自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
アースラside
「アリシアァアァア!!?」
「直撃・・・・・・」
プレシアが絶叫し、アルフやリニスといった面々も、その結果に頭を押さえた。
だが。
「やった・・・?」
「なのは・・・」
「フェイトちゃん!」
「・・・・・・そのまま、ジッとしててよね」
「「!?」」
煙の中から自立した状態で飛び出したのは五機のホッチキスのような物体。意思を持って飛び回るそれと同様に、煙を切り裂いて質量兵器のような砲身が顔を見せた。
「マズっ」
「押さえて、ファンネル!」
ホッチキスのようなコの字型の機械はフェイトとなのはの周りを飛び、四角錐の形に結界を展開し二人を拘束した。
「何これ!?」
「当てるよ! 撃ち抜け閃光、砕け鉄槌。ポジトローン・・・シューターッ!!」
4.6cmの砲口から放たれた金属光沢を持つ砲弾は、水色の砲撃を連れだってなのはとフェイトを呑み込むと、爆発も起こさずにそのまま突き抜けていった。
そのすぐ後。アリシアの持つライフルから排気音を立てて、空薬莢が排出された。
「なっ・・・、っ君達の武器はどうしてああも質量兵器じみているんだ!」
「その方が敵に恐怖を与えられるからだ。俺達の依頼は大抵魔導師を相手にするが、その時俺達が使っていて相手が一番怖いと思うのはなんだと思う?」
「やはりデバイスなのでは?」
「そうだな。杖や銃。多くのデバイスが生み出され今じゃ魔法世界は様々なモノがデバイスとして確立されている。だが、俺達のデバイスが必要以上の硬度を持っている事も、バリアジャケットが私服じみているのも。そしてその全てが必要以上に魔力を外に見せない事にもちゃんと意味がある」
「それが、質量兵器となんの関連性があるんだ? 魔力の適性がないようにも見えるが?」
「初めはそう思うだろうな。だが、俺達の魔力弾はしっかりと銃弾の形をしているんだ。ロマンだから、と言う理由で着けたデバイスの排夾システムも意外と精神的に来ているだろうよ。魔法で動いていない
「それで黒猫が捕らえたという犯罪者達が揃って一部のデバイスに恐怖しているのか」
「恐らくな。怖いんだろうよ。質量兵器が。その一部のデバイスが俺達が植え付けたトラウマのせいで、非殺傷設定なんて優しい物がついていない兵器に見えてるんだろうな」
サーチャーから送られてくる映像に目を向ければ、あれだけ莫大な威力の砲撃を撃っておきながら、全く消費した様子のないアリシアの姿が映っていた。
「流石私の娘だわ! 貴方なんかに渡さないわよ、クロネコ!」
「それはあいつ自身に言ってやってくれ・・・・・・」
「というか、なんなのよあのビーム・・・直系五メートル以上あるでしょ」
「ごんぶとビームはロマンだ」
プレシアの物言いにトレインが呆れたように呟けば、映像の方に変化が現われていた。
「な、のは・・・・・・?」
「へっ・・・へーん・・・。これでもお父さんの弟子なんだから!」
「に、日本刀の小太刀二刀流!? なのはちゃん砲撃主体じゃなかったの!? っていうか砲撃を斬ったの!?」
「魔法適性はね? でも、それ以外が出来ないなんて誰も言ってないよ! あと砲弾は斬ったの」
「・・・・・・確かに。そう、だけど・・・・・・。斬る? 普通・・・」
「それに・・・
(御神流をなのはちゃんは学んでいたって言うの・・・? うわっ戦闘民族高町家ヤバい」
「ヤバいってなに!? 戦闘民族高町家ってなに!? もう怒った! あとでじっくりお話しさせてもらうの!」
そう言って刀を構えるなのは。バリアジャケットも変わっていて、ツインテールもポニーテールに結わえられているし、スカートも太股丈の長さに変わっている。何より一番目立つのが腰に巻かれたベルトで固定されたその小太刀だろう。
なのはは指ぬきグローブをはめたその手で小太刀を二本、抜いた。その刀身は淡く桜色に光っていて、所々に施された金の意匠はレイジングハートを彷彿とさせる。
「永全不動八門一派! 御神真刀流小太刀二刀術、高町なのは! 行きます!」
「型無し無双流何でも有り闘争術、アリシア=ハートネット。行っくよー!」
なのはの二刀“小太刀”と、アリシアの二刀“太刀”がぶつかり、派手な金属音を鳴らす。続けて二度三度と二人の刀が打ち合わされ、一度距離を離した。
「強いね! 何か流派に入っているわけじゃないのに!」
「そうしないと死んじゃってたからね!」
そうして二人はサーチャーの映像から姿を消し、打ち合いを始めた。
「さ、サーチャーで知覚不可の速度って・・・・・・」
「ね、ねぇ。ユーノ君、トレイン君。なのはちゃんの家ってどんな家庭?」
「「戦闘民族」」
ユーノとトレインは声を揃えてそう言った。
「一言で言ってスゴいよ。なのはのお父さんとお兄さんとお姉さん」
「ナノハが名乗っていたように御神流っつー流派の人なんだけどよ。これがスッゲー強ーの」
「・・・そんなに?」
「やろうと思えば魔導師相手に勝てるんじゃねーか?」
「それは言い過ぎ・・・・・・じゃない気がしてきた・・・・・・」
「それよりフェイトは!? フェイトはどうなったんだい?」
「入り込める隙がなくてオロオロしてるよ」
映像の端っこでバルディッシュを持って右へ左へ視線と顔を動かし、アワアワと慌てるフェイトの姿が映っていた。
「あぁ、フェイト可愛いわ! 抱きしめてあげたい! と言うわけで遠距離転移魔法を展開してフェイトを呼び戻すわ」
「もう、勝手にしてくれ」
クロノがポンコツ魔導師に呆れ始めたが、他の面々は映像に映る二人の戦闘に見入っていた。いつまでも続くと思われた戦いは、一発の銃声で一度とまる。
「へぇ・・・魔力弾を刀で斬ったのか・・・。やるね!」
「それより、どういうつもり? 銃を撃つなんて」
「ちょっと待って、まさか真剣勝負だから銃の持ち出し禁止とか言わないよね? 自分が得た武道の範疇に縛られてちゃ駄目じゃん。特に私達の場合、その場の思いつきで何でもやっちゃうと思っておいて!」
アリシアはそう言うと、武装換装しその手に赤い手甲をはめる。その手甲はオレンジ色の炎を煌々と灯していた。
「いっくよー!」
「いいよ。やろう!」
破裂音と同時かき消えたアリシアの姿は、なのはの真後ろに突然現われた。だが、そこはなのはも剣士。勘か、一歩早くその場に斬り込んでいた。
再度破裂音。アリシアの体は遠く離れていた。
「その炎・・・推進力になってるんだね」
「うん。だから飛行魔法より融通が利くよ。自分の飛びたい方向に炎を向ければ一瞬で加速だもん。なのはだって似たような事してるでしょ?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ行くよ! オペレーションX!」
『All right. Master. X BURNER, start firing sequence』
後ろに向けたアリシアの右手から、柔の炎が噴射される。
「炎の逆噴射だと?」
「まさか・・・
「ッ! なのは! 回避するんだ!!」
アースラでその様子を見ていた皆が、その行動に驚愕し意味をくみ取った者は、対する者に言葉を投げかける。
「ううん。私はお父さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんからいっぱいいっぱい教わった事がある。ここで避けちゃったら、私がこの剣技を穢しちゃう」
なのはは言い切ると、その両手に小太刀を構えて深呼吸を始めた。
「まだまだ上に行けるけど・・・今できる最高の技、放って受ける!」
「・・・良い目をしてる」
『Output stable. Ready for shelling 』
「うん、分かった。いっくよー!! X BURNER!!」
アリシアが放った剛の炎の砲撃が、なのはに向けて超高速で向かう。だが、なのはは慌てる事なく刀を握ると、そのまま流れるように構えた。
「御神流奥義之肆・雷徹!」