英雄王《偽》の英雄譚   作:課金王

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2話

魔導騎士制度が日本で発表された。

 

この制度が発表された事により国際魔導騎士連盟の認可を受けた学校を卒業した者に発行される『免許』と『魔導騎士』という立場が与えられ能力の使用を許可する制度である。

これにより認可を受けた学校は七校、各校に在籍している生徒は『学生騎士』と呼ばれ、魔導騎士に必要な知識と技を学ぶことになる。

 

免許が発行されれば当然、持っていない伐刀者(ブレイザー)が能力の使用を行えば法律によって逮捕される。

同時に強力過ぎる力を持つ能力者は入学と同時に禁呪指定を受け、国が認めない限り能力の完全使用を制限される。

 

これらの連盟の動きは、戦場で活躍した英雄クラスの伐刀者(ブレイザー)の力の行使を制限する為だ。

勿論、この制度には非伐刀者には歓迎されたが、一部の伐刀者(ブレイザー)からは大きな反感を買った。

 

こうして、一部の者たちによって設立されたのが《解放軍(リベリオン)》。

彼らの目的は伐刀者(ブレイザー)を選ばれた新人類とし、それ以外の人間を支配する事。

 

そんなテロリスト集団が勢力を伸ばしているらしい。

 

「全く、戦争が終わったと思ったら今度はテロリストか……。

つくづく人間社会とは面倒だ」

 

嘆息を吐きながら資料を読み込んだギルガメッシュは人間社会に対して嫌気がさしてきた。

外に出る時は宝具で認識阻害し、外で戦闘になれば免許がない事で社会的制裁を受ける事になる。

その上、テロリストの登場だ。

 

ギルガメッシュが嫌気をさすのも無理はない。

そこでギルガメッシュは思いついた。

 

《連盟》や《同盟》に属していない国に行けばいいと。

 

翌日、彼は自動人形たちを置いて再び日本を発った。

 

日本を離れたギルガメッシュは己の幸運と勘を信じて連盟非加盟国であるエストニアの田舎であるエーデルベルクへと子供の姿で移住する。

友人たちと会う以外では日本に戻らなくなったギルガメッシュは村人と共に猟に出かけ、畑を耕し、農家としての生活を謳歌していた。

 

村人たちも気さくで、誰もが子供ではあるが力と大人並みの知識を持つギルガメッシュを仲間として歓迎し、苦楽を共にしていた。

 

そんなある日……。

 

「ダイエットに協力して欲しい?」

 

「はい、ギル君なら効率のいい方法を知っていると思いまして……」

 

ギルガメッシュの近所に住む、ぽっちゃりとした礼儀正しい銀髪の少女、エーデルワイスにダイエットの協力を頼まれた。

野菜の収穫期も終わり、彼女の取り巻く環境を知っていたギルは少女の頼みを二つ返事で聞き入れた。

 

甘いものを絶ち、朝早くから行われる長距離のジョギング。

 

ジョギングが終わった後は、彼女の希望によるデバイスを使った実戦訓練。

実戦が一番カロリーを消費すると、女性の伐刀者がテレビで言っていたらしい。

 

彼女の希望で行われる実戦訓練。

そこでギルガメッシュは彼女の才能の一端を垣間見た。

 

「せい!!やぁ!!」

 

王の財宝(ゲートオブ・バビロン)》から彼女に向けてゆっくりと発射される新聞紙やチラシを丸めたゴミ。

それらを体に触れさせる事無く、彼女は流れるように二対の剣テスタメントを使い、すべてを切り捨てているのだ。

剣を握った事のない少女が、見せる動きではない。

 

世界大戦で肥えた眼で見つけた天賦の才。

ぽっちゃりした状態でこの動き……痩せたらどんなに美しい動きを見せるのだろうか?

ギルガメッシュは彼女の動きに心を奪われ、本気で彼女を鍛える事を決意した。

 

「おや?もう限界かな」

 

「はぁ…はぁ……」

 

長距離のジョギングの後に剣を振り続けたエーデルワイスは玉の様な汗を全身にかいて地面に倒れていた。

 

「お疲れ様。限界はなんとなく分かったから、明日からはギリギリで完遂出来るメニューを考えておくよ」

 

ギルガメッシュはバビロンから水を取り出し、彼女に手渡した。

 

「あ…ありがとう…ございま…す」

 

手渡された水を飲み、呼吸をある程度整えたエーデルワイスの様子を見たギルガメッシュは歩いて帰るのは困難と判断し、大人としてケガをさせないように彼女をお姫様抱っこして自宅へと送り届けた。

 

……。

 

さて、ここからは激太りした少女、エーデルワイスの話をしよう。

彼女は数年前までは痩せており、まるで妖精や天使を彷彿とさせる容姿だった。

そんな彼女は周りからは可愛がられ、思春期を迎えた少年達にラブレターや彼女の大好物である甘いものが毎日贈り物として届けられた。

少年たちはただ…甘いものを貰った時のエーデルワイスの笑顔が見たいが為に。

 

そして…悲劇が起きた。

 

律儀で真面目なエーデルワイスは贈り物を残さず食べた。

毎日毎日彼女に恋い焦がれる少年たちから渡される甘いもの。

それらは彼女の体重を著しく増加させた。

 

一番初めに彼女の異変に気がついたのは彼女を心から愛する両親だった。

でも、成長期だと思って口に出す事はなかった。

なにより、美味しそうに甘いものを食べている愛娘に甘いものを取り上げることなどエーデルワイスの両親には出来なかった。

 

エーデルワイス 10歳。

近所にギルという子供が引っ越して来た頃には、天使は堕天。

ぷくぷくとした子豚(ピグレット)へと姿を変えていた。

 

その頃になると、彼女に言い寄っていた少年たちは熱い掌返しを行って彼女をバカにした。

『白銀の豚』『肉と脂肪の女王』『出荷はいつですか?』

男と言う生き物に絶望し、ダイエットを決めた彼女にダイエットの神が現れた。

 

大人に混じって祭りや農作業を行っている子供らしくない子供と有名なご近所の少年ギルである。

 

彼は大人たちの信頼も厚く物知りである事は有名だ。

それに彼だけは太った自分をバカにすることなかった。

故に彼女は勇気を出して、ダイエットの相談を彼にしたのだ。

 

自宅のテレビで知った女性ブレイザーの特集番組で知ったダイエット方法もメニューに組み込んでもらい。

彼女のダイエット生活が始まった。

 

早朝からのジョギングによる有酸素運動。

新聞紙を丸めたゴミをいろんな方向から飛ばしてもらい、それを叩き斬る訓練。

最後に軽いジョギング。

 

初日は途中で出来なくなってしまったが、翌日からは限界ギリギリまでの距離と新聞紙が用意され最後までメニューを消化する事に成功する。

 

そして、倒れてしまっても汗まみれの自分を嫌な顔をせずにお姫様だっこで運んでくれる少年ギル。

そんな紳士で大人な少年ギルに彼女が心惹かれるのは時間の問題であった。

 


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