自由な黒猫魔導師の野良猫生活   作:軍曹(K-6)

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     泳ぎ疲れ胸にクールベイベ―

俺と一緒に住んでいる我が家唯一の学生身分、アリシアが通う私立聖祥大学付属小学校も一ヶ月ほど休暇期間に入っている。つまるところの夏休みというものである。アリシアも学校に行かなくて嬉しそうにしている、と思いきや。

 

 

「学校行きたいー。ヒーマー!」

 

 

そんな事もないようだ。確かに学校に行っている間は行きたいくないと思うくせに、長期休暇に入ってしまうとやる事がなくなってしまうのだろう。

 

 

「一つ聞いておく。学校から夏期休暇課題なんかは出てないのか?」

 

「でたけどもう終わってるよー・・・・・・うあーヒーマー・・・」

 

「そうか」

 

 

夏休み最終日にヒーコラ言わなくて済むのならそれはそれでいい気はするが、逆にする事がなくなってこうして毎日だらけているのもどうかと俺は思うわけだ。つまるところ今は夏休みなわけだからどこかへ遊びに行けば良いのではないだろうか。

 

 

「と言うわけで、プールか海。どっちに行きたい」

 

「え? 連れて行ってくれるの!?」

 

「家の中でヒマヒマ言いながらグウタラされていてもあれだ。選べ」

 

「じゃあプール!」

 

「よし、じゃあ準備しろ。とある要人のプールサイド警護、コイツを受ける事にした」

 

「は? え、えぇ!?」

 

「お前は泳いでても良いぞ。警護は黒猫の方でやっておく」

 

「えぇ~・・・。まぁ、いいや」

 

 

何をそんな妥協した風に言っているのだろうか。プールと海どちらが良いか聞いただけなんだがな・・・。

 

 

 

―――どこかの次元世界にある大型レジャープール。

 

 

「悪いな。ウチの馬鹿が」

 

「いえいえ。家の娘も喜んでいるのでちょうどいいのよ。でも・・・、()()金色の闇と呼ばれて恐れられているのがあんな幼い女の子だなんて」

 

「普段と仕事のオンオフがきっちりしてるだけなんだけどな」

 

 

今現在俺達は管理局とは直接関わりはないが、次元世界における大きな権力者の妻とその娘の警護を依頼され、大型のレジャープールへと足を運んでいた。

 

 

「クロ~! プールが気持ち良い!」

 

「おー、そーかー。よかったなー」

 

「・・・・・・棒読みなのが気に食わない」

 

「俺はそもそもプールに入る気など微塵もないからな。気持ち良かろうが悪かろうがどうでもいい」

 

「むぅー・・・」

 

「・・・そんなに真剣に警護してくださらなくても良いのよ? どうせ私みたいなおばさんと、何も分からない娘に価値はありませんし」

 

「まぁ、そうかもしれねーな」

 

「ええ。でしょう?」

 

 

そう言って笑うおばさんにハーディスを構え、俺は遠慮無しに発砲。その後ろに近づいていたバーテンの飲み物をグラスごと砕いた。周りの俺以外の黒服は何事かと俺にデバイスを向けてくるが、俺は気にせずに言ってやる事にした。

 

 

「ッ!」

 

「アンタの夫や、その地位を狙う人間にとってはあんたらはかなり価値ある存在なんだよ。なぁ、バーテンのオッサン。その睡眠薬入りのドリンクでどうするつもりかは知らねーが、黒猫(オレ)の目の黒いうちはそんな事はさせねーぞ」

 

「アガッ」

 

「もー。せっかく楽しんでるんだから邪魔するなよ」

 

 

俺の後ろ、プールの中ではアリシアが娘っ子を攫おうとした男の胸板にディオスクロイを叩き込んでいた。

 

 

「「黒服さん(あんたら)黒服さん(あんたら)だ。ボディーガードだって言うんなら、事が起こる前に処理しやがれ」」

 

「「「「ッ!」」」」

 

 

このプール内に他にもいるであろうそういう輩に対して脅しの意味も込めて、殺気を出しながら俺はそう言った。そもそもこの母娘は自分達がどういう立場にいるか分かっていないから、こんな少なく熟練度も低いボディーガードだけ連れて、人が集まるプールに繰り出そうとか考えるんだろう。

 

 

「そう言えば、ねぇクロ。お母さんと私の妹どうなったか知ってる?」

 

「あぁ、あの二人か。言ってなかったか?」

 

「うん。まだ聞いてないよ」

 

「今のところは特に問題なく終わる事が出来そうっていってたな。母親の方が何度も俺達(アリシア)を呼ぼうとしていたとあの生意気なガキンチョから聞いたよ」

 

「そっか・・・なら良かった」

 

 

心底安心そうな表情。何だかんだ言ってもやはり心配だったのだろう。いくら母親といえど、あのポンコツだからな・・・。必然的にアリシアが心配する立場に移るのだろう。

 

 

「誰が生意気なガキンチョだ」

 

「「?」」

 

「なぁ、トレ・・・いや。仕事中ならこう呼ぶべきか。クロ、ヤミ」

 

「クロノ執務官!」

 

「よぅクロノ。お前が呼び分けを気にするなんて珍しいじゃねーか。お前、仕事中でも提督の事“母さん”って呼んじまうんだろ?」

 

「うっ、うるさいな!」

 

「それで? クロノ執務官がなんでこんな所に?」

 

「ああ。ハラオウン(ウチ)テスタロッサ(彼女達)とで今このプールに来ていてね。殺気を感じたから見に来ただけだ。仕事中なら邪魔はしないさ」

 

「うん。なるべく早く離れてね。あのポンコツが来ちゃうと色々マズいから」

 

「それは気にしなくていい。彼女は今君の妹の水着を取るのに忙しいらしい。殺気を感じた時も真っ先に妹の方を守っていた。君には気付いていないだろう」

 

「あ、うん。嬉しいんだか寂しいんだか・・・・・・」

 

 

から笑いをするアリシア。寂しげに見えて仕方がない。そんな顔をさせるために連れてきたわけじゃないっつの。

 

俺はプールサイドにヒジを乗せ、俺やクロノと会話していたアリシアの頭に手を置いてなでてやる。

 

 

「おっ!? な、なに?」

 

「何でもねぇ。強いて言うなら笑った顔が一番だから笑ってな。ってところだな」

 

「・・・・・・ッ!」

 

 

笑いかけてやったら真っ赤になりやがった。照れているのか怒っているのか。俺はそこまで鈍感じゃないし、アリシアのアピールも嘘じゃないとちゃんと分かってる。間違えるわけがない。悪かったからちゃんと再起動してくれよ。

 

 

「邪魔はしないと言っておいてなんだが、少しばかり話をさせてほしい」

 

「? なんの話だ? 言っておくがプライベートは―――」

 

「彼女のリンカーコアについてだ」

 

「ヤミのか」

 

「ああ」

 

 

俺は気付かれないようにプールの中で護衛対象と戯れているアリシアを見る。見ているのに気付いたアリシアが手を振ってきたので軽く振り替えしておく。

 

 

「で? どうしたんだ」

 

「ロストロギア関連なのだが、いつかち合うか分からないから教えておこうと思ってな」

 

「?」

 

「闇の書。そう呼ばれているロストロギアがある。それは魔導師のリンカーコアから魔力を奪い取ると言ったロストロギアだ」

 

「・・・!」

 

「君なら危険性が分かると思う。じゃあな。これ以上離れると母さんに怒られる」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

 

闇の書。それにアリシアが持つ“ジュエルシードリンカーコア”が蒐集されればどんな事になるか、予想もつかない。だが、俺と、俺の周りの世界に手を出そうって言うんなら容赦はしない。とりあえず調べてみるか。




「プールの後の牛乳!」

「それは風呂だ」

「しかも銭湯限定!」

「分かってんのかよ・・・・・・」


8/21追記:この先の展開をいまだ捜索中のため、今暫くお待ち頂けると嬉しいです。

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