自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
アリシア:「やらないの?」
やりません。
トレイン:「出来ないの間違いじゃねーの?」
かもね。
料理。それは女の子にとって一つのステータスだろう。その行為が、厚意が、好意が、男の心を、
人間の三大欲求、「食欲」「睡眠欲」「性欲」の一つ、食欲を満たす料理。その善し悪しで女性の優劣が決まるとは想えない。だが、一般的に『料理の出来る女性』というのは『家庭的である』と見られがちである。そして、『家庭的である女性』というのは必然的に相手の三大欲求全てを埋める事の出来る女性となるのだろう。
さて、そもそも俺がこんな事を語り出したのには、やはりというかちゃんとした、歴とした理由がある。
事の始まりは今日、六月三日。俺、トレイン=ハートネットの『妻』を豪語するアリシア・テスタロッサたる少女が知り合った少女、八神はやてとの邂逅だった。
六月三日の朝、そこまでは普通だった。数日前図書館で料理が上手いという年下の少女とであい、料理を教えてもらっていたアリシアが俺とその少女を会わせたいと言いだしたのだ。
「その女の子って言うのは一体全体どんな子なんだ?」
「なに? ナに? ナニ? 何? もしかして可愛い子だったら口説こうとか考えてる? 私より年下だよ? 多分なのはちゃんと同い年ぐらいだよ? やっちゃったらロリコンだからね?」
「そんなことしねーよ。ただ、アリシアに新しく出来た友人がどんな子かと思っただけだ」
本当に、特に意味はない。ただ、特徴を聞いておけばあまり地雷を踏まないで済むかな、と思ったんだが。そんな俺の考えも虚しく、その少女の住む家へと、アリシアの案内で着いてしまっていた。
その家はいたって普通だった。ただ、人の気配が極端にしない。人が歩く音なんかも聞こえない。だがそれは、家の前の道路からいえの玄関まで一貫して段差がない事から想像はついた。おそらくこの家に住むその少女は何らかの理由で車いすを利用している。
そこまで考えて答え合わせがてら家にお邪魔する事にして、出迎えたのは車いすに乗った少女、名を“八神はやて”というらしい。この家に一人で住んでいる。これは俺の推測だ。玄関に置かれていない靴。靴箱もがらんどう。少女が車いす利用者という点から、そこまでの量の靴はないと予想は出来ていたが、まさか家に住む人間全員が車いすに乗っているわけがない。そんな理由から俺は彼女が一人暮らしだと当たりをつけた。
「八神、失礼だがご家族の方はいないのか?」
「あ・・・、家の両親は・・・もう」
「そうか、もういい。悪い事を聞いた」
やはりというかなんというか。こんな年の少女が一人でこの家に住んでいる。それはとても寂しくとても辛い事だろう。さて、気分転換に本題に、本質に、今回の目的に入ろうじゃあないか。
「じゃあこうして腰も落ち着けたことだし自己紹介と行こうか。俺はトレイン=ハートネット、何者かと問われれば。ある時は謎の語り部、ある時は謎の復讐者、ある時は謎の試験者、ある時は謎の傭兵、ある時は謎の放浪遊民」
「全部謎やん・・・」
「ある時は女声の最低音域」
「・・・・・・ある時はアルト?」
「俺はただの、ただの野良猫だよ」
「野良猫って・・・アリシアさんの夫なんやろ?」
「・・・・・・ア~リ~シ~ア~?」
「しょ、将来はそうなるもん!」
「残念だったな! あと五年お前と会うのが早かったら可能性はあったかもしれないが、俺は少女に恋情は抱かないんだよ!」
「「なっ、なんだってー!?」」
おや、関西弁から何となく察してはいたが、はやてというこの少女、かなりノリが良い。キバヤシ風に説明してみたが綺麗に乗ってくれた。
「えっと、私は八神はやて。九歳です」
「ん。確か料理が得意なんだよな?」
「料理というか家事全般というか、やらないといけない事だったので必然的にといいますか」
何か色々言ってはいるが、要するにやらなくてはいけない事をやっていたらいつの間にか上手くなっていた、と言った類いの謙遜だろう。
「そこで疑問なんだけどよ。アリシアとどっちが上手いのかなって思ってさ」
「アリシアさんとですか? そやね、どっちやろか」
「実際、作れる料理もアリシアは多いし、何を教わっているんだろうと思ってな」
「色々や。作った事もない料理を色々と教えとります」
「・・・勝負だよ、はやてちゃん! 私の方がおいしいもん!」
「む。同じ料理を作るものとしてその言葉は聞き逃せんな! ええで、勝負や!」
これが事の始まり、言うなればプロローグだ。今現在、八神はやてとアリシア・テスタロッサ。この両名が八神邸のキッチンに立ち、二人とも同じ料理“オムライス”を作っていた。家庭の味で比較的簡単に作れるという点で、俺はこれを審査の対象にした。
「冷蔵庫の中豪華だね」
「あはは。明日私誕生日なんよ。誰にも祝ってもらえんから自分だけでも祝おうおもて」
「「・・・・・・」」
暫く待って、俺の前にオムライスが二つ出てきた。片方は“オムライス”と検索して一番に出てくる画像のように真ん中からケチャップが流れていて、片方はハートが描かれていた。
「んじゃあいただきます」
「はーい」
食べてみて分かるどちらも申し分ないぐらいに美味い。
「どっちが美味しい?」
「どっちも美味いな」
「なにそれ」
「アリシアのは俺の好み、はやてのは万人受けと言う意味で美味い」
「「?」」
「わかりにくいか? アリシアのは誰もが美味いという味じゃあないかもしれないが、俺からしてみればとても美味い。はやてのは十人中十人が美味いというような店に出せる味だ」
「そやろか・・・えへへ・・・褒められるってええもんやな」
「ああ、良いお嫁さんになれるぞ」
「私は!? 私は!?」
「アリシアは・・・俺はうまかったから良いが・・・いざというときに変な味と言われる可能性も・・・・・・」
「私、トレインのお嫁さんだから大丈夫」
「おい」
「大丈夫」
一体何が大丈夫なのか、まぁいいか。何度も言うが、俺は年齢差プラスマイナス三歳までがストライクゾーン。その間までならハーレムもやぶさかではないが、アリシア達のような歳の差ハーレムは望んでいない。ハーレムでなくとも年の差婚は論外だ。
「トレインさんはアリシアさんと結婚されるん?」
「歳の差がなぁ・・・」
「あぁ~。なるほどな」
「
「「あるん
関係あるに決まっている。何度も言っているだろう。歳の差がありすぎる、と。
年齢の事はさておき、この後メチャクチャ明日だという彼女の誕生日祝った。
フラグはどうやって立てようか。