自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
それが私です。
『 』という人間
「・・・・・・アリシア? だよな」
「そうだよ?」
「アリシア・テスタロッサ、だよな?」
「そうだってば」
・・・・・・何故、アリシアがフェイトのバリアジャケットを纏っているのだろう。一瞬だがフェイトと見間違えたじゃないか。そして分かった事がある。と言っても、今日も家は平和だという事だけしか分からなかったのだが。
「・・・で。何だって急にバルディッシュのレプリカなんて作ったんだ?」
「強いて言うなら何となく! 私一人じゃ無理だからイヴにも手伝ってもらったんだよ」
『やりました』
平和だ。この前のジュエルシードの件の後の事で色々と疲れていた俺はこの平和を噛みしめようと思う。
「そういえば、トレイン宛てに手紙が届いてたよ? 魔力認証式なのかな、私には開けられなかったんだけど」
人の手紙を勝手に開けようとしたのかよ。何かもうすっかり母親的な立ち位置にいるアリシアに少しばかり文句というか言いたい事はあるが、とりあえずその手紙というものを開いてみよう。
その前に、魔力認証式で送られてくるようなものって何だ? 魔力認証式、それは指紋と同じように魔力にも個人差がある事を利用したもので、イヴのハッキング能力を持ってしても開けられない。特定の魔力を特定量注ぎ込む事でしか、それを魔力認証をスルー事は不可能なのだ。
それはともかく、鬼が出るか蛇が出るか開けてみなくちゃ分からない。
「・・・・・・何が入ってたの?」
「・・・白紙だ」
『炙り出し、でしょうか?』
いや、魔力認証式を使って送ってきておいてここであぶり出しというのもおかしい。それに白紙と言ったが、俺にはこの手紙を開いた時から背後に違和感を感じている。おそらくこの手紙を開いた時に紙から飛び出し、俺の後ろに陣取っているのだろう。
この―――
「トレイン? トレイン?」
『気絶しているだけのようです。一体何が・・・・・・』
―――俺の意識だけを抜き去ってくれた真理の扉は。
「久しぶり。になるのかな、トレイン=ハートネット君。いや『
「そうか。俺はもう名無しってワケか」
「・・・うん。もうどの世界でも君の本当の名前を認識する事は不可能さ。『 』と言う存在は焼かれ、灰になり、土に埋められたのだから」
「『
「何のために、か。“君は何をしたいのか”という議題について少々語り合いたくてね」
俺が何をしたいのか、か?
「そう。君自身はそんなつもりはなくても、君の様子を見ている他の神は君の行動に疑問を抱いていてね。それを解消しようと思うんだ」
「そういうものって語り合うべきものなのか? 俺としてはいつの間にか自然に解決しているような気がするんだが?」
「それが成り立たないのが現実ってものなんだ。まず、君の理解について話しておこうよ」
「理解だって? いったい俺が何を理解しているって言うんだ?」
「じゃあまず、『魔法少女リリカルなのは』というものについての知識は?」
「原作知識って奴か? えーっと、高町なのはがフェレットのユーノと出会って、ジュエルシードを集めながら成長して、フェイト・テスタロッサとジュエルシードをかけて戦って、プレシア・テスタロッサを倒して、また会う約束して別れて・・・それで終わりじゃないのか?」
「いいや。君が知っているのは『リリカルなのは』第一期。言うなれば無印編だ。『魔法少女リリカルなのは』はシリーズものなんだよ」
「なっ、マジで!? まだ続くの!?」
「しかも君は第一期の知識でさえ満足に知らないだろう?」
「いや、そこそこ知ってると思うが・・・」
「じゃあ初めになのはとフェイトが会ったのは?」
「温泉旅行の時・・・じゃあないよな・・・?」
「どれだけ知らないんだよ・・・。君は本当になんのためにリリなのの世界に転生したんだい?」
「俺が知ってるのはジャンプ系の漫画の、しかも局所的な場面展開のみだよ。俺が好きなのはゲームや小説がメインだ! それに、俺が転生する先はお前達に任せただろうがっ!」
「はぁ・・・。で、二次創作知識はどのぐらいあるんだ?」
「神様の『道楽』『失敗』『暇つぶし』なんかで死んでしまった人間が、罪滅ぼしの為に別世界に記憶を持ったまま転生し、特典もらって好き勝手やるのが神様転生、だろ?」
「そうそう。良く分かってるじゃん」
「それで・・・『リリなの』の世界には、所謂『俺の嫁』宣言をする踏み台転生者が現われて、嫌われ、本物のオリ主がフラグを全部持っていく、って言うのは知ってるな」
「ふんふん。君自身ハーレムについての考え方は?」
「リリカルなのはでのハーレムについて? ・・・まずロリが多いことが問題だな。現時点で俺の年齢は二十。アリシアは十一だ。他のメインヒロイン勢とかを考慮しても年齢差は九から十一。俺の体が原作トレインよろしく縮んでしまえばハーレムはあるかもしれないが、今現時点の年齢差だったらアリシアの愛に応えてやる事は出来ないな」
「? ・・・その様子だとハーレム自体はありと?」
「みんな普通に可愛いだろ? 俺の事を好いてくれているみたいだし、優良物件というか逃す手はない相手な気はするぜ」
「君が縮めば・・・ね」
「縮めるなよ? 縮めてくれるなよ? 流石の俺もここから縮んだらどうなるか分からんぞ!?」
「大丈夫、発情さんがどれだけ盛っても神様は我関せずですから」
「そーゆー問題じゃねーよ! っていうか俺の名前を酷い間違え方してんじゃねぇ! 俺の名前は『 』だ!」
「おっと、失礼。かみました」
「違うな、わざとだ」
「・・・かみまみた!」
「わざとじゃない!?」
「さて、君のネタ振りに答えた所で」
「どっちかって言うとお前の方からのネタ振りだったよな! 勝手に『俺がやった』みたいな良いからしてんじゃねぇ!」
「じゃあ最後に聞いておこう、君はプレシア・テスタロッサ戦の時、誰のために戦っていたんだい?」
「・・・・・・アリシアと、フェイトとプレシアと、ナノハとユーノと・・・あの事件に関わったみんなのため、裏を返せば自分のためだ」
「うーん。これで他の神々が納得するかな・・・?」
「おい? 納得しなかったらどうなるんだよ」
「・・・またここに呼ぶ事になると思うけど・・・、その時はよろしく!」
「ふざけっ!」
俺の意識はそこで戻った。戻った、というのは現実にであり、今回は落とされたわけでも呑み込まれたわけでもなく、ただ夢から覚めた。と言った方が一番適切である。
「あ、目が覚めたんだ! よかったぁ」
「アリシア。俺どのぐらい寝てたんだ?」
「半日ぐらい? その間に私色々してたんだよ~」
『図書館に行ってきました』
「・・・なんで?」
『新たな料理に挑戦するため、だそうです。それに図書館で出会った車いす少女にアリシアは料理を教わるそうです』
「へぇ・・・。頑張れよ、アリシア」
「うんっ」
主人公の居ない所でA's開始。ちゃんとフラグが立てられるかどうか自分自身不安。