現代に生きる恋姫たち   作:MiTi

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ハーメルンにてSSを読んでいる皆様方、
はじめましての人ははじめまして、久しぶりという人は久しぶりです。

リリカルなのはSS「クラナガンのとある飲食店」を投稿していますMiTiです。

この度、最近やり始めました恋姫のブラウザゲームに触発されて恋姫のSSを書きたくなりまして、それにあたり以前TINAMIというサイトで連載していました「現代に生きる恋姫たち」(以後現代恋姫と略します)を引っ越しもかねてハーメルンにて投稿することにしました。

楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ…


プロローグ
プロローグ①


何十という発光が私に向けられている

 

その光は、私の周りにいるブ男達の持つ箱から発せられるもの

 

その全てが、今の私を捉えている

 

私がどんな動きをしても、どんな表情を浮かべても、

 

一切の許可も遠慮も配慮もなく向けられる発光

 

時に仕種や台詞を要求されることもあるが、

 

その一切を無視、または拒絶却下する

 

だが、その反応でさえも発光を向けられる要因となってしまう

 

逃れられない発光、その向こうから来る視線

 

 

もはや諦めるしかできないという絶望に浸ってしまう

 

何故このようなことになってしまったのか?それは…

 

「いや~、私の目に狂いはなかった!

 格好(コスチューム)良し!それを着こなす中の人も良し!!

 見に来る人もシャッターの光も絶える気配が見られない!?

 も~、今やこのコスプレ会場の人気独占中ーー!!

 で、その人気者の感想やいかに?!」

 

「………最悪、としか言い様がないわね」

 

「まったまた~、普段から自分は注目されて当然!って雰囲気出してるのに~」

 

「そんな自意識過剰な考え、抱いたことなんて微塵もないわよ」

 

「そこは私含めて周りが感じる雰囲気だって」

 

「…百歩譲って注目されるのは良しとするわ。

 でもね…こんな変態的な視線なんて断固拒否よ!!」

 

「そこは、その可愛らしい容姿と、私の誘い・頼みを承諾した自分が悪いってことで」

 

「…………ハァ~…」

 

「溜息つくと幸せが逃げちゃうよ?華琳」

 

「誰の所為だと思ってるのよ…」

 

 

どうしても、ということで(今回のことで解消しようか考えてしまうが)

友人の頼みを、内容も確認せずに承諾してしまい、

改めて内容を聞き断ろうとも思ったが、

一度言ったことを覆すなど許さないという自分の信条がそれをさせず、

結局そのまま流され、自分にとってあまりなじみのない世界、

友人が好きなアニメの中の登場人物のコスプレを着せられ、

コスプレイベントに参加させられたからだった…

 

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初めまして、とでも言っておくべきかしら?

私の名前は宗祇(そうぎ)華琳(かりん)。

誰も、と言うより自分でも信じられないけど、前世では曹操孟徳だったわ。

 

 

それを自覚(思い出したとも言う)したのは、世界史の授業で三国志が始まってから。

最初のほうでは、なぜか懐かしいと感じた。

授業が進むにつれて、自分が知っている三国志と異なっていると感じるようになった。

 

何故そう思ったのか…

 

幼少のころから「ウチの娘は神童だ(わ)!」と評価されるほどに文武両道、

要領も良かった。まるで”前世でもそうだった”ように…

 

そして三国志の授業では、進むにつれて”自分が”辿って来た日々、

歴史とは違っていると感じた。

 

 

何故そう思い、考え、感じてしまうのか。

その謎を解こうとし、改めて私自身を見つめなおした。

そうして私は”かつての私”を思い出した。

 

私が生きた歴史では授業で習う歴史、この場合正史と呼べばいいかしら?

正史の”曹操孟徳”のように赤壁でその人生に、

その覇道に終止符を打つことはなかった。

 

正史とは違い、この時期になっても孫策は死んでいなかった。

 

そして三国の決戦。私たち魏勢は蜀呉同盟に敗れはしたものの、

五湖の侵攻を受けた事により、その場で同盟を結びこれを撃退。

 

それからは、三国は互いを支えあう存在となった。

戦があった、祭りも開いた、嬉しい事も辛い事も悲しいこともあった。

 

そんな私、私たちにとって中心とも言えた存在であった男、”北郷一刀”。

 

乱世を治めるために、光る衣を纏いし者が天より遣わされる。

その占の通りに、一刀が劉備の元に現れ、三国での争いは終わり平和になった。

”天の知識”をもって、前世の私が生きていた間に三国は大きく発展していった。

 

三国との交流の際に”天の国”について聞く機会があった。

その時一刀は言っていたわね。

私たちが”天”と呼んでいた所は、一刀にとっては当時の”未来”。

つまり、私が今生きている世界、現代から一刀は来たと。

 

一刀がいつ三国志の時代に遣わされたかはわからない。

でも、今私が生きている時代から来たと言う可能性は高い。

そこまで考えるに到ってから、私は”北郷一刀”と、

私と同じようにあの時代、あの世界から転生した仲間を探す日々が始まった。

 

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まずは、元々この時代を生きているだろう”北郷一刀”を探すことにした。

 

記憶の中から、何度かあった一刀との会話を思い出し、

住所や学園について調べた。

 

まぁ、地名だけしか聞いた記憶がなかったから、住所は探すまでもなかったわね。

 

それから”フランチェスカ学園”を探すことにしたのだけれど…

探し始めて間も無く断念することになり、

同時に一刀のことも諦めることになってしまったわ。

 

”フランチェスカ学園”、結論から言うと、そんな学校は存在しなかった。

 

廃校になった、建設中だったということもなく、

ネットを駆使して世界中からも探したけど、

フランチェスカと名のつく学校はどこにもなかった。

 

フランチェスカ学園がなくても”北郷一刀”なら、とも思ってネットで調べても、

同じ名前こそあったが「この男が一刀ね」と言える男はいなかった。

 

 

思った以上にショックだったせいか、

これ以降一刀や前世の仲間を探すのをやめてしまったわ…

 

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それからの私は、この現代世界の宗祇華琳という一人の女として生きることにした。

勉強し、友人と遊び、家族とも仲良く、時々喧嘩もしたりとごく普通に生きた。

 

そして時が流れて、私は、私の持つ力を活かしてそれなりに難関な大学へと進んだ。

ここでも、私は友人を作ることができた。

 

きっかけは向こうからだった。

小学校までは皆無邪気さがあってそうでもなかったけど、中学・高校になると、

前世の影響か何だか近寄りがたいオーラが出ていたらしかったわ。

その所為で相手から話しかけてくることはあまりなかった。

この時は私から積極的に話しかけることで私を知ってもらってからは

問題なく付き合えた。

若干百合な傾向があったことは…否定できないけど。

 

所が、大学で初めてできたその友人は何の恐れもなく話しかけてきた。

ゼミの教室で顔合わせをして、二三会話をして解散した後、

彼女はすぐに話しかけてきた。

 

理由は、私の容姿が可愛らしいからとのことだった。

容姿を褒められた事は嬉しかったけれど、少し複雑だったわ。

今の私の容姿は、髪形こそ違うけど、体型は前世と変わらなかった。

…つまり、認めたくはないけど、普通よりも若干小柄なのよね。

前世から引き継がれたことの中でこれだけは嬉しくなかった…

両親は共に背も高く、近所からは美形夫婦、私も交えて美形家族とも言われてる。

母親に至っては、黄忠までとは行かなくてもかなりのボディー。

なのに…私は、私だけは………

 

気を取り直して、彼女はファッションに関して考えること、作ることが趣味で、

私に試着役兼モデルをして欲しいと思い声をかけてきた。

私自身、化粧や服飾といったお洒落に興味があったからその話を受けた。

 

彼女は同好会にも入っていて、誘われた私も入会。

その後、同好会の集まりに参加しようと部屋に行ってみると…

そこは、ファッション研究会と言う名のコスプレイヤーの集まりだった。

 

騙された…とも思ったけど、彼女は嘘は言っていない。

やめようかとも考えたけど、入会届けを出して直ぐにやめるのもなんだし、

今までアニメやゲームはあまりしてなかったけど全く興味がないわけでもなかった。

○○に出てくる××が可愛らしい、あの格好は好き、

この声優の声前世の仲間の□□に似ているわね、

と言った感想を持つくらいには興味があった。

対して、同好会のメンバーたちはオタクなの?

と疑ってしまうくらいに詳しかったわね、

ファッションに関しては。

世間一般にイメージされるようなブ男…これは私のイメージね、

オタクみたく「△△萌ェ~~!!」と叫ぶようなことは…時々あったわ。

会の皆は、その情熱を一心にコスプレに捧げていたから、

一般オタクみたく忌避反応は出なかった。

捧げ過ぎてるんじゃないかもという感じもするけど…

 

会員の全員が各々得意分野を活かして役割を分担してコスプレ作成に当たるんだけど…

武器や防具が本物の金属・鉱石・動物の皮などで作るのが当たり前の製作技術は、

確かに目を見張るものであるけど、現実世界でそれはどうかと思うの。

しかも、不正だったり無許可だったりと言うことが一切ないから始末に終えないわ。

 

ともかく、そんな同好会の中で唯一揃える事が出来ていなかったのが、

今の私の立場、試着兼モデルだった。

 

コスプレと言うのは、アニメやゲームのキャラが身にまとってこそ似合うのであって、

現実世界ではいくら服や装飾なんかが忠実に再現できても、どうしても違和感が出てくる。

レイヤーや製作者にとっては、ただ似たものを作るのではなく、

いかに本物に近づけられるかを追求して違和感をなくすかが課題であり、

それを成し得たときの達成感こそが喜びであると会員全員の談ね。

 

で、今までは会員の中からまぁまぁマッチしてる人が着ていたけど、

そこに私が現れたと。いわく「華琳ちゃんのその容姿体型はまさにレイヤーのためのものよ!」

否定したかったし、若干コンプレックスがあることも言おうとしたけど、

会員全員の勢いにいつの間にか丸め込まれてしまったわ。

この私を追い込むなんて…侮れないわ…

 

そんなこんなで私は試着兼モデルとして会員となって同好会で活動して数ヶ月がたったある日、

私を同好会に誘った友人にどうしても手伝って欲しいことがあると言われ、

その時は友人は忙しかったらしく内容を聞けなかったけど、

どうしてもと強く頼まれてしまったし、手伝うことを了承した。

 

そして今、私はコスプレイベントにレイヤーとして出ることになってしまった…

 

今私が着てるのは、何のアニメかゲームかは知らないけど、いわゆる魔女っ娘もの。

この年になってこんな格好…とも思ったけど、

中には明らかに成人なのに魔法”少女”を名乗るアニメがあって、

そのコスプレをしてる見た目三十路に行くか行かないかなレイヤーもいるから、

あれよりましね。

 

で、私含め同好会の再現力の評価は、始まって数分したこの時点で、

写真を手に私を囲み遠慮なしにフラッシュがたかれるこの状況が語ってる。

…本当に疲れるわ…

 

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あれからどれくらい時間がたったのか。

やっとイベントが終わり、着替えと片づけを終えた私たちは帰ることに。

このまま打ち上げにと言う案もあったけど、私はかなり疲れていたし、

会員の中には今回の反省点を直ぐにでも改善しようと言うのもいたので各自解散となった。

 

帰ろうとした私は更衣室に忘れ物をしたのに気づいた。

あれだけの混雑があったから、一度忘れ物をしたら帰ってくるのは時間がかかる。

それなら、私が忘れた場所からまだ動かされていないだろう内に取りに行くことにした。

 

 

運が良かったのか、それは忘れた場所から動かずそこにあった。

改めて帰ろうとして、念のために再度忘れ物がないか確認してると、

隣の扉、男性用更衣室から出てきた人たちの会話が聞こえた。

 

「いや~、売れた売れた!やっぱコスプレ付きでやると売れるな」

 

「名前がこれだからって理由でさせられた俺としてはたまったもんじゃないけどな…」

 

「まぁ本人そのものじゃないんだから気にすんなって」

 

「そう出来りゃいいんだが、これのせいで俺=種馬なんて認識はごめんだっての!」

 

「そこは名付け親か制作会社を恨むか、行動で違うってわからせるしかないだろ」

 

「簡単に言うな。…とにかく、もうこのコスはやらないからな!」

 

「売り上げの3割も持っていってそりゃないだろ~。次回は4割出すからさ~」

 

「もっと上げてもらわなきゃ納得できん」

 

「てことは報酬しだいで応じるって事だな。

 そんじゃ、次の機会があったらまた頼むなー

 

 

 カズト」

 

 

その会話、その名前を聞いて私は彼を、カズトと呼ばれた男の後を追った。




というわけで、プロローグの一話目です。

今後も、TINAMIで投稿していた分をまずは加筆修正して投稿。

ストックが切れたら新しい話を投稿していく予定です。

今後とも、現代恋姫シリーズをよろしくお願いします。

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