現代に生きる恋姫たち   作:MiTi

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仕事が忙しく間が空いてしまいました…

完結までは頑張りますので、どうぞよろしくデス。

では、どうぞ…


雪蓮と冥琳
雪蓮と冥琳の前編


side.華琳

 

その転生者に出会うきっかけをもたらしてくれたのは、

ある意味で私の所属するファッション研究会の友人だった。

 

その友人は、別の大学に通う友人から近々文化祭を行うので、来てみてはどうか。

ついでに所属しているサークルの友人達も連れてきてはどうかと、

誘いの言葉を受けていた。

 

私も特にその日に予定らしい予定もなかったし、

何か転生者を探す手がかりになるかもしれないと思い、

これを承諾した。

 

「……」

 

それから数日後。

 

カズトだけに転生者探しを任せるわけにもいかないので、

私もインターネットを使って情報の収集を行っていた。

 

……しかし、他の転生者達と連絡を取り合いながらも情報の共有を行っていたけど、

結局は成果なし。

 

仕事で日本各地を廻ることの多い七乃や場合によっては多種の家や企業を回ることがある星ですら、

有力な情報を得る事はできなかった。

 

……ここまで見つけられたことですら、やはり奇跡の産物だったのでしょうね。

 

カズトも尽力してはくれているみたいだけど、

これといった成果は得られていなかった。

 

「……はぁ」

 

「溜息つくと幸せが逃げちゃうよ? 華琳?」

 

「……前にも同じ事を言われた気がするわね」

 

それから一月が経った頃。私達は文化祭に向かう為の電車に乗っていた。

 

友人達は次のイベントで私にどんなコスプレをさせようかと、

ああでもないこうでもないと話し込む中、

私は外の風景を眺めていた。

 

通っている大学とは違う風景。

 

中々転生者を見つけられないので鬱屈が溜まっていたけれど、

この風景を見ていると気分転換になる気がした。

 

「──琳? 華琳ー?」

 

「……えっ、あっ、何かしら?」

 

どうやら、ボーっとしてしまっていたらしい。

 

友人達は私に話を振っていたようだけど、

風景に見とれていたので聞き取っていなかった。

 

改めて話を聞くと、次のイベントでしたいコスプレを3つの中から選択して欲しい、

との事だった。

 

「このキャラはね──」

 

「……」

 

……今は、転生者探しの事は頭の片隅に置いておこう。

この数日は、転生者探しに躍起になってしまっていた。

 

だけど今は、気分転換にもなる友人達の話に付き合うのも悪くない。

そう感じていた。

 

 

──~~♪

 

騒がしい音が私を包む。

 

その音は、ステージから発せられる楽器の音や、ボーカルからだけではない。

 

その場には、大勢の観客となっている人がいた。

 

その観客達はステージにいる、バンドの演奏に酔いしれていた。

 

 

──~~♪

 

それは、私の友人達とて例外ではなく、

そのバンドの歌う楽曲で有名な振り付けを一緒に行っていたり…… 

と、盛り上がっていた。

 

「やれやれ、ね……」

 

文化祭を行っている大学についてから十数分後。

 

最近話題のビジュアル系バンドがこの文化祭でライブを行うとの事だったので、

飛びついた友人達は真っ先にそのライブを行うホールへ。

 

その人気たるや、ホールの観客席を埋め尽くし、

外にいたファンであろう人達が悔しそうに見つめてしまうほど。

 

前世における張三姉妹や、

友人に誘われて行った武道館でのアニメ声優のライブの比ではないけれど…… 

この騒々しさにはやはり慣れないわね。

 

ライブはまだ始まったばかりだったけど、

途中で抜け出し、外に出てまずは深呼吸。

 

「まだ、時間があるわね……」

 

腕時計と入り口で受け取った文化祭のパンフレットを交互に見つめる。

 

ここを訪れてからまだ数十分しか経っていなかったけど、

ライブのせいで早くも疲れ果ててしまっていた。

どこか落ち着ける休憩スペースを探している所で、

私は呼び止められた。

 

「あれ、華琳じゃん。こんなとこで何してんだ?」

 

「……へ?」

 

広い構内で唯一存在する喫煙スペース。

そこで、煙草を吹かすカズトがいた。

 

というか、カズトはここで何をしているの?

 

「よう」

 

「カズト……? どうしてここに?」

 

「ここに通う知り合いに誘われて来た。

 華琳こそ、こんなとこで何やってんだ?」

 

「貴方と同じ理由よ」

 

「……まさか、一人で来たのか?」

 

「そんなボッチを哀れむような目で私を見ないで!? 

 ……友人達が数人いたけど、今はライブホールに行ってるわ」

 

「あぁ、あのバンドかぁ。俺も見てみたかったんだけどなぁ」

 

カズトは苦笑を浮かべていた。

 

「始まったばかりだし、今からなら間に合うんじゃないかしら?」

 

「あぁ、時間を見りゃ確かにそうだなぁ。だけど……」

 

煙草の火を消し、私に向き直る。

 

「俺がここに来たのは別件でよ」

 

「……それは?」

 

「転生者の一人がこの大学を卒業していて、

 今日はここで講演を行うんだとさ」

 

 

加東(かとう)蓮雪(はすゆ)。

 

それが、この現代における孫策伯符──雪蓮と思われる人物の名前だった。

 

この大学を卒業した後に『株式会社ブンダイ』という名の会社に勤め、

現在はそこで副社長の地位に存在するらしい。

 

「で、株式会社ブンダイの事を調べてみたら、

 その会社を立ち上げた今の社長は加東蓮雪──雪蓮かもしれない人の母親らしい」

 

「……なるほど。会社の名前も関係があったりするのかしら?」

 

喫茶店を出展する教室に移動し、話を続ける。

 

蓮雪は入社当初は親の七光り…… 

なんて陰口を叩かれた事もあったが、

それを物ともせず受け入れ、

同僚の一人と共に業績を重ねた結果、

今は株式会社ブンダイの副社長として認められるほどの人物になった。

 

確かに雪蓮は前世でも孫呉の王として、家臣や民に対して笑顔で接していたわね。 

……仕事を放り出し、祭や桔梗と一緒にお酒を拝借しようとして、

冥琳や愛紗に怒られたりもしていたけれど。

 

「それにしても雪蓮が、会社の副社長たぁ、ね……」

 

「役職でしょう? 

 ……まぁ、前世と違うのは彼女の母親が生存しているという位で」

 

「どういうわけかアニメだとニートにされてるからなぁ。

 まぁ、それよか探しやすかったからいいんだけどさ」

 

「……で、講演は何時からなの?」

 

「……」

 

素朴な疑問を口にしてみると、カズトは押し黙ってしまった。

 

「それに関して問題があってだな……」

 

「え、何、どうしたの?」

 

「講演はここの大学生で、それも就活中のやつとか入社希望のやつが優先でさ。

 ほかの一般客に関しては席に空があれば聞けたんだが、

 かなり人気のある就職先の会社らしくて、

 見事に満席で入れなかったんだ」

 

「……」

 

唖然としてしまった。

 

これでは、雪蓮と話すどころか、会う事すら叶わないじゃない……

 

「ダチの同伴でって形も、あくまでここの学生が優先で、

 ってことで入口待機させられて、待っても結局満席になって聞けず仕舞い。

 ここの学生ですってごまかそうにもカードタイプの学生証提示が義務だから、

 一般枠でも入れるのを待つしかないけど、

 確認したら、今やってるので最後の公演らしい」

 

「……はぁ」

 

完全にお手上げ状態、と言う訳ね。

 

転生者の手がかりが見つかるかもしれないという私の予感は当たっていたけど、

そう都合よくは行かないようだった。

 

どうにかして雪蓮とコンタクトを取れないかしら…… 

と、考えていると、不意に後ろから声がかかった。

 

「おうカズト、ここにおったんや」

 

「遅い。こちとら待ちくたびれちまったぞ」

 

「いやぁ、あのバンドのライブとあったら行くしかないやん!」

 

カズトの友人らしい関西弁の男は、興奮した様子で話していた。

 

男の話から察するに、どうやらあのライブは終わったらしい。

確かに時間を見ると、パンフレットに書かれていた終了時間より少し遅いくらいだった。

 

「で、俺を呼び出してまで聞きたい事ってなんや? 

 俺は今から屋台に戻らなあかんねんけど」

 

「それなんだけどよ、お前の講義の担当、雪れ…… 

 加東蓮雪と知り合いって本当か?」

 

「あぁ、ホンマや。

 おかげであのボケ教授の講義受けとるヤツは講演のレポートを書かなあかんねん。

 ホンマ、迷惑な話やわー……」

 

男は肩をすくめていた。

 

「で、それ聞くためだけに俺を呼んだんか?」

 

「いや、お前に頼みたいことがある」

 

「おう、何や? 女を紹介してくれたら応じたるで?」

 

「悪いが、お前に紹介できるほど女は有り余っちゃいない」

 

「……って、なんやお前、この前別れた言うのに、

 いつの間にそないなベッピンさん連れとるやん!? 

 くっそー、何でカズトにできて俺には彼女ができひんねん……」

 

「いや、こいつはただの知り合いだ。 

 ……まぁ、そんな事はどうでもいいんだけど」

 

「どうでもいいって……」

 

「こいつをお前の教授に渡して、

 んでその教授に加藤蓮雪に渡すように頼んで欲しい」

 

そう言うと、カズトは懐から一枚の紙を取り出し、男に渡した。

 

「なんやコレ。贈り物にしちゃ随分貧相やな」

 

「んでもってその教授が加藤蓮雪に渡す時にこう言って欲しい。

 『ホンゴウカズトが会いたがってる』とね」

 

「なんやカズト、あの副社長さんと知り合いやったんか?」

 

「まぁ、知り合いというかなんというか……」

 

カズトは適当にお茶を濁す。

……そりゃ、言えるわけないわよね。

真・恋姫†無双というゲームの、孫策伯符というキャラに似た人を探しているなんて。

 

「よーするに教授を通じてこの紙を社長さんに渡せばええんやな?」

 

「ああ。 ……まぁ、女は紹介できないが、

 後で飯でも奢ってやるからそれで勘弁してくれ」

 

「了解や。っと、もうこんな時間か。ほんじゃあな」

 

「おう」

 

男は踵を返して去っていった。

 

話の流れを聞くと、カズトが渡した物はカズトの連絡先を書いたメモかしら。

 

「まぁ、そういうこった。雪蓮からの連絡を待つまで、ここで待機だな」

 

「じゃあ私も──」

 

電話が鳴った。

電話に出ると、友人の怒声が私の耳に響いた。

そういえば、あのライブには友人達に無断で抜け出してしまったわね……

 

「……一緒に待ちたいけど、友人達と合流するわ」

 

「おう、了解。なんかあったら連絡してくれ」

 

「ええ」

 

これ以上待たせると、友人達に何をされるかわかったものではない。

 

カズトと手早く分かれた後に、手元のパンフレットで場所を確認しながら私は走る。

 

……というか、このパンフレットを詳しく見てみると、

雪蓮──加藤蓮雪の事が掲載されていた。

曹猛徳ともあろう者が気がつかないとは…… 

不覚だったわ。

 

「華琳、どこ行ってたのさ!」

 

「ごめんなさいね。今日、ここで講演を行う人の事が気になったものだから──」

 

 




というわけで前編でした。

中編に続きます。

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