自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
「嫁ぇえぇえぇえええ!!?」
プレシア・テスタロッサの悲鳴じみた絶叫が部屋に響く。いつかやるとは予想していた事だが、まさか親の前で言い出すとは微塵も思っていなかった。
「おい、アリシア。なにホラ吹いてんだ」
「えー? 未来の事だけど確定事項じゃん?」
「貴方アリシアに何したの!?」
「ヒステリックになるなよ・・・。詳しい説明は抜きにしても、六年前からアリシアと俺は一緒に住んでるんだよ」
「ピチピチの小学五年生です!」
「・・・なるほど。先程虚数空間に流したアリシアが過去の君の元に流れ着いた。そう言いたいんだな?」
「ああ。しっかりした計算の上で導き出された解答だ」
実際、長い年月をかけて導き出した解答なのだから間違っていたら恥ずかしいどころの話ではないので勘弁してほしい。俺としては、隣にアリシアが居るという事だけが唯一成功したかもしれないという希望の光だ。
「・・・少し、質問良いかしら? さっきのアリシアちゃんがそこに居る彼女だとして、もしかして・・・・・・」
「想像の通りだ。アリシアのリンカーコアはジュエルシード二十一個分の機能を備えている。その魔力量、測定装置で計ったら測定不能とでもでる事だろうよ」
「流石私のアリシアね!」
「私はもうお母さんのものじゃないよ? 私はトレインのモノ!」
「グハァッ!! ・・・・・・ッ!!」
アリシアの言葉の前半で吐血したプレシアは、親の敵でも見るような顔で俺を睨んできた。それよりも俺は、ナノハが何故かアリシアに敵意を持って睨んでいるのが気になるが。
さらに何故か、フェイトも同様に。何でだろう。
《少しばかりでも貴方に好意を向けてくれている。そう捉えて良いでしょう》
《え? じゃあなに? 二人はアリシアに嫉妬してるの?》
《ナノハの方はそう見るのが一番正しくて良いでしょうが、フェイトの方はまだなんとも言えませんね。あれだけの言葉にトレインに惚れるとは思えません。ただ、自分達を助けてくれた恩人に、見知らぬ人間が仲睦まじげに居るのが気に食わないとか、そう言った理由・・・あ、これ嫉妬です》
《・・・・・・・・・》
結局その答えに行き着くのであれば、長々とした説明は要らなかったのではないだろうか。なんにせよ俺が『好かれている』というのであれば、今暫くその幸せを享受しようと思う。
「あ、アリシアちゃん。い、一緒に住んでるだけって言ってたっじゃん!」
「そんな事言ってないよ~。そっちの勘違いなんじゃないの?」
「ぐ、ぐぬぬ・・・。アリシアちゃん勝負だよ! 模擬戦やろう!」
「私に勝とうって?」
「アリシアお姉ちゃん。私もやる」
「フェイト?」
「フェイトちゃん?」
「なのはと私。二対一。卑怯って言う?」
「まさか。多対一でも一対一でもお得意様だよ。私はそうして生きてきたからね!」
なんだろう。話がどんどん進んでいく。ついて行けない。まぁ、分かった事はアリシア対フェイト&ナノハペアが戦うって事ぐらいか。
―――海上。
辺りに結界を巡らせた状態で、アリシア達は向かい合っていた。
「フェイトが前攻、なのはちゃんが後攻かな?」
「そうなるね。でも、負けないよ!」
「「「セットアップ!」」」
アースラside
「なんでナノハ達はアリシアと戦いたいっていいだしたんだ? なんかあったのか?」
「気付いてないの・・・?」
「プレシアさんが親の敵のような顔で俺を睨んでいる事以外は。まぁ、俺はアリシアが勝つと信じてますけどね」
「そうなの?」
「あぁ、アリシアはここに居る全員の百倍強ぇ」
「なっ・・・・・・」
「最も、俺はさらにその千倍強ぇけどな」
そんな事を言ったトレインに驚くまもなく、二対一の戦闘は始まった。
「ハァアァア!!」
「得物を振るうのに声はイラナイよ。どこから振るのか相手にバレちゃうから」
バルディッシュを振るうフェイトに教えるように言いながら、アリシアは左手の銃から撃ち出した銃弾でバルディッシュの斬撃を防ぐ。その間も右手の銃でなのはへの牽制を欠かさずに。
「単純な戦闘スキルでもなのは達より上・・・か?」
「当たり前だ。アリシアは無駄な動きを一切しない戦い方を教えてる。大ぶりな一撃も、数メートル下がるバックステップもしない」
「そんなの、ただ危険なだけじゃない・・・・・・」
「だが、ちゃんと鍛えていると近接戦闘主体の相手の攻撃を紙一重でかわし、相手の懐に苦労せずに飛び込める」
「「「!」」」
「遠距離相手なら言うなればスナイパーライフルだ。大量の弾幕を張るのではなく、ここぞという時の一撃を精密に当てる。それが俺とアリシアの戦い方だ」
なのはの魔力弾を受け流したり、銃身で弾いたりしながらアリシアは真剣な顔をしていた。
「それでも・・・押せてる?」
「押せてる? 冗談はやめてくれよ。まだアリシアは
「笑う? 何を言って」
「俺達みたいな人間は、戦いをとことん楽しんでる。生きるために戦っているんだから相手が強ければ強いほど笑えてくる。こいつに勝てば、また今日を生きられるってな」
「追い詰められた時に・・・笑う、だと? そんなもの、相手からしてみれば恐怖の対象だ!」
「ああ。だからこそ俺達みたいな人種は笑う。相手の戦闘能力を削ぐためでもない、勝つためでもない。ただ、目の前の逆境を打ち砕くために笑うんだ」
ザンバーフォームで突っ込んだフェイトは、高速移動で後ろに回った。アリシアは最小限の動きで一度銃を手放した。そして銃が輝いたかと思うと、一瞬にしてフェイトの体は吹き飛ばされていた。
その手に握られていたのは金の意匠が施された、黒光りする両手一対の近接武器。
「トンファー・・・!」
「マルチデバイス・・・!」
「クロノ正解。アリシアの使うフォーチュンドロップはマルチデバイス。本来一つのデバイスでも十全に使いこなすのは難しい。だが、アリシアには使いこなすための魔力と、技術がある」
「ちょ、ちょっと待ってくれる? いくら何でもデバイスの変更速度が速すぎやしないかしら?」
「あぁ、それはフォーチュンドロップが『SISTEMA C.A.I.』を搭載してるからだ」
「システムCAI?」
「Cambio Arma Istantaneo.これはイタリア語で瞬時武装換装を意味する」
「瞬時武装換装システム・・・」
「戦況戦術に会わせて武装を換装し瞬時に対応する。瞬間的に切り替わる敵の攻撃に相手はついて来れなくなる。フェイト、今のは相当食らったはずだぜ」
アリシアは吹き飛んだフェイトの方を暫く見ていたが、すぐに気付いてなのはの方を向いた。彼女は今まさに砲撃魔法を放とうとしている所だった。
「
慌てたようにアリシアは言う。ただ直後にはスターライトブレイカーがアリシアの居た所に爆煙を起こした。