自由な黒猫魔導師の野良猫生活   作:軍曹(K-6)

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     最高に最高な幸福な結末

アースラの司令室のような場所に転移した俺は、バインドと現実の縄で二重巻きにしたプレシアを少し乱暴に床に転がした。

 

 

「ぶ、黒猫! お前は・・・自分が何をしたのか分かっているのか!?」

 

「俺は依頼をこなしただけだ。それについてとやかく言われる理由はない」

 

「あ、あのっ・・・。わ、私とお母さんを助けるって・・・・・・誰から依頼を・・・」

 

「ん? あー・・・お前達の事を大切に思っている奴からだ。それと安心しろよ、フェイト・テスタロッサ。お前の母さんはお前の事を大事に想っている」

 

「嘘だね! あたいは信じないよ!」

 

「・・・お母さん?」

 

「そいつの言葉を鵜呑みにしたいなら、しなさい」

 

「証拠はあるぜ? フェイト、お前に魔法教育をしてくれたヒトは“リニス”って言うんじゃねーか?」

 

「え? う、うん。何で知って・・・・・・」

 

「月村スズカ。ナノハの友達の家は猫屋敷だった。そこの中に魔力を持った猫が居たからな、ウチのデバイスが念話で話しかけたら全部話してくれたよ。『私が居なくなったら魔力供給が止まると思うから、フェイトを探して使い魔の契約をし、もう一度育ててやってくれ』と言われていた事もな」

 

「お、母さん・・・・・・」

 

「だ、誰がそんな人形の事構うもんですか」

 

「安心してくださいフェイト。基本プレシアはポンコツです。その性格だって半分以上演技ですから。ジュエルシード事件を起こす前に日朝のテレビで勉強していたものです」

 

「「リニス!」」

 

「ッ! リニス!」

 

 

俺の後ろの扉からフェイト達にとって育ての親のような人物、リニスが顔を出す。感動の再会を邪魔s(ry

 

 

「・・・本当、余計な事してくれたわね・・・!」

 

「だから何度も言っているだろう。俺はただ依頼をこなしているだけだ。『あの頃に戻りたい(ステータスリターン)』」

 

 

プレシアに向けてスキルを発動させ、二十六年前。事故に巻き込まれる前の肉体に戻した。

 

 

「ッ!? ・・・これは・・・」

 

「魔力汚染。それがアンタの不治の病だったよな。俺はスキル使いでな。事故に遭う前の肉体にアンタを戻した。容姿とかも戻るはずだったんだが・・・アンタ、年取ってないんだな」

 

「・・・そう。私は・・・。・・・フェイト」

 

「ッ・・・。何・・・ですか?」

 

「ごめんなさい。本当に、私は長くなかったの・・・。せめて、私との別れが辛くないようにと辛く当たってしまってごめんなさい」

 

 

バリアジャケットを解いたプレシアはどこにでも居るような普通の母親の顔をしていた。声も柔らかく、娘を思う親の声だ。懸念事項がなくなり、フェイトに対しての愛情があふれ出したといった方が良いだろう。

 

 

「お母さん」

 

「ママでも良いのよ?」

 

「プレシア・・・・・・」

 

 

プレシアの暴走にリニスが頭を押さえている。苦労していたんですね、貴女も。俺は別に苦労なんかしてないけど、なぜか語感が良いからよく使う『あなたも』って言葉。

 

 

「お母さん・・・。もう、私はぶたれませんか・・・? 悪い子じゃありませんか・・・? 私は「おいコラ」?」

 

「プレシア。お前、自分の娘にそんな事していたのか?」

 

「うっ。いや、だって・・・あの子の幸せを私は願って」

 

「幸せ!? 自分の母親に虐待された上で、愛されずに捨てられる事がか?」

 

「だって、そうしないといけなかったのよ・・・・・・」

 

 

ああ、こいつも不器用だったんだな。なんて思うわけがない、思ってなるものか。

きっとプレシアは耐えられなくなったんだ。どれだけ探しても見つからないみんなで幸せになる方法にすがる事に。

 

探し続けて、それでも叶わなかった。叶える事が出来なかった。だからこそ、敵に回った。愛娘(フェイト)自分(プレシア)に関する思い出を嫌なものに塗りつぶす事で、フェイトとの別れを虐待からの解放(少しでも軽いもの)にするために。

 

―――だが。

そもそも、コイツがもう少し強ければ全てが丸く収まった話なのだ。失う痛みに耐えるだけの強さがあれば良いだけの話だ。フェイトがそんなに弱い子じゃないと信じてやれれば良かったんだ。

 

フェイトに『犯罪者に良いように使われた道具』という別の地獄を見せると言う事が一番正しい選択だったなんて認めない、認めてたまるかこのポンコツ!

 

 

「おい、ポンコツ」

 

「ッ!」

 

「俺から言えるのはただ一つだ。今からでも遅くない、フェイトに娘として接してやれ。最初からそうしたかったのかもしれないが、アンタは間違った選択を取っちまってる。だったら、残りの人生全てかけて、愛してやるのが筋って奴だ」

 

「・・・・・・そう、ね。フェイト。今更、どれだけ虫がいいんだ。って話かもしれないけど、貴方が私を嫌いって言うんならそれでもいいから。これからも、貴方のお母さんでいさせてくれる?」

 

「ッ・・・ッ! おかあさ・・・っ。お母さんッ!!」

 

 

どこかで見たような光景だなぁ・・・。あ、さっきの俺だわ。アリシアに泣きつかれてた俺だわ。

 

アルフを初めとして、ナノハ、フェイト、リニス、プレシア以外のメンバーと談笑をして感動の再会を邪魔しないように気を付けていたら、いつの間にかフェイトが近くまで来ていた。

 

 

「あの、トレインさん。その、ありがとうございました!」

 

「お礼を言われるほどの事か?」

 

「はい。お母さんが何故かポンコツになっちゃいましたけど・・・。それでも、私やアルフがこんなキモチになれたのは、トレインさんのお力添え? が会ったからだと思うんです」

 

 

お母さんがポンコツ。の部分で彼女を見れば『フェイト~』なんて良いながら小さく手を振っている。母親というのは皆、ああなんだろうか。

 

 

「本当に、ありがとうございます」

 

「気にすんな。

「「「「ッ!」」」」

 

「お前の場合()()()()と一緒で、自分の中に溜め込んでしまう傾向が強そうだからな。何かあったら近くの人間を頼れ。信頼出来る誰かを絶対頼れ。ポンコツになった母親でも良い。ずっと傍にいてくれた使い魔でも良い。育ててくれた恩人でも良い。何度も戦った戦友(とも)でもいい。誰でも良いから頼れ。頼られない事ほど、お前の事を大事に思う人にとって辛い事はない」

 

「あぅ・・・。うぅ・・・・・・」

 

 

何故泣く!? やーみーてー! と、次の瞬間。

 

扉を背にしていた俺の後頭部に、金属製の何かが押しつけられた。

 

 

「ッ!」

 

「ねぇ、トレイン? 私は確かに『二人を助けて』とは言ったけど、『泣かせて』なんて一言も言ってないんだけど?」

 

 

低い、本当に低い声だった。俺の体のせいで、室内にいる人間からは俺に銃を突きつける少女の姿は見えていない。だが、俺に向けられる怒気がもれて伝わるのだろう。クロノやアルフといったそういうのに鋭い者は思わずといった風に構えていた。

 

 

「ねぇ? トレイン?」

 

「あの・・・さ。その引き金にかけた指をどけてくれたりは・・・」

 

 

言いつつ俺はムダな抵抗と分かっているため、前に倒れる事を考慮してフェイトを退かしていく。

 

 

「や☆だ!」

 

 

銃声が響いた。空薬莢が地面に落ちるより早く、俺はその場に蹲っていた。後頭部が痛い。恐らくゴム弾だろう。もの凄く痛かった。

 

 

「「「「アリシア!!!?」」」」

 

「皆さんどうもこんにちは。プレシア・テスタロッサの娘にして、フェイト・テスタロッサの姉、そしてトレイン=ハートネットの()。アリシア=ハートネットです♡」




アリシアの爆弾発言。


辺り一帯は焼け野原になった!

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