現代に生きる恋姫たち   作:MiTi

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後編です

カズト視点です。


七乃 後編

恋姫の中で、美羽と言えば蜂蜜、現代で蜂蜜と言えば養蜂場。

そんな考えの上で、華琳と転生者を探すようになってからは、養蜂場の見学or体験ツアーに積極的に参加するようにした。

その日も、美羽が見つかるかもというちょっとした期待を抱きながら、ツアーに参加した。

県外のツアーだったから、集合時間が結構早かった。

前日に大学の課題とバイトで夜遅かったもんで、バス停についてバスに乗ってからは、ガイドの挨拶・紹介を聞くことなく、席に座ってから即効で眠ってしまった。

それからどれくらい時間が経ったのか。

揺れがなくなったのを感じて目を覚ますと、そこはどこかのパーキングエリアだった。

休憩に入ったんだろう。バスの中には数人しか残ってなかった。

俺も一服したかったんで、バスを降りてタバコを吸うことにした。

喫煙所から周りを眺めていると、気になる光景があった。

売店の前にパッと見10人以上はいるだろう男が店の中を覗いていた。

どこの何の集団かは知らんが、自分には関りの無いことだろうと思い、気にしても無駄だと判断して、自販機でジュースを買ってバスに戻った。

暫くすると出発時間が近づき客が戻ってきたんだが…

家族と思しき組が3、4組。

でそれ以外が…さっきの男の集団だった。

養蜂場のツアーに何でこんなに男が集まったのかと思ったが、集団の後に入ってきたバスガイドを見て納得してしまった。

寝てて気づかなかったが、バスガイドはかなりの美人だった。

出るところは出てて引っ込んでるところは引っ込んでるプロポーション、藍色にも見える黒いショートヘアーと同じ色の瞳、一目で美人だと評価できる顔立ち、綺麗さ可愛さを併せたようなデザインのガイド服を着こなし似合ってた。

で、その美人ガイドさんなんだが…何でかどっかで見たことがあると感じたのだ。

どこでいつ見たのかとジュースを飲みながら思い出そうとしていると、ガイドさんがマイクを取った。

 

「み~なさ~ん、休憩は十分に取れましたか~?」

「「「は~い!!」」」

「男性客の方々は十二分に取れたようですねぇ。

 

それでは今ツアーのバスガイドを、引き続き私七乃がお送りいたしまっす♪」

「ッブッフーーー!?」

美羽に会えるかもと思って参加したツアーに、こんな意外・予想外な形で他の娘に会ってしまったことに驚き、

思わず噴出してしまった。

窓側に座って風に当たろうと窓を開けていたのが幸いして、口に含んでいたジュースは霧状になって外に散布されたから、バスを汚すことにはならずに済んだ。

それはどうでもいいんだが…

バスの中で噴出すなんて行動したら当然注目の的になる。

視線自体は気にしなかったらそれで終わりだが、俺を見る人の中にはバスガイドさんも含まれていて、仕事上客の異常にはすぐに対処しなきゃならんわけで…

「あの~、大丈夫でしょうか?」

「ケホッ、ゴホッ…あ゛~、大丈夫です。

一気に飲もうとした所為か、変な入り方したらしくて」

「どうですか。体調が悪くなったというわけではないんですね?」

「はい。お騒がせしてすみません」

「いぃえ~、何事も無くてよかったです」

そう言ってガイドさん、七乃さんはガイド席に戻っていった。

俺の顔を間近で見てもコレといった反応も無く戻ったんで、名前と顔が同じなだけとも思ったが、漢√を除く主要3√では一刀と七乃ら二人自身が直接関ることは無かったはずだ。

その上、七乃は美羽至上主義。

なら俺を見て反応がないのも無理はないのかもしれない。

だが、格好と言い名前と言い、七乃である確率は高い。

話を聞くのに転生者であるなしに関係なく変な目で見られずに聞くにはどうすれば良いのか。

七乃さんのガイドを横耳にその事を考えていた。

 

それから暫く経ち、養蜂場に到着した。

ツアーは、言っては何だが普通だった。

ガイドの司会進行を聞きつつ養蜂場の係りの話を聞き、時々作業体験をする。

出来立て蜂蜜の試食の時に指に付いた蜂蜜を、狙ったのか素なのか知らないが、指を出し入れしながら咥え舐めるという艶かしい光景を七乃さんが見せ、それを見た男性客が前屈みになるハプニング?があったがそれ以外は普通だ。

その後、昼食時。

用意された弁当を食べ終えたら午後の部までは自由時間。

10分程度で食べ終えた俺は手が空いてそうな職員に美羽の事を聞いてみた。

美羽と言う名前、ゲームからわかる容姿・性格。

恋姫のことと、その転生者であることを除いた特徴を話し該当する人物が職員・従業員・パート・来場客にいなかったか聞いてみたが、残念ながら似たような人はいたかもしれないが、合致する人物はいなかったとの事。

そして午後の部。

2時間ほどツアーを行い、それが終わった後は1時間の自由時間。

この自由時間は、主にお土産を買う時間として設けられたもので、俺は家族の分・友人の分・そして華琳を始めとする転生者の分の土産を買った。

量が量なんで配達してもらうことにした。

で、大量の土産の横で配送申込書を書いていると、

「随分とたくさんのお土産ですねぇ」

ガイドの七乃さんが声をかけてきた。

突然のことに若干驚きはしたが、一ガイドさんがツアー客に声をかけることは別に変じゃない。

「家族とダチと知り合いの分と買い揃えたらこんなになっちゃって。

で、自分で持って帰れそうに無いんでこうやって配送頼んでるんです」

「そうですか。見たところ女性向けのモノが多い気がしますけど…

もしかして、プレイボーイさんだったり?」

にこやかに明るい声のままそんなことを言われたもんだから、思わず間違ったところにペンを走らせそうになった。

「たまたまです!女の友人や知り合いが多いのは否定しませんけど…

断じて俺はプレイボーイとかじゃないですから!!」

「そうですかぁ」

俺の否定を聞いた七乃さんだが、表情は変わらずニコニコしたまま。

腹黒い人ってその黒い思考等を腹、つまりは心の内に持つもので、外見や表情からは中々読めないものだ。

その中で一番効果的なのが笑顔。

ニコニコと浮かべる笑顔のうちでは何を思っているのやら。

原作でかなり腹黒かったが、仮に目の前にいるガイドの七乃さんが本物だったとして、外見だけでなくその性格もきっちりと受け継いでしまってるのか?

 

「てか、何故に俺がプレイボーイだと?」

「いぃえ~。実はつい先ほど係りの人にあることを聞いたら、私と同じ事を聞いてきた人がいたと言うことだったので

こういう県外ツアーにまで参加して聞くということは

それだけ浅く広くお付き合いしている方がいて、

その中の一人を探しているのかな~っと」

自分と同じ質問をしたと聞いて俺は確信した。

やっぱりこの人は転生した七乃なのだと。

「てことは七乃さん?でいいですか、呼び方は?「はい」

七乃さんも美羽を…いや、この場合は袁術を探してるって事ですか?」

俺がそう言った瞬間、美羽の名前を出した瞬間、七乃さんの表情に始めて変化が、驚愕の表情が出た。

それも「何言ってるんだこいつ?」なものではなく、「何でその事を知っているんだ?」てきなもの。

「どうして、そこで袁術の名前が…」

「ついでに聞くが七乃さんは…前世では張勲で真名が七乃だった。

であってるか?」

「…私のことまでわかるなんて。

そこまで知ってるあなたは本当に誰なんですか?」

七乃さんの質問に、俺自身が疑問を浮かべた。

今まで会った転生者は一目見て俺のことを北郷一刀と間違えた。

曰く、三国が平定してから年月が経って成長した一刀と同じだからだとか。

が、目の前にいる七乃さんは、さっきバスの中でもそうだったんだが、俺の顔を見ても特にコレといった反応も無く、今も目の前にいるのにわかっていない様子。

「…とりあえず自己紹介しておくと、俺の名前は本剛和人ですけど、この名前に聞き覚えは?」

「ホンゴウ、カズト…なんだか聞き覚えがあるようなないような?」

腕を組み、顎に指を添えて、若干首を斜めに傾ける仕種。

この表情、間違いない…マジで忘れてるよこの人。

 

埒が明かなかったんで天の御遣いのことを言ったら、

「あぁ、そんな人もいましたねぇ」って薄い反応だった。

と言うのも七乃さん曰く、美羽と七乃にとって北郷一刀は三国平定後の職探しで養蜂技術を教えてくれた男、ってだけの認識しかなかったとの事。

忘れたわけじゃなく印象に残って無かったって所か。

「それじゃ、カズトさんが天の御遣いだった北郷一刀さんなんですか?」

「いや、それは違う…この説明も何回目かな?」

それから俺たちはお互いに自己紹介をした。

俺は毎度のごとく名前と趣味とその他諸々、それから華琳と出会ってから転生者を探し始め、既に何人か見つけて交流を持ってること。

対して七乃さんの方だが、内容は…美羽LOVE。コレに尽きた。

自分が転生した存在であると認識したきっかけは、中学生の時に、とあるレストランにて飲み物に蜂蜜レモンジュース、メインディッシュにシロップ:ホットケーキ=2:1の比率のホットケーキを注文し、それらを至福の極みと言わんばかりに食す金髪幼女を見たのがきっかけであると言う。

それから街中でロングヘアー金髪幼女を見るたびに自分の中の何かが疼き、止めとなったのは街中でぶつかった金髪幼女に大丈夫かと聞いたところ、「だいじょうぶー!」と眩く輝かしい(七乃視点)笑顔を目の当たりにしたときだ。

その笑顔を見て、かつて自分が美羽に仕えていたことを思い出したのだ。

それからの七乃は中・高・大学と学業の傍らで美羽探しを行い、就職に当たっては、これまで行っていた方法、

学生時代ではバイトなどで資金を得て養蜂場巡りをしていたが、多種多様の施設や観光地などに仕事で公然といけるガイドの仕事に就いた。

そして今に到ると。

「…なんっつーか、凄ぇ執念ですね。美羽に会うためとは言え」

「そんなぁ、照れちゃいますよぅ♪」

言いながら七乃さんは両手を頬に添えながら腰をくねくね動かし照れた笑みを浮かべた。

褒めたわけじゃないが、七乃さんにとっては褒め言葉なんだろう。

「んで、今まで美羽を捜しててなんか収穫は?」

「それが全然で~。見つけるまで諦めるつもりはありませんが、そろそろ他の手段でもないかな~っと」

「なら丁度良いや。美羽だけを捜してるわけじゃないけど、華琳たちとも協力して探したらいずれ見つかるだろう」

「じゃぁ、私はガイドの仕事を続けていれば良いですね。

確率的にもこの仕事の方が広く確実ですし」

「ああ。そんじゃ、連絡先を聞いといても良いか?

なんか手がかりが見つかったら連絡するんで」

「は~い、それじゃよろしくお願いしますね♪」

こうして俺たちはお互いにアドレスを交換し合った。

その後、帰りの時間が来てバスは帰路につき、出発したバス停に到着してから、改めてお互いに美羽探しをがんばろうと声を掛け合って俺たちは別れた。

果たして、美羽に会えるのはいつになるのか。どんな出会いを果たすのか。楽しみだな…




と言うわけで、カズトを見ても反応が薄い娘さんでした。

この後は、恒例のおまけだよ~

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