現代に生きる恋姫たち   作:MiTi

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これにてプロローグは終わります。


プロローグ③

ありゃ、結構長いこと話してたみたいだな」

 

話が終わって時計を見ると、既に21時になっていた。

 

「あら。もうそんな時間なの」

 

「まぁ、あんだけ話し込んでりゃな。

 何かに夢中になったりしてると時間の経過とかってわかりにくいもんだしな。

 とは言え…華琳はこの後どうするんだ?」

 

「どうって?」

 

「家に帰るにしても、華琳の友達の家に泊まりに行くにしても、

 この時間に女一人で出歩くのもな。

 駅で言ったとおり俺の車で送ってもいいぞ」

 

「そうね…」

 

言われて私は考える。カズトの車で送ってもらったらどうなるか。

自宅の場合…

母「あら、遅かったわね華琳ちゃ…あら、あらあら、あらあらあら!?

  華琳ちゃんが男の子と帰ってくるなんて!彼氏かしら?春が来たのかしら!?」

父「なっ!?か、華琳に彼氏だって!ど、どこのどいつなんだーー!?」

 

友人宅の場合…

友人「は~い。いらっしゃい華琳、急に泊まりたいなんてどうし…

   ねぇ、ウチの前に停まってる車に乗ってるのって男だよね。

   てことは、華琳はあの人に送ってもらったんだよね。

   つまり…あれが華琳の彼氏……

   これは、是非とも華琳の勇姿(コスプレ)を見てもらわねば!!」

 

…結論。送ってもらうのは却下ね。

駅まで送ってもらうのが妥当かもしれないけど、

最近あの駅で変態が出没したって聞くし、

どうも夜にあの駅を使う気になれないのよね。

となると…

 

「ウチも友達の家も却下ね。ややこしいことになるのが目に見えてるわ」

 

「そか。んじゃ駅まで送ってくか」

 

「それも却下。夜にあの駅はあまり使いたくないわ」

 

「なんで…って、あぁ。そういやあの駅で変態がでたんだっけ?しかもまだ捕まってない」

 

「そうよ。流石に同じ場所にずっといるわけではないでしょうけど、

 可能性としてなくはないでしょう」

 

「だな。…で、結局どうするんだ」

 

「ここに泊まるわ」

 

「………は?」

 

「だから、ここに、カズトの家に泊まるわ」

 

 

 

私の言葉を聞いて、何を言っているのかわからないって表情を浮かべた。

 

「いやいやいや、ちょっと待て!何言ってるのかわかってんのか!?」

 

「当然でしょ。何か文句でもあるの?」

 

「あのな。俺は男で華琳は女だぞ。彼氏彼女の間柄でもないのに、

 そいつの家に泊まるとか」

 

「この家はカズトが一人で暮らしているんでしょう。

 なら何も問題ないわ」

 

確かに、男の家に泊まるなんて、普通なら考えられない。

男は狼だと言われるように、一つ屋根の下で二人きりになったら何をされるのやら。

 

だけど、不思議と不安や嫌悪感は感じなかった。

それは、他の男ならともかく、相手がカズトだから。

カズトは、私の話を聞いてくれて、信じてくれた。

その上、私が心のどこかで望んでいたかつての仲間を探す手伝いもしてくれると言った。

こんな、普通なら笑われるだろう話を。

そのことを話すと、カズトは諦めたような表情を浮かべた。

 

「あ~、まぁ華琳がそれでいいなら、もう好きにしてくれ」

 

「ええ。それじゃ、泊まらせてもらうわ」

 

「了解。んじゃまずは(ク~)…飯にするか」

 

何事もなかったかのようにキッチンに向かうカズト。今の腹の虫は…私の…

迂闊だったわ。イベント中動くに動けなくて昼食が取れなかったことがこんなときに来るなんて。

今の私の顔、赤くなってないでしょうね。

それにしても、このことに何も言わずにいるカズトは、多少女のことをわかっているようね。

まぁ、彼女がいたのなら納得できるかしら。

 

 

 

それから、私たちは少し遅いけど晩御飯となった。

メニューは中華料理。驚くことにカズトの手作り。

 

「ふぅ。普通においしかったわ」

 

「そりゃ褒めてんのか?」

 

「不味いなら不味いとはっきり言うわよ、私は」

 

「なら、ありがとうとでも言っとくか」

 

「ええ。この私が認めてるのよ。喜んでいいわ」

 

「はは、何か本当に恋姫の曹操みたいだな」

 

「みたいじゃなくて本人よ」

 

「転生したな」

 

そんな会話をしながらカズトは楽しそうに笑っていた。私も多分笑っているわ。

こんな冗談じみた会話、相手が家族でも出来たかどうかわからない。

やっぱり、話を聞いてくれたのがカズトで良かった…

 

その後、食後のお茶を堪能しながら、今後のことについて話し合った。

 

「さてと、華琳以外にも恋姫から転生した娘がいるとして…

 どうやって探す?」

 

「そうね。人を探す方法として直ぐに浮かぶとしたら捜索願を出すのでしょうけど」

 

「捜索願ってのは親族とか友人とかが出すもんだよな。

 でも、俺たちに関しちゃ、会ったこともない赤の他人。

 願を出すにしても理由が理由だし、捜索願って案は無理だな。

 それ以前に、俺たち以外の他人に手伝ってもらうってのが、そもそも出来ないだろ」

 

「どうしてよ?」

 

「まず、探してる理由を話しても信じちゃもらえない。

 家族とかなら、もしかしたら信じてくれるかもだけど、望みは薄いだろ。

 

 次に、容姿や名前に関してなんだが、

 華琳は名前も容姿もそのままだったかもしれないけど、

 他の娘も容姿や名前が同じで転生して来ない場合がある。

 

 髪については黒・白・茶・金・銀はいいとして、

 ピンクやら青やら緑やらなんて、染めない限りは現実じゃありえん。

 現実じゃあり得ない点では、

 南蛮勢にいたっては猫耳・尻尾・グローブまであったし。

 

 名前にしても、転生して全く違う名前になってるってパターンがあるだろうしな。

 

 それと、誰かに探してもらうとしたら、

 探す奴の写真を見せるのが早いが、んなもん無し。

 容姿体型の特徴とか言っても、人によって捉えられ方も変わってくる。

 で、一番特徴を捉えてるものといったら恋姫のゲームなんだが…

 華琳は出来るか?

 エロゲーを見せて「こいつを探してます」って他人に言うの」

 

「…無理に決まってるでしょう」

 

「だろ?ってことで誰かに頼むのは無しってことで」

 

 

 

それからも、いろいろと案を出しては却下を繰り返して、

結局、名前・容姿・性格や特徴からこの娘だ、という人物を探し、

その人物に直接会って話をするしかないという結論に到った。

 

「要はしらみつぶしに探すしかないって事だな。

 ハァ…こりゃ難しそうだな」

 

「そうね…まぁ、会えなかったとしても別にどうなるわけでもないから、

 そこまで真剣に探さなくてもいいのよ?」

 

「おいおい、ここまで来てそりゃないだろ。

 華琳自身は会いたいって思ってんだろ?」

 

「まぁ、そうね」

 

「なら俺も、一度手伝うって言ったんだ。

 流石にこれに掛かりっきりにってわけにはいかないけど、

 俺も俺なりに探すし、やめたりしないよ」

 

「…ありがとう」

 

「礼はいいって。

 そんじゃ、今後は、何か手がかりっぽいのか、転生した娘っぽいのか、

 若しくは本人が見つかったら連絡するって事でいいよな」

 

「ええ。それでいいわ」

 

「なら、携帯のアドレス教えてくれないか」

 

「いいわ」

 

こうして私たちはお互いにアドレスを交換し合った。

これで何人目かしらね、父親以外の男のアドレスは。

とりあえず、ちゃんとグループ分けしておかないとね。

 

 

 

「そう言えば、カズトはどういう風に探すの?」

 

ふと気になり私は聞いていた。

 

「とう、って言うと?」

 

「私の場合は前世で全員と交流があったから、

 その記憶を元に探すつもりだけど、カズトはそういった記憶はないでしょう」

 

「ああ。そりゃ、この恋姫のゲームのキャラ設定を参考にするつもりだ」

 

「そう…私もやっておいた方がいいのかしら」

 

「やるって…もしかして恋姫を?」

 

「他に何があるの?」

 

私が聞くと、カズトは本当に言いづらそうに、

聞きづらそうに私に質問を返してきた。

 

「多分他の国の奴とかのを確認するためにやるんだろうけど…

 それって、このゲーム一通り全部やるつもりなんだよな?」

 

「当たり前でしょう。交流があったとは言え、

 当時他の国ではどうやって過ごしていたかなんてわかるはずがないもの。

 それに、私が知らないところで起っていたこともあるでしょうし」

 

「まぁ、理由も事情もわかるから止めはしないけど…変なこと聞くけど、

 これに出てくる北郷一刀が自分や仲間だったやつとヤッてるシーン見たら…

 どう思う?」

 

言われて私は思い出す。

この真・恋姫†夢想はいわゆるエロゲーであることを。

前世でも一刀は蜀の将全員と関係を持っていたことを。

その上、当時でも言っちゃ悪いけど張飛のような幼児体型の娘とも関係を持っていて、

三国が平定してから数年が経ってから成長した黄忠の娘とも関係を持ったことを。

そのパターンでいくと…魏でも呉でも、遣わされた国の全員と関係を持つのでしょうね。

 

「…そこはゲームだと割り切っておくわ」

 

「ああ、そうしてくれ。それと、これだけは絶対に忘れないでくれよ」

 

「何を?」

 

「俺=北郷一刀じゃないってこと」

 

「え、えぇ。もちろんよ」

 

あまりの気迫に私はただただ頷いた。

まぁ、これが理由で前の彼女と別れてしまったんだから無理ないわね。

とりあえず、明日帰ってこの恋姫をするときは、

常に「これは北郷一刀であって本郷和斗じゃない」って思いながらやらないとね。

 

 

 

~おまけ~

 

「そういや、風呂と着替えはどうするんだ?」

 

「お風呂はもちろん入らせてもらうわ。

 女性にとって毎日の入浴は欠かせないものなのよ」

 

「ああ。わかった。

 シャンプーとかにこだわりとかあったらそこは勘弁してもらうしかないな。

 ウチに家族以外の女とか泊めたことないから普段使ってるやつしかないし。

 …元カノに関してはそういうことする前に別れちまったし」

 

「そ、そうなの。まぁ、一回くらい違うものを使っても大丈夫でしょう」

 

「そうか。で、着替え…と言うよりこの場合は寝間着か?はどうする?

 男の場合はそういうの気にせずに、今着てる奴でそのままって感じになるんだけど、

 女の場合は服のしわとか気になったりするだろ。

 ちなみに、ウチには女物の服はないからな」

 

「そうね…なら、何か寝間着になるものを貸してもらえないかしら」

 

「…………え?それって、俺のシャツとかを寝間着にするってことか?」

 

「そう言っているでしょう。私とカズトの体格差を考えればシャツ一枚でも十分ね」

 

「いや!華琳はそれでいいのか!?

 今日会ったばっかの男の服を着るとか」

 

「まぁ、他の男ならともかく、相手がカズトなら別に気にしないわ」

 

「…あ~、華琳がそう言うならもう何も言わん。

 箪笥に案内するから好きなの選んでくれ」

 

「そうさせてもらうわ」

 

 

その結果、Yシャツと大き目のTシャツを選び出し、

あろうことかカズトに希望を聞いてからかって来たのだった。

だが、どっちを選んでも何かを言われそうだったカズトはどちらも選ばずに本人に任せた。

 

華琳はTシャツの方を選び、それを着てカズトを悶えさせたのだった。

華琳のような美少女が自分の服を着ている。

体格差から来るサイズの関係上、首周りは肩までずり下がっていて、

それによって胸部がギリギリみえない位置で固定され、

裾は女性服で言うならば超ミニスカートのように、

何かあれば見えてしまいそうで、その下からはシミ一つない生足がさらされている。

 

感想を求められたカズトは赤面しながら視線をずらすことでしか答えられなかった。

その後、来客用の寝室に華琳を案内してから逃げるように去って行った。

前世があの恋姫の曹操だったのならこうやってからかってくることもあるんだと思ったカズトであったが、

前世は前世、現代は現代、逃げるように去ったためカズトは気づいていなかったが、

華琳もまた顔を赤らめていたのだった。

 




これにてプロローグは終わります。

次の投稿ではキャラクター設定を投稿する予定です。
この設定に関しては、新しく見つかった恋姫の話が一段落するたびに随時更新していきます。

それでは、また次回投稿にて…

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