現代に生きる恋姫たち   作:MiTi

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アマネとは誰なのか?…タイトルに書いてるやないかーい!!

てわけで、後編です。どうぞ・・・


雪蓮と冥琳の後編

「はい、もしもし?」

 

『突然のお電話失礼致します。

 私、株式会社ブンダイにて加東の秘書をしております、アマネと申します。

 ホンゴウカズト様でいらっしゃいますでしょうか?』

 

「あぁはい、はじめまして、和斗と言います」

 

電話に出たのは雪蓮ではなく、彼女の秘書と名乗る人物だった。

……しかしこの声、どこかで聞き覚えがあるような気がするんだが……

 

 

『ありがとうございます。弊社の加藤にどういったご用件でしょうか?』

 

「えぇっと、しぇ…… じゃない、加東副社長さんとはちょっと縁があって、

 本日はこちらで講演を行うということでお会いしたいと思いまして」

 

『加東と御友人の関係でいらっしゃると?』

 

「はい」

 

『……加藤を呼んで参ります。少々お待ち下さい』

 

「わかりました」

 

……?

なんか、秘書の様子が変だな。

何故だか知らんが、笑いを堪えてるような、そんな感じ。

 

加えてあちらが電話をしている場所にはもう一人いるのかわからないが、

声を押し殺したかのような笑い声が聞こえた。

 

そうして数分の後に再び声が聞こえてくるが、

対応を行ったのは雪蓮ではなく、彼女の秘書だった。

 

『……大変お待たせいたしました。

 加東にホンゴウカズトと言う名前のご友人がいたかを尋ねました所、

 そのような名前の人は記憶にないとのことでした』

 

「……」

 

唖然とした。やはり、雪蓮は前世の記憶を思い出していないらしい。

 

……だがおかしいな。確かあのメモには、朱里達の時と同じく

『もしあなたが孫策伯符、真名が雪蓮だったなら連絡をください』

といった事を書いたような気がするんだが……

 

どうしたものか…… と、華琳の方を見てみるが、首を横に振っている。

どうやら、華琳の方もお手上げらしい。

 

「え、えぇっと、とにかく加藤雪連さんに変わっていただく事は出来ないでしょうか? 声を聞けば思い出すと思うので……」

 

『……申し訳ございませんが、加東は只今席を外しており、

 応対を行う事が出来ない状況にあります。 

 ……失礼を承知でお尋ねしますが、

 ホンゴウ様は本当に加藤の御友人でいらっしゃいますでしょうか?』

 

「うーんと…… そうですね……」

 

この秘書に、真・恋姫†無双の事を言っても通じないだろうし…… 

どうしたものかと悩んでいると、笑い声が盛大に聞こえてきた。

 

『あっはっはっは! そ、そろそろいいんじゃないかしら!?』

 

「……へっ?」

 

『まだ私の事がわからないか? ……北郷』

 

「…… まさか…… 冥琳?」

 

「!」

 

どこかで聞き覚えのある声だと思ったら……

その声の主の正体は、孫策伯符こと雪蓮と断金の仲である周瑜公瑾で、

その真名は冥琳。原作においてもその友情は揺るぎない物だったような。

 

なんとなく予想はついていたけど、雪蓮だけではなく、冥琳もいたのか……

 

『敬語は不要だ、北郷』

 

「……そう? なら遠慮なく」

 

『今日、これからの予定は?』

 

「元々雪蓮に会う為に文化祭に来たんで…… 

 特にこれといった予定もないけど」

 

『じゃあ大学の学食の場所、わかる?』

 

『あ、こら、雪蓮!』

 

雪蓮が冥琳の携帯を奪い取ったのか、雪蓮の声がした。

 

「学食学食…… あぁ、確認した」

 

『じゃ、そこで待ってるわね! じゃあ、また後で!』

 

『ちょっと待て、雪──』

 

電話が切れた。

……なんというか、現代においても冥琳は雪蓮に振り回されてるらしい。

 

「聞いてたな、華琳?」

 

「ええ。まさか、冥琳も一緒に見つかるのは予想できな…… 

 いえ、ある意味では予想通りね」

 

「んじゃあ行くか」

 

 

 

「あぁ来た来た。おーい、こっちこっち!」

 

俺達が構内の学食に来ると、すでに2人はテーブルにいた。

手を振って俺達を呼ぶ雪蓮の隣には、冥琳があきれ返った表情で座っていた。

 

「……近くに喫茶店があったと思ったけど、どうしてここなんだ?」

 

「……私は反対したのだがな」

 

周りを見渡せば、ここの大学の生徒らしき人物が多数、

俺達を注目していた。

まぁ、注目しているのは俺達というよりも、

先程まで講演を行っていた雪蓮の方なんだろうが…… 

とにかく、これほど数奇な目で見られているにもかかわらず、

雪蓮の表情はゲームの恋姫の時となんら変わりがない。

 

「現代になっても気苦労は耐えないようね、冥琳?」

 

「……華琳殿?」

 

雪蓮と冥琳とは反対側の席に座り、二人の容姿を確認する。

プロポーションに変化なし。変わっている点といえば、

雪蓮の髪の色が落ち着いた黒になっているくらいか。 

……雪蓮の瞳の色が変わっていないように思えるが、カラコンでもつけてるのか?

服装は一国の王と大都督…… ではなく、

会社の副社長と秘書という立場故にビジネススーツをしっかりと着こなしている。

そして肌の色も…… 蓮華の例に沿ってか、あまり俺達と大差は無いな。

 

「んでもって性格は大差なしと」

 

「大人しめな雪蓮というのも、想像がつかないけどね」

 

「恥ずかしい話だ」

 

「ちょっ、冥琳まで……」

 

 閑話休題。

 

「さって、改めて自己紹介ね。私は加東(かとう)蓮雪(はすゆ)。

 前世は孫呉の王の孫策伯符。

 今は母さんが社長を務める株式会社ブンダイで、副社長のポジションにいるわ。

 まぁ、好きに呼んで頂戴♪」

 

「周(あまね)冥琳(めいりん)だ。

 先程の電話でも話していたが、今は雪蓮の秘書をやっている。

 前世では周公瑾だった者だ」

 

華琳の自己紹介も済ませ、雪蓮は俺に話を振ってくる。

まぁ、『ホンゴウカズトが会いたがっている』と聞かされている以上、

俺が北郷一刀であると思っているのかもしれないが……

 

「まず一つ、雪蓮と冥琳に謝らないといけない事がある」

 

「何かしら?」

 

「確かに俺はホンゴウカズトという名前なんだけど、

 二人が思っている北郷一刀とは別人のただの大学生だ」

 

「……ほう」

 

「本来なら雪蓮の講演を聞いた後で直接コンタクトを取ろうと思ったんだけど……

 講演を聞けるのがここの学生優先ってことで、結局公演の会場に入れなかった。

 公演が終わった後の予定がこっちでわかるはずもなし」

 

「……」

 

「後は『ホンゴウカズト』という名前を使ってコンタクトを取るしかなかったんだ。 ……二人には期待させてしまったんだけど、

 こういった方法を取ってしまい、申し訳なかった」

 

深々と頭を下げる。

二人がどんな表情なのかを読み取ることはできないが、

当の二人は言葉を発さず、俺を見据えていた。

 

どれほどの沈黙が流れただろうか…… 

それは数十秒だったかもしれないし、十数秒だったかもしれない。

その場は、学生達の話し声で騒がしかったが、

俺達の周りに限っては沈黙が流れていた。

 

「……そっか」

 

「雪蓮の勘が外れるとは、な……」

 

「雪蓮……」

 

「実際に会ってみて、ちょっと雰囲気が違うなーと思ったけど…… 

 そっか、別人かー」

 

雪蓮は俺の顔を見据えてくる。

 

「怒らないのか?」

 

「怒るも何も無いわよ。確かに、雰囲気は違うけど…… ね」

 

「……ありがとう」

 

「しかし、北郷と別人だと言うのならば一つ疑問が浮かぶ。 

 ……雪蓮はともかくとして、何故私の事を知っていたのだ?」

 

「……ちょっと話は長くなるけどね」

 

俺は真・恋姫†無双の存在、華琳との出会いの事。

 

そして華琳の願いにより、他に恋姫からの転生者がいないかを探している事を話した。

 

加えて俺の自己紹介も改めて行った。

自分には天の御使いとしての記憶はない、

名前が同じ読みなだけのただの一大学生にしか過ぎない事、

恋姫†無双がきっかけで彼女と別れてしまった事等を付け加えて。

 

その後は雪蓮と冥琳から知り合ったきっかけ、

いつ、自分が孫策伯符と周 瑜公瑾であった事を思い出したかを聞いた。

 

二人の話によれば、記憶を思い出すきっかけとなったのは、

やはりというべきか三国志だった。

漫画や三国志をモチーフにしたゲームなどを見ていて違和感を感じ、

正史とは違う三国志について思い出すうちに自分が孫策伯符、

周 瑜公瑾である事を思い出した。

 

そして大学の入学時に同じサークルに勧誘され、会合の時に偶然にも再会。

互いに自己紹介を行い、孫呉の王と、その大都督である事が明らかになった。

 

その後は前世と同じく仲の良い友人となり、大学を卒業した後は、

株式会社ブンダイの創設者である雪蓮の母の紹介で同じ会社に勤める事となった。

 

「入社した当初はホント大変だったんだから。

 親の七光りだーとか、他に勤め先は無かったのかーとか、

 謂れのない言葉を並べられてね」

 

「だが、そういった言葉が雪蓮の心に火をつけたようでな。

 その結果、今の役割にいるというわけだ」

 

「転生者を探そうとは思わなかったの?」

 

「……確かに私達以外にも、転生者はいるのかと思ったこともあった」

 

「孫家は三姉妹だったわけだけど、私にいたのは弟だけだったし、

 親戚にもそれらしい人はいなかったしで、諦めてたのよね。 

 ……それにしても驚いたわね。

 まさか、私達がゲームの世界から転生してきたなんて……」

 

「それも18禁のな」

 

雪蓮と冥琳は苦笑を浮かべた。

 

「所で、転生者を探していると言ったが、連絡は取れるのか?」

 

「ええ。既に何人かとは連絡を取り合っているわ」

 

「……そうだ、蓮華に連絡いれないとだったな」

 

「蓮華に会ってるの!?」

 

雪蓮は身を乗り出してきた。

 

「ああ、少し前に知り合った。

 何なら、セッティングしておこうか?」

 

「ええ、是非お願いするわ」

 

「……今の蓮華を見たら、驚くでしょうね」

 

「互いにな」

 

華琳の言葉に苦笑しながら、俺は蓮華にメールを打ち込んでいく。

 

それから数日後に、俺と雪蓮と冥琳で蓮華の努める喫茶店に向かい、

再会したわけだが…… 

これに関してはいずれどこかで語ることとしよう。

 

 

「じゃあ、何かあったら連絡するということで、いいわね?」

 

「ああ」

 

「私達は仕事があるから、会合を行える確率は低いけどねー」

 

 

その後、互いに連絡先を交換した後は雪蓮が宴会を行おうと言うので、

大学構内を出る。

 

どこか店にでも行くのかと思いきや、

雪蓮が俺の家がいいと言うので仕方なく、

俺の家へと歩みを進めていた。

 

「迷惑をかけるな、ホンゴウ」

 

「まぁ、慣れたもんだ。それにしても、仕事はいいのか?」

 

「今日は土曜日だし、何も問題はないわよ♪」

 

「仕事が無ければ、間昼間から飲んでる困り者だよ、この副社長殿は」

 

「やっぱり現代になっても苦労人なのね、貴女は……」

 

「本当に困った…… おっと」

 

冥琳の携帯が鳴る。

 

「はい、周です。はい。 ……例の件についてでしょうか?

 はい。 ……本当にですか?はい、ありがとうございます。

 日程は…… 来週ですね? わかりました。後日また連絡します」

 

そして電話を切ると、雪蓮は先程まで見せる事の無かった真剣な表情で冥琳を見据える。

こういう所はなんというか、副社長らしいなぁ……

 

「誰から?」

 

「喬子から。例の件を上手く進めてくれたみたいだ」

 

「そう、あの子には感謝しなくちゃね。 

 ……あぁ、そうだ」

 

雪蓮は俺達に向き直る。

 

「来週、ある会社と会食パーティを行うんだけど…… 

 カズト達も来ない?」

 

「……へ?」

 

「……はぁ?」

 

「ふむ、確かにホンゴウ達もいた方がいいかもしれんな」

 

雪蓮の突拍子もない発言に唖然とする。

一介の大学生である俺達が、会社のパーティに参加するだって?

 

冥琳は止めるどころかむしろ、雪蓮の言葉に頷いてるし…… 

一体どういうことだ?

 

「実はだ。今始動している計画の、取引先の社長親族にいるようなのだよ」

 

「……私達と同じ転生者がな」

 

 




今度はちゃんとした形で使うことができる…

取引先の社長親族にいる転生者とはだれなんだ!?

次回に期待してください。(次の投稿で出るかは未定です)

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