果たして、どうなっているのか!?
あれから暫く会場内をぶらぶらしてから待ち合わせ場所の喫茶店に向かう。
俺たち同様、コミケ後に寄って行こうって考えるやつもいるだろうからとかなり早めに行くと、ある意味予想通り、店内は満席だった。
まぁ、閉店までずっと居座る客もいないだろうと考え、4時少し前に座れるようにテーブル席を予約しておく。
で、4時10分前にテーブル席が空き、同時に華琳も来た。
一緒に席に座りあとの二人を待つことに。
待ち時間の暇つぶしと小腹がすいたのを解消するために、店の名前から気になっていたシュークリームとコーヒーのセットを注文。
味は…言っちゃ悪いが普通だった。まぁアニメとは違うわな。
その後、セットを食べ終えておかわりを頼もうとしたところで2人が来た。
店内はコミケ帰りのオタクまたはその予備軍男女で溢れ返ってるが、幸い入り口から見える位置のテーブルだったので、二人も俺に気づいてこっちに来た。
「す、すみましぇん!おそ、おそ、遅くなっちゃって!」
「ああ。別に気にせんでいいから。とりあえず座りなよ」
「はい、失礼しまっ、あ、あわわぁ…」
二人が座ろうと若干前かがみになったところで、何かを見て怯えだした。
何かあるのか?視線をたどってみるとそこには…二人を睨みつけてる華琳がいた。
もちっと良く見てみると、華琳の視線は二人の顔よりも下、多分胸辺りをにらみつけていた。
「お~い、華琳?気持ちはわかってやれんが…
自分と違って容姿やら体型やらが知ってるのと違ってるのも想定してたはずだろ?」
「ええ、していたわ。でもね…
こうも劇的に、しかも自分よりも下だった娘が、私を通り越して成長してる様を目の当たりにしたら、何故私だけは!?って思っても仕方がないでしょう!!」
「いいから落ち着け。話が進まん」
俺が何を言っても、華琳は睨むのをやめない。
仕方がないから、時間が経てば落ち着くのを祈って、改めて朱里と雛里を見る。
今の二人の姿だが、髪については雛里の髪の色が違ってる事しか変わってない。
顔に関しては、俺自身は比較対象が二次元の絵だからなんとも言えない。
まぁ、二人が入ってきた直後にその顔を見た華琳の反応からして同じなんだろう。
そして体型について。
これに関しては、俺でも前世よりかなり成長しているのがわかる。
二人とも、身長は160前後、プロポーションに関しては、原作の星くらいはあるかな?
おかげで座ろうとしたときにその胸が強調されて、
着ている服のおかげで谷間が出来てしまうほどだった。
前世(原作)とほとんど同じ体型で転生した華琳にとって、その光景を目の当たりにさせられたら、そりゃぁブチ切れモノだろうな。
性格に関しては、これから始まるだろう会話でわかるか。
口癖が変わってなかった所を見ると、こっちもあんまし変わってないだろうが。
華琳の睨みつけは、店員が注文を聞きに来てやっと治まった。
正確には、二人に向けてた睨みの視線のまま店員を見て怯えさせてしまい、その店員の怯え様を見たからだが。
それから、とりあえず全員がコーヒーを一杯注文して話が始まった。
「やっと話せるか…とりあえず、改めて自己紹介でもするか」
「そうね、まずは私からするわ。
私は宗祇華琳。前世では曹操孟徳だったわ」
「えっと、私の名前は葛嶋(かつしま)朱里です。
前世は諸葛亮孔明でした」
「お、鳳(おおとり)雛里で、前世は龐統士元でした」
「やっぱりそうだったのね。それじゃぁ、前と一緒で朱里と雛里と呼んでいいかしら?」
「「はい!」」
それから、二人は俺に向けて期待の篭った視線を向けてきた。
自己紹介してくれることじゃなくて、流れ的に俺が北郷一刀だと思ってるんだろうが…
「俺の名前は本剛和人。
二人が思ってる北郷一刀とは名前の読みが同じなだけの、天の御遣いだったって前世の記憶なんかない、普通の大学生だ」
俺の自己紹介を聞いて、朱里と雛里は絶句した。
「ど、どういう事ですか!?私たちのことがわかるのにご主人様じゃないって!?」
「そ、そうです!?私たちのところに来たのもカズトさんがご主人様だからじゃぁ」
「説明するから落ち着け二人とも。周りが見てるぞ」
「「え?…あ、あ(は)わわぁ///」」
俺が指摘すると、やっと周囲の状況を認識した二人は、お馴染みの台詞を口にしながら、顔を赤くし縮まりこんだ。
ご主人様発言と、それを向けられてた俺も見られてたけど、特に気にせずに、俺は話を続けることにした。
華琳との出会い、恋姫というゲームの存在、華琳の願望により、他に恋姫からの転生者がいないか探すことにしたこと。
そして、朱里と雛里らしき人物を見つけて今に到るまでを一通り話した。
ついでに、俺自身が北郷一刀でないことと、一刀が原因で彼女と別れることになってしまったことも話した。
「…と、いうわけなんだ。今度はそっちの番だな。
出来れば二人が出会った所と前世の記憶を思い出した所を詳しく説明してくれ」
「は、はい!えぇっと…」
話によると、二人は所謂幼馴染という関係で、ご近所さんということもあって幼稚園・小・中・高とずっと一緒だったとか。
両者ともに趣味が読書で中学高校は文学部に所属。
多種多様な本を読んでいくうちに自分たちも本を書いてみたいと思うようになった。
本を書くにあたって知識を集めようと、本だけでなくアニメやゲームからも資料を集め始めたのだが…これが予想外に面白くはまってしまったのだとか…
その後、資料集めと銘打って本を読んだりラノベを読んだりアニメを観たりゲームで遊ぶ内に、二人はある言葉が気になり始めた。
それは…『転生』。
辞書などでは堅苦しい文章で表現されているが、小説や漫画にゲームなどでは、今や一種類のジャンルとなっている。
気になった理由は、二人が共通して教科書に書かれている三国志の歴史について違和感を覚えていたからだった。
同じ名前でありながら、性別すら違っている歴史上の人物、教科書に書かれているものとは異なった歴史の記憶、そして転生。
こうして繋がっていったことで二人は前世の記憶を、諸葛亮孔明と龐統士元であるとこを思い出したのだ。
前世を思い出した二人だったが、華琳と違い自分以外の転生者を探そうとしなかった。
前世に引きずられたのか、二人とも頭がよく、記憶の中で北郷一刀が語っていた”天”の世界に、自分たちは生きているのだと結び付けた。
同時に、自分たちの他に転生した者がいるのではとも考えたが、見つけることや会うこともかなり難しいという結論にも至ってしまった。
そんな感じで、頭の片隅では他の者に会うことを期待しつつ、共通の趣味である執筆活動に力を入れることにしたのだった。
ちなみに、この時期からBLや801の方にのめり込み始めたらしい。
「三国志の世界と違い、現代世界の表現力の豊かさは、それはもぅ!」
と言うのが朱里の談。自分の世界に入って熱弁する朱里に、俺と華琳は少し引いた。
雛里は自分も同じだったのか、恥ずかしがりはしたが否定しなかった。
とにかく…
自分たちは運よく近くにいたことで、お互いを認識しあって過ごしてきたが、他の者がどうなったかはわからない。
一生出会えないかも知れないが、傍らに親友がいるから寂しくはない。
そう思い二人は、この現代世界を生きてきて…
そして今日、俺たちに会った。
「…と、言うわけなんです」
お互いに説明が終わって、渇いたのどを注文した紅茶で潤す。
全員が落ち着いたのを見計らって俺は喋るのを再会した。
「これでやっと朱里と雛里とも会えたな。
で、二人はこれからどうするんだ?
今まで自分たち以外の転生者を探してなかったって言ってたが、今後も今までどおり普通に生きるか、それとも華琳みたく転生者を探すか」
「えっとぉ…私は、会えるのなら会いたいです。
こうして華琳さんとも会えましたし、桃香様や雪蓮様にも会えるかもしれない。
雛里ちゃんはどう?」
「うん。私も、皆に会いたい」
「そう。それならアドレスを交換しておきましょうか。
住んでる住所も通ってる大学も違うでしょうから、各々得られる情報も違ってくるでしょうしね」
「「はい!」」
それから、俺たちは携帯のアドレスを交換し合った。
恋姫関係者のアドレスが二つ増えたな。
「そんじゃ、朱里と雛里と出会えた事を祝してお祝い打ち上げでもするか!」
「いいわね。場所はカズトの家でいいかしら?」
「あ?俺は別に構わないけど、なしてウチで?」
「カズトは今一人暮らしだし、誰かを家に招くのは問題ないでしょう。
何人の家族を想定していたかは知らないけれど、部屋の数も4人までなら一人一部屋あったしね。
コミケの会場にも車と電車でかなり早く着けるし」
「…まぁ、いいけどよ。ちなみに、朱里と雛里は」
「えっとぉ、カズトさんが良ければお邪魔しても構いませんか?」「コクコク」
「二人もそれで良しと。んじゃ行きますか!」
その後、スーパーによってから食材を買って俺の家に帰り、それなりに料理が出来る俺、何でもこなす華琳、前世と同様料理特にデザート類が得意な朱里と雛里、四人で結構豪勢な料理で打ち上げを行った。
打ち上げと言うことで華琳から酒も出すように言われ、言われるままに作って三人に振舞った。
明日からの予定は、俺自身は目的のものを手に入れているのでコミケ不参加。
後の三人はコミケの期間中ずっと参加するが、家がそれなりに近かったことから期間中は泊まらせて欲しいとの事で、特に不都合とかはなかったので了承した。
これで朱里と雛里にも会えた。
他の転生者は今何をしていて、どういう風な出会いになるのか。
今から楽しみだな…
趣味が高じて転生発覚。文学少女(腐も入る)として生きてきた二人でした。
容姿に関しては…書いておいてなんだが、想像できねぇ…
そこは読者様の脳内で妄想してくださいな(笑
それでは…ストックはまだあるので次週にでも。