自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
アースラside
フェイト達はアースラの管制室にいた。武装隊が、プレシア・テスタロッサのもとに向かう様子がそこには写されていた。
「母親が逮捕される姿を見るのはつらいでしょう・・・」
リンディは悲痛な面持ちフェイトを見る。なのはもフェイトを慰めるようにそばを離れず手を握っていた。
そして、武装局員たちはついにプレシア・テスタロッサのもとにたどりついていた。
『プレシア・テスタロッサ、時空管理法違反及び管理局巡航艦攻撃の容疑で逮捕する』
プレシアはつまらなさそうに局員を見ながら玉座に腰かけていて、これでもかと言ったらスボス臭が漂っている。
『フッ』
さらにプレシアは局員達を嘲笑するように見ていた。局員達はそんなプレシアの周りを取り囲む。
その時、ひとりの局員が何かを発見した。
『こっちに何かがあるぞ!!!』
『!?』
その一言にプレシアは反応した。
局員達がそこに入ると、奥に生体ポットを思わしきものがあった。その様子はサーチャーからスクリーン越しにアースラに送られてそりフェイト達の眼にも映っている。そこに映し出されていたのはフェイトと瓜二つの少女がポットの中に浮かんでいる姿だった。
「え!? なんで?」
なのはは驚きながらフェイトのほうをみた。そのフェイトも動揺で固まっていた。
局員達がそれに近寄ろうとするとプレシアの怒号が飛び、一番近くにいた局員を吹き飛ばした。
『私のアリシアに・・・近寄らないで!!!』
その瞬間プレシアの目つきが変わり武装隊員を睨みつける。局員達は隊列を組み、もっている杖を構えた。
『撃てぇーーーーー!!!』
号令と共にいっせいに魔法を打ち込んだが、プレシアが張った見えないバリアに防がれ、本人に傷一つつける事はできなかった。
『うるさいわね・・・』
プレシアが杖を掲げたと思ッ立木の瞬間には、武装隊の頭上から紫電が襲いかかった。
「あぶない!! 防いで!!!」
リンディが叫ぶが、もちろん間に合わない。
雷が止むとそこに立っているのはプレシアだけになっていた。
「急いで、局員の転送を!!!」
リンディがあわてて指示を出し、悔しそうに唇をかむ。仮にも相手は大魔導士と言われた女性。いくら優秀武装局員といえど目の前の相手をするには荷が重すぎた。
プレシアはポット見ながらひとり呟いた。
『もう駄目ね、時間がないわ。十個にも満たないロストロギアではアルハザードに辿りつけるかどうかわからないけど・・・』
そこで一息つきプレシアはスクリーン越しにこちらに話しかけるように言った。
『すべて終わらせるわ。アリシアを亡くしてからの暗鬱な時間も、アリシアの代わりに作った人形を娘扱いするのも』
「えっ!?」
フェイトはその一言に目を見開いた。
『フェイト、見ているわね?』
「か、母さん?」
「艦長、サーチャーが乗っ取られました」
アースラから、映像のコントロールが利かなくなった。恐らく、いや。確実にプレシアの仕業だろう。フェイトは助けを求めるようにそのスクリーンを見る。
しかし、それは叶わなかった。
『聞いていてフェイト? あなたのことよ?』
「!?」
フェイトは震えるように反応した。そんな事は知らないと言った風に、プレシアは冷酷に告げる。
『せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない私の・・・お人形』
エイミィは顔をうつむき加減にしながら口を開く。
「プレシアは、最初の事件の時に娘の・・・アリシア・テスタロッサを亡くしているの。そして彼女が最後に行っていた研究が・・・・・・、使い魔とは違う使い魔を超える人造生命の研究」
「「「えっ!?」」」
「そして死者蘇生の秘術。F.A.T.Eっていう名前は当時彼女の研究につけられた開発コードなの」
『よく調べたわね。そうよ、その通り』
プレシアはポットを愛おしそうになでながら答えた。
『でも、ちっともうまくいかなかった。作り物の命は失ったものの代わりにはならないわ』
そして憎たらしいといわんばかりの視線をスクリーンに送りながら言った。
『アリシアはもっと優しく笑ってくれた、アリシアはいつも私に優しかった、アリシアは・・・』
「やめて・・・・・・」
なのはは震える声で呟く。しかしプレシアの言葉が止まることはなかった。
『フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ。せっかくのアリシアの記憶もあなたじゃだめだった』
「やめて、やめてよ!!」
『あなたは私がアリシアを蘇らせる間の、慰めのお人形・・・」
「もうやめてっ!!!」
なのはが必死に叫ぶ。フェイトは体を震わせながら、顔をうつむせながら聞いていた。
(私は・・・私は・・・)
『フェイト最後にいいことを聞かせてあげるわ。私はあなたを作りだしてからこれまでずっとあなたのこと・・・・・・大っ嫌いっだったのよ!!!』
その言葉の次の瞬間、サーチャーに光弾が映りプレシアのバリアに触れた瞬間爆発した。
『―――訂正しろ。どんな形であれ自分の娘を人形扱いして、あまつさえ大嫌いだと? ふざけんじゃねぇぞ』
『なっ・・・んなのよ、アンタは!』
『俺が名乗ったわけじゃねぇが、
「ブッ・・・ブラックキャットだと!? あの伝説の傭兵が何故こんな所へ!」
「だ、誰ですか・・・?」
「彼自身が名乗ったわけじゃないが、『犯罪者にとっての不吉を届ける人間』。デバイスの側面にも書かれたXIIIの文字、そしてスズのついたチョーカー。ついた異名が『不吉を届ける黒き猫』。管理局だけではなく何百という依頼をこなしてきた凄腕の傭兵だ」
「トレインさん・・・?」
「知り合いなの? なのはちゃん」
「あ、はい。と言っても名前ぐらいなものですけど・・・・・・」
時の庭園side
トレインとプレシアは祭壇の前で向かい合っていた。
「聞いた事はあるわよ、クロネコさん。だけど、何故貴方がここに居るのかしら?」
「頼まれたんだ。依頼を受けたんだよ『プレシアと、フェイトを助けてくれってな』」
「あら、いやに具体的な依頼内容じゃない。依頼主は? あの白服の女の子かしら?」
「依頼主は明かさないって言うのが傭兵としての暗黙の了解って奴だ」
「そう。じゃあ助けられるものなら助けてみなさいよ!」
プレシアが放つ魔力弾を最小限の動きでかわしながらトレインは魔力弾を撃つ。
(あれが黒猫の使うハーディス・・・。彼の魔力を自在に変換させて撃ち出す銃とは聞いてはいたけど・・・。この汎用性は冗談でしょう!?)
「悪いが、アンタの計画は阻止させてもらう。俺が届けるアンタにとっての不吉は、受け取り拒否は出来ねーんだ」
トレインが地面に撃った弾が、時の庭園のワンフロアを埋め尽くす光と煙を撒き散らした。
そして、一瞬で後ろに回ったトレインは、抵抗させるヒマも与えずその体にゼロ距離『
「ガッ・・・あぁ・・・・・・」
「暫く大人しくしてな。スケジュールがつまってるんだ」
そう言うとトレインは左手にはめた時計を見ながら、右手で懐を探り青く輝く菱形の宝石を取り出した。
「ジュエル・・・シード・・・・・・」
「集え集え、宝珠の種。集って合わさり、一つとなれ」
トレインがそう言うと、ジュエルシードが浮かび上がり、規則的に発光し始めた。規則的な発光は、そこら中のジュエルシードで共鳴し。ジュエルシードが自らの意志で、トレインの前に浮かぶ一個の前に集まってきた。
『ジュエルシードが・・・集まった・・・!』
『二十一個のジュエルシード・・・。何をする気だ黒猫!』
「依頼をこなすだけだ」
トレインの前に浮かんでいたジュエルシードは高速で回転し始める。ある程度回転したら大きく膨らんだ後、
『『『「?!」』』』
『り、ンカーコア・・・?』
トレインはそれを指先でつまむと、アリシアの入ったポッドの方にダーツのように軽く投擲する。
かなりの速度でアリシアの体に迫るそれを横目に、トレインはハーディスⅡの充電を完了した。
「行くぜ。ハーディス最大出力、
轟音を奏でて撃ち出されたそれは、空間を裂いて次元断層。虚数空間への入り口を作るには十分の威力だった。
『That preparation is over, Master』
「了解」
『Dress up』
トレインの左手の時計デバイスがそう言うと、胸の中に
『Time limit is approaching, please hurry Master』
「マジかッ!」
慌てた様子でテキパキとアリシアの体を抱き起こしたトレインは、何かを小さく呟いた後、彼女の体を自ら開けた虚数空間に、優しく、寝かせるように入れた。
「どうだっ!?」
『Perfect』
「よし」
「な、にをしてくれたのっ!!」
「ほら、あんたの娘が待ってるあの船に行くぞ」
「娘じゃない! あの子は娘なんかじゃ」
聞く耳を持たなかったトレインはそのまま転移魔法でアースラへと転移した。