君の名は。〜bound for happiness(改)〜   作:かいちゃんvb

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第27話 京都行きます 後編

清水寺に向かった堀川ら6名は15分ほど歩いて清水寺に到着した。かの有名な清水の舞台に登る。

 

「ほう、こりゃええ眺めやな。」

 

「京都市街を一望できる眺めや。」

 

「でも有名どころやから人も多いの〜」

 

「修学旅行生が来てたらもっとえらいことなる。一回映画の撮影でここから避難するっていうシーンを撮る時に修学旅行生の大群とかちあわせして、どかす訳にもいかんからそのままエキストラにして撮影したこともあんねん。」

 

「ほう〜」

 

堀川と克彦が話すすぐ後ろで2人の会話を聞き入る高木と藤井の男四人組に少し遅れてミキと早耶香が三葉についてのトークを繰り広げる。

 

「仕事場での三葉はどうですか?迷惑掛けてたりしませんか?」

 

「早耶香さん、私たち同級生なんだからタメで行こうじゃない?」

 

「ではお言葉に甘えて………本当に大丈夫?あの子ちょっと抜けてるところあるから。」

 

「三葉ちゃんは本当に優秀だから本当に助かってるの。この前三葉ちゃんが風邪引いた時にあそこの堀川君と2人でカバーしようと思ったんだけど、三葉ちゃんがこなす仕事量が多すぎてね……私は用事があって途中で抜けたんだけど堀川君、日付変わるまでかかったって言ってたわね。」

 

「そうなんや……。私の知ってる三葉はしっかりしてるくせにどこかリズムが一拍ズレてて、たまに狐が憑いたみたいに変になる、ほっとけない子やったのにな〜」

 

「狐が憑く?」

 

「そうそう、あれがある直前やから高2のときかな?急にいつもは綺麗に結ってる髪の毛をボサボサのまんまゴム一本でまとめるし、やたらガード甘いし、微妙に男口調やし、普通のときとは逆なこと言うし、一番最初に憑いた時は自分の席も分からんかったり……みたいな変な時期がしばしばあったんよ。それで三葉ときたら、その時のこと全然覚えてないんよ。」

 

「へ〜、そういえば瀧君もそんな時期があったわね。彼が高2の時の秋くらいかしら。私とか言うし、バイト先までの道で迷ったり、急に女子力つけてきたり……あの頃の瀧君、可愛いかったな。ちょっと恋してた。

だから瀧君が何か悲しげな空気を纏ってた頃はほっとけなくて、色々した。自分から誘惑したし、いい女の子紹介したりした。だけど瀧君は誰にも興味を示さなかった。たがら最初彼女ができたって聞いた時は驚いたし、なんで?とか思ってたんだけど、三葉ちゃんと一緒にいる瀧君を見てわかったわ。瀧君には三葉ちゃんしかいないって。多分、この出会いは偶然なんかじゃない。そう思わせる何かが2人の間に流れてるのよね。」

 

「ミキさんもそう思ってたんや。大学の時、三葉は私と克彦をくっつけようと色々してくれたんやけど、あれがあってからずっとぼんやりして哀しげやった三葉をほっといてくっついてええんかとか思った。だから私らも三葉にええ男紹介したりしたんやけど、見向きもせえへんかった。でも瀧君と会ってからの三葉は変わった。前みたいにちゃんと笑ってくれた。おかげでなんの不安もなく克彦と結ばれたんよ。瀧君にはめっちゃ感謝してる。」

 

「ほんまやで。瀧にはめっちゃ感謝しとる。」

 

克彦が会話に割り込んできた。

 

「それに、瀧は三葉を預けるに足る男やしな。性格も良うて、料理もできて、何より三葉を一番大切にしてる。ほんまに三葉はええ男引っ掛けた。」

 

その側では残された堀川と高木と藤井が話し込んでいる。

 

「立花君ってどんな人なんや?」

 

まず司が答える。

 

「そうですね、人のことを第一に考えられる奴ですね。無駄に正義感が強くてよく喧嘩とかもして、しょっちゅうほっぺとか膝とかに絆創膏はってましたね。」

 

「そうそう。しょっちゅう俺がボコボコにされた瀧を負ぶって家まで担いで帰りましたね。でも優しい奴です。宮水さんを瀧が不幸にすることはないと思いますよ。」

 

「そうか。宮水もそうは言うけど惚れた弱みかもしれへんと思ったったけど、杞憂やったみたいやな。別に立花君を疑ってるとかそういうわけじゃないんやけど、あそこまで惚気られたら逆に不安になるからな。いや、ほんまにええ人そうで良かった良かった。宮水、ほんまに幸せになれよ。」

 

「瀧、幸せになれよ。高木はともかく俺は応援してるからな。」

 

「瀧、覚えてろよ。絶対宮水さんに負けないくらいいい女性捕まえてやるからな!」

 

瀧と三葉のカップルを見守り続ける6人は、他愛ない話と真剣な話を交えながら五条エリアを散策した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

錦天神を参拝した狩野の一行はそこを起点とする錦市場を西に進む。ただでさえそう広くはない錦市場のアーケードの中は観光客の群れでさらに狭く、身動きの取れない状況になっていた。

 

「狩野先輩、どこに向かってるんですか?」

 

「ちょっと一服してからでもええかなと思って、イノダコーヒーの本店に行こうと思ってんねんけど。」

 

「イノダコーヒー?あんまり聞いたことないな〜」

 

「東京駅の大丸にお店なかったっけ?」

 

「お、さすが四葉ちゃん、やっぱり現役女子高生は情報量が違うな〜」

 

「え、あそこのイノダコーヒーの本店?」

 

「三葉さんは行ったことあるんですか?」

 

「さやちんに連れられて一回だけ……。ケーキは微妙やったけどコーヒーは美味しかったな〜」

 

「京都でカフェって言うたらイノダコーヒーやからな。」

 

一行は錦市場の狭い道をゆっくりと人をかき分けながら進み、堺町通まで出ると右折した。しばらく歩くと和風の外装が目に入る。中に入ると、外の雰囲気とは打って変わって洋館風の作りになっていた。かなり混雑しており、10分ほど待ったがテーブルに通された。

 

「何にする?ちなみにアラビアの真珠っていうやつが普通のホットコーヒーな。」

 

「じゃあ俺はそれで。」

 

「瀧くんとおそろにする。」

 

「私アイスコーヒーがいい。」

 

狩野は店員を呼び、3人の注文と自分のアイスミルクティーを注文した。そこへ四葉が話しかける。

 

「狩野さん、どれくらいゆっくりしてられるんですか?」

 

「そうやな〜、今が2時過ぎでレンタカーが4時半、天満宮はタクシーで行って、て考えたらなんだかんだで20分くらい?」

 

その20分の間に色んな話をする。

 

「で、狩野先輩はいつ晴れ姿見せてくれるんですか?」

 

「うーん、そうやなー。浩平も近々したいって言うてるからな〜。」

 

「え、プロポーズされたんですか?」

 

「いや、されてはないねんけど。でもまあそれがプロポーズみたいな感じやし、そもそももうなくてもええかな〜って感じ?もう2人でおることが当たり前になってきたもん。まあ、して欲しいっちゃして欲しいけど、したい時にすればいいんじゃね?私別に焦ってもないし。こっちはもう返事は決めてるからさ。」

 

「うわー、大人の恋愛や〜。私も大学生になったらこういう恋愛するぞ〜」

 

「あら四葉ちゃん、目の前にもっと理想的な彼氏彼女がいますけど?」

 

「ちょっとこの2人は特殊すぎるわ〜。てっしーとさやちんは昔から知り合いやし、あんまり参考にならんのよね〜。」

 

「そうやね。四葉は特に幼馴染もおらんし、事あるごとにうちの学校の男はガキっぽいとか言うてるしね〜。意外と年上がタイプなんかもね〜」

 

「わたしはねえちゃんが歳下趣味やとは思わんかったけどな〜。でもお兄ちゃんとねえちゃんって同い年くらいな気もするよな〜。」

 

「そうそう。てっしーもさやちんにも同い年みたいって言われとったよね。」

 

「そう言うなら三葉も司と高木に同い年みたいって言われてたぞ。話してて全く違和感ないって。」

 

「わたしから見ても同い年に見えるわ。立花君が大人っぽいのか三葉さんが若いのかわからへんな〜。ま、どっちもなんかな。」

 

「それにしても目の前に優しくてカッコよくてスーパーハイスペックなお兄ちゃんがおるから男見るハードル上がってまうよ〜。いっそお兄ちゃんのコピーと結婚したい!」

 

「そうやね〜。瀧くんはわたしのもんやからね〜。」

 

「おいねえちゃん、同意しているようでからかうのやめーよ。こうなったらお兄ちゃんに負けず劣らずハイスペックな彼氏捕まえるんやからね!」

 

「四葉ちゃん、あんまり欲張りすぎたらそのうちに独身貴族になるで〜。」

 

「それだけはイヤ!」

 

4人はその後四条大路に出てタクシーを捕まえ、北野天満宮で四葉の合格祈願を行なった。そしてレンタカーを受け取るべく阪急で大阪と京都の中間にある都市、高槻に向かう。

京都で借りても良さそうなものだが、と瀧や三葉は思ったが、高槻のレンタカーショップは穴場らしく、割安でしかも希望通りの車がすぐに手に入ったという。残りの6名も京阪枚方市からバスを利用して高槻までやってきた。そこでワゴンを二台借り、堀川と狩野のハンドルで名神高速に茨木インターから入り、阪神高速、第二神明道路、神戸淡路鳴門自動車道を経由して明石海峡大橋を渡り、淡路島に入る。淡路島に貼ってすぐの道の駅あわじで休憩をとって南に走ること約一時間。新都志海水浴場近くの民宿に到着する。朝8時半の新幹線で東京を出て、京都観光を堪能した初日。その18時42分、ついに10人は旅の目的地である民宿に到着した。


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