自由な黒猫魔導師の野良猫生活 作:軍曹(K-6)
すずかside
目の前で起きた事に処理が追い付かない。男の人と一緒に駆けつけてくれたと思っていた金髪の私達より年上の女の子。その子が今、男の人の左腕をさっき誘拐犯を殴りつけたトンファーで吹き飛ばしちゃった。
「は・・・ハハ・・・何だよ、それ。何なんだオマエェエェエェエェ!!!」
誘拐犯のその声に、私の意識は現実に引き戻された。
「え・・・?」
男の人の左腕は
「・・・生えた、のよ・・・」
「アリサちゃん・・・?」
「生えたのよ。私達の目の前で。一瞬だった。吹き出る血よりも速く再生したの」
「え・・・。嘘・・・・・・」
再生速度がそんなに速い吸血鬼なんて・・・聞いた事がない。私達夜の一族でも消し飛んだ腕の再生なんて出来るかどうか分からないのに・・・。
「お、お前は・・・何なんだよっ!」
「さっきお前が言ったじゃないか。化け物だよ」
トレインside
吸血鬼の魔眼を使用して、主犯格の男を気絶させる。『
もう吸血鬼ボディは必要ないため、『
「・・・アリシア。どうだ?」
「演出バッチリ! 二人も解放したし・・・、あとどうしよ?」
「とりあえずあの二人の家族に引き渡すか・・・」
「うん。そうだね」
彼女達がそれぞれの保護者に連絡を入れ、連絡が入った保護者達は常人では出しえない速度で駆けつけた。スキール音とか聞こえたぞ。こんなところで湾岸とか頭文字とかしてないだろうな、お金持ち共。
感動の再会を邪魔するような無粋なまねはしない主義なので、そのまま立ち去ろうと思ったんだが。
「ッ! 貴様! 何者だ!」
高町兄が殺気を出しながら俺とアリシアに刀を向ける。
「落ち着け。俺達はその子らを助けた側だ」
「心配で過敏になっていたとしてもいきなりは駄目だと思うなー」
「す、すまない」
「二人が無事で本当に良かった。二人を助けてくれて本当にありがとう」
「気にすんなっ」
「お姉ちゃん・・・・・・実は」
月村すずかが月村姉に耳打ちをする。おそらく夜の一族、それも俺の再生能力についての話だろうな。
「ッ!? ・・・・・・そう、分かったわ。恭也、それと士郎さん。ちょっと良いかしら?」
《・・・トレイン。どうするの?》
《正直に話してそれで終わりさ》
《うん。それが最善だね》
「悪いんだけど、アリサちゃんと・・・」
「トレインだ。トレイン=ハートネット」
「アリシア=ハートネットだよ~」
「・・・違うだろ!?」
「違わないもん。将来的にはそうなるんだもん」
「・・・(呆)」
「ちょっと待ってくれ。トレインに、アリシアだって?」
「何かあったの?」
「いや、今はいい」
「いいの? アリサちゃんとトレインさん、アリシアさんには私達の家に来て話を聞いて貰いたいの。私達、夜の一族について・・・・・・」
「分かりました」
「トレインさん達もそれでいいかしら?」
「おう」
「ワカリマシタ(^q^)」
ツッコまないからなアリシア。見るな、そんな物欲しそうな目で見るな。
―――月村邸。
「―――ということなのよ」
「な、なんだってー!」
小声で驚くな、小声で。しかもそれ思いっきりネタじゃねェか。
「それで私達、夜の一族にはある決まりがあるの」
「決まりですか?」
「ええ、私達一族の秘密を知ってしまった人には、私達と契約を交わし盟友として共に歩むか、私達の事を全て忘れるかを選択してもらわなくてはならないの」
ふむ。まあ妥当だろう。吸血鬼なんていう存在が世間に公表されるのはやはりマズい。その判断は正しいな。
「―――それで、お二人はどうします?」
「盟友になるのってよ、素性を全部明かさなきゃならねーのか?」
「大事な秘密一つで勘弁してほしいかな-」
「・・・本当に大切な秘密なんですね?」
「あぁ。・・・俺達には子どもには聞かせられねー過去もあるからよ」
「あなた達の名前は本名?」
「正式な戸籍にも乗ってるよ」
「・・・・・・・・・分かったわ。その代わり本当に大切な秘密をバラしてくれる事を約束して」
「ああ」
「イイレス(^q^)」
実はこの話す秘密はアリシアと俺とで話し合って決めてある。
「じゃあ、まず俺、俺は君達と同じように普通の人間じゃない」
「ッ! ・・・というと?」
「俺は吸血鬼と人間の中間点を生きている」
「「「「は?」」」」
「そう疑うのは分かっているからな。もちろん本質的には人間だぜ。でも大きな怪我をした時には夜を生きる
「アリサは一度見ているはずよ、トレインの吸血鬼の再生能力」
「うん。見たわ。吹き飛んだ右腕が一瞬にして再生したの」
「そんな・・・・・・ことが・・・・・・」
「次は私ね! 私は人の願いを叶える事が出来ます!」
「「「「え?」」」」
「・・・って言っても干渉するぐらい。願いを叶えるためのきっかけを与える程度の事しか出来ないけどね」
「これで、分かってもらえたかな?」
「・・・ええ。とても大切な秘密を教えてくれてありがとう」
「別に、かまわねーよ。あ、それと俺達は所謂傭兵のような仕事もしててな。何かあったら連絡してくるといいぜ」
俺は服の中に手を入れたように見せて、そこに出現させた“無限倉庫”のアクセス空間から端末を取り出す。
「俺達に直通の専用端末だ。人数分あるから何かあったら仕事、引き受けるぜ」
「もちろん依頼料はもらうけどね」
「ありがとう。有効的に使わせてもらうわ」
「では、話は以上かな?」
「私から、いいだろうか。ちょっとトレイン君達に、聞きたい事があってね」
「なんすか?」
「君達はなのはと言う女の子に会ったことはないかい?」
「なのはちゃん? あぁ、士郎さんってなのはちゃんのお父さんなんですか?」
「ああ。なのはが勇気をもらったと喜んでいた。お礼を言わせてもらいたい」
「言ったでしょう? こいつの力は夢を叶えるキッカケを与えるだけ、その結果はあんたらが頑張った結果だぜ」
「じゃあ、もう一声。あの子の夢を叶えるために会ってやってくれないか?」
「・・・大体予想はつくが、いいのか? アンタとは一度武器を交えたんだぜ?」
「信頼に値する。と今回の事で良く分かってるつもりだ。翠屋も明日、臨時休業にする。それでどうだろう」
「断る理由をなくすのが上手いな」
了承したらなぜかアリサ、すずかペアも翠屋に来る事になった。
「準備が出来たら読んでくれ。普通に行くからよ」
「シュークリーム楽しみにしてまーっす!」
俺はアリシアを抱えたまま、霧になって消えた。
「なぁ、吸血鬼演出は必要だったのか?」
「格好つけて帰らなきゃ! 釣り合った中二病ってのはしこたま格好いいんだよ!」
「それには激しく同意する」