君の名は。〜bound for happiness(改)〜   作:かいちゃんvb

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この頃しきりに思うこと、ユニバ・カラオケに行きたい、ゴジラ見たい、ウルトラセブンとウルトラマンネクサスを全話見たい。鋼の錬金術師とバレーの球語読みたい、バッセンも行きたい、バレーしたい、野球でもバレーでもいいから試合見に行きたい。
でも何より何の不安もなくひたすら寝たい。これ一番。
では、本編スタートです。


第15話 馴れ初めと胸と招待状

夕食も終えて三葉と瀧が帰ると、四葉はすでにいなかった。2人は風呂を済ませ、共に三葉のベッドに腰掛けている。

 

「今日は楽しかったわ、瀧くん。」

 

「俺もだよ。映画も楽しかったけどやっぱり狩野先輩と堀川さんに会えたことだよね。」

 

「2人とも遠慮なくガンガン軽口飛ばしあってたね〜」

 

「お互いのことを本当によく分かってるからあんなやり取りができるんだろうな。」

 

「私らもあんな夫婦になりたいな〜」

 

「三葉……」

 

「瀧くん……」

 

2人はお互いを見つめ合う。そして、深く口づけを交わす。舌も絡め、痺れるような快感が2人を包み込む。

 

「あぁ〜〜、瀧くんを凄く感じられた。」

 

「三葉のことも感じられた。」

 

「瀧くん上手いんやね。気持ち良くて癖になりそう。」

 

「そういう三葉もなかなかだったよ。キスしただけなのに頭が蕩けそうだ」

 

「お上手やね、瀧くん。」

 

2人は横になり、再びキスをする。2人の間に唾液の橋が架かった。

 

「キスってこんなに気持ちええもんなんやね。」

 

「俺も知らなかったな。」

 

2人は余韻に浸りながら体を寄せ合い、しばらく他愛のない話をしていたが、やがてどちらともなく眠りに落ちた。

 

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やっとの事で先週から同棲を始めたマンションのダブルベッドで、狩野と堀川が瀧と三葉を話の肴にビールを飲みながらまったりしていた。

 

「いや〜、なかなかお似合いやったな〜。瀧君と宮水さん。美男美女カップルやし、あれは相性も抜群やで。」

 

「ホンマな。社内随一の堅物として勇名を馳せていた宮水があんなに恋する乙女の顔になるとは思うてなかったわ。あの顔の写真社内に売り歩いたら楽に3万くらい稼げそう。」

 

「瀧君も入社当時はフワッフワしたちょっと頼りない子やったのに、宮水さんと会うてからめっちゃ大人になったわ。」

 

「宮水も付きまとってた影が取れてキラキラ輝いとる。たまにあいつの笑顔に見とれてまうときあるもん。」

 

「うわー、めっちゃ悔しいけど分かるわ。女の私でも綺麗って思うてまうもん。」

 

「もうあの2人、最後まで行ってまうよな。」

 

「少なくとも瀧君は宮水さんのことしか見てないし、宮水さんも瀧君のことしか見てへんわ。付け入る隙なんてあったもんやない。近づくだけでアツすぎて当てられてまうわ。」

 

「出会いの時の話、聞いた?」

 

「聞いた。運命みたいな話やな。」

 

「互いがもう一方を見てこいつしかおらんって思うって、なかなかないで。初めて聞いた時作り話やって本気で思うたもん。」

 

「翻ってウチらの出会いは……」

 

「そんなに悪いもんでもなかったやろ。あの2人が特殊すぎるだけやって。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

東京の某私立大学。当時文学部歴史学科に所属していた3年生の堀川と経済学部の2年生だった狩野の出会いは運命的と言えるものではなかった。

狩野はバレーボール部に所属していた。中学、高校と兵庫の強豪校でバレーボールに打ち込み、レギュラーとして春高兵庫県予選ベスト8に貢献した。そして元々勉強はできたので受験にも成功し、この大学で再びバレーで汗を流していた。

そんな時である。バレー経験者であった堀川が体育館に練習を見に来たのは。歴史好きで毎日研究とバイトに精を出していたが、研究に区切りがついたので、若干暇を持て余していたのである。

堀川は別に練習に参加するわけでもなく、ただ体育館のギャラリーから練習を見下ろしていた。時折スマホをいじりながらも、大阪で中の上程度の実力の高校でバレーをしていた当時を思い出し、感慨に耽っていたその時、堀川と狩野を急接近させる事件が起きたのである。試合形式の練習をしている時に狩野が他の選手と接触してしまい、足を捻ったのかうずくまってなかなか立ち上がることが困難になってしまった。それを見た堀川は慌ててギャラリーからコートに駆けつけた。あまり慣れないが標準語で話しかける。

 

「たまたま練習を見ていた文学部3年の堀川というものなんですが、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です……」

 

そうは言うが身動きも取れない状況だ。周りの選手も凄く心配そうである。

 

「全然大丈夫じゃなさそうですよ。ここは俺が負ぶって保健室まで連れて行きましょう。」

 

「すみません……」

 

保健室まではかなり距離がある。移動する間少し言葉を交わす。

 

「堀川先輩はバレーの経験者なんですか?」

 

「高校でね。大阪で中の上くらいのとこだけど。」

 

「堀川先輩は大阪の方なんですか?」

 

「そうだけど……」

 

「私、兵庫です。」

 

「あ、そうなんや。何回生?」

 

「経済学部2回生です。」

 

「へー。じゃあバレーで入ったわけじゃないんや。」

 

「はい。受験して入りました。だから練習にはあんまり出られないんです。」

 

「それでも周りとそう変わらないくらい強かったやん。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

保健室に着いた。帰るのかと思いきや、どうせ暇だからといって保健室で待っててくれた。結果的にケガは大事には至らなかったが、完治まではしばらくかかるとのことで、二週間ほどはクラブに出れない。その間、ギャラリーから練習を見下ろす事しか出来なかった狩野の側にいたのが堀川である。いろんな話をする内に、ケガをした日の優しさも相まって狩野は堀川に惹かれていった。そして最初は友人として付き合い始め、3ヶ月で恋仲に発展。そして今までその付き合いは継続している。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「思い出したらウチの片想いから始まってんな。この恋。」

 

「恋人になる前はまさかこんなに付き合い長くなるとは思うてへんかったわ。」

 

「なあ、なんであの時告白OKしたん?」

 

「その時のお前が可愛かったからかな。」

 

「…………。」

 

そんなことを言われると少し照れる。そして、徐ろに言葉を発する。

 

「ウチ、そろそろ結婚したいな。」

 

「え、まさかの逆プロポーズ!?しかもこのシチュエーションで!?」

 

慌てて口を塞ぐがもう遅い。しかし、堀川も驚きはしたがその後にこう呟いた。

 

「せやな。近いうちに。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

何か胸に奇妙な触感を感じて三葉は目を覚ました。薄目で壁掛け時計を見る。7時26分、今日はどこにも出かける予定はないので慌てて起きる必要はない。ぼんやりそう考えながら感触の正体を確かめるために胸に視線を移す。二本の手が自分の豊かな胸の膨らみを覆っている。自分の手ではない。手は三葉の体の後ろから脇の下を通って胸に到達しているようだ。自分の後ろにはただ1人しかいない……

 

「た、た、瀧くん!!?」

 

「ふえっ!?」

 

瀧は今目を覚ましたようだった。無意識の行動だったのだろう。だが、いや、だからこそ……

 

「手、手!!」

 

「手……?うわっ!!」

 

瀧は三葉の胸を無意識に揉んでいたのである。

 

「ち、違うんだこれは!なんか気持ちいいなあ〜〜とは思ってたけど……悪意はないから!ホントにないから!!」

 

「別にええけど………いや、良くはないけど!と、とにかく起きよう!ご飯にしよう!」

 

(でもなんか懐かしさに安心してたよな、俺。)

 

朝食を終え、居間でリラックスする。すると三葉が嬉しそうな様子で飛び込んで来た。

 

「瀧くん、これ見て!!」

 

三葉は三枚の葉書を瀧に見せた。

 

「てっしーとさやちんの結婚式の招待状やよ!瀧くんの分も渡しといてくださいって言うて送られて来たんよ!!」

 

「え、いつ?」

 

「6月の19日。」

 

「わかった。空けておくよ。」

 

「いや〜、楽しみやわ〜!」

 

「でもさ、あの2人のことだから多分新郎新婦共通の友人としてスピーチさせられるんじゃないかな。」

 

「………やばい。そういうの苦手や。」

 

「頑張れ、三葉。一番近くであの2人を見てきたんだから、下手なことは言えないからな。」

 

「もー、落ち着かせるって見せかけてプレッシャーかけんとってよ!このおっぱい星人!」

 

「あれはワザとじゃないんだって!」

 

「ワザとじゃないのが微妙に怖いわ!」

 

「もしかして俺って変態!?」

 

 

三葉の作る優しい和食の昼食を食べ、瀧は三葉の家を出る。この3日間、色んなことがあった。四葉に抱きつかれたり、司オススメの映画を恐る恐る見たり、その帰りで狩野と堀川に会ったり、朝起きたら三葉の胸を揉んでいたり、克彦と早耶香の結婚式の招待に三葉が一喜一憂したり……。しかし、確実に三葉との日々を重ねるごとに三葉の存在が大きくなっている。俺は三葉と離れたくないだけじゃない、一緒に生きていたい。そう思うようになっていた。奇しくも瀧には預かり知らぬところだが、三葉もほとんど同じことを考えていた。瀧は同時にこうも思った。

 

(狩野先輩、あなたの女の勘、バカになりませんね。そんなことより、同棲始めたんでしょう、そろそろ先輩の晴れ姿、見たいですからね。早いうちに頼みますよ!)

2022年5月1日。波乱のゴールデンウィークは前半戦を終えたばかり。後半戦はさらなる波乱が巻き起こることになることを知るものは、誰一人存在し得なかった。




<次回予告>2022年の変則ゴールデンウィーク、その5月3日から始まる三連休の初日は爆弾低気圧による嵐に見舞われた。波乱の幕開けは、ハートウォーミングストーリーで始まる。
次回 11月20日月曜日午後9時3分投稿 第16話「姉妹の絆」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。

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