その胸に還ろう   作:キューマル式

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承 絶望、出現ス
秘匿艦隊E・D・F


 

「……私、夢でも見てるのかしらね?」

 

 叢雲は未だに目の前の状況が信じられなかった。

 

 彼女はごくごく当然のように大した戦果は期待されず、ごくごく当然のように損耗していく普通の駆逐艦娘だ。そしてごくごく自然な流れで艦隊撤退のための捨て石を命じられ、ごくごく当然のように沈む……はずだった。

 しかし、そんな死を待つばかりの叢雲を助けた艦隊があった。

 見たことのない新兵器を使い、瞬く間に深海棲艦隊を沈めたその艦隊はボロボロの叢雲のところにやってくると手を差し伸べる。

 

「あなたには2つの選択肢があります。

 このまますべてを忘れて自分の基地に戻るか、それとも今までのすべてを捨てて私たちと来るか……どちらにしますか?」

 

 そう問われ叢雲はしばし呆然とするも、ゆっくりと頷く。

 

「戦友はみんな沈んだ。

 どうせ死んだことになってる駆逐艦娘1人が今さら戻ったところで、弾除けにされるのがせいぜいよ。

 なら……そっちについていくわ」

 

「結構。

 私たち『秘匿艦隊E・D・F』はあなたを歓迎します」

 

 そして差し出された手を叢雲は取り、今に至る。

 今は損傷によりほとんど動けなくなった叢雲を曳航しながら、彼女らの基地とやらに向かっている最中だ。

 すると叢雲に手を差し伸べ、今も隣を進んでいる駆逐艦娘『不知火』が言う。

 

「まだ混乱していますか?」

 

「ええ。

 これから死ぬんだって覚悟決めたら謎の艦隊に助けられた、なんて安っぽい漫画の展開よね。

 混乱するなってほうが無理な話よ」

 

「道理ですね。

 不知火も最初はそうでしたから……ですが、これからあなたもその謎の艦隊の一員です」

 

「そうね」

 

 言われて叢雲は艦隊のメンバーを見渡す。

 旗艦は戦艦『ウォースパイト』、空母『グラーフ・ツェッペリン』に水母『コマンダン・テスト』、重巡『ポーラ』に駆逐艦『不知火』に『長月』という構成である。

 聞けばこの謎の艦隊は叢雲と同じように捨て石にされたり部隊が全滅した、『帰る場所のない艦娘の集まり』であるという。ならばよく捨て石にされると言われる『亡命外国人艦娘』の割合が多いのも納得だ。

 しかし全員の艤装は見たこともない改造が施されており、叢雲の記憶にあるものとは全く違っている。先ほど自分を助けた時の新兵器といい、考えれば考えるだけ謎だらけだ。

 そう思いながらもどうせすぐに自分もその一員になるんだし、その辺りも分かるだろうと思考を投げ出す。すると、隣の不知火が言った。

 

「見えてきましたよ」

 

 視線を巡らすと、そこには1つの島が見えている。そして不知火は大仰に手を広げながら言った。

 

「ようこそ。 私たちの家、『ラゴス島秘密基地』へ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「何なの、ここ……?」

 

 叢雲は今日何度目か分からない呟きをもらす。それほどまでにここは驚きに満ちていた。

 

 『ラゴス島秘密基地』へとやってきた叢雲は、まずはそのドッグの設備で目を丸くする。どう見ても一般的な鎮守府や基地とは比べ物にならない設備の良さだ。見たこともない工作機械も多く、その高度な技術を連想させる。

 その後入港すると、叢雲は高速修復剤ですぐに傷を治療してもらった。高速修復剤は貴重で、基本的に戦艦や空母といった大型艦専用とも言っていいものだ。叢雲のような駆逐艦はよくて入渠、悪ければ損傷したまま次の作戦に駆り出されることなど珍しくもない話なのである。

 その治療の間にこの基地の司令官らしき人物と内線で連絡をとっていた不知火の話では、司令官への挨拶はあとでまずは施設の見学をという話になったらしい。不知火の案内の元で施設を回っているわけだが……どこもかしこも驚きしかない。

 

 味の薄い栄養ブロックではない、美味しい料理を出す食堂……ありえない。ちなみに今日の昼食はトンテキ定食だった。

 清潔でのびのびと入れる入浴施設……ありえない。

 自動採掘と精製プラントによる戦略物資の生産……ありえない。

 農園と食料プラントによる完全な食料の自給自足体制……ありえない。

 

 もうどこもかしこもあり得ないだらけでいい加減叢雲は驚き疲れていた。

 

「もうホント何なの、ここ?

 実は私、もう死んでて天国にいるとか?」

 

「この世の地獄、戦場を渡り歩く私たち艦娘が、死んだら天国に行けるとでも?」

 

「ああ、そりゃ無理だわ」

 

 不知火の冗談に叢雲も苦笑しながら返す。

 

「……では最後に、司令のところに案内しますね」

 

「いよいよ、ってことね……」

 

 これだけのあり得ないような場所のトップに君臨する人物なのだ、生半可な人物ではなかろう。そう思って叢雲は表情を引き締める。

 そして不知火に連れられて移動を始めようとしたその時だった。

 

「おやっ?」

 

「どうしたの?」

 

「いえ……今から司令にと思っていたのですが、少し予定変更です。

 先に副司令の方から行きましょう」

 

「副司令?」

 

 首を傾げながらも、建物を出て歩き始める不知火に着いて行く叢雲。そしてその場所にやってきた。

 そこは中庭の、少し大きめの木の下である。そこにはある一団が陣取っていた。

 

「えへへっ……ろーちゃん、任務頑張りました!

 だかららーくんに撫でてほしいなって」

 

「あっ、ろーちゃんズルい! リベも、リベも!」

 

「あ、暁はレディだからナデナデなんていらないんだけど……どうしてもって言うなら撫でてもいいのよ」

 

「ん……構わないでいいけど……別に撫でられるの、嫌いじゃ……ない」

 

「羅號、信賞必罰は組織運営では重要なことです。

 ですからその……任務達成で私も頭を撫でて欲しいと……」

 

「そう、そうね……信賞必罰は必要ね。

 私も……撫でられるのはイヤではないわ」

 

 6人の少女が、同じくらいの歳の1人の少年に纏わりついていた。叢雲の記憶が確かなら全員艦娘、呂500にリベッチオ、暁に山風、朝潮にZ3マックス・シュルツというメンバーである。

 並べ立てると艦娘としての共通点はまるで見受けられないが、ここにいる6人に限っては共通点は丸わかりだ。この6人全員、この少年に恋をしているのである。やり方は様々だがそれぞれが精いっぱいに甘えて、自らの存在を猛烈にアピールしているのだ。

 もうこの段階で叢雲は胸焼けするような甘ったるい雰囲気にお腹いっぱいなのだが、当事者である少年はまるで気にした様子もなく、慈愛すら感じさせる微笑みで全員に対応していた。

 やがて少年はこちらに気付いたように視線を向けてきたが、叢雲としてはちょっと巻き込まれたくないというのが本音である。

 

「ああ、不知火さん。 任務ご苦労さま」

 

「ありがとうございます、副司令」

 

「あはは、そんな大仰な呼び方はいいって」

 

 その言葉に苦笑する少年。どうも『副司令』と呼ばれるのは本意ではないらしい。

 というか、これが本当にこのすさまじい秘密基地の『副司令』なんだろうか……叢雲は思わず少年を凝視してしまう。

 

「副司令、お楽しみのところ申し訳ありませんが、彼女が今日救出した艦娘の叢雲です。

 司令のところに行く途中だったのですが、姿が見えましたので先にこちらに挨拶に来ました」

 

「駆逐艦『叢雲』よ。おかげさまで助かったわ。

 これからはこき使ってくれて構わないわよ」

 

「僕は海底軍艦『羅號』、見ての通り男だけどよろしくね」

 

 差し出された手を反射的に握り返しながらも、叢雲はあまりに異質な言葉に呆けたように返す。

 

「えっ? 男なのに……艦娘?

 いえ、この場合は艦息?」

 

 頭を捻る叢雲に不知火は助け船を出す。

 

「気持ちは分かりますがすべて真実です。

 そしてこの基地、いえおそらく地球上で最強の戦闘能力をもった艦の1人だと思いますよ」

 

 「何をバカな……」と叢雲は思ったが、先ほどの新兵器の数々を使った戦闘を見た後ではやすやすとは否定できないことに気付いた。

 

「僕より兄さんの方が強いと思うけどなぁ……」

 

「副指令は『五十歩百歩』という言葉をご存知ですか?」

 

 謙遜なのか本気なのか分からない羅號の呟きを、不知火は少しだけ呆れたように返した。

 

「では司令のところに行ってきます。 お邪魔しました」

 

「うん。 また食事のときにね」

 

 そう言って羅號と別れる不知火と叢雲。去り際にチラリと見ると、すぐに羅號は元のように6人の少女に纏わりつかれていた。

 

「何なの、アレ?」

 

 少し離れたあたりで小声で不知火に尋ねる。

 

「見ての通りですよ。

 世界でここにしかいない男の艦息である羅號と彼を慕う最古参艦娘、通称『ラヴァーズ』の面々ですね。

 ああ見えて一応、この基地のヒエラルキーのトップにいる存在ですよ」

 

「……OK、常識はさっさと投げ捨てた方がいいってことがわかったわ」

 

 返ってきた答えに、お手上げとばかりに叢雲は肩を竦める。

 男の艦息に超技術満載の基地……どうやら自分の着任したところは予想以上にとんでもないところだったようだと再確認する。

 やがて建物を進んだ2人は、扉の前へとやってきていた。

 

「この先にココの司令が?」

 

「ええ、司令と秘書艦がいます」

 

「さっきの副指令が『兄さん』って言ってたってことは……」

 

「お察しの通り、男の艦息ですよ」

 

 叢雲がひとつ息をつくのを横目に見ながら、不知火はドアをノックした。

 

「司令、叢雲さんをお連れしました」

 

 しかし、中から声はない。

 

「? 司令?」

 

 訝しみながら不知火はドアを開け、叢雲もそこから中を覗き見る。

 

「「「あっ……」」」

 

 そしていくつかの声が重なった。

 そこには2人の男女の姿があった。女の方は叢雲と同い年くらいの艦娘だ。叢雲の記憶が正しければ、白露型駆逐艦3番艦の『村雨』だろう。

 一方の男の方も、年齢的には叢雲や不知火と同じくらいだ。今までの話からすると、彼が男の艦息でここの司令官なのだろう。

 それだけならなんらおかしなところはないのだが……状況はそうでもない。

 まず村雨は眠っているようで、ソファに横になって目を瞑っている。そして少年の手はその彼女のスカートの端をしっかりと握っていった。

 すると村雨は身じろぎすると、目を覚ました。

 ボーっとした目で自分のスカートを掴む少年の姿を認めると、寝ぼけ眼のままトロンと微笑む。

 

「なぁに轟くん、村雨にいたずら?」

 

 その甘い声には嫌がっている様子はない。

 それを理解した叢雲と不知火はゆっくりとドアを閉める。

 

「「……ごゆるりと」」

 

「ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」

 

 そんな声が響いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「駆逐艦『叢雲』よ。 死ぬところを助かったわ。

 これからは存分にこき使ってちょうだい」

 

「おう。

 俺は海底軍艦『轟天』、いちおうこの秘密基地とE・D・F部隊の司令ってことになってる」

 

 紆余曲折を経て、叢雲は改めて司令こと『轟天』と向き合っていた。轟天の後ろでは、村雨が少しだけ気恥ずかしそうに控えている。

 

「俺たちはまぁ、見ての通りのいろんな事情を抱えた訳アリ連中の寄り合い所帯だ。

 だからそんなに硬くならなくていい」

 

「訳アリ、ね……わかったわ」

 

 見学だけで十分すぎるほど『訳アリ』具合を察した叢雲は苦笑しながら頷く。

 

「だが、俺たちの目的も他とは変わらん。

 深海棲艦の殲滅……そのために力を貸してもらうぞ」

 

「言ったでしょ。 存分にこき使ってちょうだい」

 

「結構。

 大破した艤装は、新型へ改造作業を行う。

 改造作業の完了までは身体を休めるのと、ここでの生活に慣れるようにしてくれ。

 不知火、しばらく面倒を見てもらっていいか?」

 

「了解です、司令」

 

 叢雲の隣で不知火がビシリと敬礼をしたが……その視線は冷たい。かく言う叢雲の視線も冷たいが、不知火の視線はそれ以上だ。

 

「な、なんだよ不知火?」

 

 居心地が悪そうに聞き返す轟天に、不知火はその冷たい視線のまま言った。

 

「いえ別に。

 ただ……仲がよろしいのは結構ですが風紀を司令自らが率先して乱されては困ると不知火は愚考しているだけです。

 そういうことは見えないように自室でやっていただかないと……」

 

「だから誤解だって説明しただろうが!

 村雨(アホの子)がサボって寝てたの! 親切で優しい俺はめくれ上がったスカートを直してやろうとしただけなの!!」

 

 そう力説するが不知火と叢雲の視線はもう、言い訳をする痴漢を見る目だった。

 

「おい村雨、お前からも誤解だって言ってくれ!」

 

 話を振られ、仕方ないといった感じで村雨も言葉を発する。

 

「不知火、轟くんも男の子なんだし……そこのところ少しは理解してあげないと」

 

「おーい、援護射撃のつもりだろうが、完全に誤射しちゃってるぞ。

 なに『しょうがないから許してあげる』的な空気になってるわけ?

 ほら、不知火と叢雲の視線が俺の装甲をぶち抜くくらいに冷たくなってるぞおい!

 だから、俺は無実なんだっての!!」

 

 轟天はわめくが不知火たちの視線は変わらぬままだ。

 やがて轟天はあきらめたかのように肩を落とす。

 

「あー、もういい。

 まぁ、これからはここの一員だ。

 ゆっくり休んで、馴染んでくれや」

 

「了解よ」

 

 敬礼とともに退出していく不知火と叢雲。やがてしばらく進むと叢雲が言った。

 

「あれが……司令?」

 

「と秘書艦の村雨です。

 ここでは最古参ですので、副司令や『ラヴァーズ』の面々とならんでヒエラルキーはトップですよ」

 

「大丈夫なの、この基地?」

 

「……思うところがあるのは分かりますが、あれで司令と副司令の戦略と戦術は確かなものですよ。そしてなによりその戦闘能力は間違いなくこの地球上で最強です。

村雨や『ラヴァーズ』の面々もああ見えて戦闘では頼もしいですからね」

 

「ふぅん……それでずっと疑問だったんだけど、ここの組織の『E・D・F』ってなんの略よ?」

 

「恐らくご想像の通りかと思いますが……『地球防衛軍』の略だそうです。

 司令と副指令が決めたそうですよ」

 

「また大げさな名前ね」

 

 そう言って叢雲は肩を竦めるが、今まで聞く司令と副指令の風評、そしてこの基地の特殊性から考えてそれだけ大きなことが言えるだけのものを持っているとも叢雲は理解できた。

 そして、叢雲は最後に一つ、気になることを質問する。

 

「ねぇ、やっぱり司令と秘書艦の村雨ってデキてるの?」

 

「みんな見たことがあるそうですが……寝間着姿の村雨が毎朝のように司令の部屋から出てくるのを、それ以外の解釈ができるのなら違うのでしょう」

 

「うわぁ……私らと同じくらいの歳なのに、随分とススんでるわねあの子」

 

「ええ、まったくです」

 

 何を想像したのか、揃って顔を赤くする2人。

 こうして駆逐艦『叢雲』は、この『ラゴス島秘密基地』に着任した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 その日の夜、轟天の私室で……。

 

「寝てる女の子にイタズラなんて、もうあの新人の子の轟くんを見る視線……物凄い冷たい目だったわよ」

 

「面白そうに言うな! こっちは大ダメージなんだぞ!

 まったく……明日っからどう接していいんだか……」

 

 ベッドの中で本気で頭を抱える轟天に、同じくベッドに入った村雨は面白そうに笑った。

 

「やーい、狼」

 

「それを毎夜のように人のベッドに潜り込んでくる女が言いますかねぇ?」

 

「だって轟くんと一緒に慣れすぎちゃって……いまさら他の誰かに『一緒に寝てください』って言えると思う?」

 

「ああ、そりゃツラいわな……俺なら恥ずかしくて無理だ」

 

「でしょ。 だからこうして枕代わりにするのは轟くんだけ」

 

「はいはい、俺はしょせん抱き枕ですよ」

 

 信用されているのか男として見られていないのか、少しすねた口調で轟天が口を尖らせるとその様子に村雨はクスクスと笑うと釣られたように轟天も笑った。

 しばらく笑い合うと、不意に真面目な顔に戻った轟天が言う。

 

「……なぁ、お前本当に誰かに見られたりしてないよな?

 さすがにこの状態を他人に知られたら、もうどんな顔していいかわかんないぞ」

 

「大丈夫よ、私だって見られないように気を付けてるもの」

 

「ならいいんだけど……」

 

 何かを隠し通せていると思っているのは、悲しいかな本人たちだけである。

 そんな2人だけの秘密の時間……轟天はしみじみと言った。

 

「もうあれから4か月か……ずいぶんと変わったもんだ」

 

「ホントよね。 たった6人だったあの頃が遠い過去みたい」

 

 あれから……轟天と羅號がこの世界で覚醒してから4か月の月日が流れていた。

 その間に第二拠点ともいえる『ラゴス島秘密基地』は完成した。轟天たちの真の本拠地である『緯度0秘密基地』の存在を知っている方がもう少なく、轟天と羅號、それに村雨と『ラゴス島秘密基地』が完成するまでの間に羅號が助けてきた通称『ラヴァーズ』の面々だけである。

 人の数も増え、装備も充実した。

 全員が艤装を根底から大改修し、高性能レーダーと対艦誘導噴進弾を標準装備。機関出力も大幅に上がっており、もっとも足の遅い戦艦ウォースパイトですら35ノット以上の速力を誇り、駆逐艦級に至っては50ノットという異次元級の快速を誇る。この艦隊では例え駆逐艦級であろうと、そこらへんの艦隊など一方的に屠れるだけの力を持っている。空母や水母の艦載機にいたってはすべてジェット機とジェット水上機、ターボジェット水上機という有り様。

 その戦力が総勢30人、今日助けた叢雲を加えて31人だ。十分すぎるほどの戦力だろう。

 さらに周辺の無人島へのレーダー設置も完了し、早期警戒網も完成した。拠点の防衛能力も格段に上がっており、たとえ拠点に深海棲艦の10個艦隊が攻めてこようと一方的に勝利できる確固たる自信もある。

『足場固め』という、初期目的は達成したとみていいだろう。

 

「そろそろ……次の段階に進むべきだな」

 

「それじゃ……」

 

「俺たちだけで深海棲艦を倒せるわけじゃない。

 そろそろ国家……日本と接触すべきだ」

 

「……」

 

 轟天の言葉に、村雨は押し黙る。その胸に去来しているのは懐かしい故郷の光景か、それとも違うものなのだろうか?

 

 2隻の海底軍艦が、ついに歴史の表舞台に躍り出ようとしていた。

 そしてそれは、この先の見えない戦争が『真の終わり』に向かう第一歩であったのだった……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

秘匿艦隊E・D・F

 

『司令艦』

轟天(海底軍艦)

羅號(海底軍艦)

 

『秘書艦』

村雨(駆逐艦)

 

『羅號側近艦隊(通称:ラヴァーズ艦隊)』

朝潮(駆逐艦)

呂500(潜水艦)

リベッチオ(駆逐艦)

山風(駆逐艦)

暁(駆逐艦)

Z3マックス・シュルツ(駆逐艦)

 

『所属艦娘』

ウォースパイト(戦艦)

ビスマルク(戦艦)

イタリア(戦艦)

グラーフ・ツェッペリン(正規空母)

アクィラ(正規空母)

コマンダン・テスト(水上機母艦)

秋津洲(水上機母艦)

プリンツ・オイゲン(重巡洋艦)

ポーラ(重巡洋艦)

名取(軽巡洋艦)

阿武隈(軽巡洋艦)

由良(軽巡洋艦)

酒匂(軽巡洋艦)

Z1レーベリヒト・マース(駆逐艦)

皐月(駆逐艦)

三日月(駆逐艦)

長月(駆逐艦)

若葉(駆逐艦)

霞(駆逐艦)

不知火(駆逐艦)

浜風(駆逐艦)

叢雲(駆逐艦)

 

 

『解説』

轟天、羅號を頂点とした秘密艦隊。拠点は『ラゴス島秘密基地』。

轟天や羅號その他の所属艦娘によって、捨て石にされたり全滅しそうになったところを助けられた、『もはや帰る場所のない艦娘』によって構成されている。

通常鎮守府のほとんどが『損耗するなら外国人艦娘から』と考えている傾向があるためそうして捨て石にされたところを積極的に保護した結果、非常に『外国人艦娘』が多い。

日本艦娘の場合は大型艦を逃がすために軽巡・駆逐を捨て石にする傾向のため、日本艦娘は軽巡以下の小型艦娘しか所属していない。重巡以上の大型艦娘はすべて『外国人艦娘』という珍しい構成になっている(例外として秋津洲は低い戦闘能力から囮にされてしまったようだ)。

誘導兵器やジェット機などの超技術を有しており、それぞれの艦娘が他とは別次元の戦力を持つ。

現在は轟天・羅號の方針に従い、国家とは接触せずに対深海棲艦のための力を蓄えている。捨て石にされたり、そもそも産まれる前に祖国が滅んでいる『亡命外国人』が多く国家への帰属心は薄く、問題なく轟天と羅號の指示に従う。

最古参である轟天との関係を噂される秘書艦『村雨』、そして同じく最古参で羅號との関係を隠そうともしない通称『ラヴァーズ艦隊』の発言力が極めて大きく、轟天・羅號からの信頼も厚い。

本当の切り札とも言える『緯度0秘密基地』の存在を知るものも轟天・羅號・村雨・ラヴァーズ艦隊の9名だけである。

 

 

 


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