君の名は。〜bound for happiness(改)〜 作:かいちゃんvb
話変わりますが、中村紀洋のフォロースルーが大好きです。小笠原と小久保も捨てがたいですが。
では、本編スタートです!
瀧は自分はソファーで寝ようと思っていた。だが、三葉は自分の部屋に手招きしてくる。何か話があるのかと思って三葉の部屋に入ると、なんと電気は消えており、さらに三葉が自分のベッドに寝転がって、丁寧に瀧のスペースを空けて待っているではありませんか!
「み、三葉……」
「どないしたん、瀧くん。おいでよ。」
「マジで!?」
「何?瀧くん嫌なん?」
「い、いや、う、嬉しいよ!嬉しいけどね、お、俺だって男だからな!?が、我慢できるか分かんねえよ!?」
「別に私はええんやよ。来ても。」
「だ、だめだ。俺の理性が許さない。勢い余ってできちゃいましたとか言ったら親父にぶちのめされる。」
「別に勢いとちゃうと思うけど。」
「かもしれないけどさ、俺はまだそこまで腹据わってないんだ。避妊具も持ってないし。」
「瀧くんは私とそういう関係にはなりたくないん?」
「そんなわけないけどさ、なんて言うか、その……。きっと三葉もそうだと思うんだけど、ちょっとロスがキツすぎたんだ。だから俺だって三葉のこと欲しいし、三葉も俺のこと欲しくてたまらないんだろうけど、ここは落ち着こう。ロスがキツかったからって安易にやっていいものじゃない。」
あくまでも自分のことを第一に気遣ってくれる瀧に感動し、涙目になった三葉は立ち上がってしどろもどろする瀧の正面に立つ。
「瀧くんは優しいんやね。私のこともちゃんと考えてくれて。うん、分かった。今日はやめとこ。」
瀧はほっと胸をなでおろす。すると三葉は瀧の首に手を巻き、頬に優しく口づけして……
「うおりゃゃああああ!!」
瀧の足を跳ね上げて自分の体ごと瀧を巻き込んでベッドに倒す。
「わ、わ、み、三葉!?」
「でも添い寝くらいはして!」
「だからって転ばす必要はないだろ……」
「瀧くんはもうちょっと甘えてええんよ。私のこと大事にしてくれる気持ちは分かるし嬉しいんやけど、年上としてはもっと甘えて欲しいんよ。なんか私が頼りないみたいやない。」
「そ、そういうもんなの?」
「そうやよ。」
「単に俺とくっつきたいからじゃなくて?」
「…………。」
「図星かよ……。」
やがて抱き合いながら2人とも微睡み、深い眠りに落ちていった。
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翌朝、2人ともほぼ同時に目を覚ました。瀧は慌てて自分の身なりをチェックする。どうやら何もなかったようだ。三葉もチェックする。何も寝る前と変化はない。
「俺が朝飯作るよ。三葉はもうちょっとゆっくりしてなよ。」
しばらく経つと、ウインナーが焼けるパチパチといういい音が聞こえてくる。その音に目を覚ましたのか、寝癖が爆発している四葉がボリボリと頭を掻きながら起き出してきた。
「聞き慣れない音がすると思ったらにいちゃんか。おはようふわああああ〜〜」
「おはよう四葉。宮水家の朝食はいつもどんな感じなの?」
「前の日のおかずの残りをチンしてご飯とお味噌汁。糸守におった頃はお魚焼いたりしとったんやけどね。」
「なるほど、だから聞き慣れないんだ。」
「ねえちゃんは?」
「部屋でゆっくりしてる。」
流石に別で寝たなら部屋を覗いて起こしたりはしない。ゆっくりしているという状況を知っているということは……
「…………したん?」
「してないよ。誘われたけど……」
「でも一緒に寝たんやろ。」
「そこはぐっと堪えました。」
「やっぱりお兄ちゃんやな。ここで堪えるところがポイント高いわ。ロス長かったからひょっとしたら勢い余ってやっちゃうかもと思ったけど。」
「もう俺の呼び名お兄ちゃんで完全に定着しそうだな。」
「嫌なん?」
「正直、悪い気はしない」
三葉が髪を整えて出てきた。
「昨日から気になってるんやけど、なんでお兄ちゃんって普通に呼んでんの?」
「ねえちゃんの知らん間の出来事やよ。」
「俺もそうとしか答えられない。」
「…………。」
そして朝食を食べ、一通りやることをやってから身支度してデートに出かける。
「四葉〜鍵かけていきよ〜」
「行ってきま〜す」
「楽しんどいでよ〜〜」
2人は手を繋いで宮水家を出た。
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2人は電車に乗り、少し都心から外れた大型ショッピングモールに着いた。やはり大型連休、しかも三連休の中日は遠出をする人が多いのか、混んではいるが息苦しさは感じない程度の混み具合だった。2人は今話題の新作邦画を観た後、少し遅めの昼食を摂った。2人でラーメンをすすりながら映画の感想を話し合う。
「瀧くん、なかなか面白かったね!」
「そうだね。ストーリーもよく練られてて最後まで飽きなかったし、脇役がいい味出してた。」
「でも主演がちょっとね〜、確かアイドルの子やんね。」
「アイドルで人気とって、脇役固めて演技力をフォローしようとするのは分かるんだけど、逆に主演の下手さが浮いちゃってたよな〜〜」
「で、次やんね。」
「うん……」
「きっと藤井君が言うんやから大丈夫やよ!」
「確かにあいつ見る目はあるんだけどな……白黒映画なんて初めてだよ、俺。」
「私もやよ。」
70年続くシリーズものの怪獣映画の第1作。瀧が6年前に観た最新作が面白かったのは覚えているが……やはり不安である。そして最後まで不安を払拭しきれないまま劇場へ足を運んだ。
しかし、蓋を開けてみればどうだ。確かに言い回しは古臭いし、今観たらちゃちいセットだが、これが戦後10年も経っていない時の作品である。画面の暗さとアオリのカットが怪獣の恐怖を醸し出し、作りこまれたストーリーが飽きさせない。そして今の社会にも通用する深いメッセージ性が込められた傑作である。70年続く理由もわかるというものだ。
「三葉、凄かったな。」
「やっぱり原爆を直接知る人たちの描く核の恐怖は違うかった。藤井君、疑ってすみませんでした!!」
「よく考えると彼女と初めて観に行くような映画ではない気もするけどな。」
「それもそうやね。」
そう話しながら上映フロアを出て行こうとすると、瀧の知っている顔が目に入った。しかも……
「三葉、知り合い見つけたから声かけてきていい?」
「奇遇やね。私もそう思ったったとこなんよ。」
「じゃ、後で入り口で会おう。」
「うん。」
ところがどっこい、2人とも同じ方向へ歩いて行く。
「何よ瀧くん、ついてきてんの?」
「いや、こっちに知り合いがいるんだよ。だけど彼氏連れてるな。声かけて大丈夫かな?」
「私も彼女連れた知り合いが…………え?」
瀧と三葉が目指す方向には1組のカップルしかいない。2人は手を繋いでカップルに接近し、声をかけた。
「堀川君」「狩野先輩」
2人は振り向く。そしてピッタリ息を合わせて言い放った。
「「なんでお前がここにおんねん!?」」
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4人はショッピングモール内のカフェで話をした。
「急に声をかけてすみませんでした。こちらが俺の彼女の宮水三葉です。」
「浩平、この子がこの前に恋愛相談に乗ってあげた後輩の立花瀧君。んで瀧君、この口が悪い顔面偏差値50前後のこの男が私の彼氏の堀川浩平。」
「宮水、このなかなか綺麗やのに性格は半分ヤンキーのこいつが俺の彼女の狩野百合子や。」
「堀川さん、昨日は関西風すき焼き、美味しかったです。ありがとうございました。」
「喜んで頂けてなによりや。こいつから毎日のように惚気話聞いてるけど、なかなかシュッとした男前やん、優しそうやし、ええ男捕まえたなあ、宮水。」
「何よ、瀧くんはその辺の男とは違うもん。……瀧くんの彼女の宮水三葉です。いつも瀧くんがお世話になっています。またしごき倒しておいてください。」
「あなたの方が私より年上なんでしょ、宮水さん。……おいこら新人、ええ女引っ掛けたやんけ。先輩として誇りに思っといたるわ。」
「先輩、一言多いですよ。そんなんだから堀川さんに半分ヤンキーとか言われちゃうんじゃやないですか?」
「余計なお世話や!」
「いいぞ立花君、もっと言うたれ!」
「うるさいしばくぞ、ボケェい!」
「ほらまたヤンキー出た!」
向かいで始まった夫婦漫才を見ている瀧に三葉が話しかける。
「こうなったんは瀧くんの責任やからね」
「そういう三葉も面白がってるじゃん。」
「う……」
「でも三葉に狩野先輩を紹介できて良かった。」
「私もあの日に瀧くんともう一度会う勇気をくれた堀川君を紹介できて良かった。」
2人は固く手を握り合う。目敏くそれを見つけた堀川と狩野は夫婦漫才を続けながら微笑ましく思い、2人の出会いを心の中で祝福するのであった。
<次回予告>若い瀧と三葉の出会いを見て、過去を思い返すカップル。朝に珍事を演じる瀧と三葉。そして、万感の想いを込めて一通の手紙を出す新婚夫婦。それぞれが、また新しい物語を紡いでいく。
次回 11月13日午後9時3分投稿 第15話「馴れ初めと胸と招待状」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。