんですかこれ?禁呪《不特定多数の武器》って?
捨てていいですか?」
「一応は持っとけ、お前さんの蔵にでも入れとけば邪魔にならないだろ。
後、不特定多数については文句を言ってやるな。
初めは律儀に戦時中の記録を集めてリスト化していたみたいなんだがな。
正体不明の物が多すぎてこうなったらしい。
まあ、簡単に説明するとだ。
お前さんの盾やら鎖やら、人を傷つける事のない道具なら使っても構わないが、武器の使用はするなって事だ。」
「なんですかそれ?
まあ、よほどの事がない限り、戦闘なんてするつもりはありませんからね。
問題はないでしょう」
不満は大いにあれど、一応日本には戸籍があるので最低限の縛りはしょうがないと自分に言い聞かせ、ギルガメッシュはため息を吐きながら《
「話は戻るけどよ、ギルはどうなんだ?弟子は作るのか?」
連盟の話を無理やり終わらせ、話を戻したい龍馬はギルガメッシュに弟子談義を振る。
この時、龍馬たちはギルガメッシュに弟子が居るとは知らず、居ないものと思っていた。
故に、弟子自慢でギルガメッシュを煽り、酒の肴に楽しむつもりだったのだ。
しかし……。
「ははは。作るも何も、弟子なら居ますよ」
「おいおい、本当か?正直、お前が武術を教える姿なんて想像できないぞ。
仮に居たとしても、あんな頭の悪い戦いをする奴に教えられることがあるとは思えん」
「戦場じゃあ、遠距離から武器を撃ちまくるか、強力な兵器の火力任せだったからな……。
近接戦闘なんざ数回ぐらいしか見た事ないぞ。
龍馬の言う通り全く想像出来ん」
酷い言われようだったが、彼らの言葉は第二次世界大戦を知るものだったら全員が思う事だった。
ギルガメッシュの戦闘はとにかく派手であった。
遠くから数多の高ランク宝具を湯水のごとく射出し、編隊を組んだ戦闘機群をすべて撃ち落とし…。
地上を進行している軍隊を見つければ、山のように巨大な剣で頭上から圧殺……。
山の様な大剣から生き残った者たちは、戦車程の大きさを持つ大剣から放たれる炎によって灰燼に帰された。
故に、そんな人物が弟子を取れるとは微塵も思えなかった。
仮に弟子入りした人間が居るとすれば、それは遠距離専門の火力重視の偏った人間だろう。
しかし、それは命の掛かった戦場での話だ。
実際のギルガメッシュはこちらの世界に来る前であるが、
だから、その気になれば三〇無双シリーズのような近接戦闘も出来なくはない。
「剣林弾雨を笑顔で駆け抜ける君たちと違って、僕は初めての戦場だったんですよ。
安全な遠距離で徹底的に相手を潰す方針を取るのは当たり前じゃないですか」
「まあ、慰安婦も抱けない童貞のヘタレだもんな。
で?実際何を教えてんだよ?
剣か?弓か?それとも槍か斧か?」
酔っぱらった龍馬の童貞のヘタレ発言と共に、ギルガメッシュから突如として放たれる殺意にも似た威圧感。
彼は片手に持っていた黄金の杯をテーブルに置いて、鋭くなった紅き双眸を龍馬に向ける。
繊細なお年頃であるギルガメッシュにとっては笑って許す事の出来ない言葉だった。
「ははは……。
雑種」
ギルガメッシュから放たれる謎の圧力と共に龍馬の喉元、腹部、股間に向けて囲うように宝具が展開される。
どれもランクEの使い捨て宝具であるが、レベル最大の《カリスマA+》を発動したギルガメッシュが放てばランクC-レベルの威力を叩き出し、発動した周囲の相手にプレッシャーを与えて動きを阻害する。
親友に対するツッコミとはいえ、かなり過剰である。
「冗談!冗談だって!!落ち着けよ、な?
ほら、いい酒と肉をこっちも出してやるからさ」
「そうだぜギル。即婚のリア充野郎の目玉が飛び出るぐらい、肉を食おうぜ!!」
「フン」
龍馬たちの慌てぶりを見て満足したらしく、カリスマのスキルを解除し、鼻を鳴らしながらそっぽを向いて、龍馬を串刺しにしようとしていた宝具を蔵にしまうギルガメッシュ。
中身が中年のおっさんになろうとも、男友達の集まりだと若かりし頃と同様にはしゃぐのは異世界であろうと同じだと再確認した瞬間だった。
こうして男三人の焼肉パーティーは朝まで続いた。