まず、さしあたっては食料だ。
人であれ亀であれ食べなければ生きていけない
水がなく、日光もない痩せた土地が広がる我が国では、成長に多量の水を必要とする菌類(キノコ)をすべての国民分与えることは不可能。
というよりもキノコが生えるような森がない。つまり我が国ではキノコが栽培できない
ゆえにキノコ王国から輸入したキノコのスープが国民の主食となってしまったのだ。
三食スープ、そして鉱毒や砂塵にまみれ有毒ガスがあらゆるところで湧き出るこの国では、子供の死亡率が異常に高い
(逆に言えば、『ある程度までの成長を卵という隔絶された空間で行える』我ら亀族だから生き残れたともいえるのかもしれない)
だがこちらには現代知識とゲーム知識がある
さっそくカメックを呼び出すことにした
「陛下、何か御用でして」
「よくきた!頼みたいことがあるのだ!」
「何なりと!」
「クリボーを巨大化させた魔法があったはずだが」
「は、はい。巨大化の魔法ですか」
「ああ、それでこれを巨大化させろ!」
ドンッとキノコを机にのせる
「………陛下?キノコは戦力になりませんが」
それに対してカメックは真面目な顔でそう言い放ったのだ。
「やはりか………いいか!これは兵器なんかではない、食べるのだ」
意識が宿ってからおびただしい量の資料を読み返したのだが、ひとつおかしいところがあったのだ。
それは技術の発展方向。明らかに軍事方面にしか技術が進んでいない。
おそらくこの国の風土の影響もあったのだろうが、歴史書を読めば戦争、別の本を読んでも戦争、また別の本を読んでも戦争、とほとんどが戦争で終わるのも大きな要因のひとつだろう。
お陰さまで戦争以外の技術が全く育っていない
つまりこいつらにはキノコを育てるという発想がわく機会がなかったのだ
「………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
やがてこちらの意図を理解したのだろうか口を大きく開けて叫ぶ
「へ、陛下!」
「出来るか?」
「はい、必ずとも!」
「予算と人員に糸目はつけん。行け!」
そう言うと、カメックはドタドタと王間から走り去って行った。
続いて近衛兵であるトゲノコエースを呼び出す
「カラカラの実ですか?」
「そうだ!」
「カラカラ砂漠に生えている木の実と記憶しておりますが………」
「持ち帰れ!」
「了解しました!」
カラカラの実とはマリオストーリーに登場するアイテムで、カラカラ砂漠のサンボを倒すと一定確率でドロップするのだ。
暑さと乾燥が激しいカラカラ砂漠に自生する植物ならば、我が国でも育てられる可能性がある。
キノコに変わる植物を探せ!
そう言って世界中にノコノコ達を送り出した。
これで食料のほうは少しは改善するだろう、
しなかったらしなかったで新しい事を考えるまでだ。
そして、資料を見ている最中重大な重大な問題に気がつく、『国民の若い年代層がいなくなっているのだ』それもごっそりと。
原因はキノコ王国への移民、亡命等なのだが。
ゲーム中でノコノコはキノコ王国の首都に数人ぐらいしか見たことがない。
さらに言うならば家にノコノコがいない。
大量に見かけるとしたら農村や工場等、そして一部の技術者のみ
さらに言うならば、本来なら高度な技術を要求される蒸気機関車の機関士が、全てキノピオであることだ
蒸気機関車は我が国の産物であり、運用や整備等をキノピオが自然に理解できるはずがない。
指導や教育を行った亀族がいるはずなのだ。
彼等の足取りが全然わからない。
手紙も帰って来ず蒸発したのだ。
嫌な予感がしたため、ハックン等により組織された諜報部隊に調査を命令した。
数日後
「まじか………」
調査報告書を読みながらこめかみを押さえる。
そこには、知られざるキノコ王国の実態が書いていた。
まず、キノコ王国はピーチ姫を除く全ての役職がキノピオによって独占されている
さらに、キノピオ以外の他種族がそれを目指すことは許されておらず
キノピオのための政府
キノピオのための法律
キノピオのための権利
がまかり通っている。
そのため、キノピオが異常に優遇される社会が形成されている
そして、食料を求め飢えをしのぐためにかの国に渡った同胞を待っていたのは、地獄だった
村単位で集団農場に押し込まれ、嗜好品である茶葉のみを作らされる。しかも、死ぬまでだ。
(もちろん主食となるものは栽培させてくれない………つまり食糧を盾に強制的に働かされるのだ)
技術者も工場に監禁され、休みなく働かされる。
技術を教えているときは優遇されたのだが、キノピオが技術を習得すれば容赦なく捨てられる
難民という立場を利用され、法外な契約を交わし闇に消える者も多い
我が国との異常な貿易による利益、そして彼等のような奴隷からの搾取により、キノコ王国は栄華を極めていたのだ
人は怒り過ぎると一転冷静になり、表情がなくなる。それが今の我輩にあてはまるだろう。
『今すぐにもキノコ王国へ攻め入りたい』そのような気持ちが沸き上がるが、それを押さえる。
今はまだその時ではない、臥薪嘗胆の時なのだ
カメックへ国境警備を強化するように命じ出来る限りこれ以上の被害が出ないようにするための方法を考えるのだった
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半年後
クッパの政策が効果を発揮しはじめ、食糧の自給率が上昇しはじめた頃
キノコ王国某所
暗いラウンジの中にはスーツをきたキノピオ達が集まっていた。各々高級なワインをゆらし葉巻を嗜みながら何かを待っているようであった
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」
やがて一人のキノピオが椅子に座る。
そして、ラウンジにいたキノピオ達はそちらを一斉に向いた。
「本日お集まりいただいたのは他でもありません、クッパ帝国についてです」
「そういえばまたクッパが何かしているようだな」
「この頃かの国との貿易額が減少している。このままでは利益が少なくなってしまうではないか」
「ええ、こちらでも奴隷の数が少くなって来ましてね」
「あなたもですか、流れてくる奴隷も減りましたからね」
「皆様お静かにしてください。それよりもこちらが入手した情報で報告しなけれならないことがありまして」
「それは何だ!」
「食糧増産計画です!奴ら我が国に頼らなくてもいいように独自に食糧を得ようとしているようなのです」
「それは困る!」
「我が商会の不利益だ!」
「軍としても困るぞ………」
「全く、野蛮な亀が余計な知恵をつけよって」
「ええ、皆様のおっしゃる通りです見過ごす訳にはいきません。なので全て壊してしまいましょう」
「だがどうやって?」
「お飾りの姫を利用するのです。しばらく消えていただきましょう」
「なるほどクッパに拐われたと」
「それは大変だなぁ、ははは」
数日後
一人のキノピオが道を急ぐ、国を救った英雄の元へ。
つぶらな瞳に一生懸命な手足………そして、拭いきれない悪意を携えて
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