自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
管理局の勧誘を丁寧にお断りした俺は、大量の服を持ったアリシアと合流した。“大量の”というのは比喩表現ではあるが、過言ではない。両手に持ったカゴの中には大量の服が入っていて、その分の金を払うと意外にもそこまで高くなかった。
「ほ、ホントにこんなにいいの?」
「いいっつってんだろ。居候でも妥協はしねぇ。可愛く着飾っとけ」
「う、うん・・・」
とりあえず、数年着れればそれでいいと思っているが・・・。女の子も成長はするし、服とかも毎年新しくした方がいいのだろうか。良く分からん。
いざとなれば縫えばいい! 裁縫スキルもあるし。センスはないかもしれんが・・・。センスはどうやったら手に入るんだろうか。生まれた時から持っているものなのだろうか。それともどこかのタイミングで培うことができるものなのだろうか・・・・・・。
学業に励んでいたら中学生だったであろう俺は、一般教養的に言える家庭科などを習っていない。しかし料理などが出来ることを考えれば、人間しなくてはいけないという限界状態ではどんなことでも出来るのではないだろうか。
「・・・トレインさん」
「ん? どした?」
「あんまり美味しくない・・・・・・」
「・・・そうか?」
デパート内にある食堂は当たり外れが多いと思うが、美味しくないとはどういう事だろうか。マズくて食べられないと言うことではないだろう。ここは仮にもミッドチルダ中心の管理惑星だ。ミッドと同じような食事が出てくる。食べたことないわけじゃあないだろう。
「・・・トレインさんのご飯の方が美味しかった・・・」
「・・・・・・あぁ」
俺の前世の故郷“地球”の味か。ミッドでも食材などは変わらないから俺自身食べたくて手作りをしていたりするのだが、つい昨日の晩ご飯はちょうど“オムライス”だった。おそらくオムライスを食べたせいでアリシアは、ミッドの食事に不満を感じているのだろう。
「それじゃあ明日からは拠点を移すか」
「?」
「うまい料理が日常的に食える世界にな」
「・・・! ホントに!?」
「嘘はつかねぇよ」
さて、そうと決まれば色々やることがあるな。忙しくなりそうだ。
―――暫くして。
引っ越しの準備は完了しようとしていた。引き渡し。と言うわけではないが、このアジトも当分使わないだろうと言うことで、荷物を完全に移動させる気で動いていた。
本当、作ってて良かった地球の戸籍・・・。一応一軒家もちゃんと用意しているし、向こうの準備も出来てるな。
戸籍を作ったのは『
「準備はいいか?」
「うん!」
「よーし、じゃあ行くぞ」
「はーいっ!」
家具などはそのままでも大丈夫。デバイスは全部持った。アリシアは俺が買った服位を持って行けば大丈夫だろう。一応戸締まりを確認したら、さあ。スキルの発動だ。同一時間の地球。俺の戸籍で所有しているアジトに飛ぶスキル、
「! 景色が変わった!」
「第九十七管理外世界にある地球って言う星だ。ここの料理を参考に俺が料理を作ってた。だから美味いと思う」
「楽しみだなぁ・・・!」
後から確認したが、どうやらここは海鳴市だったようだ。全然知らなかった。アリシアは今、五歳原作主人公達は三歳だった。二歳差なのか。良かったな。お姉ちゃんだぞ。
と、言うわけで俺達は近くの食堂で食事中です。俺は安定の定食を頼んで、アリシアは物珍しいのか十分近く迷った挙げ句俺と同じ定食にしていた。
「・・・・・・美味しい・・・!」
「・・・だろうな。日本人はバカがつくほどの凝り性だからな。冷凍食品でさえ普通の料理と遜色なしに食える。最も、食にだけに留まらないがな」
「お客さん。分かってるね」
「?」
「ここ最近の日本の食材は変わってきたって話だろう?」
「・・・何かそう感じる体験でもしたのか?」
「おうよ。ウチの田舎の爺ちゃんの話なんだが、途轍もなく頑固でよ。この前ラーメン食いたいって言いだしたから冷凍食品持っていってチンしてやったんだよ」
「ほう」
「『食えるか! そんなクソマズいもの』なんて言いやがったからとりあえず食ってみろって言ったら『昔食った屋台の味に近い』だと」
「冷凍麺のコシねぇ・・・。ありゃ、まさに技術の革命だわ」
「? ?」
「お嬢ちゃんは分からねーみてェだな」
「まだ小学校に上がったばっかりなんでね」
「見たとこ、あんたの娘じゃないんだろ?」
お節介なおばちゃん。まさにそれといった様子の食堂のおばちゃんが、アリシアと俺の顔を見比べながらそう言った。
「まぁな。訳あって育ててる。血の繋がりなんかないぜ」
「あんた。何歳なんだい?」
「十四だよ」
「成人もしてないじゃないか!」
「・・・それでも生きていかなきゃいけない人間ってのは大勢いるだろうが。例え子どもでも、な」
世界中にいるだろう。何らかの事情で親と離れて子どもだけで生活している人間が。生きたいという気持ちでもって毎日を一生懸命生きている人間達が。
「・・・・・・あんた。何があったか知らないけど、今度からここの商店街を毎日利用しな」
「・・・・・・は?」
「あたしらが話通しておく。あんたらのどっちがが買い物に来たらサービスしてやるようにね!」
「・・・・・・気前いいな。アンタ。でも、やめとけ。見知らぬ人間に優しくして返ってくるものはないぜ」
「あんたは返してくれるんだろ? あたしらは血の繋がりもないクセにその訳でこんな女の子まで育てようって言うアンタの覚悟に肩入れするのさ!」
ワハハ。と豪快に笑ってみせるおばちゃんに店の中にいた何人かが立ち上がる。最初に口を開いたオッサンは、頭にタオルを巻きながら立ち上がり、ニカッと豪快に笑って。
「何があったか詮索はしねぇ。だが、ウチに来たら魚を安くしてやるぜ」
「ウチの店もそうだ。野菜や果実の特別サービスしてやる」
「その
「ありがとう!」
アリシアが笑顔でお礼を言う。活気溢れる商店街。俺達はとても歓迎されているようだ。
俺の中で商店街ってこんな感じ。団結力があって、誰にでも優しいって言う雰囲気。困っている人は見過ごせない地域のヒーロー達って考え。