自由な黒猫魔導師の野良猫生活   作:軍曹(K-6)

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第十五話 アリシアのワガママ

“魔法”と聞いて人は何を思い浮かべるだろう。なんでも叶うチカラかもしれないし、RPGのような【攻撃・防御・支援】と三拍子揃ったものかもしれない。

 

だが、奇しくもこの世界にはびこる“魔法”は、そんな夢物語では決してなく、出来る事は限られているし、適正によって使えない人も居る。誰でも使える夢みたいなチカラでは決してない事を念頭に置いておいてほしい。

 

長々と俺の見解を語ってきたが、先日その才能が大きく開花していたために、魔法の道へと踏み込んだ少女。高町なのはと、親の愛を十分に受けられずに知らず知らずのうちに、従順な人形となってしまっていた少女。フェイト・テスタロッサはジュエルシードを順調に集めていた。

もちろん対立する事も多く良くぶつかっていたが、今のところフェイトの方に軍配は上がっている。

 

え? 何でそんな他人事なんだって? だって俺達は傭兵としての仕事が多くあるからそれをこなさなきゃ生活出来ないからだよ。そういう生き方なんだよ、俺とアリシアがしているのは。

 

ダラダラと別の事に顔を突っ込んでいられない状況にある。二人してコピー体を作る事は可能だが、二人して働かざる者食うべからず精神を発揮して、働いていたからだよ。

 

だけど、まぁ、案の定バレたわけで。

 

「トレイン! どーして黙ってたの!?」

 

「黙ってたわけじゃねーよ。会えないかもしれない相手の事を話して悲しませたりしたらどうするんだよ。プレシアは管理局を自己の責任を取らされて、追放されてたんだぞ!?」

 

 

のんきに一人で話している場合ではなかったりする。アリシアにフェイトの事がバレたのだ。テスタロッサという名前から、勘が鋭いのかそれともただの希望なのか、あれは私の妹だと言い出した。

 

そしていつの間にか(俺がしておけと言っておいたんだが)構築していた独自のネットワークを駆使して、現在ジュエルシードが地球の海鳴市に散らばる事になった原因が、次元艇を襲った傀儡兵だと知り、何をどうやったかプレシア・テスタロッサに辿り着いたのだ。

 

だが、何となくそこまで調べ上げた原因は突き止めてある。

 

(・・・・・・・・・)スイッ

 

目をそらすんじゃない姫っち。

 

 

「・・・確かに、確かにそうだけど・・・・・・。でも、フェイトも、お母さんも・・・結局は死んじゃってる私のために悪いことしてるんだよね・・・・・・」

 

「そう、だな・・・・・・」

 

 

もしかしたらプレシアは長くない自分のためにフェイトを救おうとしている優しい親なのかもしれない。そう言えば一番驚いた事を説明しておくと、月村邸(猫屋敷)にリニスが居た事だ。

 

一年ほど前のあの日、異様な魔力反応を感知した俺は、そこにサーチャーを残して常に見張っていた。

するとあろうことかそこには魔力を持つ山猫が居たのだ。サーチャー越しに検査してリニスだと分かった時は何故生きている!? とは思ったものだ。うん、懐かしい

 

推測の域を出ないが、プレシアは娘思いの親なのかもしれない。何が起こっているかなんて知った事じゃない。俺達には関係がない事だ。

 

 

 

 

 

―――そう、思っていた。

 

 

「・・・・・・トレイン」

 

「なんだ?」

 

 

アリシアの声は震えていた。拳を握って、何かを堪えるように必死で絞り出したような声だった。

 

 

「トレインは・・・“黒猫”だよね」

 

「ん?」

 

「依頼を受けたら必ず遂行する、次元一の傭兵。ブラックキャットだよね!?」

 

「当たり前だ。そんな事ぐらい、アリシアが一番知ってんじゃないのか?」

 

「だったら―――――」

 

 

 

 

 

「―――――だったら、私のお母さんと妹を助けて・・・・・・。みんなが笑顔になれる物語を見せてよ。誰もが笑って、誰もが望む、最っ高に最っ高な幸福な結末(ハッピーエンド)ってやつを!! 手を伸ばして掴んでよ! 私を・・・お母さんに・・・会わせてよ・・・・・・トレインッ!」

 

 

アリシアの目からは大粒の涙が流れ落ちていた。

 

 

 

「・・・・・・ふぅ。やっと、泣きやがったな。大馬鹿者・・・」

 

「ふぇ?」

 

「初めて会った時からずっとずっと母親に会いたいのを我慢しやがって。俺はアリシアがその我が儘言ってくるの待ってたんだぜ? ったく、六年近く待たせやがって、良いぜ。その依頼。受けてやる。お前の母さんと妹、助けてやるよ」

 

 

「・・・・・・。・・・、・・・・・・。と、とれ・・・トレイ・・・・・・トレインッ!」

 

 

アリシアは大粒の涙を流して、嗚咽を漏らしながら俺の腕の中に収まっていた。俺はただ、アリシアが泣き止むまで抱きしめて、頭をなでてやる事しか出来なかった。そんなに嬉しかったのだろうか。そもそも甘えてほしかっただけなんだけどな。ナノハもアリシアもすぐに大人になろうとする。親って言うのは子どもに甘えてほしいものなんだよ。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「寝やがった・・・。コイツ寝やがった・・・!」

 

 

規則正しい呼吸音が俺の胸の辺りから聞こえてくる。本当にやめてほしい。アリシアは自分が美少女であるという自覚を持ってほしい。俺が後七歳ぐらい若かったら小学生とか関係なく告白して振られるまである。あ、フラれちゃうんだ。

 

 

「さて、と。今の時期的に、何をやってる頃だっけ?」

 

『温泉旅行ではないでしょうか?』

 

「そうだっけ?」

 

『少し探ってきます』

 

「いってらー」

 

 

 

―――数分後―――

 

 

 

『只今戻りました』

 

「食らえ、タル爆弾! うしっ。あ、お帰り」

 

『・・・・・・ナニしてるんですか、トレイン』

 

「え? モン○ン」

 

『・・・・・・』

 

「? ・・・ギャーッ?! 俺のセーブデータがっ! 魂込めてた集めた装備がっ!」

 

『トレインのバカ』

 

「・・・・・・・・・。・・・で? 収穫はあった?」

 

『もちろんです。大アリでした。彼女達は温泉旅行中です』

 

「へ?」

 

『つまるところ今夜』

 

「ジュエルシードが発動する・・・。と」

 

『介入するんですか?』

 

「少し捻って。な」

 

『・・・・・・?』


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