大いなる海の母   作:村雪

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 どうも、村雪でございます!書いていました通り少し早めに2話を投稿させていただきますね!

 とはいえ、今回も言わば前日譚というもの。物語は進まないうえ、前回と同じように原作を知っていただいている上での投稿となります!非常に心苦しいのですが、ちょっとでも満足していただければ!


―――ごゆっくりお読みください。


地獄で会うは、無二の恩人

「………おい、今の話本当か……!?」

 

 

 世界一とよばれる海底の大監獄「インペルダウン」。その最下層フロアーに〝最重要囚人〟として収容されている〝火拳のエース〟は、激闘によって傷だらけになった身体の痛みを忘れ、目の前の女に真偽を問うた。

 

 

「ウソなどつく理由がない……そうじゃ、彼はそなたに怒られると憂いておったぞ」

 

 

 そう答え妖艶に笑ったのは、王下七武海である〝女帝〟ボア・ハンコック。

 

〝四皇〟にして最強の海賊――『白ひげ』と、政府の最大戦力『海軍本部』、及び『王下七武海』。彼女はこの世界の三大勢力が衝突するという極めて大きな戦争の引鉄(ひきがね)となった人物を見る――――というのを〝建前〟に、この大監獄へとやってきた。

 

 

 

「………!!」

 

「では。確かに伝えたのじゃ(くるり)」

 

 

 信じられないという顔で見つめて来るエースにかまわず、ハンコックは踵を返して歩き出す。エースにさほど興味があったわけではない。彼女はただ、彼の〝弟〟の手助けをしにきただけである。

 

 

(ルフィ……。無事とは言えぬが、そなたの兄は大丈夫。無茶だけはするでないぞ…!)

 

 

 そう。ハンコックがここにやってきた真の狙いは、エースの弟である『モンキー・Ⅾ・ルフィ』を、この鉄壁を誇る大監獄へと潜入させること。

 

彼の強さ、心の深さに惚れた彼女は、自らの地位―『七武海』を大いに利用し、政府関係者しか入ることを許されないこの監獄に、海賊であるルフィを見事侵入させていたのだ。

 

 

 

「ん??何か話していたのか?」

 

「さぁ……私、署長から超逃げてましたんで……」

 

 

 そんなことを知るはずがなく、ハンコックのあまりにも短い面会に首をかしげたのは、インペルダウンの監獄署長である『マゼラン』と、副署長である『ハンニャバル』。

 

 

 たった今、絶世の美女であるハンコックを見て騒ぎ出した凶悪な囚人たちを〝力〟と〝恐怖〟で黙らせたマゼラン。そしてその上司から距離を取って避難していたハンニャバルにハンコックの小声など聞こえるはずなく、優雅に牢から離れてゆく彼女のあとをついてゆくのみだ。

 

 

「もういいのか?」

 

 

 その短さに疑問を抱いたのはその2人だけではない。ハンコックを招集する任務を受け、ここまでハンコックと共に行動していた海軍本部中将――『モモンガ』もまた、要望したことをあっさりすませた彼女を不思議に思って問いかける。

 

 

「構わぬ。さあ、海軍本部に行くのじゃろう。さっさと案内するのじゃ」

 

「む、そうか……」

 

 

 モモンガとしても、早くに用が終わるのならば好都合。特に口を返すことなく自らもリフトへと足をむけた。

 

 

(さて……これで任務が終わったわけではない。むしろここからが重要……!気を引き締めねばな…)

 

 

 これから向かう海軍本部にて、かつてないほどの大戦争が起こるのはもはや確定事項といってもいい。モモンガは一人の海兵として、これから始まるであろう戦いに並々ならぬ決意を抱きながら、その戦場へと一つ歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――突如話は変わるが、その時のフロアーは、マゼランによってとても静まりかえった空間だった。〝地獄の支配者〟と呼ばれるだけあり、かつて世界中を震え上がらせた犯罪者たちも、彼の〝能力〟とその被害者である囚人を見た後では大人しいもの。

 

 

 

 

 だがしかし・・・その直前までは、突如現れた上玉の女性であるハンコックに囚人たちは興奮し、己の欲望を言葉というもので吐き出していた。

 

 

 それが行き過ぎたゆえに〝地獄の支配者〟の怒りを買ったわけだが――――とにかく、世界最悪の囚人と呼ばれる彼らが己の欲望や衝動を抑えるはずがなく、その言葉はどこまでも品があらず…………耳に障る大声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~……やっかましいね―。何だっていうんだい………」

 

 

 

 

 

 だからこそ〝彼女〟は目覚め、静まり返った空間にその声がよく響いた。

 

 

 

「――――――…………っ!!?(バッ!)」

 

 

「?ハンコック殿?」

 

 

 

 その声に真っ先に大きく反応したのはハンコックだった。

 

 

 囚人たちの欲望まみれの言葉にも顏一つ変えなかった彼女が、目を大きく見開き鬼気迫る表情で声が聞こえてきた方へ振り向いた。副看守長である女性、ドミノが不思議に思って声をかけるも、ハンコックの耳には届かない。

 

 

 

 

 

 

「ん~…?マゼランにハンニャバルに………。おおっ?あんたは確か…………モモンガ、だったかね?」

 

「!」

 

 

 その〝彼女〟は、冷たい石の床に預けていた身体をむくりと起こし、寝ぼけ眼でフロアーへの来客をしばらく見つめていたが、〝珍客〟を確認した途端、その瞳をぱちりと開けて名を言い当てた。

 

 

 モモンガは自分の名を呼ばれるとは思わなかったようで、先ほどまで高めていた胸の決意をゆらがせながら、驚きの表情でその囚人を見た。

 

 

「………ああ。なぜ名前を知っている?あんたに名乗ったことはないんだが…」

 

「なに、あんたは伸びそうな男だったから目を付けてたのさ。最後に会った時は……中佐だったかな?今はどうだい?見事大将に就いたか?」

 

「……いや、今は中将の地位に就いている」

 

「おぉおぉ、すごいじゃないか。〝あの時〟あんたらと戦ったのが……4年か6年前か―――」

 

「〝5年前〟だ。なぜ間をぬかした…」

 

「おっとそうか。や~、それにしても大したもんだ。中将っていやぁ大将に次ぐ実力を持つ者だけが許された階級。4年ちょいでそこまで行くとは・・・やはり私の見立ては間違ってなかったね。やるじゃないか、モモンガ」

 

「………海賊であるあんたに言われても、毛ほどにも喜びを感じないな」

 

「あっはははは!そりゃそうだ!海賊に褒められても海兵は嬉しかないよねぇ!きちんと海兵としての信念も抱いてるようでなによりなによりっ!」

 

「…………はあ」

 

 

 あまりにも場にふさわしくない元気な受け答えに、モモンガは思わずため息をつく。

 よもや再び会うことになるとは思わなかったが、この海賊は昔からそうだ。

 

 

 敵対するはずである自分達海兵にも陽気に接するだけでも面倒なのに…………その実力は、自分達海軍の英雄である『ガープ中将』や『センゴク元帥』たちも手を焼くほど。

 

 これほど厄介な海賊は、他には決していないだろう。

 

 

 

「…………あんたは相変わらずだな」

 

「ん?……ぷっ、ははっ。その言葉、ついこの前ガープに言われたばかりだよ。あんたもやっぱりあいつと同じ海軍なんだねー」

 

「なに?ガープ中将が来たのか?」

 

「ああ。そこにいる『白ひげ』んとこの若い奴に会いに――――

 

 

 

 

…………ん?どうした嬢ちゃん?」

 

 

「む?」

 

 

 

 

 突然、〝彼女〟の話す矛先がどこかへ移った。

 

 

 海賊とは言え、突然話相手を変えられては気になってしまうもの。モモンガも例にもれず気になってしまい、その視線を追い――――

 

 

 

 

 

「・・・おい、どうしたんだ『蛇姫』?」

 

 

 

 

 態度こそ変えなかったが、モモンガは驚いた。

 

 

 

―――わらわは何をしても許される………なぜなら美しいから。

 

―――そなたらなど死んでも構わぬ。

 

 

 

 この監獄にたどり着くまで、傲慢としか言えない言動を繰り広げた〝女帝〟ボア・ハンコック。その高圧的な態度は、まさに女帝たる振る舞い。部下たちはそんな彼女に一種の崇拝の意さえ抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ああ……」

 

 

 

 

 

・・・そんな彼女が人目を憚らず涙を流そうとは、いったい誰が想像できただろうか。

 

 

 

「ハ、ハンコック殿?いかがなさいましたか??」

 

「………(スッ)」

 

 

 ドミノの声にまったく応えないまま、ハンコックは動いた。

 

 

こつっ、こつりと。先ほどまで見せていた優雅な歩みとは違い、少し不安定な歩行だったが、着実に一歩ずつその牢と近づいていく。

 

 

 

 

「………(かつん)」

 

「……………む?お?…嬢ちゃん、どこかで…」

 

 

 

 

 

―――ああ、間違いない。

 

 

 もはやハンコックはこらえられず、はらはらと滂沱たる涙を流した。

 

 

 

 暗い感情など一切存在せず、ただ明るさだけに満ち溢れている瞳。

 

 

 まるで童(わらべ)のように小さく…自分より年が上とは思えない少女の体躯。

 

 

 

 

 

 そして…………その頭部に存在する、歪な形の双角。

 

 

 

 

 

 このような稀有な身体を有する者など、この世でたった一人しかいない。

 

 

 

 

 

「……お会いしたかったのじゃ……です―――――

 

 

 

 

 

〝酒呑童子〟…っ!」

 

 

 

 

 

 

 彼女こそ、十数年前に奴隷であった自分達を救ってくれた大恩人。

 

 数々の伝説を生み出し、かつてその名を全世界に轟かせた女海賊―――〝酒呑童子〟『アイル・Ⅾ・スイカ』であった。

 

 

 

「?……あ。……え~~っと……もしかして………『ハンコック』かい?」

 

「!!そ、そのとおりじゃ………です…!」

 

 

 よもや再会を果たせただけでなく、自分の名前までも覚えてくれていたとは。ハンコックは莫大な衝撃と喜悦を胸に抱き、慣れない敬語を使いながら泣き笑いの顔を彼女に見せた。

 

 

「い、生きておられたのじゃな…!」

 

「ん、まあね。あまりしまらない恰好だけどこうやってちゃんと生きているよ。・・・しかし、ま~べっぴんに成長したねー。さぞ男が寄り付いてるんじゃないか?」

 

「……ええ。それもそなた様のおかげじゃ………

 

 

 

本当に……本当に……ありがとう………ございます……!(スッ)」

 

 

 

 

 するとハンコックは………驚いたことに、その高貴であるはずの頭を『酒呑童子』へと深く下げてしまったではないか。それにはモモンガ、ドミノ、マゼラン、ハンニャバルも素直に驚いた。

 

 

 あの気高い〝女帝〟が、深々と頭を下げた……!?

 

 

 

「おいおい、よしなよしなっ。なんのことかだいたい分かるが、ありゃ私がやりたいようにやっただけのこと、礼を言われるようなことじゃないよ(プイッ)」

 

 

 価値が付けられないであろう貴重な礼を受けた『酒呑童子』は、少し照れくさそうにして顔をそむける。そんな反応にもハンコックは止まることなく、頭を下げ続けた。

 

 

 

 

「それでも、この感謝を伝えずにはおれぬ……ませぬ。本当に……本当に心から感謝しているのじゃ……です……!」

 

「む……」

 

 

 とってつけるような敬語の言い方であったが、逆にそれが誠意を伝えるというもの。ハンコックの並ならぬ感謝の意を察したのか、『酒呑童子』もハンコックへと目を戻した。

 

 

 

「……そうかい。私としちゃあ元気な姿を見せてくれただけで十分なんだが、律儀だねぇ~。……ほらっ!私は礼を受け取ったよ!むずかゆいから早く頭をあげなっ!」

 

「は、はいっ!(スッ)」

 

 

迷惑をかけては本末転倒。ハンコックは『酒呑童子』の言葉通り、すぐさま頭をあげた。

 

 

 

 亡くなっていると思っていた人物との予想だにせぬ再会。普通ならば今まで積もってきたことを言葉に、気の済むまで口を交わしあっていただろう。

 

 

 しかし、ここは罪人を収める監獄。『酒呑童子』のその姿を見て、ハンコックはそんなことをしようとは思いもしなかった。

 

 

「…なぜ、このような場所へ?」

 

「なぜ、と言われてもね。見ての通りだよ(ジャラリ)」

 

 

ここにいることが答えさ。――身体にまとわりつく鎖をならしながらそう伝える『酒呑童子』。

 

 

 

 

 小さな手は能力者の力を奪う海楼石の手錠によって封じられ、さらにそこから頑丈な鎖によって、その子供にしか見えない身体を幾重にも雁字搦(がんじがら)めにされており、手枷だけの同じフロアーにいる囚人たちよりも明らかに厳重な拘束を受けていた。

 

 

 そんな身体の自由を奪われている恩人を見て、ハンコックは煮えたぎるような怒りが沸き上がるのを感じた。

 

 

(よくも………よくもわらわの恩人にこのような仕打ちを…っ!)

 

 

 奴隷だった自分が再び人として人生を歩むことが出来たのは、紛れもなく目の前にいる海賊のおかげだ。

その彼女をこんな場所に閉じ込めるインペルダウンの職員たち、及び世界政府に殺意すら抱き、ハンコックはある決意をする。

 

 

(今すぐ解放して見せる……!待っておってくれ……!)

 

 

かつて自分がされたように、この囚われの大恩人をなんとしてでも救いたい。そう意気込むハンコックだが、彼女の手にも同じように海桜石の錠がつけられている。〝七武海〟とはいえ海賊には違いないため、規則によって決められているのだ。

 

・・・だが、それがなんだ。海桜石で能力が封じられているがそんなこと関係ない。自分は〝女帝〟ボア・ハンコック。世界一美しいわらわに不可能など……!

 

 

 

 

「……あー、ハンコック」

 

「!は、はい」

 

 

 そんな、あとを考えず無謀とも言える実力行使に出ようとしたハンコックだったが、恩人のよびかけによりいささか冷静さが戻る。

 

 

「…………(チョイチョイ)」

 

「?」

 

 

 厳重な拘束をされているが、さすがに指先までは自由。『酒呑童子』が指で近づくようにと招いてきたため、ハンコックはすぐに〝酒呑童子〟のもとへとさらに寄った。

 

 

「耳、耳(ボソボソ)」

 

「?(スッ)」

 

 

『酒呑童子』の背丈はハンコックの腹当たりの高さ。そのままでは耳を貸すことが出来なかったため、ハンコックは腰をかがめて彼女の口元へ耳を近づけた。

 

 

 

 

 

「……私を助け出そうなんざ、バカなことをするんじゃないよ?」

 

「っ!?」

 

 まさか、心を読んだかのように警告を受けようとはさすがのハンコックも予想だに出来なかった。

 

 

「な、なぜ・・・!」

 

「あんたの顔を見りゃわかる。……手錠はしてるみたいだけど、見た限り捕まったとかじゃあないね。だからこのまま大人しく帰んな。暴れたりなんかするなよ?」

 

 

「……じゃがっ!このままではそなた様が……」

 

 

 このフロアーにいる囚人たちは全てが死刑囚、もしくは完全終身だと聞いている。この場にいては未来はない。ゆえにハンコックは、恩人の言葉とはいえ今度ばかりはハイ分かりましたと聞き入れなかった。

 

 

「気にしなさんな。私がここにいるのは〝私の意思〟さ。だから、ハンコックが気にすることは無いよ」

 

「し、しかし…!」

 

「おい、モモンガ」

 

 

 しかし『酒呑童子』の意思は変わらない。ハンコックが納得いかないのを見て、後ろから成り行きを見守っていたモモンガへと話し相手を移す。

 

 

「……なんだ」

 

 

 海兵が海賊の話を聞く必要などないが、モモンガは海軍の中でも人が出来た人物。特に渋ることなく『酒呑童子』の言葉に耳を傾けた。

 

 

「こいつを連れ帰ってくれるか?よく分かんないけど、ここに長居する理由はないんだろ?」

 

「……ああ。行くぞハンコック」

 

 

 そんな要求をされるまでもなく、早く〝海軍本部〟へ行きたいのは事実。モモンガはハンコックにここを去ることを促す。もちろん、なんの恩もない彼に言われてハンコックが素直にうなずくはずもなく、怒気を孕ませてモモンガを睨む。

 

 

「黙れっ!そなたに指図されるいわれはない!わらわは――!」

 

 

「ハンコック………こりゃ命令だ。『何もせず早く出て行くんだ』」

 

 

 そんなハンコックに『酒呑童子』が放ったのは、あまりにも残酷な強制だった。

 

 

「……!?そ、そんな…っ!」

 

 

 ハンコックはどうしても納得したくなかった。彼女とて、このような地獄にいたいと本心から思うはずがない。なのに、そこから抜け出す救いの手をわざわざ払うなど(それが100%上手くいくとは分からない。むしろ失敗の可能性の方が高いのだが……その時のハンコックはそこまで頭が回らなかった)……もはや正常の判断が出来ないのではないかとさえ思う。ハンコックはすがるような目で『酒呑童子』を見つめた。

 

 

 

「は~………ハンコック、もう一回言うよ。『何もせずに出ていけ』。これは命令だ。いいな?」

 

「………っ!…………はい……申し訳ありませぬ…っ!(ギリッ……)」

 

 

 しかし、これほど強く命令されては救われた身として従わざるを得ない。血がにじみ出るほど唇を噛み、ハンコックは酒呑童子から背を向ける。 その胸には今の無力な自分への恨み。そして次こそは彼女を助けるという、並々ならぬ決意が渦巻いていた。

 

 

「次こそは、必ずお救いする…!」

 

「だからよしなって言ってんのに……ま、元気でやんなよ」

 

「…はい。ではまたその日まで…(スッ)」

 

 

 そう言って、ハンコックは酒呑童子との会話を終えた。対話の終了を確認したマゼラン達も、ハンコックに続いてリフトの方へと歩き始める。

 

 

「ハンコック殿。『酒呑童子』と知り合いで?」

 

「………黙れ。そなたに話すことはない」

 

「おお・・・なんと棘のある言葉……ますます好きになった!」

 

「署長。署長の威厳が無くなってしまいますのでお控えめに」

 

「署長。もっと威厳のなくなる言葉を言い続けて署長の座から滑り落ちましょう」

 

「……(こつこつ)」

 

 

 マゼラン、ハンニャバル、ドミノと並び、モモンガも静かにリフトへと向かう。一度揺さぶられたしまったが、彼は再び大きな闘志を宿し始めていた。

 

 

「あっ。そうだモモンガ」

 

「!」

 

 

 しかし、それは再び彼女によって邪魔をされる。いささかイラだった表情で、檻の中の大海賊を見やった。

 

 

「なんだ、何度も何度も……」

 

「つるとセンゴクと『あいつら』に、よろしく伝えておいてくれないかい?」

 

「……………なぜ、海兵の私が海賊の頼みを聞かないといけないのだ」

 

「まあそう言うなよ。一度ぶつかりあった仲じゃないかー」

 

「………ふん(クルッ)」

 

「あっ、ちょっと!お~~い!!」

 

 

 モモンガは『酒呑童子』の呼び止めを聞くことなく、先にリフトへと移動したマゼラン達のもとへ去っていった。

 

 

 

(………おつるさんだけには伝えておくか)

 

 

 今これ以上、センゴク元帥の負担を重くするわけにはいくまい。

 

 なんだかんだ言いつつも願いを聞こうとするモモンガ。いずれにせよ、モモンガが〝あの時〟以来姿を消した大海賊の存在を記憶の底から引き上げるのには、十分な一連の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 死亡したとされていたが、その記事は真っ赤なデタラメ。海底の大監獄にとらわれていたハンコックの大恩人―――〝四皇〟『酒呑童子』アイル・Ⅾ・スイカ。

 

 

 かつては世界中を震え上がらせたが、今やその名は物語に出て来る人物のようなもの。誰も彼もがそれを伝説・・・・・存在せず、過去の遺物として扱って生きていた。

 

 

 

 

 

しかし、それもこの日限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だったら……おれ行くよ!海軍本部!!』

 

 

『ここを抜けたかったら……おれを解放しな・・・麦わら……!』

 

 

『後生の頼みだっ!わしもここから出してくれ!必ず役に立つ!!』

 

 

『さあ、こうなったら時間がナッシブル!力技でこの監獄を抜け出すわよ~ンナ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――名前を聞いてもいいかい?』

 

『おれはモンキー・Ⅾ・ルフィ!海賊王になる男だ!』

 

 

 

 

 

 

 

【Ⅾ】。自らと同じく……世界を揺るがすこの名を持つ青年と出会うことにより、かの伝説は再び息を吹き返し、新たな歴史が刻まれ始めることとなる。

 

 

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます。


 さて、あまり間を空けずに投稿させていただきましたが、今回は〝女帝〟ボア・ハンコック様、『酒呑童子』、そしてモモンガ中将の3人を中心とした回とさせてもらいました!

 この村雪、意外とモモンガ中将がカッコイイと思いまして、思わず今回の物語に加わっていただきました!原作の主人公がまだほとんど出ていないのにこれいかに?とも思いますが堪忍です!


 そして、今回も原作を踏まえての投稿となりました!この回は54巻をもとに書かせていただいたのですが、おそらく次回は55巻と56巻をまたいでの物語となると思われます。

 まだまだキャラクターの詳しい説明がなく、分からないことも多々あると思われますがこれから書いていくつもりですので楽しみにしていただければ嬉しいでございます!


 それではまた次回っ!いよいよ〝彼〟と〝彼女〟が出会いますよ~!



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