自由な黒猫魔導師の野良猫生活   作:軍曹(K-6)

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第二話 人生ハードモード

俺は転生して五年、生まれて十年経ったトレインだ。五年間で色々スキルを作ったりしたんだが、

 

現在。目の前で両親が殺されました。殺人現場とか始めてみたわ。いや、逆に殺人現場に居合せてこうやって立っていること自体おかしいんだろう。すっごい軽く言ってるけど、大分焦ってます。なぜ、何故オレは戦闘系スキルを作っておかなかったのか。いらないだろ、動物に好かれるスキルとか。

 

え? いるかもしれない? ないでしょ。じゃあ聞こう。食材の味を変えるスキル。いる? 好き嫌いがなくなる。まぁ、確かに。どこにいても家の位置が分かるスキル。いる? マップマーカーかよ。実用的だね。ドラえもんの秘密道具全部言えるスキル。いる? これに関しては絶対いらないと思う。自慢できる? 勝手にどうぞ。

 

とにもかくにも、両親は変な殺し屋に殺された。たった十年。されど十年。俺は父さんと母さんに愛されて生きてきた。

 

こうやって目の前で銃声を聞いて、部屋に飛び込んで。息絶えた父さんと母さんを見てそれをした奴に感情がわかないわけがない。

 

 

「・・・子どもがいるとは、聞いていなかったな・・・」

 

「あ・・・・・・」

 

 

何? コイツは、子どもがいる家庭の殺しは請け負わないの? 誰だよこの殺し屋に俺の情報伏せてた奴。というか、誰だよ俺の両親にそんな恨み持ってた奴。こいつ殺した後そいつも殺してやる。行き場のない怒りってのは恐ろしいものだぞ。とくに食い物関係な。

 

 

「・・・生きてえか? 小僧・・・・・・。生きるか死ぬか・・・、選ばせてやる」

 

「死んで・・・たまるか・・・! 殺してやる・・・!」

 

「フッ」

 

 

そいつは俺の決意を鼻で笑うと、なんのつもりか小型の銃を俺に渡してきた。本当になんのつもりだよ。もう許せるぞ、おい。

 

 

「お前の銃だ、くれてやる。護身用だが、・・・子供(ガキ)のお前にはちょうどいいだろう」

 

「・・・え?」

 

「お前は生きる事を選んだんだ。なら・・・、それに見合う力をつけなきゃな。小僧・・・・・・、お前に殺し方を教えてやる」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一言で言うなら人生ハードモード。だった。殺意を持ってあいつを殺そうとしても子どもの俺には小型銃の反動でも辛かった。当てようとしてもあたらない。殺そうとしても殺せない。殺されもしなかったがとても辛い。だが、目標のようなものはできた。俺の両親を殺したザギーネという殺し屋。アイツをこの手でぶっ殺すこと。

 

今も奴に踏みつけられている。俺はドMじゃねぇんだよ。女性にすらふまれたくないのに、男にふまれる事に需要なんかあるものか。

 

 

「敵を仕留める際に頭を狙うな。的としては小さく、狙いづらい。狙うなら心臓だ。心臓なら例え外しても他のどこかに当たる。・・・それともっと腕力をつけろ。発砲の反動で負けてるようじゃ話にならねぇ」

 

「・・・・・・・・・。殺して・・・やる」

 

「・・・殺気だけは一人前だな・・・」

 

 

笑いながらアイツは部屋を出て行った。腹が立つ。アイツが両親を殺してから四ヶ月間、俺は奴から銃の使い方を始め、多くの殺人技術を教え込まれていた。

 

 

「117・・・・・・118・・・・・・119・・・・・・・・・」

 

「・・・どうした? 手を休めたらぶっ放すぜ」

 

 

親指一本で腕立て伏せって馬鹿だろ。馬鹿なんだろうな。俺こういうこと無理だから。やってらんねーから。生きるのにここまで力が必要なのかよ! そういや我思うゆえに我ありって言葉があるけどあれは嘘だね。誰かに存在を認知されないと自分の存在の証明になんかならないさ。何が言いたいかって? ザギーネ殺す。

 

 

「・・・・・・飲め。ミルクだ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。いらない」

 

「いいから飲め。うまいし栄養はあるしで損はねぇ。強くなりたきゃ飲むこった」

 

「強く・・・・・・」

 

 

牛乳飲んで強くねぇ・・・、ド○・ファンかな? ドン・○ァンといえばあのパラパラだけど、子どもに踊らせるものじゃないと俺は思う。パラパラといえばの話だけど、コナンが真顔でパラパラを踊るあのオープニング、そんなに面白いのかな。いや、面白いとは思うけど、そんな馬鹿にしたように笑うぐらい面白いのかって話だ。まぁ俺は我関せずだから何も言ってない何も聞いてないで行こう。辛い目に遭ってるし。

 

もちろん生きるための力が筋トレだけで終わるわけも無く、どこにあったのか射撃場のような場所で銃の扱い方も教わった。反動に耐えられるようになっても照準を合わせるのはへたくそで、あたっても的の端にかすったぐらいだった。でも、やっとあたったから喜んだら、喜ぶなと怒られた。解せぬ。

 

そして奴は目の前で的の中心を消し去って見せた。ザギーネは強かった。・・・絶対に的を外さない正確な射撃。それは、俺の狭い世界の中で最高と言っても良いほどの腕だった。

 

 

「・・・よく聞けトレイン。この世界は力が全てだ。強い奴だけが支配する権利を持ち、弱い奴は何されても文句は言えねぇ・・・。誰にも甘えるな。いざって時、本当に頼れるのは自分だけなんだ。俺自身・・・そうして生きてきた」

 

「・・・・・・」

 

 

この時の俺にとってザギーネがこの世界で最強の男だった。

 

来る日も来る日もトレーニングの日々。強くなるために、いつか・・・、ザギーネのように強く・・・。

殺してやりたいと思っていた両親の仇が、いつの間にか俺の目標になっていた

 

 

 

だが、そんなある日。俺が買い物から帰っていると、雨の中口から血を流してザギーネが座り込んでいた。

 

 

「・・・何でだよ。何で、あんたが・・・、血だらけになってんだ・・・?」

 

 

気になった。何で血だらけなのか。あれだけ強かったザギーネがどうして血を吐いているのか。卑怯な手で後ろからやられたのか。色々気になったからそれを聞いた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・。どうやら俺も・・・・・・、力の無い側の人間だったらしいな・・・」

 

「な・・・! なんだよ、それ・・・。ちょっと待てよ!! あんたが死んだら、あんたを目標にしてた俺が馬鹿みてぇじゃねーか!!」

 

 

俺は持っていた傘も袋も投げ捨てて、叫んでいた。強くなるために、最強の男に近づけるようにと思っていた。なのに、何故目の前でザギーネは、自分のことを弱いなんて言っているんだろう。

 

 

「フ・・・・・・・・・。ククク・・・・・・、俺が目標・・・・・・か」

 

 

そう言ったザギーネは笑っていた。何がおかしいんだよ・・・死にそうになってんだぞ・・・? 何が面白いっていうんだよ・・・・・・!

 

 

「俺を超えたいのなら、生きてみろ・・・たった一人で・・・。誰よりも・・・・・・、何よりも強くなって生き抜いて見せろ!! トレイン=ハートネット!!!」

 

 

ザギーネの最期を看取った俺は、悔しくて悔しくて仕方なくて。何が悔しいのかも分からないまま、ただザギーネの拳銃を持って叫びながら銃を連射した。

 

 

 

 

―――そしてそこでようやく思い出した。

 

『これ、()()()()()()()()()()()んじゃね?』

 

元より飼われる気など毛頭ないのだが、それでも俺は強くならなきゃいけない。せめて、ザギーネより強くならなきゃいけない。それが目標にした以上越えなければならない最初の壁だ。

 

その誓いを胸に、俺はとりあえずこの世界。魔法少女リリカルなのはを生きていこうと思う。その為には目をつけられる前に嘱託魔導師になっておかなきゃな。管理局に強制所属させられる前に自ら民間協力者ですと名乗りに行くようなものだ。あれ? 違ったっけ?


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